「身分証を見せて。成人してるようには見えないから」
私が棚に並んでいたSMグッズを持ってきた途端、ボンデージ服にエプロン姿の店員がそう言い放った。
「き、今日はたまたま忘れて……」
「お買い求めは縄にボールギャグ? 未成年が欲しがるにはませてるわね」
苦し紛れの答えなんて通用しなさそうだ。このままだと売ってもらえないかもしれない……。
だけどこっちだって負けてられない。別にお酒を飲むわけじゃないんだし、向こうが折れるまで嘘を吐き通してやる。
「未成年じゃないし! いいから売ってよ。これで友達を縛るんだから」
店員は「うーん」と少し考えるような仕草を見せる。
ほら、大人なんてこんなものよ。まんまとハッタリが効いたわ。
「まあ売ってあげないこともないけど、見逃してあげる代わりに条件を飲んでもらうわ」
欠片も予想していなかった答えに思わず萎縮する。
「条件って……何よ」
「今からこの縄であなたを縛るわ」
「はぁ!? そんなこと未成年にしたら……あ、いや……」
ヤバい、思わず墓穴を掘ってしまうところだった。
突然の危機につい冷静さを欠いてしまう。気がつくと私は考えるよりも先に反論していた。
「何よそれ、意味わかんない! 大体私Sなんだけど!?」
「だったら尚更よ。あなたみたいにガサツそうな子に縛られるお相手が気の毒だもの。一回は縛られる体験をするべきだわ」
誰がガサツよ、誰が!
このままでは私が縛られてしまう。そんなの真っ平ごめんだけど、店員は私が回れ右をして帰ったって構わないという態度だ。
どうしよう……。
私がSMグッズを手に入れる方法は少ない。通販という手段もあるが、荷物を受け取る時に家族にバレてしまう危険はどうしても拭えない。
他の取り扱い店に行ってもきっと売ってくれないのだろう。
考えるのも面倒だし、手っ取り早く縄を手に入れるには……条件を飲むしかない。
「チッ……ああもう、分かったわよ。さっさとやって」
一瞬だけ縛られて、すぐに解かせればいいだけだ。大丈夫、あっという間に終わる……。
「フフッ。まいどあり」
店員のいかにもSっぽい妖艶な笑みが、悪魔の微笑みに見えて少し恐ろしかった。
──数分後──
ギチッ ギチッ
な、何よこの縛り方!!
良いって言ってないのにボールギャグまで着けられた……!!
腕と脚を折り畳む窮屈な姿勢で縛られてしまい、スカートも盛大に捲れ上がってしまっている。脚を閉じようにも椅子のパーツに固定されていて叶わない。
「我ながら上出来ね。うーん、どこに飾ろうかしら?」
「んうっ!?」
舌をボールに押さえつけられた口から思わず声を上げる。
飾るってどういうこと?
……こんな格好の私を店に出すの!?
私が座っているキャスター付きの椅子が店員の手でどんどん運ばれていく。
これでも力一杯暴れているのに、頑丈な縄は私の脱出を許してはくれない。
「この辺でいいかしら。じゃあ閉店までよろしくね~」
閉店、まで……?
それっていつよ! 今は昼を過ぎたばかりだし……まさか夜まで放置するつもり!?
「んんんんんんッ!!!」
「何て言ってるのか分からな~い♪」
私の叫びは届かない。店内には何人かの客が既に入っていて、遠目からこちらを興味深そうに覗いている。
「いらっしゃいませ~。今日はうちの奴隷を連れて来たわ。自由に見て行ってちょうだい」
何でわざわざ呼び込むのよ!!
呼ばれた客は私のすぐ目の前までやって来て、無遠慮にまじまじとこちらを見つめ始める。
くそっ、見てんじゃないわよこの変態!
「あのぉ、触ってみてもいいですか」
「もちろん。脱がさなければ何しても良いわよ」
変態客と店員の恐ろしいやり取りを聞いて、私は体を椅子ごとガタガタと揺らしながら猛烈に抵抗する。
「んんんッ!? んうううううッ!?」
「フフフ。奴隷がすっかり興奮しちゃったわ」
今の私には抗議する口すら塞がれていて、迫り来る客の手から逃れることができない。
何をされても抵抗できない。縛られるというのがどういうことか、既に身に染みる思いだった。
お願い、もう縄を売れなんて言わないから……
ダメ……っ! や、やめてえええええええええっ!!
ぬ!@一次創作限定
2023-11-28 03:31:43 +0000 UTCユーリ
2023-11-27 22:44:28 +0000 UTC