魔法学校では日々あらゆる魔法が研究されている。成果をまとめた書物は生徒なら誰でも魔導書館から借りることが可能だ。
ある女子生徒は近々行われる魔法の実践授業(もとい模擬戦)に備え、新しい攻撃魔法を勉強するべく魔導書を読み込んでいた。
書には複雑な術式が記されていて、内容を完璧に理解することはなかなかできない。けれど魔力を込めれば仕組みが分からない魔法も発動させられるのが魔導書の大きな利点だ。
とりあえず何か発動させてみよう。ページをぱらぱらと捲り、一つの魔法が目に留まる。
「相手を拘束する魔法……すごい! これが使えたら有利ね」
魔法による戦闘は未熟な生徒同士であっても熾烈を極める。治療魔法で簡単に治せるからということで、大怪我を負うようなことがあっても降参するまで終えられない。
そこでもし相手を緊縛して無力化させれば一方的な攻撃が可能になる。抵抗できない相手が耐えかねて降参する姿が目に浮かぶようだった。
「よーし……えいっ」
魔法を発動させた。女子生徒の魔力が魔導所に吸収され、宙に魔法陣が浮かび上がる。見る見る内に丈夫そうな縄が形成されていった。
「ん?」
そこでふと違和感を覚えた。
宙で蠢く縄が心なしかこちらに向かって伸びてきているような気がする。
思えばこの魔法は縛る対象が居なければ発動できないはずだ。今、部屋にいるのは自分一人……すると対象に選ばれるのは必然的に
「やば……! ま、待って! 止まって!」
懇願も虚しく、発動準備を終えた魔法陣が高速で縄を飛ばし始めた。
一度発動した魔法は効果を終えるまで止められない。防御魔法を使う間も与えられず、あえなく彼女は緊縛魔法の餌食となった。
「んんんん~~~!」
全身をぐるぐる巻きにするだけじゃ飽き足らず、猿轡のように口元まで巻きついた縄に言葉を封じられてしまう。しまいには足首と口の縄を繋がれて立ち上がることもできない状態にされてしまった。
「んんっ! んんんん~~~!!」
(全然動けない……! 誰か助けを……でもこんな格好を人に見られたら恥ずかし過ぎる……!)
自力で解こうと何度ももがいてみるが、体を前後に揺らすのが精一杯で少しも進展が見られない。
「んっ! んっっ! んんんんッ!!」
せめて杖さえ持てれば別の魔法で縄を切ることができるのに、視界のどこにも杖は見当たらない。すぐ近くに落ちているはずだが、こうも全身を縛られてしまっては探しようがない。
(もうっ! どうしたらいいのぉ!)
勤勉ゆえに数々の魔法を会得してきた優等生の彼女だったが、今となってはただの少女と変わらず、身動きできない体を揺りかごのように前後させるしかできなかった。
ぬ!@一次創作限定
2024-01-07 13:02:22 +0000 UTCユーリ
2024-01-06 22:42:19 +0000 UTC