ここ数年で影響を受けた作画・作品等
Added 2023-12-20 06:10:26 +0000 UTC今回は何度か複数人にDMやプライベート等で質問された題材について書く
僕は長年ワンピで原画や作監をやってきて、色々疲れて一度ワンピから離れ、
数年前にまた結局ワンピ班に戻って来て今に至っています
戻ってきてしばらくした後、以前と比べ作画の仕方が変わったとよく言われます
実際変えたと言えば変えていると思います
その辺りでどういう心境変化があったのか、何に影響を受けていたのか等を
質問される事が増えたので、ここにそれを書いてみようかなと思います
1
少し昔の事を書く必要がある
アニメーターになりたての頃、
僕にアニメーターとしての仕事のこなし方を教えてくれた師匠は数人います
彼らのおかげでど素人出身だった僕は何とか原画を作る事が出来る様になった
しかしここから話してたら話が長大になりすぎるので端折ります
原画をこなせる様になり、
ある程度アクションシーン等を担当させてもらえる様になりはしたものの
途中からお手本を見失うというか、
自分の未来のモデルに一番近いのはこの人だなといった感じの目標を見つけられなくなった
僕は30年前ですら既に廃れていた様な古い技法や文化が好きだった
それは60~80年代くらいまでの時代劇や特撮作品、アニメやマンガ達の中に
あったものだった様に思う
当時は主流と言えた様なものでも、今はマニアしか知らない様なものだ
その中でも戦いのリアルさや主役や悪役のカッコよさの表現方法
強さの表現方法、美学、
徒手での武術、武器での武術のリアルさへの追求と娯楽としての嘘との融合度合い
これらのバランスは、時代ごとにブレンドが違うと言える
僕は60~80年代頃までのブレンドが好きだった
この時代の硬派な作品群では、強い奴はあまり動かない、
大げさな動きをしない、無駄な動きをしない
強い奴はあまり喋らない
慌てたり動揺しない
弱い奴程よく吠えるという言葉があるが、まさにそれだ
弱い奴は慌てるしよく動くし無駄で大げさな動きをする
そしてよく喋る
60年代から80年代の作品には、強者の描き方に一種の美学があった
2
だが僕がアニメーターになった頃、今から30年近く前、
90年代後期から2000年代の頃のアニメーションはどうだろうか
60~80年代の映像作品にあった様な美学は失われていた様に当時の僕には見えた
強者も弱者も同じくらいよく動く
よく喋る
徒手格闘も武器術も大袈裟で無駄な動きばかり
どんな行動にも常に大袈裟にリアクションの芝居がセットでついている
むしろ大袈裟で枚数の多い無駄な動きこそ美徳みたいな価値観になっていた
達人と素人を描き分けられる人材がいなくなっていた
達人も素人も全員素人みたいな動きばかりだった
その様な動きがアニメ業界でヒットしている中、
僕は無駄で大きな動きは嫌いだった
だから僕の描く作画は枚数こそ多いが動きの幅は大きくなく、大袈裟ではなかった
徒手格闘や武器格闘のシーンでも、玄人っぽい動きを描きたい欲にかられて、
大袈裟に動かず、大袈裟に武器を振り回さない様なものを描いていた
これは視聴者にも同業者にも理解されなかったし受けなかった
僕自身も何か違うなと思ってはいた
実際プロである同業者にも徒手格闘や武器術に興味のある人が身近には皆無だった
無駄で大袈裟な動きが視聴者にも同業者にももてはやされていた
3
ある程度僕も食っていく為にそういう流れに迎合しながら、
本心ではあまり好きではない動きも沢山描いた
そんなこんなで作監をやって10年近く経った頃も
無駄で大袈裟な動きがもてはやされる時代は続いていた
自分は作監をやってはいたが未だに自分がお手本と思える様な、
自分が大好きになって追いかけられる様な絵描きや動きの作り方が見いだせないまま
何というかくすぶってたというかモヤモヤしながら過ごしていた
言い方は悪いが下手な人の絵を直してばかりで自分の腕の向上に時間をかけられておらず、
若手にどんどん実力で追い抜かれていった
何も上手く行かないなあと思い、下手な人の絵を直し続ける日々に疲れ、
作監をやめた感じです
ギャラも大した事無かったし
結構昔の事なので、正確に思い出せているかはわからない
とにかくそんな感じでした
そこからしばしどうでもいい時期を過ごした
ワンピ班から抜けていた間はアニメをやめようかと思うくらい何も見いだせない期間だった
で、結局食っていくにしても描き慣れたものを描いた方が実験もしやすいかと思い、
ワンピ班に戻る事にした
ただしもう絶対に作監はやらん、原画をやらせてくれと言った
4
60~80年代にあった美学は追いかけても今では受けない
そういう諦めの境地になっていたが、
ワンピ班に復帰した直後くらいまでは、昔を懐かしみ今を認めない様な、
非常に駄目な重度の懐古主義者になってしまっていた
長年懐古主義にはまり込み、今良いと言われている物を認められず、
昔を懐かしむが自分で素晴らしいものが再現出来る訳でもない、
そんなダメダメな日々だった
ある時、これでは駄目だ、人生が先に進まないと思った
今受けている物に、自分も入り込んでいかなければならないと思った
新しい物から学び、新しい世代からも学ばなければこの先は無いと思い直した
そこから色々あってワノ国編に突入するんだけど、
結局自分の目指す作画のイメージがわかない日々は変わらずだった
作監ではなく原画だけやる事によって、色々実験は出来る様になったが、
当たり前だが技術が10数年前から進歩しておらず、古臭い作画だなと自分で思っていた
5
転機になったのは、中村豊さんの作画を見つけた事だろう
その頃資料を探しに作画MADを見る日々を送っていたが、
ある日Youtubeで複数人のアクションアニメーターをごちゃ混ぜにして作ったMADを見ていたら、
その中で明らかに群を抜いてずば抜けた高水準作画をしている人を見つけた
何の作品だったか忘れたが、彼のシーンを見て、
「この人だけ次元が違うな、誰なんだこれ」とか思った様に記憶している
恥ずかしながらその頃まで中村豊さんを知らなかったw
それくらい最新の情報をこの頃まで見ていなかった
それくらい長年懐古主義に陥っていたという事だろう
今まで色んな人の作画を見たが、彼程好きになれる作画は無かった様に思う
打撃のインパクトの気持ちよさ、周囲の背景の破壊の仕方、
カメラアングル、カメラワーク、アイデア、どれもずば抜けていた
それでいて、動きは大袈裟ではあるがかなり玄人っぽい動きをしていた
完全に自分の好みの動きという訳ではないが、今まで見てきた人の中では
一番自分の好みに近い人だった
これ程新しい作画と、玄人っぽい動き、
大分正しい扱い方に近い武器の扱い方等を融合させる方法があったのかと、
衝撃を受けた
この人の技法を学ぼうと思った
中村豊さんの技法を使って、自分の好みに合致した玄人っぽい動きを描く
こういうブレンドの仕方を試みてみようと思う様になった
次に参考になったのはFateシリーズだ
Fate/Apocrypha の作画に驚き、こんな凄いシリーズがあるのかと、
ネットで「Fateシリーズを正しく見る順番」を調べ、全てではないが本伝的なものは全部見た
シナリオではゼロが好きだった
だが結局、作画という面で言うと
一番好きになったのは坂詰さんと榎戸さんが作っているFGOのCMだった
Youtubeで多分これまで作られたCMは全て見た
ダウンロードして未だにコンテのアイデア出しの時に垂れ流している
彼らの作る映像も新しさが凄い
動き、エフェクト、カメラアングル、カメラワーク、アイデア、
どれも素晴らしかった
自分で作る戦闘シーンを、このCMの様な短いPV的な物として作ってみようと思った
細かいつながりや演出よりも、カッコイイカットが連続して爽快感を感じる様な
PVの様な作り方を目指せないかと考える様になった
ワノ国編の初期の頃、中村豊さんとFGOのCMの様な物と自分の趣味の融合を目指そうと思い始めた
彼らの優れた技法をベースに、自分の趣味を乗せて作れば、
自分の美的感覚に最も近い物が構築出来るのではないかと思った
6
大体899話のゾロvsストローマン戦辺りから、それらを目指した作画が始まっていると思う
とは言え、僕の才能では中村豊さんや坂詰さん榎戸さん達の様な水準の物は作れないが、
目指すだけでも大分画面には変化が見てとれた
それだけでも懐古主義に陥ってくすぶっていた時期に比べれば大した進歩だと思いました
まぁそれをやりながら大体934話の煉獄鬼斬り辺りまで頑張ってた感じです
で、その後は前々回の投稿に書いた様に原画マンとしての体力や能力の限界を感じ、
コンテに転職していった感じです
代表的な人として、上記の3人を上げていますが、
この3人に一番影響を受けたというだけで、他にも沢山影響を受けた人や作品はあります
Fateと同じくワノ国編初期によく戦闘シーンの切り抜き等を見ていたのは
ブラッククローバーですね
ブラクロに参加しているアクションアニメーターさん達の作画にもかなり新しさを感じてました
ワンピと同じくジャンプ作品で毎週放送でワンクールとかではなく長期放送しているという事で、
12話くらいで短期集中で作っている作品達よりブラクロの方がライバルだなと思っていました
他にも沢山のPVを参考にした
幾つものゲームのアニメPV等
崩壊3rdのPVとかはかなり好きだ
今では仲良く話せる様になったChris、Vincent達を始め沢山の有名な人から無名の人まで
Twitterに短い動画を上げている海外のアニメーター、あるいはその卵達の動画も
大量に見て参考にしていた
ホネホネさんの鬼滅の刃のファンアニメ等も沢山見た
この様にかなり沢山の人や作品を参考にしながら
徐々に今の僕の作画スタイルは構築されていった
僕はまだまだ全然大した事ないが、大昔に比べたらこれでも大分進歩したとは思う
7
コンテを描ける様になり、原画マンの頃より多くのシーンを支配出来る様になったので、
結果として、自分が愛してやまない60~80年代の頃の美学みたいなものも
沢山混ぜ込める様になった
その点は凄く嬉しい
昔の自分には無かった派手さや大きい動きを受け入れて操り、
僕より遥かに絵が上手い若手アニメーター達に描いてもらい、
そこに60~80年代にあった様な、悪役・強者の表現、美学めいたものや、
玄人っぽい格闘技術や武器術、殺陣等の要素を入れ込むと、
自分1人でやっていた頃より良い物が出来て、
視聴者にも同業者にも受け入れられる様になったと思う
それが元で沢山の若手に会う機会を最近多く得られ、
以前は会う事もないだろうと思っていた様な有名な業界人達にも会えたりして、
多くを学べた
これらはとてもいい体験だった
これからも沢山の人や作品から学んで、良い物を作れたらなと思います
マンガも何とか頑張って作りたい
かなり長くなってしまったが、今回は最近影響を受けた人や作品等を、
学んだ経緯も含めて書いてみました
長々と読んでくれた人達、ありがとうございます
今回はこれで終わりです
お疲れ様でした