俺は今、絶体絶命のピンチに立たされていた。
一秒一秒、織田先生の眉間にどんどん皺が寄っていくのが分かる。そのうちまた、カミナリのような怒声が飛ぶだろう。
(と、ともかく勃起を鎮めねえと・・・)
しかし、それは困難な課題だった。何しろ、目の前に織田先生がフルチンで突っ立っているのだ。こんな状況で、勃起がおさまるわけはない。
(そ、そうだ、目を閉じて心を無に・・・)
しかし、それが裏目に出てしまった。視覚をカットすることで、嗅覚が鋭敏になってしまったのだ。目を閉じると、稽古場にむわっと漂う汗混じりの体臭が俺の鼻孔を直撃した。
相撲部なんてやってると、たまに「廻しってどうやって洗うんだ?」って質問を受ける。実は、廻しってのは、基本的に洗わねえんだ。あのゴワゴワした木綿を洗濯するだけで大仕事だし、干したとしても乾かねえんだよ。なので、陰干しするだけなんだ。
力士たちの汗を吸った廻しは、むせかえるような雄の臭いを放つ。相撲の稽古場には、ただでさえその臭いが充満している。稽古が終わって、廻しを外すと蒸れた股間からとんでもねえ臭いが放たれる。ましてや、俺たち相撲部員は思春期真っ只中。しばしばイカくさい臭いも入り交じる。「あ、こいつ今朝センズリこいたな」ってことまで、バレバレなんだ。
って、そんなことはともかく・・・。
目を閉じた俺の鼻は、稽古場に充満する雄の臭いの中、織田先生の放つ強烈な臭気にはっきり気がついた。全身から、成熟した大人の雄ならではの熟れたニオイが放たれる。そして、黒々とした陰毛は、陰嚢と皮に覆われた陰茎の臭気を吸い込み、放出している。
それは、思春期の部員とはまた違う、なんとも言えないニオイだった。なんというか、獣のようなニオイ。猪肉というのを一度だけ食ったことがあるが、その強烈な臭気にも似ていた。雄の臭気を煮詰めて凝縮し、エッセンスを取り出したような、そんなニオイ。
俺の頭は尾田先生の雄フェロモンにクラクラになった。
猛々しい雄の生命力を全身の毛穴から放つ先生の肉体。これだけの雄臭を放つ肉体の内部には、男性ホルモンの作用により、木星の大赤斑なみの激しい性欲の嵐が吹き荒れているだろう。
俺の脳裏には、織田先生が奥さんの小さな体にどっしりのしかかり、獣のような表情で激しく腰を振る姿が浮かんできた。
(な、何考えてんだ俺はっ!)
頭を振って、その妄想を振り払うと、次は、独り寝の夜、激しく自らの竿をしごき、雄の快楽に耽る織田先生の姿が浮かんだ。
目を閉じた俺のイマジネーションは際限なく膨らみ、先生の痴態が次々と脳裏に広がっていく。
日々のセンズリで鍛えた想像力は俺の密かに自慢とするところだが、今回はそれが裏目に出てしまったのだ。
(ま、マジやべえよ・・・)
俺は額から脂汗を流した。今や俺のムスコは我慢汁を垂らし始めている。
と、その時・・・。
「ほう、武田。お前、なかなかやるな」と、織田先生の声が響いた。
俺は目を開け、武田を横目で見て、息を呑んだ。
なんてこったー!
武田は皮かぶりムスコをビンビンにおっ勃てて、後ろ手を組み、堂々と突っ立っているのだった。
(続く)
シガラキ
2022-11-01 01:48:40 +0000 UTC