~登場人物紹介~
名前:桜子
新しいクラスメイトと友達になれてルンルンな模様。
名前:菜乃
桜子と違うクラスになってしまい、緊縛するチャンスが無く悶々な模様。
春休みも終わり、桜が舞う中で迎えた新学期。
ついに長年恐れていたことが現実のものとなってしまった。
私と桜子ちゃんは小学生の頃に出会った幼馴染。その時に初めて同じクラスになってからというもの、中学校でも高校でもずっと同じクラスだった。
しかし今年度のクラス表が貼り出されている掲示板で、私と桜子ちゃんの仲を引き裂こうとする陰謀を目の当たりにするのだった。
桜子ちゃんのクラスは2-A。
そして私は……2-B。
A組とB組は壁を一枚隔てているだけで一見大した違いが無いようにも思える。だけど配属されるクラスの違いは学生にとって大きな違いなのだ。
私は桜子ちゃんがワガママを言ったり、クラスメイトへ高慢な態度を取った時に縄で縛ってお仕置きすることができる。そのチャンスは大抵授業中だったりレクリエーション会の時に巡って来ていた。その機会が全く無くなってしまったのだ。
そんな虚無感に支配される日々が始まって一週間。
授業と授業の合間の休み時間、今日も私はA組を覗きに行った。
桜子ちゃんは私しか友達がいない。自分勝手な桜子ちゃんには新しい友達ができない。だからクラスが違ってしまった以上、一人ぼっちで寂しい思いをしてるはず……と思っていたのに。
「あははっ、それ笑うって~!」
桜子ちゃんと誰かの談笑する声が聞こえる。
放っておくとすぐ誰かとトラブルを起こすはずの桜子ちゃんが知らない生徒と打ち解けている。
どうして。今までそんなことなかったのに。友達ができなくて悩んでたのに。
新学期になってあっさり新しい友達を作っていた。
あんなに仲良さそうにされてたら喧嘩なんて起きそうもない。
桜子ちゃんが悪いことをしたから縛るという大義名分が成り立たない。
いつからあんなにいい子になっちゃったの? 気が強過ぎて誰とも馬が合わないのが桜子ちゃんじゃなかったの?
桜子ちゃんがいい子になったら縛ることができないじゃん。
縛りたい……縛りたい縛りたい縛りたい縛りたい縛りたい縛りたい縛りたい……。
放課後になると私は急いでカバンに教科書などを詰め込んでいく。すると教室の出入り口から声が聞こえた。
「菜乃~。帰ろー」
新しい友達ができた桜子ちゃんだけど、彼女らはみんな部活に入っているらしい。そのおかげで放課後は毎日私のことを迎えにきてくれる。
もし部活動が一斉休止する試験期間に入ってしまったら一緒に帰ってくれるのだろうかという一抹の不安を飲み込んで、私は桜子ちゃんに言葉を返した。
「ねえ桜子ちゃん、今日うちに遊びに来ない?」
「行くっ!」
花のように満開の笑顔を咲かせる桜子ちゃん。
帰路についている間は新しい友達とした会話を私に教えてくれた。それは毎時間A組を覗きに行き、盗み聞きしたものと全く同じ内容だった。
家に着くなり、桜子ちゃんは脱いだ靴の位置を丁寧に直し始める。いつも無遠慮に脱ぎ散らかしていたのにまるで人が変わったようだった。
きっと私が知らない間に桜子ちゃんは成長したのだろう。ワガママを言って自分勝手に振る舞うばかりではなく、礼儀をわきまえ、他人と衝突することなく対話することができるようになったのだ。
友達の成長は……喜ばなきゃダメ、だよね……。
私の部屋に入ると桜子ちゃんはにっこり微笑んだ。
「菜乃のとこは宿題出た? 先にやっちゃおうよ」
「う、うん。そうだね」
桜子ちゃんのその提案にも私は驚かされてしまった。以前なら宿題なんてそっちのけで遊ぶことを優先したはずだ。
そして私はいつも忠告していた。後回しにすると忘れちゃうよって。いつも忘れちゃうんだから……次宿題を忘れたら縛ちゃうよって言って……
次の日になると案の定宿題を忘れて私に答えを写させてと言ってくる。私は快く宿題を見せてあげるけど、代償に堂々と桜子ちゃんを縛ることができるのだ。
抵抗する桜子ちゃんを押し倒し、いつも持ち歩いている縄を次々と身体に巻き付けて。
うるさい口を猿轡で塞いで、手も足も自由を奪って。
「ううぅーっ!! んんんうううううっ!!」
可愛い呻き声を聞きながら動けなくなった桜子ちゃんを見下ろして私はほくそ笑むのだ。
ああ、ゾクゾクする……!
背徳感で胸がいっぱいになり、心が満たされていくのを感じつつある時だった。
ハッとなる。私は妄想の中で桜子ちゃんを縛っていると思っていたのに……いつの間にか目の前には緊縛姿で涙目の桜子ちゃんが私のことを睨みつけていた。
「うううっ!! んうっ!! ううううううう!!」
やっちゃった。
しばらく桜子ちゃんを縛ることができていなかったせいで、妄想と現実の区別も曖昧になってしまっていた。
何も悪いことをしていない桜子ちゃんを縛ってしまった……!
「あっ、ご、ごめ……! す、すぐっ、解くから……っ」
慌てるあまり言葉を詰まらせながらギチギチと音を鳴らす縄の結び目を解いていく。
身体の自由を取り戻した桜子ちゃんは自分で猿轡を外して床に投げ捨てた。その勢いに大きな怒りを感じ、私の肩は思わずビクッと震える。
「菜乃……なんで縛ったの? 私いい子にしてたよね」
「あ、あの……その……」
「もう菜乃に縛られなくてもいいように頑張ったんだよ。もう高二だし大人になろうって思って、悪いところいっぱい直したんだよ!?」
怒りが抑えられないといった迫力の形相で、桜子ちゃんは私のことを睨みつけてくる。
返す言葉もなかった。
桜子ちゃんは自分の鞄を手に取って何も言わず部屋を出ていった。残された私は宿題も手につかず、茫然自失とするばかりだった。
朝はいつも桜子ちゃんが迎えに来てくれていたのに、今日は時間になっても現れなかった。
私は一人で学校に行き、A組を覗いた。桜子ちゃんはクラスメイトと楽しそうにお喋りしている。
昨日のこと、もう怒ってないのかな。
でも迎えに来てくれなかった。だからまだ許してくれてない。
とぼとぼ歩いてきたせいでいつもより登校が遅れてしまった私は急いで自分の教室に行く。
後で謝らなきゃ。
大丈夫。きっと許してくれる。絶交になんて絶対にならない。大丈夫、大丈夫……。
そう自分に言い聞かせて、何とか不安を押し除けながら一日を過ごした。
放課後。私は帰り支度もしないで教室を飛び出しA組に向かう。
先に帰られたら謝ることができない。絶対に追いつかなきゃ……!
A組の扉は開いていて、すぐ向こう側に桜子ちゃんの姿が見えた。
「さ、桜子ちゃん!」
私の声に振り返る桜子ちゃんの目は冷たくて、軽蔑するような視線に思わず竦んでしまう。
私は震える声を振り絞った。
「昨日はごめんなさいっ! 私が悪かったです。どうか……許してください……」
誠意を込めて敬語で謝罪する。幼馴染相手とはいえ反省の気持ちをタメ口なんかでは伝えられないと思ったから。
桜子ちゃんはじっと私の目を見ている。
もっと謝らなきゃ。許してもらえるまで何度だって謝るんだ。そう思ってもう一度口を開こうとした時だった。
「っ……!?」
背後から腕をガシッと掴まれて肩を押さえつけられる。そのものすごい力に思わず膝をついてしまった。
「えっ? え……っ?」
何が何だか分からなかった。
後ろを見るといつも桜子ちゃんと雑談していた生徒が二人、私のことを取り押さえている。
「菜乃はさ、いつも私のこと縛るよね。桜子ちゃんが悪いんだって言って」
ゆっくり歩み寄ってきた桜子ちゃんを見上げると、その手には一束の縄が握られていた。
「で、菜乃は今自分が悪いって言ったじゃん?」
「え……な、何を……」
「決まってんでしょ。お・し・お・き……しないとね♡」
私は必死に暴れて逃れようとした。だけど三対一ではどうしたって敵うわけもなく、次々に縄が私の身体に巻き付けられていく。
「やめて……っ! お願い、許して……!」
「うるっさいわね! 口も塞いでやって!」
「むぐっ──」
桜子ちゃんの指示を受けて私のことを押さえつけていた一人が捻った布を私に無理やり噛ませてくる。
そうしていく内に私は全ての自由を奪われていった。
「むうぅ……っ」
少しでも身を捩ると固く締め付けられた縄がギチギチと音を鳴らすばかりで決して私を放そうとしない。
完璧な縛り方だ。どうしてこんなことに……!
「いつも縛られてたからね。これくらいお手のもんよ」
私のことを見下ろす桜子ちゃんとクラスメイト二人。みんなが縛られた私を嘲笑うように見下している。
桜子ちゃんの隣で一人が口を開いた。
「初めましてっ。菜乃ちゃんって呼んでいい? 去年も時々見かけてたから知ってるよ」
もう一人も続けて私に話しかけてきた。
「うんうん。桜子をすごいスピードで縛っていくのマジでビビったわ。でも菜乃が縛られるとこ見たことなかったから今日ついに見れたって感じ!」
「マジそれー! あはは」
どうして関係ない二人が桜子ちゃんに協力しているのか、今の話で何となく分かった気がする。
いつも縛る側の私が縛られている姿を見てみたい。そういった嗜虐的な興味本位が吊り上がった口角から滲み出ているようだった。
桜子ちゃんが自分の机の中から一枚の紙を取り出した。
「これ、首から掛けてあげる。『わるい子はんせー中♡』ってね。イジメだと思われたら困るし」
紙に繋がった凧糸を私の首に回し、うなじの所で結びつけられる。
「うんうん、いかにも罪人って感じ。わるい子の菜乃にピッタリ」
やめて。こんなことしないで。お願い、許して……。
縄の締め付けが苦しくて早く解放してほしかった。だけど桜子ちゃんはニヤニヤと笑うばかりで縄を解いてくれようとしない。
「じゃあ桜子ちゃん、アタシら部活に行くね。これからどうすんの?」
「完全下校の時間まで図書室で本でも読んでよっかなぁ」
「てことは菜乃ちゃんはしばらく晒し者か。あはは、かわいそー」
やだ! こんな格好で何時間もムリ! 人に見られるのも恥ずかしくて耐えられない……!
「じゃあね、菜乃♡」
「んうううっ! うううううううっ!!」
私の声は言葉にならず、桜子ちゃん達を呼び止めることは叶わなかった。
周りの視線が鋭い針のように突き刺さる思いで、拷問にも等しい放置状態を数時間耐え抜くことしかできなかった。
かし
2025-04-05 15:05:57 +0000 UTC