SamSuka
ぬ!@一次創作限定
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メイド喫茶に来店するお嬢様

 とあるメイド喫茶の店内、席の一角にて。


「はい、お嬢様? あーんしてくださいませ」

「あーんっ。美味しいですわ~♡」


 メイドさんという名の店員に甘えるお嬢様の姿があった。



 お嬢様は気まぐれで入ったメイド喫茶を大層気に入り、今日までに何十回と来店を繰り返していた。


「やっぱりメイド喫茶は最高ですわ。うちの無愛想なメイドにも見習って貰いたいものです!」


 ややこしい話だが、このお嬢様は店外に出てもお嬢様の扱いを受けている大会社のご令嬢である。しかしかなりお堅い家のため、自宅に雇用されているメイドはメイド喫茶のメイドように甘やかしてもらえないことが常々不満だったのだ。


「ふふっ、本物のメイドさんですから私どものようにはいきませんよ。私でしたらいつでも遊び相手になってさしあげますよ?」

「あぁ~~ん、好き好き大好きですわ~♡」


 お嬢様は店員の胸に抱きついて頬を擦り寄せる。


「あらあら、店内でお触り行為は厳禁ですよ? 罰金1万円になります♡」

「いくらでも払いますわ♡ んーっぎゅーですわ~!」


 店のルールとして店員に触れる行為は禁止されているのだが、同性の客であり金払いも良いということでお嬢様の蛮行は店長からも黙認されている。

 しかしどのような場合であれ、ルールを無視することは少しずつ歪みを生むものだ。


「そうそう、ポイントが貯まっていますの。今日はこれを使わせてもらいますわ」


 言いながらお嬢様は財布からカードを取り出した。

 この店ではお会計時の金額に応じて1,000円につき1ポイントが付与される。ポイントの使い道は様々で、メイドと写真が撮れたり好きなコスプレ衣装を着てもらったりとかなり攻めた願いも聞いてもらえるのだ。


「かしこまりました。写真でしたら10ポイント、コスプレでしたら15ポイント。コスプレ衣装での写真撮影であればお得な20ポイントで……」

「そんなお願いは散々聞いてもらいました。私はこのお店のメイド長から裏メニューがあることを聞いていますのよ?」

「裏メニューですか! ついに……!」


 それは1,000ポイントを貯めてようやく叶えられる特別な願いごと。それもポイントの有効期限である半年間で貯めなければならないため、裏メニューを注文することは通常の客では支払い不可能な使用金額に達するのだ。


「そういえばお嬢様がお帰りいただくようになってから丁度半年ほどでしたね」


 お嬢様は多数の習い事を抱えている現状、週に一度しかメイド喫茶に訪れることができない。その僅かな機会で高額の注文を繰り返し、1,000ポイントを貯めることが叶ったのだ。


「そうですの。このポイントを使えば今日1日、私の言うことを何でも聞いてくださるのでしょう?」

「はいっ。もちろんでございます」


 ちなみに、本来この店には裏メニューなどというものは存在しなかった。メイド長改め店長がお嬢様の金払いの良さに目をつけ、欲を出して急遽お嬢様専用に考案したメニューなのだ。

 それもそのはずで、女性店員が何でも言うことを聞くなどメインターゲットである男性客に提案することはできない。そんなことができるのは夜の繁華街に並ぶ大人専用のお店だけであり、未成年者でもバイトとして働けるメイド喫茶では不可能だ。


「ポイント預かりました。それではお嬢様、特別室にご案内いたします」

「わぁ~いですわぁ~!」


 特別室は以前はメイドの控え室として使用されていたのだが、裏メニューを作った日から急遽リフォームして、いつでもお嬢様を迎え入れられるように内装を整えられたまさに特別な部屋だった。


(無邪気で可愛いお嬢様。もっともっと夢中にさせて金の成る木で居続けてもらわないとねぇ)


 心の中でほくそ笑むメイド店員。その時はまだ、お嬢様から要求されるのはスキンシップ程度のことだろうとしか見当をつけていなかった。


「さあお嬢様、何でもご命令してくださいませ。一緒に遊びますか? お嬢様が喜ばれると思ってツイスターゲームなどご用意してますが……」

「縛ります」

「……はい?」


 見るとお嬢様の手には厳つい麻縄の束が握られている。いつの間に持ち込んだのか足元に置かれている鞄が大きな口を開けていて、中にはいかがわしいグッズが何点か顔を覗かせている。


「メイド長とも既に話はついていますの。私のお願いを断るとあなたは解雇とのことですわ」


 ふと部屋の入り口に目をやると、メイド長の女性が両手を合わせたりして(お願い……! 言うことを聞いて!)という意思のこもったハンドサインを送ってきていた。


「少々刺激的なお願いですけれど、断ったりなんてしないですわよね? 半年間で100万円の支払いは私のお小遣いでも少々厳しかったんですもの……嫌と言われたら悲しいですわ」


 今までの無邪気さがうって変わって、邪悪な笑みを浮かべるお嬢様がそこにいた。


「さあ、分かったら背を向けてくださいまし。安心して……悪いようにはしませんわ。あなたは私のお気に入りですもの……」


 欲をかいて大金を使わせてしまった負い目がある以上、メイド店員はお嬢様の言うことを聞くしかなかった。


「はい……かしこまりました」




 静かな室内でギチギチと縄が音を立てる。


「あっはははっ! 最高ですわ~!」



 両手首を背中で束ねられ、胸の上下に回された縄は首から伸びる縄によって胸元を絞り上げている。加えて股縄を通された挙句、組まされた足を首に繋げられてしまった。


「んーっ! んーっ!!」


 口元に貼り付けられたガムテープが声にならないメイドの悲鳴を封印している。


「さあ、これだけじゃ終わりませんわよ。今日はたっぷりいじめてさしあげますわ……♡」


 まさかお嬢様にSMの趣味があったなど露知らず、迂闊に裏メニューなど了承してしまったことを後悔する。

 言うことを聞かなければならない時間は今日1日……その間はずっと縛られ続け、さらに責め苦を与えられることになる。


「くすぐりはお得意? 苦手であれば嬉しいですわ。あなたの苦悶に歪んだ顔が見たくて仕方なかったんですもの」

「ん……ッ! んん゛ーーーーーーッ!!」


 防音設備も完備された特別室の悲鳴は店には届かない。メイド店員の助けを呼ぶ声に駆けつける者は誰もいなかった。

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