アニメーターの仕事についての私見
Added 2023-05-28 12:37:53 +0000 UTC最近幸運な事に国内外の若く優秀な後輩と話す機会が増えています
ありがたい事です
作画などについて話している時に時々話題に出す内容から一部を抜き出して書いてみようかなと思います
(めっちゃ文章が爺くさいw)
僕がアニメの仕事にどうアプローチしているのかという部分に関して、
以下の様に話題にする事が最近多いです
あくまで僕の考えなので、考え方や捉え方の1例というだけです
アニメーターは絵を描く仕事だと思われがちだけど、僕は「演じる」仕事だと思っています
絵描きではなく、声優と仕事を半分に分けて行う俳優と言った方が近い
出力方法が絵だというだけで、仕事の内容は俳優に近い
だから演じるキャラや物や現象等をよく知らなければならないし
原作があるなら読み込んどいた方がいい
100巻越えしてる長編を急に読めというケースとかもあるからしんどいのはわかるけど、
正直それも仕事だと思う
作中に登場する勢力やキャラクターには設定だけでなく歴史があり、
今現在の地点に至るまでに何を見て、何を感じ、何を願い、何と戦い、何を失い、勝ち得て来たか
何を愛し何を大事にし、何と出会い何と別れ、何を恐れ何を許さないか、
その様な歴史を知らずして演じる事など到底出来ません
これらの知識があると、演じるキャラクターが自分の仕事の担当範囲内で何と遭遇しても、
それに対しどの様に反応するかの答えが割りと簡単に思い浮かぶ様になります
(こいつなら、こう反応するだろう・・)と、
自分の中にそのキャラクターの感情がハッキリと浮かぶ様になります
だから、役作りの初歩の段階として、原作があれば読み、
オリジナル作品ならどの様なキャラなのかじっくり監督などに聞く必要があると僕は思います
俳優と言っても、演じるのは実写の俳優と違い、人類だけではありませんね
自分の外見性別関係なく、犬猫から自然現象、神羅万象全てを演じる変な俳優です
出力方法が絵なので、絵は上手いに越したことはない
だけど、それはアニメーターの仕事の一部で、本質は絵の先にある演技であり、
正直なところ「絵が上手くなっておく」のはスタート地点の様なものだと思います
偉そうな事を書いていますが僕は絵の上手さにおいて全然大した事はありません
業界で天才と呼ばれている様な方々の足元にも及びません
最低限のラインかなという程度です
それくらい天才は凄い
あらゆる世代の天才達の絵を資料として見て、自分の下手さに悲しくなる事が多いです
それは置いておくとして、
だから絵を勉強する以外にもやらんといかん事が沢山ある
描く(演じる)キャラの持っている知識や技術に自分もある程度精通しておいた方がいい
まぁ義務ではないけども・・追求しようとすればする程面倒さが増していく仕事だ
こういうのはどこまで追求するかは人それぞれだとは思いますが、
例えば戦うキャラなら戦い方を、歌うキャラなら歌い方を、等、
描く(演じる)当人が担当するキャラの得意分野、得意技術にある程度精通していた方が
より素晴らしい演技が出来る、より素晴らしい映像に近づくと思う
実写の俳優も、演じる役が空手家なら空手経験者の俳優の方がより素晴らしい仕事をする
勿論演技力そのものが根底に無いと、全ては台無しになりかねないけどもね
同じ様に、アニメーターが空手家を描く場合、
空手を知っている人と知らない人が描くならば、知っている人の方が素晴らしいものを描くだろう
と言った様な事です
アニメーターが空手家であり歌手であり他の様々な職業を全て兼任しながら描くなんてのは無理なので、
大半は少し調べるだけというのがほとんどです
そのリサーチ度合いの差が、練度の差みたいなものとなり、
アニメーターごと、作品ごとに質の差を生んだりする事が大いにあると思います
ロケハンに行くという行動もこういう事ですね
ハリウッド映画でもアクション映画の俳優が武術に精通していたり、元々黒帯だったり、
作品の為に数ヶ月から数年訓練を受ける等の話があったりしますね
まぁあれは予算も期間も違う話なので、TVアニメの仕事に当てはめるのは無茶ですが・・
専門家を呼ぶケースもありますね
「SF考証」「時代考証」等です
色々なアプローチの仕方がありますね
動物や自然現象を描く場合は、当然それらになる事は出来ないので、
やはりひたすら本物から見て学びます
空飛ぶヒーローにもなれないので、
飛行機や戦闘機等実在する飛行可能な様々なものの映像から学びます
あるいはヒーロー映画の映像からも学びます
殴るだけで地形を変えてしまう様な怪物や、刀で山を斬ってしまう様な怪物にもなれません
こういうのは人物の方は本物の武道や剣術の動きを取り入れつつ、
作品に求められている嘘を足して描く
壊される方の地面や山等は似た様な規模の本物の自然現象や、映画やアニメから学びます
それらは大抵の場合既に沢山の上手い人が描いてきているので、
上手い人がどう描いたかも当然見て学び、そして描くといった感じですね
僕は仕事以前に趣味として武術や武器術が好きだったので、自分で習得したりこそしていませんが、
昔から長年大量に調べ続けています
それが偶然今の仕事に活きています
まぁあまり深い知識ではありませんが、バトルシーンを描く、コンテで作る、等をする際に
非常に役に立ちます
ワンピースで言えば、以下の様な知識、技術も役に立っています
数種類の素手による武術の知識と、それを描く技術
数種類の剣術、槍術、棒術の知識と、それを描く技術
これらがあると仕事をするにおいての武器としてかなり使えます
刀・槍・棒の扱い方、握り方、抜刀・納刀の作法、振り方捌き方、持った時の立居振舞等、
素手では拳の握り方や使い方、指の使い方、足の使い方、捌き方、体重移動法等、
これらを何十種類と知っていれば
かなりバリエーション豊かに戦いを作れますし、
多くのアクションシーンに対応可能となります
もちろんアニメなので、本物を知った上で嘘を描きます
大げさで隙だらけな動きも描きます
ですが本物を知った上で描くという事が大事です
アニメしか見ないでアニメを描くという状態では、
嘘しか知らない人が嘘を真似て描くという状態になり、あまりいい作品にはなりません
嘘しか知らず、嘘しか描けないアニメーターの出来上がりです
実はこういうアニメーターは凄く多いです
若手にも、ベテランにも、更に言えば天才にも多いのです
画力が天才でも、嘘しか知らない人は割りといます
細部を見ると、わかる人にはわかります
可能な限りでいいので、本物を知るべきです
僕は戦闘関連しか得意ではないので、担当はもっぱら戦闘シーンがほとんどです
作監時代はどんな芝居でも描きましたが、一番得意なのはやはり戦闘シーンですね
他の芝居を描く時も、可能な限りリサーチしたりします
アニメにおいて同じジャンルや動きの描き方にも時代によって流行りみたいなものがあるので
流行りの描き方を学ぶのも大事ですね
これもある意味リサーチです
その時代に受けている描き方に精通しておくのは、
その時代に自分が通用する状態である為に非常に重要です
アニメを見るのもアニメーターにとっては勉強です
他にも色々あるのですが
1つ1つ仕事に必要な要素を全て挙げていては長くなりすぎるので、それらは別の機会に回します
今回は「僕にとってアニメーターは描く仕事というより演じる仕事」だという考えを書いてみました
軽く済まそうと書き始めたんですがもう充分長いですね
今回はこのくらいにしておこうかな・・
これは業界共通ではなく私見を書いているだけです
業界で広く推奨されている様な事でもありません
ただ僕が好きで行っている仕事へのアプローチの仕方、追い求め方です
あまりコスパのいい方法とも思っていませんw
なので、まぁ適当に聞き流すくらいでいい事ですw
他のアプローチの仕方の人も勿論沢山います
読んでくれてありがとう、お疲れ様でした
今後もこんな感じのブログの様な投稿が9割になると思います
もっとスッカスカな内容の時もあるでしょう・・
よろしくお願いします・・