建物から建物へ駆け抜けていく人の影があった。
影の正体は美少女仮面。彼女はたとえ悪人が現れなくても、事件を未然に防ぐため町の様子を見て回っているのだ。
美少女仮面はふと、天高く飛び上がっていく赤い風船を見つけた。地上を見れば小さな女の子が残念そうな顔で立ち尽くしている。
せっかく貰った風船をうっかり手放してしまったのだろう。状況を察した美少女仮面はすぐさま跳躍し、風船の紐をキャッチした。
そのまま地上に降り立った美少女仮面は女の子に風船を差し出す。
「はい、どうぞ。手を離さないように気をつけてね」
「ありがとー、びしょーじょかめんのおねーちゃん」
きちんとお礼の言えるいい子だった。こういう町の人たちとの出会いこそヒーロー活動の楽しい一面である。
しかし、女の子は風船の紐ではなく美少女仮面の手をガシッと掴んだ。
「もう離さないよ……フフフ」
突然変わった声色に、美少女仮面の背筋に戦慄が走る。
すると細長い物が美少女仮面の体に巻きつき始めた。女の子が背後に隠し持っていた縄が、次々と体の自由を奪っていく。
「なっ!? そんな、だめっ! あぁっ!!」
抵抗しようにも相手は小さな女の子だ。変身して腕力が上がっている状態では下手に動くと怪我をさせてしまうかもしれない。
しかし見た目の幼さにはとても似つかわしくない力で、ついに女の子は美少女仮面を捕縛することに成功した。
「んむーっ!!」
口に巻かれた縄で言葉を封じられた美少女仮面になす術はなく。
「油断したね美少女仮面。幼い子供の体を操って油断させた甲斐があったというものよ」
言っていることから推察するに、目の前にいるのはただの子供に違いはないが、何らかの手段で体の主導権を奪われているらしい。
「裏社会じゃお前には相当な賞金が掛かってるんだよ。すぐに売り払ってやるから楽しみにしてな」
「ん……っ!?」
絶体絶命の美少女仮面。厳重な縛めから脱出し、操られた女の子を救うことができるのか────!?
(この後なんとかなった)