怪人ヘビ女の襲撃に敗北し、謎の組織のアジトに誘拐された美少女仮面は終わりの見えない拷問を受けた。
しかし美少女仮面を改造して新たな怪人を創り出そうとするその計画は、その衣装が切断も貫通もできないほど強力な糸で編み上げられていたことから実現には至らなかった。
手術を担当していた組織の闇外科医は美少女仮面に自ら衣装を脱がせようと拷問を試みたが、美少女仮面は持ち前の強い精神力で耐え切ったのだ。
「肉体への干渉では屈するつもりはないらしい」
諦めの混じった闇医者の声は、さらに恐怖を覚えさせる言葉を続けた。
「順序を変えよう。本来は改造後の洗脳が効果的だが、今回は洗脳から始めるしかあるまい」
「ひっ……」
くすぐりや性的な干渉程度なら耐え続けることは可能だっただろう。しかし直接心を蝕まれてからであってはいかな精神力であろうと抗うことは難しいはずだ。
「だが私は専門外だ。奴を呼ぶしかないな……おいヘビ、一旦こいつを牢にでも入れておけ」
「ラジャー!」
元気な声で応答するのは部屋の隅で待機していた怪人ヘビ女。美少女仮面を捕らえてこの施設への誘拐に成功した優秀な戦闘員だ。
美少女仮面を拘束していたX字の台に近づき、手足の枷を外してその体を担ぎ上げる。体力が底を尽きかけていた美少女仮面は疲労困憊で、大人しく運ばれるがままとなる。
「ったく、素直に改造を受けろよ! お前はアタシの子分にしてこき使ってやるんだからさ!」
このヘビ女も元は普通の人間だったのが、肉体を改造され、洗脳処置を受けて組織に従順な怪人にさせられてしまったのだろうか。本人が望んで改造手術を受けた場合もあり得るが、美少女仮面に真実を確かめる術は無い。
「おい、返事くらいしろ! 元気ないなぁ。くすぐられてえっちなことされただけじゃんか」
会話好きなのだろう、それからもヘビ女は一人で喋り続けていたが、その間に美少女仮面はひたすら体を休めて呼吸を整えていた。
美少女仮面が今も纏っている純白の衣装には頑丈なだけではなく、時間経過と共に体力を回復させる不思議な効果がある。これによりどんなダメージを受けてもすぐに復活できるのだ。
ヘビ女が歩くこと数分。牢の近くには組織の構成員が他に誰もいなかった。
このチャンスを逃す手はない。美少女仮面は糸を生成し、自分を運んでいたヘビ女に襲いかかった。
「ぎゃっ!? な、なんだ!?」
鋭利な刃物ですら切れない糸でヘビ女の体を雁字搦めに縛り上げていく。
ヘビの特性を持つ彼女には甘い縛り方などしていてはスルリと抜けてしまうことだろう。そして地を這って自在に動き回ることが無いように、体を折り畳ませて厳重に糸を巻きつける。
「や、やめろぉ! お前、こんなことしてただじゃおかな……むぐうぅっ!?」
あまり叫ばれるとヘビ女の仲間に気づかれかねない。口を封じ、物言わぬ達磨のような状態にして床に転がしてやった。
「んんー!! んんんんーーッ!!」
もがき呻くヘビ女が完全に身動きできなくなったことを確認し、美少女仮面はふうと息をつく。
「私の体から離れた糸は1時間くらいで消えてなくなるから、それまで辛抱してなさい。まあその頃にはこんな施設を脱出して警察に知らせてるけどね!」
誘拐された時は特に目隠しもされていなかったので出口への道順は覚えている。美少女仮面は怪人ヘビ女の側を後にし、無事に謎の施設を脱出した。
後に機動隊がこの建物へ突入しようとしたが、いつの間にか施設は跡形もなく爆散されており、組織の痕跡は何一つ残されてはいなかった。