姉のラナに傷ついた臍に手当を施されてから1週間後…
アルティナは再び森のパトロールへと単身出向いていた。
「………、う…」
ずっと耐え続けていた違和感についに足を止め、改めて己の"臍"を見下ろすアルティナ。
腹部の中央で一際目立つ赤い宝石…
ラナによって臍穴に埋め込まれた"ソレ"は、自らの存在感を示さんばかりに妖し気に輝いていた。
「よ、余計に目立ってるじゃないの…コレ…」
独りごちるアルティナ。
無惨に抉り広げられた臍を衆目にさらされるのを避けるために、ラナの計らいで取り付けられた宝石であったが、かえってそれが注目を集めてしまっている…
好奇の目が自分の臍の宝石に注がれるのを彼女はひしひしと感じていた。
それに宝石を埋め込む前に臍に塗り込められた調合薬…
それが果たして傷口に効いているのかもこの状態では確かめようが無い。
「というかこれ、おヘソに嵌めたままだと…穴も塞がらないんじゃ…」
元の自分の臍の大きさより一回りも二回りも大きな宝石…果たして今の処置のままでいいのかどうか、彼女の心に沸々と疑念が湧いてくる。
「…よ、よし」
彼女は意を決して、自分の今の臍の状態を確認すべく、その縁へと指先の爪を刺し込もうと手を伸ばした。
ガサッ!!
「ッ!、誰ッ!?」
宝石に伸ばしかけていた手を放し、音がした方へと咄嗟に弓を構えるアルティナ。
「ッ!!、ア、アナタは…ッ!!」
茂みの奥から現れた人物…
それはアルティナにとって最も忌まわしき、あの全身ローブ尽くめの人物であった。
「………」
「…くっ!」
一定の距離を保ったまま彼女を見据えるように佇む相手。
自分の臍をこんな惨状にした張本人を目の前にして、かき乱されそうになる感情を何とか抑えつつ、矢を携えながら睨み付けるアルティナ。
以前こうして対峙した時、間近で放った矢すらも得物で弾きつつ肉薄してきた人物である…
相手の一挙手一投足を見逃さまいとする彼女のこめかみから脂汗が滴り落ちる。
「…な、なに?また…私のおヘソを苛めに来たわけ…?」
「ざ、残念ね…今はこうして…ほら、宝石埋め込んでるわ…こ、今度は手出しできないわよ」
つい先程取り外そうと心決めた臍の宝石であったが、今は逆に防護壁として役立ってくれている…
前回とは違い、そのことが逆にアルティナにとって安心できる要素となっていた…はずだった。
「………」
おもむろにアルティナに向けて右手をかざすローブの人物。
「…えっ?」
その行為の意味を一瞬訝しがるアルティナであったが、次の瞬間彼女の体に異変が生じた。
「…あっ!?うあア"ッ!!???」
突然腹部の中心に走った痛みに、思わず弓を落としてしまうアルティナ。
「な、なにッ!??わ、わたしのおヘソが…うグッ!?うアアアア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッッッッ!!?????」
何の前触れもなくいきなり彼女を襲った痛撃。
それは臍部の奥底から沸き立つように発せられていた。
「な、なんでぇ!!??なんでいきなりオヘソがぁアアアア!!!????オヘソがァァアアアアアア!!!?????」
両手できつくお腹を抑えながら悶えるアルティナ。
「うァア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そのまま地面に倒れ七転八倒するアルティナ。
一瞬臍の宝石が妖し気な光を放っているのが目に入る。
「ま、まさかぁッ!?こ、これのせいなのォオオオオオオ!!!??????」
自身の臍を苛ましている原因…それはこの宝石そのものではないか?
咄嗟に宝石の縁に自分の指をかけ引き剥がそうとするアルティナ。
「と、取れないィィィィィィ!!!???何で取れないのおオオオオオオオオ!!!!?????」
必死に縁に爪を差し込み臍からはがさんとするも、完全に癒着してしまったかのようにビクともしない宝石。
そんな苦悶にのたうち回るアルティナを静かに見下ろすローブの人物。
かざした手をそのままにゆっくりと彼女の元に歩み寄る。
それに合わせてかさらに強い光を発し始める宝石。
さらなる激痛が臍奥に生じ目を見開くアルティナ。
まるで臍の中を地獄の業火で焼かれているかのような責め苦。
やがてアルティナの意識は混濁の底へと沈んでいった。
【続く】
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2023-02-12 11:16:13 +0000 UTCユウ
2023-02-12 10:48:54 +0000 UTC