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メグリム・ハルヨ
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【全体公開】ネクロテック・コメンタリー1

アルゲンタ・アルゲントルムを出すときにちょっと気合を入れ過ぎたとか、その後褪せ人となって狭間の地を元気に駆けまわっていた等の理由で更新が完全に途切れていました。6月はもっと更新があります。が、その前に。


SNS上で垂れ流してたけどまとまってなかったネクロテック・コメンタリーについてまとめて参照できるようにする必要を勝手に感じたので、コメンタリーされてなかった分も含めて文章にして残しておこうと思います。勝手に。これがその初回。


はじめに:

初回は何をするのか。

今回はこれまでに出た12冊+電子オンリーの2冊のタイトルについての話と、初作『ネクロテック・エンジニアリング/Necrotech Engineering』の本文コメンタリーをします。特に後者は10年前の本なので、いい加減書かないと当時のことそろそろ全部忘れそうなので。

物理書籍、またはネクロテック・アーカイヴスをお手元に読んでいただけると分かりやすいかと思います。

今のうちに言っておくと今回は全体公開ですが二回目以降は支援者限定になります。

また、基本的には「元ネタはこれだ」という話なので外部リンクいっぱいです、ご注意ください。



第一期、2012年5月~2014年5月:

①『ネクロテック・エンジニアリング/ Necrotech Engineering』

本作の後書きにて「素材の少女たちを敢えて死体と断じるためにネクロテック(necrotech、死-技術)の名を冠しました」と書いていましたが、そもそもこのネクロテックという言葉はどこから出てきたのか。

これです。

あとついでにマスターネクロテックという言葉もこれです。

Privateer Pressという会社が出しているWARMACHINEというミニチュアゲームに出てくるアンデッド機械軍団のキャラ名を……え、そのままもらったってこと?だって響きが格好良かったから……最初期のネクロテックは割とこの会社のミニチュアの造形の影響をモロに受けています。

一番最初の一冊にして、このまま続くかどうかも分からなかったのでストレートなタイトルになっています。大事なのは、生きた人間の尊厳を奪わない屍体加工物だということを主張するための「ネクロテック」という言葉選びであり、「エンジニアリング」なのも彼女たちは製作者がいて意図と機能を与えられた人工物だ(悪意や玩弄ではない)、という主張だということです。



②『フラッドレッド・インダストリ/ Floodred Industry』

一冊目が思ったより好評だったので調子に乗って同じ年に早速二冊目を出しています。「インダストリ」は前作がエンジニアリングだったので何か……あ、今回は数が増えたし産業だな!ということだったと思います。何故「インダストリー」じゃないのか、それはニンジャスレイヤーのせいじゃないですか?

(※当時の職場は日により待機時間が非常に長く、ヘボいスマホでニンジャスレイヤーを読むのが救いになっていました)

「フラッドレッド/floodred」については、Barren Earthというフィンランドのプログレッシブ・デスメタルのバンドのまんま「Floodred」という曲から取っていました。たまたま表紙に赤い紙を使いたかったところに、好きな曲としてこれがあったのでピンと来て採用した感じです。

その曲自体は公式動画がなかったので、とりあえずBarren Earthが概ねどんな感じのバンドか分かりやすい曲を貼っておきます。


なお、ここで赤い紙の表紙を選択したことがその後にも影響を及ぼします。




③『レストレス・アセンブリ/ Restless Assembly』

後書きで「飽きさえしなけりゃ同じような本を三冊も作れるッスね~」と舐めた口をきいていたわし(24)。まだ10年続くと思ってなかった頃。

エンジニアリング→インダストリ→と来たら次はどうしよう、じゃあ組み立てかなあ、ということでアセンブリに。

これはハッキリと覚えていますが、アセンブリありきでじゃあその前に何をつけようかなと考えた結果、当時ノルウェーのジャンルが……プログレメタルなんだかオルタナなんだかよく分からんバンドLeprousの2ndアルバム『Bilateral』を聴きまくっており、その中に「Restless」という曲があったので、これだ!!となりました。


しかし格好良い曲に対してやたら変なPVである、この時と今とでメンバー半分以上違うんじゃないか???ともかく、Leprousはその後どんどん凄いバンドになっていくんですけど、1st2ndも良いですよ(ただの個人的なおすすめ)。


本作の表紙は青(というか水色か)になりましたが、これは、赤を使ったら次は何?と考えた際、イギリスのプログレッシブロックバンドKing Crimsonが80年代に出したアルバム『Discipline』『Beat』『Three of a Perfect pair』が赤→青→黄のジャケットだったのでそれにあやかろうと思ったからです。ググれば見れます。

断じて信号機ではありません。



④『マカブル・アーキテクチャー/ Macabre Architecture』

上記の事情により最初から表紙に黄色の紙を使うことだけが決定していました。このときの「黒箔」は格好良く、今でも非常に気に入っています。

アセンブリの次はどうすんだよとなり、勝手に工業……組み立て……からの~?という縛りの意識が生じ、かなり悩んでアーキテクチャーにしました。今にして思えばあんまり関連性がないというかちょっと違くない?という気はします。


じゃあマカブルは?死の舞踏(ダンス・マカブル)?いいえこれもバンドネタです。

スウェーデンのプログレバンドAnekdotenとLandberkの人達が一緒になってホラー映画の曲のプログレカバーをやるという謎ユニットMorte Macabreから取りました。こじつけではありません、本当です(勝手にバンド縛りで付けなきゃと思ってたので)。


ルチオ・フルチの『地獄の門』というグロホラー映画のメインテーマ曲(ファビオ・フリッツィ作曲)は元々ごっつ良いのですが、北欧プログレ化したことでさらに荒涼とした格好良さが加わり強くなっています。


後書きを読むと、ここで三部作が終わって次はどうしようかな的な空気を出していて片腹が痛い。次もネクロテックを描くんだよお前は!!



⑤『プロステティック・ミンサーズ/ Prosthetic Mincers』

ここまで音楽の話ばかりしていますが、残念ながら次もプログレだ!


このときは、このMincer(細切れにするもの)という単語ありきでタイトルを考えました。King Crimsonにあやかって赤青黄とやったので、今度はちゃんとタイトルに使おうと思ったんだったはずです。

ちなみに上遠野浩平の『ビートのディシプリン』にこの曲を元ネタとするザ・ミンサーというキャラが出てきますね。ビートのディシプリンはタイトルの時点で二つもKing Crimsonネタを使っているのでズルい。私がロックやメタルのバンド名や曲名ばっか元ネタに使うようになった原因は八割くらい上遠野浩平です(荒木飛呂彦を読むようになったのが結構遅く、ブギーポップシリーズに先に触れていたため)。


プロステティック(Prosthetic)=補綴の・義手や義足といった人口装具の、という単語はそれこそ何となくだったと思います。ネクロテックの始まりには三浦悦子女史の球体関節人形があったことは再三言っていますが、彼女の昔の人形はそれこそ義肢を装着していて、そのことによって出来上がる異形のシルエットがとても格好良かった。そういう気持ちを込めています。

後書きを読むと、この辺でようやく「もしかしてこれをずっとやっていくのかな」という覚悟が決まり始めている。


……なんか思ったより長くなってきたので第二期、第三期のタイトルについてはまた記事を分けます。無計画。


ネクロテック・コメンタリー:ネクロテック・エンジニアリング


ここに辿り着くまでが長かった。

昔過ぎて書けることが少ない筈なので手短に行きたい。


一体目:屑肉の迎撃者/ Junk MD

先日リメイクのために見返して「エグいな、こんなエグいのを一ページ目にしたのか俺は」とびっくりしました。こんな感じでどうですか?くらいの気持ちでコミティアに出しておきながら、実際にやっていることからは「やったるぜ!」という気合を感じますね。良いことです。

死体をただ単にユニット・素材として見做すというこれ以上ない実例なデザインをしているので、実際一体目に置くのは正しい。迎撃ミサイルを打ち切るとあとは敵に体当たりするしかない使い捨てのやつ、というコンセプトだったと思います。

そういう意味で、こないだのリメイクは全然継戦能力がありそうだった。この頃のジャンク感は、逆に今はかなり頑張らないと出せません。この差ですよ。





二体目:血塗れ人鳥Ⅱ/ Sanguine mk-2

軽ネクロテック的なものすべての基礎になった一体ですね、あまりにもよく出来ており、今でもお気に入りです。いや本当、これはいまだにネクロテックをやるにあたってこれくらいの軽さか、もっと重くするかの基準です。

初作からいきなりmk-1がいないのにmk-2を出すことで世界観に広がりを出してやったぜというドヤ顔が目に浮かぶ。でも理由はそれだけではなく、まだ学生だった時に作ったプレ・ネクロテック本に無印の「血みどろ人鳥」というのがいて、それの意匠を一部流用したからmk-2なんだ、というつもりもあった。誰も知らねーよそんなの。


三体目:漿の塔の狩猟者/ Stalker of Plasm Tower

体型がまんまネクロモーフやな……いや確かこの娘はかなり本作りの後期に数合わせで描かなきゃってひねり出したからこうなったんだった。まんまネクロモーフだけど割とかわいいので許す。あとこのページで、この後も長くお世話になるキャラクターであるマスターネクロテックのカッシウス・デラモルテが初登場しています。

デラモルテは『デモンズ'95』という映画の主人公から、カッシウスはなんかイタリア人っぽくて古風な名前というだけで決めましたが、後々Cassiusはラテン語の語幹的にはcassus(empty, hollow, lackingの意)から来ていると知り、たまたまなんだけど上手くやっていた。


四体目:クスの錆術師/ Kuthin Rustmancer

まだ世界観が固まってないデザインになっているが、それもそうだよこの娘はネクロテック始める前に描いてたやつだから。

罫線が入っているのは、ルーズリーフに描いたのを取り込んだからです、つまり後々本に載せるとかも考えないで描いてた娘でした。つまり流用じゃん。初作ネクロテック・エンジニアリングには一部そういうところもあります。


五体目:鍍金森の人馬/ Centaur of Plate-trees

これもネクロテック前に描いたやつをそのまま使っているので、練り切れてない。

腕無しのデザインはこのあともずっっっっとやっていくので、そういう意味では大事な一体か。腕の断面がそのままなのは、今はほとんどやらない表現。


六体目:惨禍を見つめるもの/ Atorocity Gazer

七体目:鋭き目の気球/ Shapen-eyed Baloon

謎の風船シリーズ。この二体も、今では出せないジャンク感を強く湛えていますね……。最初期のネクロテックは当時の趣味でローテク兵器感をわざと持たせていて、それが上手くハマっているのではないか。今見ても良いな。ただの感想になっとる。


八体目:閾値のデーモン/ Daemon of Threshold

九体目:閾値のドラゴン/ Dragon of Threshold

これはドラゴンの方がネクロテック以前に描かれていて、シリーズ化するためにデーモンの方を後から描いたパターンだった。固有の特徴は、結果的にその後閾値シリーズが続かなかったので私にも分かりません、多分球体関節をフィーチャーしているのと、角かな……。かなり明確に"グロおしゃれ"路線を意識しているとは思う。


十体目:甲殻の乱暴者/ Crusty Brute

これもネクロテックとしては描いていなかったやつを組み込んだ一体。素材感が周りとだいぶ違いますが、こういうのも入っていたおかげでその後の屍体溶接に良い感じの「幅」ができたと思うので結果オーライです。

見返したらパンタグラフっぽいパーツが良いなと思ったんですが、その後のネクロテックはローテク感が薄れていくのでこれきりになってしまった……アイディアを再利用したいですね。


十一体目:古びた運搬者/ Shaky Carrier

非常にストレートなクモ四脚で、でもこの時点ではこういう感じが私の中での一番ストレートなネクロテックでした。このようなジャンク感&安定感は、繰り返しになるけど今では珍しい。私があんまやらないからネクロテック・エンジニアの新規参入者がどんどんこっち方面を開拓してくれると私が助かる。


十二体目:マンティコアの慰み者/ Manticore Amuser

これはこの次の死せざる毒が先にあって、その「廉価版」というイメージで描かれた一体です。サソリと見せかけてヤゴとハサミムシの合成です。「慰み者」なのにあどけない顔とゴツい顎にギャップがあり、露骨に危険そうなのも安価だからという意図だったはず。


十三体目:死せざる毒/ Immortal Poison

これもネクロテック以前。かなりのお気に入りで、というのもハンス・ベルメールの人形ファイレクシアの融合というコンセプトが上手くまとまったと自負しているからです。頭部や腹部で伝わるでしょうか。

そういったデザイン上の要請から結果的にサソリのような体型になったと記憶しています。

これが上手くまとまったからこそ「一連のネクロテックというジャンル」としてもやっていけるぞと思えたフシはある。せっかくだからこれも載せちゃおう。



十四体目:大鰐通りの人攫い/ Kidnapper of Crocodile Street

十五体目:大鰐通りの踏破者/ Trampler of Crocodile Street

ブルーノ・シュルツという作家の「大鰐通り」という短篇小説があり、その翻案のクエイ兄弟の『ストリート・オブ・クロコダイル』という人形アニメーションもあるんですけど、そこから取られた名前の二体です。

ブルーノ・シュルツの小説の中でも「マネキン人形論」で“チープな素材、その肌理を愛すること、不完全な創造をこそ行うべきであること”が語られておりそれに非常に共鳴したというのがひとつ。

そして、シュルツの作品全般が現実を作者のひずんだパースペクティヴで語り直すような様式になっていて、これにネクロテックの製作態度は大きな影響を受けているというのもあります。

同様に、『ストリート・オブ・クロコダイル』の無生物は生物のように、人物は機械のように動き死肉が蠢動する、コマ撮りによって偽造された時間の流れの感覚もまた、ネクロテックはこういう風に動くんだろうなというイメージの元の一つになっています。

……というようなリスペクトを込めての大鰐通り。その後も大鰐通りシリーズはいるんですけど、ネクロテックの世界観内でどういう位置づけなのかは未だに設定がありません。


十六体目:よた姫様/ Waddling Princess

最終ページ掲載、この本を作る際にも一番最後に描かれた娘。

重厚な四脚型はすでに何度も描いてるなと思い、パーツを削減した軽四脚型にしようとした……はず。ちょっと頼りなさげなシルエットになったので、よたよた……となんかギャップのあるもう一要素を、ん?ツンお嬢様的な顔になってるな、じゃあ姫でいこう姫!そんな感じで決定された名前でした。

ナンバープレートにはIGNORABIMUS(我々は知ることはないであろう)の文言がありますが、これはブルーノ・シュルツの「春」という小説の中で引用されていたフレーズなので入れただけで不可知論は特に関係ありません。



長かった、今回は以上です。

タイトルの話は次回に続きます。

何かの参考になるような話ではなかった気がしますが、皆様もよき溶接を……


メグリム・ハルヨ



PS:プレイステーション5が当たり、その結果ファイナルソードを遊んでいます。普通に楽しくないですかこのゲーム……

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