某国の辺境に特殊な村があるらしい。そういった情報を元に現地へ赴き、取材の様子をお届けするドキュメントバラエティ番組の主役に、人気アナウンサーの1人が抜擢された。
数々の村を訪れやがて人気番組となり、全国放送が決まって絶好調の時、また新たな辺境への旅が始まろうとしている。
「今回の村は一度に一人までしか外部の人間を受け入れてもらえないらしい。取材には君一人で行ってくれたまえ」
そういうお達しを受け、アナウンサーは不安ながらも取材用のカメラを手にその村へ向かった。
飛行機を乗り継ぎ、入国してからは陸路を進むも途中からは車を降り、過酷な傾斜を歩くこと数時間。
いつもの探検隊風の衣装に着替え、カメラを回しながら道中の様子もリポートしていく。
おそらく何かの目印としているのであろう民族的な飾りを頼りに進み、ようやく目的地へと辿り着いた。
「ヨウコソ!」
「イラッシャイマセ~~~!」
わざわざ出迎えてくれた村人達は総出で歓迎してくれた。
アポイントは既に取ってあると聞いてはいたが、ここまで歓迎されるとは思ってもみなかった。
「ヨク イラッシャイマシタ。ドウゾ、コチラへ」
きっとこの日のために日本語の勉強までしてくれたのであろう。カタコトながらも会話に苦労させまいとする気持ちが感じられた。
「オニモツヲ オアズカリ イタシマース」
「チカラヲ ヌイテ クダサイ。オモテナシ ジュンビ イタシマスー」
イントネーション以外は完璧な日本語、それも敬語をマスターしていることに驚いていると、突如腕を掴まれて背中に回された。
「あ、あれ? 何を……」
「オモテナシ デースヨー」
手首に何かを巻かれている。
(これは……えっ、縄!?)
気づく頃には上半身を厳重に縛られてしまっていた。
「オキャクサン、モーナニモ シナクテ ヨイデス」
「オシゴト オテツダイ。ムラノ ゴアンナイ。オショクジノ オセワ。ゼンブ オマカセ クダサイー」
その後も色々説明を受けるととんでもないことが分かった。
話をまとめると、この村では他所からやって来た客人に対して何から何まで村人が世話をしてくれるという風習があるらしい。
何も遠慮せず世話を受けてほしいという気持ちを込めてあえて体を縛り自由を奪うのだとか。
「ハーイ、カメラ トリマース」
「ワラッテー」
「あ、あの、ただいま現地に到着したところです。えぇとその、熱烈な歓迎を受けまして……これからお食事をご馳走してくれるみたいなんですが……そのぉ……」
(ていうか、この姿が放送されるってこと……? あんもう、リポートに集中できない……!)
頼むからカメラの操作を間違えて撮れなくなれと心の中で願うも、カメラを持った村人は機械に強いらしく、その後も完璧に撮影してくれた。
(勘弁して~~~!!)
心の叫びが村人達に届くことはなかった。