作監という仕事やその世代交代について思う事
Added 2024-02-21 02:31:35 +0000 UTC作監(作画監督)についてどう考えているかなどを幾つか並べてみようと思う
作監にも様々なタイプがいて、やり方も考え方も様々なので、
ここで書く事はあくまで僕の私見です
現役の作監や元作監が皆こういう考え方な訳ではない
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さて、作監は基本的には1つの話数の作画面を監督するという部分監督みたいな感じの仕事です
各社で1つの話数の作監の人数は最早様々になったが、大昔は1人でやるのが基本で、
今も東映は作監1人が多い
最近は2人以上も増えたかな
1つの話数全部を1人でやるのは大昔(それこそ50~60年前くらい)のアニメでこそ
適度な人数だったのかも知れんが、
今の内容でそれを1人でやるのは割りと地獄です
どう対処しているかというと、当然ながら全て修正なんて出来ない
物凄い手の速い(作業速度が速い)人でも全部を全力でなんて直さないし直せない
適度に手を抜かないと回せないです
それでも高クオリティを維持したいなら、
2人以上、5人とかそれ以上とかで作監をやるという作戦が多いね
劇場作品も大昔は作監1人だったがどんどん増えて、
総作監と作監3人とかを経て、今や何層にも作監が大量にいる世界になった
TV作品も大変な話数には無数に作監がついたり、
臨機応変に増えたり減ったりする職種になった感がある
2
僕が話数全体を1人で担当する形での作監をやっていたのは
今調べたらどうやら2006年から2013年までの期間の様です
初回はもう20年くらい前になりますね
その頃は相当な理由が無い限り1話数に作監は1人でした
仕事内容は今と比べると一長一短な感じです
ワンピで言うならば20年前は今より作画はしんどくない
しかし参加しているアニメーターには今よりお金をかけていない分、
上手い人の人数はかなり少ない
特別なレベルの上手いアニメーターは、ギャラの問題で劇場版にしか来てくれなかった
失礼な話だが、ざっくりと表現するとそんな感じだった
僕の作監のやり方はあまり良いやり方ではなかった
全体への修正はもっと手を抜いて、こだわる所に全力を費やすべきだった
今思い返せば簡単にこう言えるが、当時はわかっていても出来なかった
若く未熟で、こだわってしまっていた
当時は全体へ全力修正を入れようとして、
こだわるべき箇所に充分な時間や力を注ぎ込めなかった
簡単に言うとどこにも均等に修正が入っている感じで、緩急が無い
こだわるべき箇所に充分な力が注ぎ込めていないので、
盛り上がるべき所の作画をそんなにいい作画に出来なかった
こだわるべき所に充分な力を注げないと、絵描きとして勉強や研究、実験が出来ない
これによって、僕は作監をやっていた7年くらいの間、
実験出来なかったという後悔が大きいです
当時参加していた原画マンの多くは
「歩き」「走り」「振り向き」といった基礎的な芝居も描けない様な人が多かった
僕はこれら基礎の芝居を毎回毎回描き直す作業の物量に追われ
重要なシーンへ充分なパワーを割けなくなっていました
これは単純に酷い原画の物量が多すぎるともとれるし、
作監のさばき方が下手ともとれる
捉え方は人それぞれだろうけど、今振り返ると、僕は後者だった様に思う
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重要なシーン、大変なシーンに対して
全力で挑めない日々が続くと、自分の技術は段々錆びついてきます
新しい挑戦や実験をやめたら、そこでアニメーターの技術は止まります
僕は作監をやっていた7年間くらいの間、技術の向上が出来なかった様に思っている
その間、誰とは言わないが、
才能ある新人原画マン達が色んな作品に作監ではなく原画マンとして参加し、
思い切り新たな挑戦や実験を繰り返しているのを見てきました
作監をやりながら僕はそれが出来ない日々を送った
とても羨ましいと感じていました
7年も技術向上が成されないと、あっという間に僕の作画は古臭くなっていった
参加原画マンの修正に追われていたからという理由以外にも、
以前の投稿の中でも書いたが、懐古主義に取り憑かれていた事も相まって
新しい事への挑戦からどんどん遠ざかっていた様に思う
僕のせいでもある
これも以前の投稿に書いたが、
時間はかかったが、僕はこの状態を脱しようと思う事が出来た
作監を辞めて、その後も少し何も向上しない日々を続けたが、
数年前から新たな挑戦の日々に戻る事が出来た
それで今に至る訳ですが、
作監という仕事を振り返りここ数年思う事がある
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外の会社と違い、ワンピの作監には若手があまりいない
世代交代が出来ていない
だから絵が最新アニメから遠ざかった絵になっている
昔は作監は世代交代出来ていた
僕が若い頃くらいまでは、原画マンは作監になりたいと思う人間が多かった
少なくとも、東映ではそんな感じだった
作監になると話数の全体を自分の権限でコントロール出来る
これに魅力を感じていたし、
上手くならないと作監にはなれないので、
作監になるという事が上手くなったという事の象徴でもあった
だが僕が作監に実際なってみて感じた事は大分想像と違った
自分の権限で作画面をコントロールするという楽しさより、
下手な人の尻ぬぐいをさせられまくり、
自分が力を入れたい場所に全然力を入れる時間がとれない
作業に時間がかかると上からどう言われるかとか、
それに反論するとどうされるかとかは内緒にしておく
最初にも書いたが、
僕の作監作業のやり方に無理があったという事でもある
他の作監がやっているやり方は、
全部に全力投球なんかやらず、
ある程度手を抜いた修正に抑えて、
力を入れるべき箇所に全力で取り組める様にする
こういう要領のいいやり方を皆やっていた(多分)
どちらのやり方が正しいとかではなく、
当時こういう状態に対して僕がどんな文句を言おうとも、
それに答えられる予算も権限も制作には無かったので、
作監は当時僕以外のベテラン達がやっていたやり方をするしか
選択肢は無かったのだと思う
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そんな状況が続いている内に、
作監という仕事は世代交代がし辛い仕事になったと思う
まず、僕が感じた様な無力感を、
僕の下の世代で作監になった子達が同じく感じたという事だ
全員とは言わないが、何人かから相談を受けた
下手な人の尻ぬぐいばかりで、自分の研究や実験が出来ない
自分の技術向上への時間が取れないので、下手になる
僕が若い頃に作監をやっていた時代は、
作監の中で若手は僕1人、他はほぼ皆ベテランだった
全力投球したくて苦しんで時間をかけて怒られるのは僕1人だった
作監は1人じゃしんどすぎるよという様な意見を話したが、
僕の意見は少数派過ぎて誰も問題にしようと考えなかった
その後しばらく経って、若い作監を数人増やしたら、
僕と同じ事を感じる子達が出てきた
「作監やりたくねえ、腕が鈍る」
「原画やって上手くなって面白い事やりたい」
こんな意見を持つ人が出始める
これは作監に実際になってからそう感じ、
作監を降りて原画マンに戻るという選択をした世代の子達の考えだ
その更に下の世代(今の若手)にとっては、作監になる前から
こういう情報や意見に触れて、
作監の仕事のオファーがあっても避ける子が出始めている
念の為書いておくが、これは全員の意見ではない
作監や総作監を楽しんでいる人もいます
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今は他社の作監は冒頭でも書いたが相当な人数になる事がある
2人なんて少ない方だ
大変な話数ならその分増やすといった、臨機応変に人数が変化する職業となっている
僕はこういう体制なら作監にも楽しんだり学んだりする余裕が持てると感じている
実際外の作品には若手の作監が普通にいる
東映は大分こういうやり方において遅れている様に思う
若い世代に作監をやりたがる子が減り、
ベテランがずっと作監をやり続けている
それにあまり危機感を感じていない様に思う
僕はかなり久しぶりにだが、最近1062話と1093話で作監をやった
これはまず自分のコンテパートだけという事と、
上手い原画マンがある程度確定しているという状況下だから引き受けただけだ
昔の作監時代に僕が抱えたバランス能力の欠如的な過ちを
繰り返したくはないので、
ここ最近作監をする時は
かなり意識して緩急をつける様にしている
全部に全力投球せず、大事な所に大分時間を割ける様にする努力をしていたりする
それは充分に上手い原画マン達が集まってきてくれているから可能な事だった
今後作監という仕事はどう世代交代していけるか、
参加原画マンのレベルをどれだけ保証出来るか、
1つの話数でどれだけ作監の人数を増やして各人の負担を減らせるか、
これらが大事になると思う
世代交代出来なければ、その作品の絵はあまり新しくはならないだろう
東映には他社と映像レベルで戦える会社になってほしいので、
これらの問題に早く本気で取り組んでくれる様になってほしい
若い世代が作監をやっても技術力の向上が出来て、
楽しいと感じられる仕事になってほしいな
僕の作監経験は全てが苦い思い出な訳ではない
作監という立場になって、
話数の全体を見て、どこに力を集中するべきか、
演出家とどうやり取りするか、
演出をどう読み取り、どう反映させるべきか、
参加する原画マン達とどうコミュニケーションを取るか、
演助、制作、美術、その他様々な部署とどうコミュニケーションを取るか、
これらの視点は原画マンをやっているだけでは経験出来ない
若い世代にも、作監を担当してこういう視点で作品を見る事を経験して
より向上してもらいたいとも思っている
この視点を経験する事は確実に技術の向上に繋がるはずだ
勿論適材適所というものもあるし、
作監だけやるのも原画だけやるのもあまりオススメしたいやり方ではない
どれも経験しておくというのが大事だ
その上で、どの役職が自分に合っているのか等を見定めたりすればいいと思う
作監を経験した後で原画を描けば、きっと原画しか経験した事がなかった頃より、
いいものを描けると思う
・・多分ね
もう一度書くが、これは僕の私見であって、
作監達皆の意見ではないです
今回はここまでにしようと思います
読んでくれてありがとう
お疲れ様でした