月曜日から、なんて濃い一日だったんだろう。
たった数日で、自分の中の何かがごっそりと削り取られて、代わりに知らないものを詰め込まれてしまったみたいだ。
今もまだ、肩や胸に残る赤い跡がひりひりと主張している。ブラの痕。
細い線がまるで刻印のように浮かんでいて、喉が詰まった。
普段、平日はシャワーだけだが、今日は浴槽にお湯を張る。少しでも気分転換したかった。
しかし、湯気に包まれながら、瑠衣と真帆の顔が浮かぶ。彼女たちの甘い命令が、耳元で響くように蘇る。
それに、千尋の笑顔も……。「楽しかったです!」と手を握ってきたときの声が耳に甦り、胸がずきんと痛む。
(千尋ちゃん……信じてるんだ……僕が“女の子になりたい”なんて……)
必死で否定したいのに、口に出す言葉はもう“女の子口調”になってしまっている。
お湯に沈めた耳の奥で、自分の声がぐるぐると反響して、心をかき乱した。
◆
お風呂から上がると、濡れた髪をタオルで拭きながら、すぐに思い出す。
――瑠衣と真帆の命令。
『帰ったらすぐ実行してね。感想は明日、ちゃんと報告してもらうから』
その声がまだ生々しく残っている。
仕方なく、袋から取り出したのはプリーツスカートと白いトップス。
さっきまで新品だったはずなのに、今はもう“女の子の衣服”として僕を縛る道具にしか見えない。
腰に沿ってぴたりと吸いつくスカートの布地が、肌の温もりを奪っていく。
(……やっぱり似合ってる、って思われるんだろうな……あの二人に見せたら……)
心の中で言い訳みたいに呟きながら、けれど言われた通りに鏡の前に立った。
命令は一つ。
女装姿で鏡の前に立ち、チンコを触らず、乳首を弄る。
「……っ」
躊躇いながら、トップスの布越しに胸へ指先を伸ばす。
初めはただの皮膚でしかなかった。
何も感じない。少し押しても、指を滑らせても、ただそこにあるだけの場所。
でも、少し強くつまんでみた瞬間、背筋がびくんと震えた。
「っ……」
思わず声が漏れる。
痛みとくすぐったさが入り混じり、胸の奥に微かな熱が芽生えた気がした。
鏡の中には、女物の服を着て胸を触っている“僕”が映っている。
いや、“僕”ではない。
頬を赤らめ、戸惑いながらも指を止められない女みたいな人間がそこにいる。
自分なのに、まるで他人を覗き込んでいるようで、心臓が早鐘を打った。
◆
「……や、だ……こんな……」
情けない声が口を突く。
それでも命令に背くことはできない。
乳首を指で擦り、爪で軽く弾くたびに、ちくりとした刺激が電流みたいに広がっていく。
最初はただの違和感だった。
けれど何度も繰り返すうちに、少しずつその違和感が快感へと変わっていく。
くすぐったさが心地よさに変わり、気付けば呼吸が荒くなっていた。
(……こんな、気持ちよくなるなんて……!)
羞恥と背徳感に押し潰されそうになる。
それでも、鏡に映る姿を確認しながら指を止められない。
スカートに包まれた下半身は熱を帯び、チンコはギンギンに勃起していた。
触りたい。握りしめて、全部吐き出したい。
でも、それは禁じられている。
思い出すのは瑠衣の声――「普通にオナニーするのは禁止」。
命令に従わなければならない現実が、さらに欲望を募らせていく。
◆
時間の感覚がどんどん曖昧になっていった。
白のトップスは脱ぎ捨て、片手で乳首をつまみ、もう片方で軽く叩き、交互に刺激する。
痛みと快感の境界線が溶け合い、頭がぼうっとする。
耳の奥で血の音がどくどくと響き、足が小刻みに震える。
「……っ、あ、あぁ……」
耐えきれず声が漏れ、唇を噛んで抑えようとする。
もし誰かに聞かれたら――そんな想像だけで、さらに下腹が熱を帯びた。
時計を見れば、もう30分以上が経っていた。
乳首はぷくぅっと膨れあがり、少し触れるだけでもビクンと反応してしまう。
それでも射精には至らない。
勃起したままのチンコがスカートの下で暴れ、吐き出すこともできず、ただ疼き続けていた。
鏡の中の僕は、頬を紅潮させ、女みたいに喘いでいる。
その姿を見た瞬間、背徳感と同時に恐怖が胸を掴んだ。
(本当に……女の子みたいに、されていく……!)
ぞっとして、足がすくむ。
でも同時に、乳首からの甘い刺激がやめさせてくれない。
◆
結局、何も出せないまま、僕は膝から崩れ落ちた。
スカートの裾を握りしめ、荒い息を吐く。
火照った胸と、疼き続ける下半身。
命令に従った安堵と、果たせなかった欲望の渇きが胸でせめぎ合う。
「……はぁ……はぁ……」
額の汗を拭いながら、ようやく立ち上がった。
鏡の中に映る、女装姿で悶える自分。
その異様な姿から目を逸らすように、紙袋を開いた。
着替えたのは、今日買ったばかりのふわふわしたモコモコのパジャマ。
白色の生地が肌に柔らかく馴染んで、妙に安心する。
(……これも女物なのに……なんで、落ち着くんだよ……)
自分の感覚の変化が怖くて、思わずシーツをぎゅっと握りしめる。
布団に潜り込むと、乳首のじんじんがまだ消えず、寝返りを打つたびに擦れて刺激になる。
瞼を閉じても、鏡の中の“女みたいな僕”が頭から離れない。
(……明日、ちゃんと報告……しなきゃ……)
瑠衣や真帆の顔を思い浮かべながら、また小さく震えた。
千尋にだけは知られたくないのに、隠している秘密はどんどん膨れ上がっていく。
羞恥と快楽の余韻に縛られたまま、僕はようやく眠りへ落ちていった。
【11章へつづく…】
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