没プロット・1
Added 2019-06-25 17:12:49 +0000 UTC唐突ですが、僕はネームの前に、台本のト書きっぽいプロットを書いています。(全部セリフを書き込むかどうかはその時の気分です。話がわかればいいやという段階のもの) 今回は実際に書いたプロットのうちの一つを公開してみます。 (完成品じゃなく、ここから粗い部分、くどい部分を削ったり必要なものを足したりしていくものなので、ぶっちゃけ、人によっては本当に面白くもなんともないとは思いますが、完成する前のプロットなんてこんなもんだよと言う例としてどうぞ。悪い例かも知れない) 僕のプロットは何の変哲もないただのテキストファイルなのですが、毎回決まったフォーマットがあって、読み方があります。 文頭についてる記号やカギカッコの使い方で、その行の文章の意味が変わるシステムです。 「」=セリフです。普通。 ()=モノローグ、ほわほわした吹き出しのものです。普通。 記号なしのセリフのみ=ナレーションです。より俯瞰的なモノローグ。 ・=文頭に点が打たれてると情景描写です。 ○=そのセクションにおけるメインの出来事や、全体を指す要約、状況。 ようは、○と・が文頭についてたら、それは実際の写植には入らない文章だと思ってもらえればいいです。それだけです。それだけ分かってれば僕のプロットは読めます。多分。奥さんや編集さんは、この状態で一度読んでいることが多いです。 そんな感じで、以下、没プロットです。暇な方はどうぞ。 --- ◯アバン。龍の花が降ってきて、街はメチャクチャになる。 ・離島の海岸で、ぐしゃぐしゃに泣いている白瀬。泣いている白瀬に押し倒されて、龍によって崩壊した対岸の町を呆然と見るリュカ。唇をかみながら、その様子を巨岩の裏から見ている少女。龍が落ち、ボロボロになった街に一人立つ謎の少年。 「…なんで?」「わかんないよ」「どうして?」 ・誰かが呟く声。 ――何度呟いたとて、宇宙から謎が尽きることはない。 ――これは大いなる死と再生の予言。 ――その日、僕らの街に。 龍の花が咲く。 ---タイトルコール---<龍の花> 「懺悔スペース?」 「うん、VRnetの中に、少し前にそういう部屋が出来てて…、中で、無料の人生相談みたいなことやってるんだって」「すっごいワールドの構造が凝ってて、話も面白いって評判でさ」 「人生相談…」 「そうそう、なんか、」 「…?」「VRnetって何?」 「えっ知らないの!?」「てかもしかして、そもそもVRゲーム知らないタチ?」 ・こくりと頷く。 「うわ、天然記念物じゃん!」「今度貸したげるから、やってみなって!ソフトも貸すし!」 ・学校の教室。コミュニケーションを脅迫的にとるリュカと、コミュニケーションを取る必要を感じてない白瀬。リュカと白瀬はお互いにお互いのことを「ああはなりたくないな」とだけ、なんとなく思っている。学校ではなんら関わりがない二人。 ・白瀬はちらりとSNSを見る。「懺悔スペース」というアカウント。 ・悩んでいることを「懺悔スペース」と呼ばれるオープンソースVRゲームの中で打ち明ける懺悔室があるらしい。何気なく教えてもらったリュカは、興味を持つ。VRゲーム用の端末が高いと聞き、無理だと結論。でもどうしても気になるから、友達にお願いして借りる。「友達にお願いして借りるという行為」が、彼女にとってはとてもハードルが高い行為。 ・友達に貸してもらって、VRワールドの設定をして試してみる。猫のアバターは、友達から選んでもらったもの。DMを送るとすぐに返事が帰ってきた。時間帯、パスワード、色々ややこしい…。なんでこんなに面倒くさいんだろう?初めての経験でもたつく。待たせてるかも、申し訳ない、ばっくれようかな、いやでも…そんなこんなでログイン成功。入るかどうか迷う。っていうか2時間位遅刻しちゃったし、知らない人に遅刻するごめんなさいとかメール出来ないよ怖いよ。謝るしかない、うん、ゲームだし。 ・ログインすると一面の草原。メモを参照しながら所定の場所まで行くと地下への大きな穴がある。飛び降りる。地層を抜け、マントルを抜け、地球の裏側から出て、そのまま宇宙に落ちていく。空に落ちていく。わっわああああああ!!一面の草原から入ったはずなのに、出てきたところは都市だった。やばい。すごい。まるで世界が、宇宙が、うわ、うわ、世界は、穴だらけ。地球も、穴だらけ。 「…そっか」「地球って、ホントは穴だらけだったんだ」 ・何気なく呟くリュカ。しかしその言葉がなんだか自分で恥ずかしい。 (…わ、何考えてるんだろ、これはゲームの中、ゲームの中…) ・飛び降りて、向かう先には、教室が見えた。なんてことない普通の教室だが、天井がなく、窓もない。周囲は宇宙。教卓の上にはレコードが置いてあり、物悲しい雰囲気のジャズが流れている。降りると、教室の机の一つに座っている真っ黒い影のような存在が話しかけてくる。お行儀よく、きちんと座っている。 『どうも、こんにちは』『懺悔・スペースへようこそ』 「……は、はい」「こん、にちは」 「かけてください。この部屋の中にさえいれば、声は適切なボリュームで届きますので、好きな席にどうぞ」「座るのが好きでない方なら、立ったままでも結構です。好きなタイミングで話を始めてください」 ・着席を促す。管理人は教室のうちの椅子の一つに座っている。現実の教室で、白瀬が座っている席。 (管理人さん?は…教卓に座るわけじゃないんだ)(……あの子と同じ席) ・毎日教室で寝ている少年のことを思い出す。 「えーっと、ホントに好きなところで大丈夫なんですか?」 「ええ。そもそも今の距離でも、適切に音は聞こえているはずですよ」 「わ」 (表情、出るんだ…なんかちょっと可愛いかも) ・結構離れているのに疎通には問題がない。察して、なんとなくリュカも、自分の席の位置に座る。少しだけ、その席の位置にぴくりと動きを止める管理人。リュカは特に気づかない。 「…」「それでは、貴方の懺悔を聞かせてください」 「は、はあ…」「懺悔、というほど大げさなものでもないんですが…」 「あ、待って。まだ聞かせないでください」 「え?」 「何か誤解しているようですが」「ここに来る人に、大げさな悩みを抱えていない人なんかいませんので、そのような物言いは控えてくださいね」 「……あ、え」「…す、すいません!」 「……」「お、大げさな悩みとか、な、ないんで、私!ははっ…は」 「…来るべきじゃなかったですよね」 「そうではありません」「わざわざこんなところに来て打ち明けたい悩みが、大げさでなくてなんなのだ、と、僕は言いたいのです」 「わかりますか?」 「……は、はあ」「でも…」 「ちなみに」「今までの相談で、一般的に『下らない』と言われる悩みでしたら」「好きなバンドの新作CDを、発売当日に買い逃したのが悔しくて頭から離れない、といったものがあります」 「な、なんですか、それ!?」 「笑ってはいけませんよ」「本人には一大事だったのです」「貴方も、笑われたくはないでしょう?」 「…守秘義務は守るという触れ込みですので、他の相談者の方の話をしたことは、内緒にしてくださいね」「貴方はとっても素敵な子ですから、特別です」 「は、はい…」 ・手で言葉を促す管理人。ちょっとリラックスして、話し始めるリュカ。 「えっと…私、高校1年生なんですけど、環境が変わって、もう半年経つのに、…新しい友達と、うまくいかなくて」 「うまくいかない」 「は、はい」 「仲良くする気が起きない?仲良くしてもらえない?」 「……え?」 「ですから、どちらですか?」 「あーえっと…ど、どっちなのかな?」「すみません」 「いえ、こちらも性急でしたね」「もう少しエピソードを話してみてくれませんか?うまくいかないとは、具体的にどのような?」 「……ん、ん…と」「貸してくれたCDの良さが、よく分からなくて、感想とか、言えなくて」「わかってねえなーって…怒られたり」 「逆に私が漫画を貸した時に、中に挟んでた書店特典のイラストカードの端が、ちょっと折れてて」「いや、入れたまま貸した私が悪いんですけど、友達は気づいてもいないってことに、ちょっとムッとしたり」 「カラオケ、私、あんまり好きじゃなくて、でも皆好きで、そういうのにしょうがなく着いていくのもちょっと…」 「後、なんか、皆グループ内では名前で呼び合うみたいな空気で…」「リーダーっぽい子が、言うんですよ」「親からもらった名前は大切にしないと」「って」 「でも私…名前で呼ばれるの、あんまり好きじゃなくて」 「そうしないと、仲良くなれた感じがしないってその子は言うから、最初はまあ良いかって思ったんですけど」「なんか、重荷っていうか、面倒くさいっていうか」「…えー…っと」 「……すみません、本当に、下らない悩みで」「ちょ、直接言えって話ですよね!あはは」 「そうですね」「それで解決するでしょう」 「………」 「…」 「でも直接言えないから悩んでいる?」 「…はい」 「どうして、仲良くしたくないのですか?」 「え?」「えっいや、そんなことは」 「そんなことはあるでしょう」「仲良くしたくないが、孤立もしたくない、なんとなく今のままでやり過ごしたいが、不快感を覚えたくもない」 「貴方のお話からは、そういう意志を強く感じます」 「……そう、ですね…すみません」 「謝る相手は私ではないし、そもそも謝る必要はありません」「貴方に必要なのは、ただ、何が嫌で、何が嬉しいのか、それを友人に伝える努力だけです」「貴方は、友人に誠意ある対応をしようとは全く思っていないということをまず自覚すると共に、それ自体は何ら悪いことではないということをも自覚してください」 「は、はあ…でも」 「孤独は、怖い?」 「…はい」 「そ、それに……友達に、何が嫌か、伝える…って言っても」「さ、最後のは、どん詰まりじゃないですか?」 「と言うと?」 「だから、私は名前で呼ばれるのが嫌で」「でも友達は、名前で呼びたくて…ですよ?」 「どうでしょうねえ」 「…ええ~…」 「僕にも分かりませんよ」「知っているのは貴方だけです」「まず、貴方がどんな要求をしたいのか、聞きましょう」 「要求なんて…そんな、大げさな」 「大げさなことなど何もありません」「相手が『名前で呼べ』と要求しているのだから、貴方もなにか要求して構わないのです」 「そうは言っても、名前呼びって、別に、普通と言えば普通で、当たり前で、その代わりに、なんて…」 ・しどろもどろなリュカ。鬱陶しい子。少し管理人の様子がおかしい。 「……ちっ」 ・小さく舌打ち。本当に小さく。しかしリュカは見逃さない。 (え?今、舌打ちした?)(まさか、ね…はは…) 「失礼しました、全く、お気になさらず」「えー…何の話でしたか」「名前で呼ばないで欲しい、という要求でしたね」「それは、確かにそのままなら、相手の要求と正面衝突してしまいます」「ですが、相手の要求は本当に『名前で呼ばせろ』なのでしょうか?」「本当の要求は『仲良しの証明がほしい』といったところでは?」 「……な、なるほど」 「その切り口から、相手を説得してみるというのはどうでしょう」 「というと!どういうことでしょう!」 ・乗り出して聞くリュカに対して、沈黙する白瀬。少し不機嫌になりつつあることを、リュカは敏感に感じ取る。 「…これ以上は、懺悔スペースの領分を越えているように思います、が…」「僕も思うところがありますし、もう少し付き合いましょうか」「例えば、『友達証明章』のようなものですね」「お揃いのピンズ、キーホルダー…もう少し手軽なものなら、書類などを自作して、友達グループの皆さんにプレゼントしてはどうでしょう?」 「う、受け取ってくれるでしょうか?」 「身につける必要はなく、ただ、受け取ってくれればいいと念を押せば、断る人は滅多にいませんよ」「その上で、『皆さんのことは得難い友人だと思っているが、名前で呼ばれるのはどうしても苦手なので辞めて欲しい』と説明してみるのです」「直前に『友達証明章』を送っておくことで、相手の『名前を呼ばせてもらえない相手は友達ではないのでは?』という忌避感を緩和できるでしょう」「ちなみにこれは、相手と仲直りしたい時などにも使えるテクニックです」「所持するに当たってあまりに面倒なもの、極端に不格好なものは、他者を拘束しうるような取り扱い方は不快感のもとですので、避けるようにしてくださいね」 「な、なるほど」「め、メモしてきてもいいですか!?」 「構いませんが、この会話はすべて録音してあります。音声ファイルと、こちらで作った簡単な議事録を毎回プレゼントしておりますので、必要ないと思いますよ」 「そ、そうなんですか…すごいですね」 「ともあれ」「何故名前を呼ばれたくないのか、呼んでほしくない理由は、きちんと誠実に訴えることですね」「それは避けては通れないものです」「そうやって『要求が通る』という実感を得られれば、他のことについても、もう少しだけワガママになれるんじゃないでしょうか」「ちなみに、貴方は何故、名前を呼ばれたくないのですか?」 「……自分の名前が、嫌いだから」 「それは伝えましたか?」 「い、一回だけ」 「相手はなんと?」 ・その時の発言を思い返す。 『え~、龍花なんて名前、格好いいし可愛いし、最高じゃん!羨ましいくらいなのに!理解できないわ~!』 「って言われて…私…」 ・無言になり、顔の笑顔アイコンも消える管理人。まるでフリーズしたかのように動かない。 「……あ、あの?管理人さん?」 「……………」「なるほど」 「ど、どうかしました?」 「お気になさらず」「…そのような物言いは、貴方のような方には、辛かったでしょうね」 「あ…そ、そうなんですっ理解できないとか、言われたら…もう、何も、言えなくて」 「けれど相手からしたら、そこで止まってしまったから「貴方は納得した」と解釈してしまっていると思いますよ」 「そんな…っ」 「ですから、対策としては…」 「ああ~~私っていつもそうなんです、何も言えないまま面倒な役回りを押し付けられたり!作文とかも、上手にかけなくて居残りで書かされたりっ自分の気持ちを表現するのがすごく苦手でっ」 「はあ…あのですね」 「それで周りから誤解されて、何回も友達無くしてるんですっでもっそうされると余計なんか、私縮こまっちゃって、ああ私ってそういうやつなんだダメな奴なんだだからますます卑屈になって人と上手に話せなくて」 「だから…」 「今もまさになんか頭の中ぐわーぐわーってなってまくしたてちゃってでもこういうまくしたて方するとドン引きされちゃうし我慢してるといつか爆発するの分かってるのに全然治らなくて」 「あーーーーーーーーーっうるせえ!!!!」 「いい加減にしろよ!!!」「話がっ進まねえんだよ!!!この馬鹿!!!」 「…ばか?」 「馬鹿だよ!もうっこの大馬鹿!トンチンカン!!」「なんでそんなに苦しんでるんだよ!!なんでそんなに苦しんでるのに自分に何もしてやらないんだよ!!どんだけストイックだよ!!自分を救えよ!!誰かの救いを待つまで耐えることが何か自分への罰のように感じてるんじゃないのか馬鹿かお前は罪や罰なんてこの世のどこにもねえんだよ!!そんなのは人が人に押し付けるもので自分で定義するようなもんじゃねえの!!友達に嫌われたならそれは罪じゃなくて罰なの!!友達に嫌われて絶縁された時点でお前に罪があったとしてもその時点で精算されてんの!!なんでそんなことにも気づかないわけ!?お前自分が悪いって言っておけば全部済むと思ってるしそれが心のどっかで正しいと思ってるしマゾヒスティックな快楽感じちゃってるタチだろうが!お前は問題解決する気がそもそもないんだよ!!自分が嫌なこと、嫌いなこと、しんどいこと、好きなこと、続けてたいこと、ちゃんと知るんだよ!!自分のことをもっとちゃんとかんがえろ馬鹿!甘ったれ!あんぽんたん!!」「ちゃんと自分がどこ歩いてるか!!何歩歩いてるのか!!自覚しながら生きろ!!」「要するに、お前の問題は!!!」 ・リュカに指を指して、管理人が激昂する。 「生き方が!!雑ーーーーっ!!!」 ・…散々言い終えた後、はあはあと息継ぎをする管理人。それ以上なにか言うことも出来ないでいる。相談者の様子を見ると、これまたフリーズしている。しかししばらく待つと、 「……ぐすっ」 「…うえっ」「ふっ…ぐ…ひっく、うぐっう……」「ふえっげほっげほっげほっ」 ・鳴き声、嗚咽が相手のアバターから聞こえてくる。大分えげつない感じの泣き方をしている。 「…………あ、あの」「…えー………と」「だからつまり」「友達にも、これくらいのテンションで?ね?」「文句を言えば、こう…かえってうまくいく?かも?なんて?」 ・シュン、とログアウトしてしまう相談者。管理人が一人残される。 「……」「…はあ~~~~~~…」 ・クソでかため息をしつつ、管理人もログアウト。現実世界に帰還。サーバーコンピューターなどが何台か並んでいる、エンタメっぽくならない程度に、しかしそれなりに拘ったコンピューター群。VRヘッドセットを外す。 「やっちまったあ~~~っ!!!」 ・管理人の正体は白瀬だった。 「あ~~~くっそ、こういう強引な物言いは絶対しないようにって言い聞かせてたのに…「やっぱ知ってるやつ相手の相談はダメだ…余計なこと知ってるせいですぐパンクする…」「あ~う〜…くあああああ〜〜〜〜バカバカバカ〜〜〜っ!!!」 ・部屋の中をごろごろ転がり回る。 「あー…やべ、やだ、しんどい…くそ…」「はあ………」「くっそ、見ててイライラすんだよ…」「昔はそんなじゃなかったじゃん、お前…」 ・回想。思い出す。小さい頃の彼女は、幼馴染で、友達だった。 『はいっこれあげる!』 『なにこれ?』 『ともだちのしるし!』『あのね、わたしのともだちは、み〜んな、これつけるのよ!』『あなたもわたしのともだちにしてあげる!!』 ・「ともだちのしるし」。ダンボールで出来たピンバッジをくれた女の子。 「あ〜〜〜〜〜……………」「くだらねえ………」 ・場面転換。高校の教室。ツイッターを眺める白瀬。「懺悔・スペースは一時閉鎖中です。パスワードの発行は停止しております」と文頭に書き添えられており、それに対して何人かが惜しんだり復活を望んだり今までありがとうとお礼を言うメッセージが添えられている。 (…意外と、反応あるな)(……どうすっかな、ありゃ対応としては最悪だし、どう転んだとしても、他人のお悩み相談なんてもうするべきじゃないけど…)(…ただの男子高校生如きに、救われてんじゃねえよ、とも思うし、きっと、俺なんかじゃなくても専門のカウンセラーとかの方がいいんだろうし…) (…なんか、そういう悩み抱えてる人がこの世に存在するって知ってる状態が、もう、しんどいんだよな…)(世界、早く平和になんないかなあ…) (自動運転…不老不死…無限のエネルギー…資本主義と社会主義の双方の弱点を克服するシステム…ジェンダー問題…戦争…宗教…)(早く全部解決してほしい…めんどくさい…へこむ…) ・凹んでいる白瀬。リュカは相変わらず、友達とぎこちなく話している。 (あれから二週間。変化なし、か)(ま、そんなもんだよな…) ・雑談の中。友達が龍花と呼んで話しかける。それに対して、切り出すリュカ。 「あのさ」「名前、呼ばないで欲しいんだよね」 「どしたん急に」 「いやその、前にも言ったけど、私、自分の名前嫌いだから、あんまり呼ばれたくないの」 「そ、そうなん?いやでも、うちら皆名前呼びだしさ〜…」「苗字?なんか素っ気なくね?」「あだ名で呼ぶか?龍ちゃんとか?」「それも…ちょっと、ごめんなさい」 「てかなんで嫌なん?気にしなきゃ良いのに、自分の名前なんだから、好きになった方が絶対いいし」 「そうだよ、考えようだって!」 「でも、いっぱい悩んだんだけど、やっぱり、ちょっとダメでさ〜…」 「なんでよ?キラキラネームってわけでもねーし、いい名前じゃん、龍花」「私なんて愛美だよ?この顔で!ウケるし」 「下らんことで悩まんでもいいじゃん、空気読めし!」 「…下らなくなんかない」 「え?」 「私の悩みは!下らなくなんかないっ!!嫌いなんだ!!嫌いだって言ってるんだ!私が私の名前を嫌いだって言ってるんだ!!お前の名前を一度でも批判したか!!?私が私の名前を嫌ってなにが悪いんだ!!私の悩みは、苦悩は、私だけのものだ!!私に救わせろ!!私に、私を助ける機会を、ください…」「…本当に、嫌なの。嫌だったの…!」 ・叫ぶリュカに、少ししおらしくなる面々。 「ごめん…悪かったよ」 「ごめんな、リュカ、なんか、そう言いつつ笑ってるから、なんかこう、否定して欲しいのかなとか、誤解しちゃったっつーか」 「今まで、私らといるの、辛かった?」 「…ううん、そんなことない。そんなことないよ!ごめんね…」 「謝んないでよ、うちらこそごめんね、気づいてあげらんなくて」 「まだ私と、友達でいてくれる?」 「当たり前じゃん〜。でもどしたん急にでかい声出すからビックリした〜」 「え、えへへ…ある人に、大声出せって、アドバイスされて」 「そっその人からもね、大声出されて、私すごいびっくりして泣いちゃったんだけど」「でも、そっかって、思って」「叫ぶとね、あ、真剣なんだ、本当の言葉なんだって、わかるの」「わたし、自分の言葉伝えるのあんまり得意じゃないけど、大声出したら、本気だってことは伝わるんだって」「だから、真似してみようって、おもって」 「も〜まじこわかったから!」 「えへへ、ごめんね」 ・和解するグループ。一部始終を眺めていた白瀬。めちゃくちゃ冷や汗かいてる。良かった…。良くねえけど、俺は死ぬほど反省するべきだけど、良かった…。 ・後先考えず人にこうしろああしろとか言うもんじゃない…たまたまうまくいったから良かったけど、これで人間関係崩壊する可能性もあったわけで、まじ…まじこわい…つらい…。 ・場面転換。懺悔・スペース内。教卓の上で座っている。 やっぱ懺悔スペース、閉鎖かなあ…。 は〜モデリングめちゃくちゃ頑張ったのになあ…宇宙空間と地層の生成アルゴリズムとか、大変だったな…広すぎる草原再現するのに、不自然にならないループ構造作るのも大変だった…システム的に可能な範囲で本当に良かった…あー…しょうがないか、ま、今後は一人で楽しもう…。 ・とか考えてると、上から降ってくる猫のアバター。 「……あ、その節はどうも」 「え、なんで、入って」「あ、いや、そっか、パス設定そのままだったわ…最後にパス設定したの君だったから、君だけはまだここに来れるのか…」 「あの、前回は、大変失礼を致しました」 「なんでですか?」 「あー…僕は本来、ただ懺悔を聞くだけの人なんですね」「解決策の提示も、出来る範囲で行いますが、あくまでそれは、その人の気持ちを代わりに言語化してみるという範囲に止めるというか、具体的にこうしろと言うのはなんと言うか、他人がするには明らかに越権行為なので、僕としては普段避けているわけです、はい」 「そ、そうなんですね」「すみません、よっぽど見ていられなかったんですね私…」 「あ、いえいえ」「…貴方が、とっても素敵な子だからですよ。だから、特別です」「結果としては、空回りしてしまいましたね。特別扱いなんて、慣れないことはするもんじゃないなと痛感しました。反省しきりです」 「あの、ここ、閉鎖しちゃうんですか?」 「そうですね、ワールド自体は残しておくつもりですが、あんな醜態を晒しておいて、人様の相談なんて受けられませんから」 「…あの」「…同じクラスの人だったりします?」 「………どうして?」 「名前の話しした時、フリーズしてたし、そこから態度がおかしかったですから」 「人の顔色伺うの、得意なんです」 「…そうですね、貴方は、そればっかりでしたね」「でも、私は名前を明かす気は無いですよ?」 「いいです、大丈夫」 「…もしかして検討ついてたり?」 「あ、いえ、それは全然」「でも…誰でも別にいいかなって」「だって、ここに来れば、話せるんですよね?」 「…え?」 「あ、来ちゃ、ダメですか?」 「名前教えてくれないなら、きっと学校で話したりは嫌なんだろうなって思ったんですけど…」 「そうですね」 「でも私、君と、友達になりたいので、この場所でだけで良いから、時々お喋りできたらなって…」 「…」「僕は」「自分にとって意義深いと思えることしかしません」「真剣な話しかできない。つまらないし、面倒ですよ」 「大丈夫ですよ、頑張れる時だけ行きますから!」 「……では、今日も頑張れますか?」 「え?」 「貴方の名前の話について、ちょっと考えていたことがありまして」 「え」 「どうしました」 「いや〜なんかこう、普通にまた名前の話するから」「なんかこう、リアルの話?は持ち出さない的なアレかなと思ってたから、以外で」 「何を言っているのか。リアル以外に、世界なんかありませんよ」 「…」「あはは、そうだね」「それで話って?」 「貴方は龍花という名前が嫌いと言いましたが、どうしてなんですか?」 「あーえっとですね」「私のお父さんがつけたんですけど、その名付けの理由が酷くて…」 「龍の由来が「自分の好きな漢字」ですよ!?バカじゃないですか??で、女の子だから「花」ですよ!!地獄の安易さじゃないですか!!もうそんな名前の付け方しちゃう父親も、それになんの意見もしない母親もバカにしか見えなくて!!ほんっと嫌なんですよこの名前!この名前呼ばれるたびに、「ああ、わたしにはこの程度の意味づけしかなされなかったのか」ってちょっと凹むんですよねーー!!」 「ああ、なるほど…」「そういう理由での嫌い、でしたら、別の解決策もありましたね」 「というと?」 「あだ名です」「龍の字と花の字が想像できなくなるような、『名前の意味を破壊するようなあだ名』を作れば解決します」 「…というと?」 「というわけで、僕はこれから君のことを「リュカ」と呼ぼうと思いますがどうでしょう?」 「どうです?「う」の一文字を抜くだけで、そもそも日本名らしさが失われて、龍の字も花の字も想像できなくなるでしょう?」 「……リュカ」「リュカ」「なるほど…ほんとだ」「いいです!すごく!」 「気に入っていただけたなら、お友達にもそう呼んで貰えば良いですね」「…っと、すみません、また越権ですかね」 「良いですよ、どんどん越権しちゃってください」「その調子で名前を教えてくれても良いんですよ?」 「…厚かましくなりましたね、貴方、内弁慶ですか」 「なっ何故それを!」 「…ところで管理人さん」 「はい?」 「懺悔・スペースのスペースって、宇宙のスペースと場所のスペースをかけてるんですかね?」 「…はあ、まあ、そうです」 「そっか」 「…何か?」 「ううん、僕も、なんかそんな感じの、ちゃんとした意味のある名前が欲しかったなあ〜って」 「なんで、自分の名前って、自分でつけられないんだろうね」 「…では」「次ここで会う時には、その話を考えてみましょうか」 「あ、それ、楽しそう!」「また面白い話聞かせてくださいね!」 「貴方も一緒に考えるんですよ」 「うーん苦手だけどなあ」 「そんなことありませんよ、素質あると思います」 「そ、そう?えへへ…照れるな〜」 ・二人の楽しそうな会話。モノローグとともに、ヘッドセットを取り外して笑っている白瀬やリュカの絵、友情証明章ピンズを配っているリュカグループズ、相変わらず教室の隅で寝ている白瀬、カバンが少し開いていて、中が見える。カバンの裏地に、隠れるようにつけられている、昔リュカに貰ったダンボールのバッジがちらりと覗いている。夢見心地の白瀬。宇宙の中にぽつんと、誰もいない教室で、彼は今日も心地よさそうに眠る。 謎は、謎が解けた瞬間にも、新たな謎を生み出し続けている。 疑問に真摯である限り、宇宙から疑問が尽きることは永遠にない。 同じように、僕と彼女の関係も、永遠に続くだろうか? だとしたら、それは。 悪くない。 ・どさっと落ちてくる猫のアバたー。 「あのっすみません」 「友達にここのこと、バレちゃいまして、相談してみたいって頼まれちゃって…」 「…お前なあ」 どうやら。これからも忙しくなりそうだった。
Comments
ありがとうございます。これ自体は、ここに載せてる時点できちんと描くつもりのないプロットですが(そういうのは全部載せると本当にキリがないくらいいっぱいある)、それでも好きになってくれて嬉しいです。 今回感想頂いて改めて読み直したら、どこをどう修正したらいい感じになるかな〜ってついひとしきり考えちゃって楽しかったです。
緑のルーペ
2022-01-21 11:54:06 +0000 UTC昔の記事に今更のコメントすみません、今人間関係がうまくいかなくて悩んでるので管理人さんの言葉等で心が軽くなりました、読ませていただきありがとうございます。
ねこめの
2022-01-20 12:05:19 +0000 UTC大体こういうのを、いつも1~2日くらいで、ががーーーーっと書きます。 これを叩き台に、テキストのままかなり修正を重ねてから、ネームに入ります。漫画家さんによってスタイルは色々だと思いますが、僕はほとんど全部、一度文章で設計図を起こさないと漫画が描けないんですよね。
緑のルーペ
2019-06-25 17:15:12 +0000 UTC