覆面レスラーのホワイトキャットとクイーン西山の戦いはいよいよ大詰めを迎えていた。西山の足を持ち上げて転ばせたキャットはエルボードロップを叩き込むべく跳び上がる。
「おらぁーーーー!!」
しかし渾身のエルボーは防がれた。西山が隠し持っていた紐のようなものが衝撃を吸収し、狙いの鳩尾まで落とすことができなかったのだ。
「なっ!?」
過去の試合でもダーティープレイを繰り返してきた西山だが、初めて見る戦法への戸惑いがキャットに隙を生んだ。片膝をマットに着けるやいなや西山が起き上がり、キャットの体に紐を絡ませ始めた。
「や、やめ……何を……!!」
「あはははははっ!!」
西山の邪悪な高笑いがリングに響く中、やがて関節技でも受けているような姿勢を紐によって強制されたキャットがマットに転がされる。
「くそっ、動けない……!」
全身を雁字搦めに縛り上げられ、立ち上がることもできないキャットは西山の不適な笑みに危機感を覚える。
「まさか……」
「お察しの通り、あなたの覆面を頂くわ。ああ、ついにあなたのマスクを剥げるのね!」
必死の抵抗も虚しく、暴れるほど紐が鍛え上げられた体に食い込むばかりだった。西山に顎をホールドされ、今まで死守してきた仮面に手が掛かる。
「やめろおおおおおおおおおお!!」
キャットは己の強さに自信を持っていたため、このマスクを剥がせるものなら剥がしてみろと何度となく豪語してきた。そして剥がしに来た挑戦者を全て返り討ちにしてきたのだ。
その歴史が今、西山の卑怯な手に屈する形で終わりを迎えた……。
「なぁんだ、その顔なら隠すこともないじゃない。さあ、あなたの美貌を観客に見せてあげましょう」
西山は縛られたキャットの体を持ち上げてリングを降り、四方八方の観客にキャットの素顔を見せて回る。悔しさに歪んだキャットの素顔を、応援してくれていたファンすらも興奮を隠し得ない様子で見つめていた。
「だめ……見ないでぇ……」
いつもの勇ましさは消え失せ、弱々しいキャットの声は喧騒に掻き消されていった。