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Ishi - アニメーター
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コンテ雑記


前回の投稿から大分開いてしまった

スイマセン


今回はコンテを描く事に関して現状僕が思う事

僕が出来る事と全く出来る自信が無い事とか

何かそんな事を書いていこうかなと思います



コンテを担当する事で実現出来ている事は、

アクションシーンに関して広範囲の状況を支配する事です

自分が原画だけを担当する場合、せいぜい10カットくらいしか担当出来ないので、

たった10カットで視聴者にとって面白い映像にしなければなりません


僕が原画で担当していたシーンは大体誰かの必殺技が命中するシーンや、

あるいは2人くらいのキャラクターの必殺技がぶつかり合う様なシーンでした


二者の必殺技の衝突等のシーンに関しては、

必殺技の作画自体を良質なものにするだけでは

他社と質で戦える様な映像にはなり得ないと大分前から思う様になりました


必殺技の衝突のシーンの質を高めるのは、

その衝突のシーンまでにどれだけ面白い積み上げ方をしてきたかがとても大事です

僕が原画で必殺技衝突シーンの瞬間の10カットくらいを

沢山担当していて思ったのは、

担当する10カットより以前の状況づくりまでも、

僕かあるいは他の技術力のあるアニメーターが担当しなければ

より良い映像にはならないという事でした


必殺技を撃つ前にどういう戦いをしてきたか、

周囲の足場はどうなっているか、

戦っている両者が必殺技を撃つ時、どのくらい互いの距離が離れているか、

背景はどういう状況になっているか、壊れているのか、綺麗なままなのか、

等々、

この様な必殺技シーンの周囲のカットによる状況作りもとても大事です



ここからそれを説明するにあたり

具体例として僕がワンピースで担当した部分を上げますが、

映像や画像をここに貼るのは権利的な問題で難しいので、

より理解を深めたい方は、

例として挙げた話数やシーンを各自で確認してみて下さいませ

自分の担当した部分を自分で解説するのはかなり恥ずかしいですが・・



では具体的に説明しますが、

ワンピースの934話で僕が原画を担当した煉獄鬼斬りのシーンですが、

このシーンのコンテをもらい、僕がまず感じた事は、

ゾロと鎌ぞうの両者の距離が近すぎるという事です

これでは原作と同じく、

目と鼻の先にいる鎌ぞうに斬りつけてそれで終わりになってしまいます

それでは少し味気ないなと感じました


だから何をしたかと言うと、鎌ぞうを後方に大きく跳び退らせ、

両者の間に広大な距離を作りました

ありえない程広大に距離を作りましたが、

僕の考える超人の戦闘での間合い、射程範囲はこのくらいのイメージで、

これくらいは一瞬で詰められてしまう距離というイメージなんです


で、ただ跳び退るだけではつまらんし段取りくさいので、

鎌ぞうには跳び退りながら同時に空中で2回攻撃させ、

ゾロにT光の鎌鼬を飛ばすというアクションを作りました

これにより、その後ゾロを作画引きさせながら遠くでそれが命中し爆発、

その中から岩盤を斬り裂いてゾロが飛び出して来るというアイデアも生まれました


何が言いたいかと言うと、

もし僕が煉獄鬼斬り発動シーンより数十カット程前から担当していたとしたら、

そもそも両者の距離はもっと自然に大きく離れる様にコントロールしていたと思う

急に鎌ぞうが後方に大きく飛び退る様な事をしなくとも、

もっと前からあれくらいの離れた距離で広範囲を戦闘区域にしながら

戦わせていたと思う


その場合、煉獄鬼斬りのシーンも実際に僕が描いたものとは

全然違った作りになったかも知れない


この煉獄鬼斬りのシーン辺りから、

僕は自分が10カット程の原画を担当するだけでは

これ以上向上する事は不可能だと感じ始めました

担当範囲を増やさない限り、

恐らく今後煉獄鬼斬りのシーンを超える様な領域に僕は到達出来ないと感じた

それくらい、僕にとって上手く出来たと思える仕事だった

自分でやった仕事の1つである煉獄鬼斬りが、

今後自分が越えられない壁になった様に当時感じました



とは言え僕の作業スピードではこの当時描いていた様な内容のまま

10カット以上、例えば30カットくらいを原画で担当する事は不可能です

絶対間に合わない


考えたあげく、原画で担当範囲は増やせなくとも、

コンテなら出来るんじゃないかと思い至りました

原画はもっとスピードと体力に溢れた若手に担当してもらい、

僕は設計の方にまわる時期かなと感じました


その後コンテと原画を両方やらせてもらう様な時期を少しいただいて、

大体30カット程のアクションコンテを描いて、

最後の5~10カットを自分で原画も担当する様なやり方をやってみた

やはり30カットくらい自分で設計出来ると、

当たり前だが10カットしか担当しない頃より明らかに

最後の盛り上がりに向けての積み重ねをより良くコントロール出来て、

原画だけの頃よりも良い映像が作れている様に感じた


そして原画も引退状態にしてコンテの専業になってみました

国内外の強力な若手原画マン達の才能とパワーは凄まじく、

自分が原画を担当するよりも素晴らしい映像を作っている様に感じました

僕が原画を担当する場合、僕の作業スピードに合わせて

コンテでは内容の重さをある程度手加減しなければならなかった

「もう少し良くしたいんだけど、僕ではこれが限界だ」となり、

その分制限されたコンテになった

だが原画から手を引いてもっとスピードのある若手に完全に任せると、

コンテでの手加減度合いをもう少し解除出来た

勿論劇場版ではないので、完全に全てのリミッターを解除して

実現不可能な重さのカットを設計しているつもりはないが、

僕が自分で原画を担当する時よりは、

もう少し質を追求したカットを作れている気がします

若手はホントに皆凄いです


1062話では、初めて半パートのコンテを担当させてもらって、

半パートの間ずっと戦い続ける様な状況を作ってみた

戦い全てをそれなりに高水準なシーンの連続にしつつ、

クライマックスは更にその上を行く映像にする事も実験出来た

このクライマックスシーンを担当してくれたVincentさん、Chrisさん、ホネほねさん達(順番は担当順等です)の才能は凄まじかった



1062話でも、僕が必殺技シーンを10カット程度担当するだけでは

実現出来ない事が出来ている


色々あるんだけど4点にまとめる


1点目は、全体を通して両者の間合いを広く取れた事

僕がロング(ロングショット)が個人的に好きだからというのもありますが、

超人レベルの両者の間合い、射程距離の広さを、

両者の距離を常に広く取る事で表現する


2点目、横軸も縦軸も両方使う立体的な戦闘区域の使い方をする事

地面を走り回るだけでなく上空からの滑空攻撃や

ラストの空中戦等を構築する事で、

視聴者が見慣れた戦いにならない様に

戦闘区域が横だけでなく縦にも広さがある事を最大限に利用する


3点目、一番分りやすい部分、

ラストでゾロとキングが互いの奥義をもってぶつかり合い

決着となる場面があるが、

ここをとてつもなく盛り上げる為に大幅に延長した

原作だと一瞬だったラストシーンに尺(時間)を多く割り振って、

「空中での数合(すうごう)の技の打ち合いの末に、最後の大技で決着がついた」

という印象に出来た

ラストがあっさりしていた原作での決着をオリジナルで盛りに盛って、

多分見応えのある濃密な数分間に出来たんじゃないかなと思う

基本的に1062の僕の担当パートのオリジナル部分は

全部僕がコンテで勝手に足しています


空が飛べない(という事に多分なっている)ゾロを

そこそこ長い間空中にとどまらせる為に何をしたかと言うと、

実際にそのシーンを見ればわかるとは思いますが

沢山のガレキ(岩)を空中に浮かせて、そこを走らせました

ガレキをどう作ろうかと思案し、

キングの火龍皇を分裂させ地上をグシャグシャにして、

それによって大量の大小様々なサイズのガレキが

宙に浮かび上がるという状況作り、舞台作りをしました

更に大量に分裂した火龍皇は地面に着弾後もそのまま消えずに残り、

ゾロの奥に見える背景には常に

沢山の火龍皇と宙を舞うガレキが見えるという「特別な舞台」を作る事が出来た


4点目、これは3点目と少しかぶるが、違う視点

ラストの展開を少しだけでもオリジナルにする事で、

原作を既に読んでいる視聴者も(多分)退屈させない展開に出来た事

これが出来るかどうかは担当する話数の内容にもよるので

運の良し悪しの問題もある

今回はオリジナル要素を大分盛り込んでも

原作通りに収まる方法が見つけられたので、何とかああいう展開に出来た

原作では起きなかった事が起き始めると、

視聴者も次にどうなるかの予測がつきづらくなる

視聴者を飽きさせない方法は色々あるが、緩急等の基本の他に、

意外性と新しさがとても大事だと僕は思う

勿論視聴者が歓迎出来る展開の範疇の中での話だが、

次に何がどうなるかわからないという状態は、

視聴者が楽しむ為には必須な気がします

ゾロが勝つ事は皆わかっていたり、読んで知っているとしても、

その勝ち方にオリジナル要素を盛る事で、新しい作品に出来るし、

視聴者が見た事の無い展開や規模の戦いに出来る

この様な状況を作れたのは、運が良かったです




こういうコントロール、舞台作りは

10カット程度原画を担当するだけでは実現出来ません

これらを行う為にコンテに手を出し始めた様なものです

演出になるつもりでコンテに手を出し始めた訳ではないので、

こういう手の出し方をよく思わない人もいるかも知れませんね



しかし1062話の様にコンテを半パートも担当し、

更に作監まで担当するというのは常時やれる事ではないです

今後しばらくは無いだろう

でも1062話は正直作っていてとても楽しかった

僕はワノ国編の最後に楽しい話数を作れたと思っています

またこういう話数を作ってみたいと思う

あと、あそこまで盛り上げるのは流石に疲れるねw

一番しんどかったであろうクライマックスのあの物量を描ききってくれたChrisには

本当に感謝しています

Chris以外にも沢山の優秀なアニメーター達や

各セクションのスタッフの頑張りは凄かったです

1062話は運に恵まれていたと思う



さて、長いな・・

ここまでは実現出来た事で、

自分には出来そうもない事に関しても書こうとしてたんだけど

もう長いので短めにまとめると、

僕は今の所コンテではほとんどアクションシーンしか担当していないし、

自分の中に大量の引き出しがあるのもアクションシーンばかりです

だから、アクション以外のシーンのコンテを描けるかと言えば難しいし、

とても出来そうな気がしません

人間の感情に関する巧みな積み重ねとかホントに難しい

コンテの後の演出の仕事も出来そうな自信が全然無い

それを丸ごと1人でスケジュールに収めながらやり続けている演出さんは

凄えなと思います

「演出もやれよ」とか、「やるつもりは無いのか?」とか言われたりしますが、

正直やれる自信が全然無いです・・

そして若手の名の知れた演出やアニメーターと話してみると、

作品に対する考えが凄え深いんだよな・・

俺浅いなあwと思い知らされたりしますw

演出力の凄え奴らには勝てる気がしない



長くなりすぎた感があるので、今回はこのくらいで終わりにいたします

お疲れ様でした





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