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桜梅桃華@女装・TSF小説
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ぼくはみんなのお人形:1

“可愛い”の作り方を覚える日々

クラスの女子にからかわれて女装させられるのは、もう慣れた――そう思っていた。

けれど、それは僕の日常が“おかしい”と気づけなくなるほど、長い時間をかけて積み重なってきたものだ。


僕の名前は 藤岡 蒼(ふじおか あおい)。

十五歳、高校一年生。背は小さく、顔立ちも中性的で、昔から「女の子みたい」と言われ続けてきた。


男子の中ではそれなりにうまくやれているつもりだった。けれど、その容姿を面白がったクラスのカースト上位の女子たちからは、ずっと嘲笑の的にされていた。


その中心にいるのが、金髪のリーダー格・水瀬 美咲(みなせ みさき)。

明るく強引で、美貌とカリスマを兼ね備えた彼女は、学校中でも注目の存在だ。


隣にいるのは、派手な見た目と毒舌キャラが印象的な高城 沙羅(たかしろ さら)。

強気な言葉とは裏腹に、実はかなりの資産家の娘らしく、その余裕がどこか人を見下ろすような笑みに滲んでいる。


そして、トレンドの最前線を生きる成瀬 陽菜(なるせ ひな)。

フォロワー1万人を超えるインフルエンサーで、スマホ片手に、裏垢では僕の羞恥を“コンテンツ”に変えていく。



もちろん、他の女子にもからかわれることはある。

けれど、僕を“おもちゃ”として弄んでいるのは、この三人が中心だった。



入学して間もない頃、始まりは小さないたずらだった。


「蒼ってさ、女子に混ざっても違和感ないよね」

そう言った美咲が、リボンカチューシャを僕の頭に付け、スマホを構えた。

教室は笑いに包まれ、僕は顔を赤くしたまま固まるしかなかった。

けれど、その日の放課後――「もっと可愛くしてあげる」と強引に呼び出され、それから僕の裏の日常が始まった。



美咲の家に連れていかれると、待っていたのは整然と並んだ化粧品。

その光景を見ただけで、胸がきゅっと縮んだ。


「男子とか先生にバラしたら、もっとヤバいことになるからね。女子全員にあることないことウワサを広めて、学校にいられなくなっちゃうよ。だから絶対秘密」


美咲が笑いながらそう告げる。

脅しのような言葉に、僕には逃げ道なんてなかった。


「ちゃんとやり方覚えなきゃダメだよ。次からは自分でやるんだから」

沙羅が口を出す。


「えっ……次って……」

返す言葉もなく、僕は椅子に座らされる。



「はい、じっとして。まずはベースメイクからね」

美咲の手に握られたクッションファンデのパフが、冷たく頬に押し当てられる。


ぽんぽん、と小気味いい音とともに、ひやりとした感触がすべすべと広がり、肌の赤みや毛穴が隠れていく。

まるで本当に“女の子の肌”になっていくようで、気が気じゃない。


「わ、やっぱり蒼って女子より映える」

沙羅が感心したように呟き、陽菜はスマホを構えて「これはガチで盛れる〜」と笑う。


羞恥で耳まで真っ赤になるのに、褒められた言葉が胸の奥をかき乱した。


「次はアイメイクね」

ブラシで乗せられたアイシャドウは、淡いベージュから濃いブラウンへと丁寧にグラデーションを作っていく。

まぶたにしっとり粉が重なり、視界がぼんやり色づく。


「アイラインは茶色が可愛いよ。黒だとキツすぎるから」

沙羅がペン先を滑らせると、目元がきゅっと引き締まった。


涙腺に近い部分がちくりと痛み、思わず瞬きをすると、

「泣かないで。これくらい普通だから」

小さく笑われ、唇を噛む。


さらに、黒目の上下にラメを置かれると、視界の端がきらりと光った。


「涙袋はぷっくりさせたほうが映えるんだよ」

薄茶色のペンシルでなぞられた下まぶたが、ふっくらと立体的に浮かび上がる。


「はい、ビューラーで上げて……まつ毛長っ!」

まつ毛を挟まれる瞬間、金具がまぶたに触れてひやりとした。


カチ、カチ、カチッと三段階に音がして、視界が大きく開ける。

さらに黒のマスカラが塗られると、まつ毛がバサッと広がり、目元が別人のように派手になった。


「チークは……赤系にしようか。蒼の骨格だと少し縦長に入れようかな」

頬にぽん、とブラシが触れた瞬間、粉のざらりとした感触が広がり、熱でじわじわ溶け込むように赤みが増していく。


さらに鼻筋や頬骨にハイライトをのせられると、光を反射してつやりと輝いた。

顎のラインにはシェーディングが入れられ、輪郭までもが細く見せられていく。


――男のはずの自分の顔が、段階的に“整形級”に変わっていく。


最後に塗られたのはリップグロス。

とろりとした液体が唇に重なり、ねっとりと張りつく。

甘い香りと味が舌先に広がり、思わず息を呑んだ。


鏡に映ったそこには――艶やかに光る唇を持つ、“女の子”がいた。

もう僕じゃない。

藤岡 蒼という男の輪郭は、完全に塗りつぶされていた。



「服は……そうだな、今日は私の制服の替えを貸してあげる。汚さないでよ」

美咲に言われ、制服のスカートに無理やり着替えさせられる。


「私の制服、ぴったりじゃん!ちょっとショックなんだけど」

陽菜が笑いながら動画を回す。


「ほら、スカートもっとひらひらさせて歩いてみて」

命令に従って腰を揺らすと、布が太ももに当たってぞくっとする。


「そうそう、それ!」

笑い声とスマホの動画撮影音。羞恥に全身が焼けついた。


「もう完全に女の子だね、蒼ちゃん」

沙羅が小さく笑う。


否定したいのに――確かにその通りで、否定する言葉が見つからない。


その日から、女装を繰り返す着せ替え人形の毎日が始まった。


制服、私服、コスプレ。その都度メイクも変えられ、やがてウィッグも用意されるようになった。

繰り返すうちに、知識も技術も身についてしまった。


ファンデーションの重ね方、アイロンの温度調整、ストッキングの履き方。

男子の僕には一生関係ないはずのことばかり。

それを覚えてしまった自分が、何より恥ずかしかった。


「もっと笑って。写真撮るから」

パシャ、と音が響く。


「男子に見せたらどうなるかな?」

陽菜の冗談めいた脅しに背筋が凍る。


誰にも言えない。

言ったら、本当に終わりだ。



それでも日常は続いた。

羞恥に震えながらも、抜け出せない。

もう、それが当たり前になっていた。


そしてある日、美咲が笑った。


「ねぇ蒼。部屋の中だけじゃ、つまんないよね?」

嫌な予感に全身が固まる。


「外に出てみよっか。だって似合ってるんだから」

告げられた次の命令は――


『ロリィタファッションで地元の商店街に行くこと』。


血の気が引くのを感じた。


(そんなの……絶対無理だ)


けれど逆らえない。

僕の逃げ道は、最初からどこにもなかった。


【2章へつづく…】

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Comments

ちょっと夢のような世界です ウラヤマの方で

いいな


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