SamSuka
ノア(サイズフェチの書き手)
ノア(サイズフェチの書き手)

fantia


軍服少女の、文明弱化巨大化蹂躙

男は、息を吞んで、報告を聞いていた。 戦況は、最悪と言っていい。 男の軍は、既に幾度も撤退を繰り返していた。 必死になって維持しようとしていた前線など、とうの昔に崩壊した。 だが、そんなことは、もともとわかっていたことであった。 男には才能がなかった。そしてそれを覆すほどの経験も。 彼の指揮では限界があった。 所詮、偶然が重なり、軍の指揮を執る立場になってしまっただけであった彼には、自分の力では、相手の戦力を押し返せないことなどわかっていた。 しかし、もう少しだけ粘れば、彼らも異常に気が付くかもしれない。 「ねぇ、もういいでしょう?」 そんな、必死にあがく彼を、幼い声が引き留める。 続いて、かつん、っと、軍靴が床をたたく音が部屋に響く。 その声に、男はびくりっと、体を大きく震わせる。 ついに、来てしまったのだ、と、彼は思った。 「も、申し訳ありません!!あ、あと少しで……」 彼は、そういって振り返り、彼女を見る。 そこにいるのは、一人の少女であった。 いや、少女、というにもなお、幼い。 金色の長い髪、緑の意志の強い瞳、そして、一見すれば不健康にすら見えそうな白い肌。 そんな彼女は、その体に似つかわしくない黒色の軍服に身を包んでいた。 そんな少女は、一歩、彼に近づいて、彼を見上げて問いただす。 「あら、あなたは、本当に、そう思っているのかしら?」 くすくすと、笑いながら少女は、彼へとそう、詰問する。 ……もちろん、彼がそんなことを考えることなどできるはずもなかった。 当然だ。 なにせ、相手は大国。 数万の兵力と、最先端の武器を揃え、魔術の研究も、こちらよりも、数世代先を行っている。 対する彼らの兵力は、千をわずかに超えるかどうか。 武装も、彼らのものとは比べ物にならず、前線では、既に彼らの鎧に対して、碌な傷を与えられないと悲鳴が上がり続けている。 しかし、それでも、白兵戦となっているだけ、まだマシだ。 魔法など、敵軍に対して振るうことすら許されずに打ち消される。 そう、……何一つとして、彼らは、敵国に勝る理由がない。 では、……なぜ、そんな無謀な戦いへと彼らは挑んだのか。 答えは、たった一つ。 すべては、目の前にいる少女が原因であった。 「も、申し訳、ありません!!」 そんな彼女に対して、男は必死に頭を下げる。 いや、それ以上と言えた。 彼は、地に這い、頭を床へとこすり付け、彼女へと必死に許しを請う。 男は、自身の誇りなど、とうの昔に捨てていた。 彼の命など、安いものであった。彼は、ただ、人々のために、彼女へと必死に許しを請う。 「……ふぅん、じゃあ、あなたが死ぬ?」 そんな彼に対して、ゆっくりと、少女の小さな靴が、男の頭へと乗せられて、少しずつ力が込められる。 彼女の体重は軽い。 しかし、それでも、硬質な床に挟まれた彼の頭は、痛みを訴え続ける。 だが、……男は覚悟していた。 たとえ、彼女に殺されたとしても、自らの命程度で、多くの被害が回避できるのであれば、それは、十分に釣り合いのとれた取引だと。 しかし、その責め苦は、すぐに終わりを告げる。 「……冗談よ。あなたを殺しても仕方がないし、まだ、やってもらうことがあるもの」 そういって、彼女は、彼を解放した。 そして、彼は、その解放に喜びの表情で、顔を上げる。 この無意味な戦争を、止めてくれるのか、と。 「さて、それじゃあ、出かけてくるわ。大丈夫よ、私たちの国民は、もう死なないわ」 しかし、彼の望みは叶うことはなかった。 彼が、少女を止めようと次の言葉を紡ごうとするよりも早く、彼女は部屋を飛び出し、外へと向かう。 もはや、結末は確定した。 彼は、ただ、少女の背中を見つめながら、ただ祈るしかなかった。 せめて、彼らが、人間として死ぬことができることを。 それから数時間後。 彼は、数名の腹心と、戦場全体を眺めていた。 その男は、大国の将であった。 国内に、並ぶものもいないとさえいわれる、優秀な男だ。 「この戦争、どう思う?」 「どう、とは?我々が圧勝している、以上に、なにかがあるのですか?」 不意に話題を振られた部下は、そう答えるほかなかった。 被害は極小、与えた損害は多大。 まさに、圧勝というほかない。 そう、そうなのだ。 故にこそ、彼は、この戦争に疑問をもっていた。 今、彼らが戦っているその国は、隣国で、そして、かなりの小国であった。 故に、この国の存在は、それだけで大きな圧力になっていただろう。 だが、……それだけであったのだ。 少なくとも、先王までの外交は、良好。 実入りが少ない故に、同盟こそ結ばれていなかったものの、それでも友好的な関係を続けていた。 国で集めていた情勢も、王が変わって以後に、悪化したという話もなかった。 故に、彼らが、この国に対して戦争を仕掛けてくる理由がわからなかったのだ。 あり得るとすれば、……彼らに勝算がある場合。 それ以外にはありえない。彼はそう考えていた。 だから、彼は、軍の装備も、最新鋭のものを、魔法も前提として、打たせることさえさせなかった。 ……だが、彼の警戒とは裏腹に、彼らのそれは、まったくと言っていいほどに、無様なものであった。 実際に彼らが行っているその作戦は、遅延戦術でも行っているかというレベルの散発的なもの。 まるで、こちらの損耗を待っているような、あるいは、早く終わってくれというような消極性だろうか。 ともかく、攻撃性が見えてこなかったのだ。 そして、今日までの十数日。 彼らの警戒した新兵器も、魔法も結局、彼らの軍を襲うことはなかった。 だが、彼らは油断することはなく、歩みを進める。 一瞬の油断をつかれてひっくり返った戦場など、ごまんとあるのだ。 「諸君、ご苦労です、下がりなさい」 そして、その声は、戦場に突如響いた。 凛とした声であった。 それは間違いがない。 おそらく拡声の魔法を使ったのだろう、戦場の中心から、数キロ単位。 どちらの兵士にもその声はしっかりと届いていた。 動きが止まったのを見て、少女は言葉を続ける。 「我が名は、マクティ・ラルベール。先王の娘である、この私が、改めて貴国に、戦争を申し込みましょう」 そう、その凛とした声を響かせ、140にも満たない背丈の小さな少女は、男の軍へと、言葉を放つ。 ……。だが、彼らが言葉から感じたのは、戦場に立つものの声ではない。 その凛とした声の印象とは裏腹に、……まるで、おもちゃを前に喜んでいるような音を、秘めていた。 当然、そんな彼女の出現に、彼らの警戒は、これまでにないほどに高まっていた。 あの振る舞い、彼女こそが、この戦争を起こした張本人。 あるいは、その理由であることを、何も知らない彼らも、確信したからだ。 「ふむ、警戒されているようですね。無理もないでしょう。……けれど、あまりに動きがないというのも、面白みにかけるというものです。で、あれば、ここは、私から動くこととしましょう」 そういう彼女は、くすり、と笑みを浮かべながら、ある呪文を唱える。 少女はその、呪文に熟練しているのか、あるいは、元々短時間で詠唱できるものだったのか、彼らの警戒は甲斐もなく、完成し、彼女の体へと、変化が起き始める。 彼女の小さな体が、ゆっくりと、軋みを上げて、その体を膨らんでいく。 「くすくす、どうかしら?」 魔法の効果が最大限に発揮される頃、彼女の大きさは、幼さをそのままに、二階建ての建物ほどの大きさへと変貌していた。 そう、それは、巨大化の魔法。 その魔法により、大きくなった彼女は、力強く、その軍靴で、大地を踏みしめ、彼らを見据えた。 そして、彼女のその様子を見て、彼らは、……強い安堵を抱いた。 そう、彼女の切り札であるであろう、巨大化魔法。それについて、彼らはよく知っていた。 なにせそれは、肉体のサイズを一時的に変化させることで、より大きな火力を得るという、彼らの国では、ごく当然の『下級魔法』であった。 確かに、肉体の巨大化による、通常の白兵戦での有利は、間違いなくほかにないメリットを持った魔法といえる。 なにせ、巨大になるということは、通常の体格とは異なる存在になるということだ。 既存の形に当てはまらないということは、通常の戦術が意味をなさなくなる。 分かりやすくいえば、組み技などがそうだ。 組むべき箇所は、相手の倍率により変わり、もっと言えば、相手が大きくなり過ぎれば、その攻撃すらできなくなるだろう だが、一見万能に見える、この巨大化魔法。しかし、そこには、下級魔法たるゆえんとなる弱点があった。 「砲兵、弓兵。前へ」 故に、将軍は、冷静にその弱点を突く。 そう、その弱点とは、面積の増大。 巨大化の魔法は『肉体強化の魔法』ではない。あくまで、『攻撃強化魔法』である。 それゆえに、魔力の消費はその効果に対して少ないものとなっているが、それ故に、この魔法には、肉体の防御能力を上げる効果はない。 もちろん、肉体の巨大化によって、増加した質量を支えるための、ある程度の肉体強度の増強は含まれているが、その効果は、あくまで、肉体を動かすためのもの。 防御という側面を見てみれば、それは微々たる効果しか及ぼさないのだ。 故に、巨大化魔法は、身体能力の向上による回避性能や、攻撃力から得られる近接戦闘への有利はあっても、接近するまでの、魔法や、射撃による、遠距離からの一方的な攻撃に対して、めっぽう弱いのだ。 かつて、千倍にまで巨大化した巨大化魔導士が、無数の弓矢に打たれて、死亡こそしなかったものの、動くこともままならないほどに負傷。意識を失った魔導士はそのまま、味方の城へと倒れこみ、大損害。 そんな、間抜け話まで伝わるほどに、その弱点は明確であった。 そして、彼女は、そんな話は聞かなかったのだろうか。あるいは、英雄譚における巨大化魔法。その、無敵さばかり聞かされたのか。 弓も、魔法も、大砲すらも気にすることなく、彼らの軍を見据え、一歩一歩、近づいてくる。 まるで、いかようにも攻撃して来いと言わんばかりに。不敵な笑みを口元に浮かべながら。 「どうしますか?何か、策があるのかも……」 もちろん、そのことを彼らも認識していた。 本当に、無策であるはずなどない。 何せ、彼女は、この状況を作り出した、張本人なのだ。 仮に、何もない間抜けであるのならば、ここまで軍が動くこともなかっただろう。 故に、何かがある。彼らはそう確信していた。 「そうかもしれない。だが、……今は、攻撃するほかあるまい」 そう、彼は判断せざるを得なかった。 おそらく、策はあるのだろう。そして、少なくとも彼女の視点に立てば、それは少なくとも、彼らの国を蹂躙できるものなのだろう。 だが、彼女の思惑はさておき、彼らに攻撃をしない、という選択肢はなかった。 なにせ、彼女は近づいてきているのだ。 未だ巨大化の利点の一つである身体能力の強化をさして生かすことなくゆっくりと歩いているが、一度走り始めれば、一気に距離を詰められるのだ。 そうなれば、いかに強力な彼らの軍も、大きな損害を受けてしまう。 故に、彼らができるのは、今のうちに、少女の勢いをそぐこと。 可能であれば、彼女を倒してしまうこと。それこそが彼らの目的。 そして、その準備は既に完了していた。 「総員、撃てっ!!」 その掛け声とともに、まずは砲兵たちによる火力が、マクティへと集中する。 最新鋭の科学の粋を集められたその砲撃は、恐ろしい火力を持つ。一発一発が、鋼鉄の壁を歪ませるほどの威力をもつのだ。 そして、その火力は本来の巨大化魔法の使い手であれば、それだけで十二分に致命となる。 はずであった。 だが、それほどの火力を受けたはずの少女の歩みは、速度を変えることなく、彼らへと向かってくる。 同時に放たれた結果、彼女から外れた砲弾が生み出した砂煙を振り払い、マクティは、まっすぐに、彼らへと歩み寄ってくる。 「……直撃、しなかったのか?」 彼女が巨大化魔法以外の魔法を使った様子は見られなかった。 そして、いくらか外れた砲弾以外は、間違いなく彼女に当たったはずであった。 だが、実際には、彼女は無傷。 そして、足を止めることもなく、彼女は前へと進んできているのだ。 「攻撃をやめるな!撃て!!」 だが、そうであるならば追撃を加えるのみ。 男は、兵に追撃の命令を下す。 「し、しかし、ま、まだ、装填が終わっていません!!」 「なにをし、……なんだと?」 だが、その命令は、未だに装填を終えていないという兵の悲鳴によって、かき消される。 その言葉に、彼は、兵士たちを叱り飛ばそうとして、疑問が頭に浮かぶ。 砲撃を終えて、既に数分の時間がたった。 自身の精神状態の焦りからの時間間隔のずれなどを配慮したとしても、それは間違いない。 だからこそ、彼は疑問に思ったのだ。 なぜ、それほどまでに時間がかかっている。と。 確かに、よその国であれば、砲身の冷却まで含めて、これほどの時間がかかっても仕方がない。 だが、彼らの国の兵装はもっと、進んだものであったはずだ。 魔術と科学の融合した大砲は、わずか、数十秒の間に装填を完了し、次弾を装填、発射することができる。 「くく、どうしたのですか?もう、五分もたちましたが……、次の攻撃をなさらないのですか?」 どう考えても、これほどの時間がかかるのは、異常であった。 そんな状況に戸惑う男に、彼女の声が降りかかる。 だが、その戸惑いを拭い去るように、砲の装填が終わった報せが、戦場に響く。 「う、撃てー!」 その遅さに、将軍は、違和感を残しながらも、叫ぶしかない。 まだ、敵は遠い。 ならば、やはり砲撃を重ね、相手の進軍が止まっている間に、魔法の準備をするより、ほかはないのだから。 指示を受けた兵たちも、指示を受けた後の動きは迅速であった。 彼女の接近に対して、再度攻撃を加える。 ……だが、彼らは、自分たちの攻撃に、驚愕することになる。 その火力に、そして何より、射程に。 そう、彼らが、彼ら自身の火力に驚愕したのだ。 そのあまりにも『低い』火力に。 「くすっ、……どうしたの?届いてないわよ?」 そう。攻撃でダメージが入らない、どころの話ではない。 マクティに、届きすらしなかったのだ。 彼らの攻撃は、文字通り、先ほどまで届いたはずの距離、それよりもさらに短くなったはずの距離を、泳ぎ切れずに、彼女の手前数十メートル前に着弾した。 ありえない。彼らが使っていた砲は、少なくとも、千と数百を超える距離を飛び、その質量をもって、巨大化した彼女に対して、十分な痛手を負わせられるはずのものであったはずなのだ。 だが、彼らの砲撃が届いた距離は、明らかに、千の半分の距離までにしか達していない。 しかも、戦場は、すがすがしいほどの青空。 風は穏やか、砲撃に影響など与えられるはずもない。 そんな好条件で、なぜ、これほどまでに、飛距離が落ちているのか。 彼らにはわかるはずもなかった。 「ほら、弓は使わなくていいの?砲撃は、とどかないんでしょう?」 だが、彼らがいくら頭を捻ったからといって、彼女はその歩みを止めることはない。 もう、彼らとの距離は、砲の距離ではない。 百メートルまで、あとわずか。 ここからは、弓と魔法と白兵戦の距離であった。 彼らは混乱のままに弓を引く。 だが、そこに来て、彼らはようやく、手に持った弓に、はっきりとした異常を自覚した。 自分たちの持っていた弓は、こんな形状をしていただろうか。 そして、疑問が浮かべば、それは連鎖して、認識できる。 自分たちの装備は、こんなにも、前時代的なものであっただろうか。 鎧も、異常なまでに動きにくい。持っている武器も、重く、どこか、鈍い。 魔法も、こんなにも、長い時間をかけなければ完成しなかったか? 少女に照準を合わせようとしても、何度となく、やり直さなければならない。 「あら、ようやく気が付いたのね」 そういって、彼女は、弓の範囲も超えて、とうとう、白兵の距離まで近づいて、彼らを見下ろす。巨大化して、十倍になった、彼女の体は、彼らに影を落としていた。


More Creators