第二回は何をするのか。
前回書ききれなかった、6冊目以降のネクロテック本のタイトルの元ネタや当時考えていたことのお話を今回で全部やります。今回も全体公開。
引き続き「元ネタはこれだ」という話なので外部リンクいっぱいです、ご注意ください。
⑥『ブラック・ダリア・イモータル/ Black Dahlia Immortal』
前作『プロステティック・ミンサーズ』は赤青黄色三部作も終わって何となくこう、模索中というかコンセプトを見失ってる部分があったので、ここいらで心機一転ボリュームあるやつ、"第二期"の始まりになるやつを作らねば、と気合を入れ直していたはずです。だから17体収録。
内容的にも、この本から描き込みが1レベル上がっていると思います。
あとこの前年の冬に結婚したのもあってそういう意味でも第二期でした。
タイトルの元ネタはかのブラック・ダリア事件……ではなくて、それがバンド名の元ネタなアメリカのデスメタルバンドThe Black Dahlia Murderと、スウェーデンのプログレッシブ・メタルバンドOpethの曲、「Black Rose Immortal」の合成です。元ネタの元ネタみたいなよく分からんことになってきた。
The Black Dahlia Murderは先日ボーカルの方が亡くなってしまったのでこんな形でとはいえ肖(あやか)った者としては残念です……。
あとOpethの「Black Rose Immortal」は彼らの初期の作品で20分あるプログレッシブデスメタルです。上のThe Black Dahlia Murderの曲とは毛色が全く違い、荒ぶるパートと妖しくも静謐なパートを切り替えながら展開していく美しい曲です。
個人的に滅茶苦茶好きな曲だったので、タイトルはBlackなんちゃらにしたいな……ブラック、う~ん、ブラックダリアマーダー、ブラックローズ……あ、くっつけりゃいいか、となったときのテンションの上がり具合は結構なものでした。
Opethはこの後傑作を出しまくりながらデス要素が無くなっていくんですが、相変わらず曲がエロいのでみなさんも聴いてください。『Blackwater Park』『Ghost Reeveries』『Sorceress』あたりから入ると良いのではないか(ただの布教)。
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⑦『ネクロポリス・アリス/ Necroplis Alice』
『ブラック・ダリア・イモータル』がなかなか満足いく出来だったので、その路線を継続しています。この辺りから既婚になって引っ越したので年二回秋田から東京くんだりまで出ていくのがキツくなり年一発行になる。
上でNecropolisという曲を貼るという伏線がありましたが、じゃあこれの元ネタは?というと全然違ってメタルではなくて、ALI PROJECTの「メガロポリス・アリス」という曲です。引っ張ってこれる合法な動画がなかった。
かなり初期楽曲ですが『Deja Vu~THE ORIGINAL BEST 1992-1995』というまさしく初期楽曲再録ベストで聴けます。この頃はニューウェーブポップ(なのか?)全開だったので、後のアニソンで有名になった後の曲しか知らないとビックリするかもしれない。
個人的にALI PROJECTはタイアップ用のアップテンポな曲よりもアルバム収録曲のバラエティ豊かさが好きなので、なんだかんだんでオリジナルアルバムを出し続けてくれてマジサンキューと思っています。
音楽の話しかしてないな。
紙の本で本作をお持ちの方は、表紙の箔押し何か他よりデカくない?と思われたかもしれませんが、はい、デカいです。寸法間違って本来の予定よりもワンランク上の料金になりましたが、それもいい思い出、それも人生の修行さ(註:少年、グリグリメガネを拾う)です。印刷所からはちゃんと連絡来たんですけど、データ差し替えが面倒くさくて「ま、いっか」となりました。
あと、本作からオンライン入稿を利用しており、また原稿データのdpiが350から600に上がりました。紙だと顕著ですが線がシャープに出るようになり良かった。何故最初から600で作っていなかったのかってそれは……マシン性能が……(この頃に前よりちょっとだけマシな性能のノートパソコンを譲ってもらったんでした)。
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⑧『ダイイング・ファイア・コンソーシアム/ Dying Fire Consortium』
この頃お昼の仕事がわりとこう……諸事情により毎日3時間以上残業してたり月末は帰れるの午前1時だったりみたいな環境になってて、半年以上準備期間があったはずなのに9体しか収録できなかった暗黒時代。でも見返しても収録されている娘たちのデザイン自体は他と遜色ないのでそこは救われている。
そんな調子だったのでこれを作ってた時の記憶がほとんどなく、書けることがない。
タイトルもなんかこう、直接元ネタになる楽曲をどうしても見繕うことが出来なくて、最愛のゲームシリーズであるダークソウル的な文言として「死にゆく炎」という言葉を入れたんじゃなったかなということしか言えません。
そもそも、この本が出た2016年にはオーストラリアのメロディックデスメタルバンドBe'lakorの『Vessels』、そしてスウェーデンののメロディックデスメタルバンドIn Mourningの『Afterglow』というアルバムが出ており、二枚ともジャケ含めてダークソウル指数(特にダークソウル3)が非常に高かったんですよね。そういうことが影響していたと思います。
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⑨『スカー・クイーンダム/ Scar Queendom』
このころ昼のお仕事の状況が好転し、私たちを殺さないものが、私たちをより強くする(Was uns nicht umbringt, macht uns stärker)という空気が醸成されていたのだと思います。このタイトルには明確に四つの元ネタがあり、順番に説明します。
1.
まずscar、傷痕という単語を使うことを選んだきっかけはアメリカのロックバンドMarilyn Mansonの「Leave A Scar」という曲から。「Whatever doesn't kill you is gonna leave a scar(殺されなければ傷跡が残る)」という歌詞が冒頭のニーチェの文のもじりになっているんですが、それは後々気付いたことであって。
Marilyn Mansonにしてはストレートな曲調に感傷的な歌詞(一緒にいれば傷付け合うしかないけどそれが俺とお前なんだよなという関係性についての)が乗ってるところがお気に入りの曲で、scarという単語をまず入れたい、と。
2.
Scar在りきで考えていったところ、アメリカのテクニカルデスメタルバンドFallujahがこの前年出していた『Dreamless』というアルバムにズバリ「Scar Queen」という曲があるじゃないですか。じゃあこれ、となりまして。
3.
でもScar Queenでは個の名前であって本のタイトルにならないな、というところにまたALI PROJECTのベスト盤『QUEENDOM』があったじゃん、ということで形になりました。
4.
そして最後に、Scar Queendom、傷痕の女王国というタイトルになった段階でもう一つ私の中で重なってきたものがあって、それが無印アイカツ!ラストシーズンの「いばらの女王」という曲でした。
これがアニメの中どういう文脈で出てきた歌なのかという話になるとあまりにも長い脱線になるので書きませんが、「傷痕の女王」という言葉にこの曲が私の中で深く結びついたんですね。
傷だらけであることを受け入れ隠さないこと、致命傷を負っても「だったらなんだ?」と死なないモノであること、脆弱さそのものをも丸ごと飲み込んで成立する強さ。そういったものは多分ネクロテックに最初からあったんですけど、この辺りから自分の中でも明確に主題としての輪郭を持ち始めたと思います。
これが(あくまで私個人の中で)最後の重要なピースだったので、スカー・クイーンダムの最後に"表題作"として描かれた傷痕の女王は、この曲の持ちキャラである氷上スミレの顔を与えられています。気付いていましたか???
こうして書いてて思ったんだけど思った以上にこのスカー・クイーンダムは重要作品だったかもしれない。このあとさらに続編のアイカツスターズ!に重篤な影響を受けてネクロテックはさらに進化したと個人的には思っていますが、一体何の話か誰もついてきてない気がするのでこの辺にしておきます。
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⑩『ペール・ムーン・ペインフル/ Pale Moon Painful』
……というような感じでスカー・クイーンダムでガンギマってしまったので、その次はちょっと緩くやろうということを……意識して考えていたわけではないんだけど、無意識にそうしていたのがペール・ムーン・ペインフルだったと思います。
当時のツイート曰く『ペール・ムーン・ペインフルはもちろんOpethのPale Communion、LISA: the Painful、青ざめた血(paleblood)、月の魔物、月のドレス、そして右手首をねん挫した俺の痛み(pain)からきています』とあり、まあ大体そんな感じです。
ちょっとだけ説明するか。Opethは上でも出てきましたが『Pale Communion』は2014年のアルバムで「Black Rose Immortal」が1996年なので18年ぐらい期間が開いています。
Opethの楽曲はこの20年近くの間に幽玄さはそのままにデスメタル要素が無くなりヴィンテージ感、怪しさ、セクシーさなどが混然一体となったプログレッシブロックに変容していました。
↑はアルバム収録曲ですが、Moon Above, Sun Belowってタイトルは騎乗位っぽくてエロいと発表当時からずっと思っています。
『LISA: the Painful』はインディーゲーのRPGです。
天変地異により文明崩壊かつ女性だけが死滅、緩やかに滅んでいくだけになった世界は破滅的傾向のオッサンだらけになっていた!かつて妹が実父からの性的虐待を苦に自殺したことに何もできなかったのがトラウマになっているヤク中の元拳法家中年男性ブラッド(ハゲ)。ある日存在しないはずの「女の赤ん坊」を拾い、バディと名付けて親友たち以外には一切隠してこっそり育てていたが、バディがだいぶ育った頃どこからバレたのか留守中に攫われてしまい、彼女を取り返すために旅立つが……というお話。
画像検索していただくと分かるんですが、画面こそユルめのドット絵なんですけど、ただ只管に主人公ブラッドの「生きることの痛み」に向き合わされる物凄いゲームです。steamで1000円くらいだし簡単に日本語化できるので機会があれば是非やっていただきたい。サントラもイカレてて最高にクール。
青ざめた血(paleblood)、月の魔物はもう私が書くまでもない2015年の傑作ARPG『Bloodborne』から。
月のドレスはこれです。
これはもう全然ごく一部の人にしか伝わらない話だと思いますがアイカツスターズ!を観ていて白鳥ひめというキャラクターへの私の目線は完全に畏怖とか怯え、ヤバい近付くと殺される!!みたいなものになっています。
でも学園長と一緒に出て来ると学園長が遮蔽物になってくれるので耐えられます。
⑪『プレデタリー・デュアリティ/ Predatory Duality』
この記事いいかげん長くない?簡潔にいきます。
プレデタリー・デュアリティは個人的に声掛けして了承をもらった方々のゲスト・ネクロテックが載ってるんですけど、ゲスト原稿を入れようとなった時点で「どうせならゲストぶんを半ばに配置して、第一部第二部って感じでやれないかな?」と思いました。単に第一部第二部ってのも面白くないので説明不要のイギリスのロックバンドQueenの『QueenⅡ』の最高に格好良かったホワイトサイド・ブラックサイドに肖ってA面B面構成にしようとなったわけです。
そんな構成をどうタイトルに反映させるか。AB、1・2、表裏、双極、二相、dual……と来て、アメリカのテクニカルデスメタルバンドThe Facelessの『Planetary Duality』というアルバムがあったな、と。
Queenとテクデスを直結し、Planetary(惑星の)をPredatory(捕食性の)に変えて、ハイ出来上がり!
この本からまた原稿の作り方がちょっと変わったのでより線が綺麗になっている(ただこれは紙だと分かるけど電子版だとあんまり変わらないかも)。
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⑫『オービタル・オービット/ Orbital Obit.』
前作のゲスト原稿を入れる構成に味をしめて、今度は「最初にゲストネクロテック、それから自分の作品の順番にして、さらに掲載機体とストーリーが徐々に核心に近付いていく層構造にしよう」という発想がまず最初にあり、そこで浮かんできたのがTAITOの1994年のシューティングゲーム『レイフォース』でした。
レイフォースのステージ構成は、人工知能に乗っ取られた地球を破壊しに行くというストーリーに則り小惑星帯→衛星軌道→大気圏→地表→地下→深地下→地球コアとなっていたので、そういう感じでいけないかなあということで、まずはOrbital(軌道の)が決まる。
レイフォースはサントラが滅茶苦茶良いんですけど(特に二面、衛星軌道で戦う時の「G(雪のように降りしきる彼女のために)」)貼れる音源がない。
この時点で同心円のイメージが頭の中にはっきりと浮かんだので、タイトルも同じような響きを二回重ねたくなり、Orbitalにどう重ねるか、Oから始まる単語が良いなあ……Orbital Orbitだと軌道の軌道で実質同語反復だし、オービット……あ、obit(obituary・死亡記事の短縮形)があるじゃん。死のイメージにも合うし。
そんな感じです。
でも元ネタ楽曲があることに意地でもしたいので、フランスのシンセウェーヴの人、Carpenter Brutの「Obituary」だってことにしておきます。
「死を報せる」という言葉がタイトルに入ったので、表紙のタイトルのレタリングが|を伸ばしているのはもちろん垂れる血、断頭台のイメージでした。
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番外1『サンダラーズ・アサンダー/ SundererS ASunder』
sunderer(バラバラに引き裂く者が)がasunder(真っ二つに引き裂かれて)。
本作は出してからまだ二年くらいしか経っていないので、私の中でもこのタイトルの意味を完全には測りかねている部分が多く、コメントが難しいです。
ただ、フレーズとしてはイギリスの歌手Kate Bushの名曲である「Runnnin Up That Hill」の歌詞の一連、「Unaware, I'm tearing you asunder/ Oh, there is thunder in our hearts」のasunder→thunderとつなぐ響きが元ネタなのは確かです。
この曲は本当に特別なのでちゃんと原詩を読んでください(もう何の話なのか分からないってば)。
とか言ってたら、ストレンジャー・シングスS4でフィーチャーされてリバイバルヒットしてるみたいですねこの曲。うふふ。
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番外2『アルゲンタ・アルゲントルム/ Argenta Argentorum』
これは最近の本(今年2月)なのでそのときのツイートでの説明を整形して書きますが。
魔術師アレイスター・クロウリーの銀の星(Argenteum Astrum)が元ネタだろと思われるかも知れませんが……それは後付でイメージを重ねたかたちで。
実際の元ネタは去年やったゲーム(フランス製のRPG要素を持つサイバーパンクFPSなんだけど製作者たちの好きなものを全部ぶち込んだ結果唯一無二のカオスになってる『E.Y.E: Divine Cybermancy』)に秘密結社Secreta Secretorum(秘中の秘)というのが出てきてて、響きが良いなと思いアルギュロイド(銀様体、ぎんようたいであって銀さまじゃない)の本にするぞとなった時点で、じゃあ「銀の中の銀」にしようとなった、という。
それ以上でも以下でもない、今のところはまだ。後でもっと違う、自分でも気づいていない理由が分かるときが来るかもしれませんが、そのときはそのときです。
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以上でした。現行の予定ではこのあとまた電子版オンリーで『ゴエティックメーズ/ Goeticmaids』という本が出て、そのあとはようやく紙での復帰作『シニスター・リージョン/ SIniSTER ЯLegion』が出るはずです。頑張ります。
今から言っておくともちろんゴエティックメーズはゴティックメード(Gothicmade)のもじりですし、シニスター・リージョンはついに特別な元ネタはなく紙で13番目だからsinisterって入れたいな、というところからの姉妹軍団と不吉領域ダブルミーニングです。全部言ってしまってるが良いんかこれ。
それではみなさんよき溶接を……
もうほとんど音楽の話しかしてないじゃないか。次こそは支援者限定記事で最新の進捗の一部が出ます。
メグリム・ハルヨ
PS. チトセリウムの新作を予約してたのすっかり忘れててなんか予算がアレしており、skeb等で頑張るしかないのですが、割合海外の方の案件が多いのでハルヨ外貨稼いじゃってる?みたいな気分になっています。それはそれとして貧乏暇なし(田舎の下級リーマン)なので支援者の皆様のおかげで本当に助かっています。