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緑のルーペ
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【ネタ帳お蔵出し】:退廃研究部

※緑のルーペのネタ帳から、FANBOXだけのこっそりシナリオをお蔵出し! そのままコピペしたので脈絡はないかもしれません。 本来使用しないはずのものなのでもろもろご理解ください! ・退廃研究部 「私はね、自分が生きていたいのか死んでいたいのかよく分からないの」 「でも、こんな世界で、いっそ死にたくなってしまったなら、それも良いかなって、そう思うのよ」 「この世界そのものは決して醜くはないけれど、それでも世の中には正しくないものがいっぱいある」 「その全てにどっぷりと浸かって、沼の底まで沈んで、全ての退廃を網羅して」 汚れてみたい気持ち。興味。 自暴自棄。 なぜ汚れてみたいのか? 退廃への興味。 後ろ暗い欲望はどこからくる? 生きることへの退屈 死に近づきたい気持ち。 死に近づくことによって、生きていく実感が湧く? スリル。 なんだか生きてても仕方ないし、死んでしまってもいいかもね。 でも、ただ死ぬだけじゃつまらない。 どうせ死ぬ予定なら、死ぬつもりじゃないと出来ないような、あらゆる負の快楽を追求してから死のう。 18歳までに、あらゆる背徳を網羅して。 そして、 死にたいから退廃を網羅する? 違う。 「私、自分が生きていたいのか死んでいたいのかよく分からないの」 「それでもいざ死の可能性が目の前に迫ったら、死ぬのは嫌だってわんわん泣いてしまう…、なんて、人は言うけれど」 「でも、やっぱりよく分からないのよ」「想像はついても、実感が無い」 「だから、『本当は生きたい』って、自分がちゃんとそう思っているってことを、確かめたいの」 「きっと、穢れが足りないのよ」 「私たちは死や衰退から遠ざかりすぎてしまって、それらの存在が希薄になってしまっている」 「だから、生の実感が欲しければ、その逆の道を、崖の一歩手前まで進めばいい」 「人生のチキンレース?」 「そう」 「もしかしたら、暗い悦びに染まって、破滅するかもしれないけれど」「心がそう望むなら、それでも構わない」 「けれど、もしも、生きたい、という気持ちが、それに勝ったなら」 「その時こそ、この世界の尊さとか、美しさとか、そういう形のないものを、信じて生きていけると思うの」 「あらゆる退廃を身に宿し、それでもなお生きていたいと思えるなら、その時こそ、この世界は絶対的に美しいのだと信じられる」 ある日、彼女はそう言った。 あらゆる退廃。 あらゆる退廃とは何か? サドイズム?猟奇?ドラッグ?戦争?悪魔?邪神?魔女?儀式?血?奇病?内蔵?精神?サブカル?背徳? 自殺? ――セックス? とにかくそういう、醜くて、残酷で、おぞましくて、後ろ暗くて、気色悪い、色々なもの。 僕らは、18歳の卒業式までに、思いつく限りのそれら全てを、議論し、時には体験し、概ね網羅し、必ず記録することにした。 「一番良いジサツ方法って、何だと思う?」 「ん…なんだろ?一番いいっつっても、何を重要視するかで変わってこない?」 「そんなもの、総合的にすべての要素を網羅した上での頂点を決めるに決まってるでしょ」 「そりゃそうとう長い議論が必要だと思うんだけど」 「まだるっこしいから、10秒で結論、シクヨロ」 「…議論をなるべく早く終えたいなら、一つ一つ手段をピックアップして、適切かどうか議論するというのでどうだろう?」 「任せるわ。続けなさい」 「じゃあまずは、リスカ」 「0点」「なして?」「死ねないじゃない」「だよね」 ※死ぬこともあります。 「首吊り」 「死後が見苦しいわね。確実性が高いのは評価できるから、15点」 「辛いなあ採点」 「バカね、100点の自殺なんて存在するわけ無いじゃない」「自殺は悪いことだわ」 「いきなりびっくりするような一般論を混ぜ込んでくるから戸惑うよ僕…」 「…じゃ、飛び降り」 「同じく見苦しいわね。糞尿を垂れ流さないだけマシかしら。20点」 「糞尿はぶちまけてるけどね」 「血肉と混じってよくわからないことになってるならいいんじゃない?」 「匂いは一番酷そうだ…」 「公道にそんなのぶちまけられたらたまったものじゃないわよね」 「ガス?」 「えーっと…排気ガスを車内に取り込んで密閉する奴?」「うん」 「悪く無いわね、手軽だし、死後の見た目も悪くないし。苦痛も少ないらしいじゃない?」 「ああ、苦痛が少ないのって、加点なんだ?」 「あなたは苦痛を望むの?」 「うーん…死の実感っていうかさ」「自分がいつ死ぬのかよくわからない、眠るような死って、どうもあんまり」「だってなんか、いつ死んだのか曖昧なのって、かえって怖くない?」 「勿論実際には嫌だけど…なんだろう、ナイフで自分の腹かっさばいて苦痛の中で死ぬのが、一番怖くない」「嫌だけど、怖くは、ない気がする」 「へ・ん・た・い♡」 「まあでも、その他個人的な事情も合わせて、ガス自殺は0点かしらね」 「個人的な事情?」 「私、学生だもの。車を持ってないわ」 「なーるーほーどー」 「それじゃ、列車に飛び込み」 「飛び降り自殺もそうだけど、あれって誰が片付けてるのかしら?」 「車掌さんとか、駅の係員さん達でとりあえず片付けちゃうらしいよ」「警察や救急車が来るまで出発待ってられないし」 「ぐちゃぐちゃになった死体を片付けたりするの、どんな気分なんだろう」「それ目当てで車掌になる人とか、いるのかな?」 「変態のレベルが高すぎるわね…」 「ドン引きするくらいならこんな話題振らなきゃいいのに…」 「それにしても、自殺って色んな人に迷惑がかかるわね…」 「そもそも電車がストップしたら、かなりの損害賠償が発生すると思うのだけど、賠償金とか、誰が払うのかしら?親?家族?連帯保証人?」 「ああ、それは――」 「…まあ、でも」「ある意味それって、呪いよね」「世界や、残された人に対する怨念のようなものでしょう?」 「だから、死んで他人に迷惑をかける、という要素は、思えば本人にとってはメリット以外の何物でもないわよね」 「ドヤ顔でキメてるとこ悪いけど、損害金額って、あれ、請求してないらしいよ」 「そうなの!?」 「うん」「保険会社から支払われることはあるらしいけど、自殺した人の周囲がどうこうってのはあんまり無いんだって」 「…そう」 「なんでつまんなそうなの」 「いえ…なんか、意外と世界って優しいのね…」「自殺した挙句その周囲にも負債をまき散らしていく負の連鎖とか、ちょっとグッと来るシチュエーションなんだけど」 「根性ゆがんでるのか意外と常識人なのかどっちかのキャラで固めようよ」 「それにしても、なんで自殺なんかするんだろう?」 「衝動的なものだったり、計画的なものだったり、色々あるんだろうけど」 「…そもそも、衝動的な自殺ってなんなのかしら?」 「というと?」 「衝動的に自殺までしちゃうくらいの衝動って、それはもう、何年も積み重なって降り積もった怨念のようなものでしょう?」 「それって、何度も死にたいって思って、心から、願ってきたってことでしょう?」 「計画的に自殺するのと、いったい何が違うのかしら?」 「…ああ、まあ、そんな考え方も出来るのかな」 「貴方には違う考えが?」 「ん…どうだろう」「なんとなーく、ぼんやーり」「あ、今なら死んでもいいかなって」「そういう瞬間って、誰にでもあるじゃん」 「誰にでも、かは知らないわ」「私にはないもの」「…そ」 「まあ、さ」「そういう時に、ふらっと、なんとなく」 「たまたま、すべての"生きたいスイッチ"がオフになる瞬間っていうか」 「たまたま全てがどうでも良くなっちゃう瞬間があって」 「さらに、なんとなくジサツを試してみたくなる瞬間があって」 「さらにさらに、試してみても、まあ、別にいいかなって思う瞬間があって」 「そして、ついつい実際にやっちゃえる瞬間があって」 「…みたいな」 「衝動的なジサツ、というのは、そもそもそういう、ある種の天啓のようなもので、誰にでも起こりうることだ…と?」 「誰にでも、とは言わないけど」 「『たまたま死にたくなる』っていうことが、なんか、そんなに不思議なことみたいに言う方が、おかしい気がするんだ」 「不安定なのね、貴方」 「自分のタナトスが、どこかで、全人類に共通する感情だと信じていたいんだわ」 「好きよ。そういう、『誰もが汚い』って、信じこんでたい」「ご・う・ま・ん・さ♡」 「…」 「…なんかさ」「君の感性って、意外と普通だよね」 「当然じゃない」「私は、どんなに深い退廃の沼に沈んでも、自分の平凡で凡庸な感性を見失ったりなんてしないわ」 「私はどんなに心が汚れて、壊れてしまっても、なんでもない顔で毎日を生きていくことが出来るのよ」 「…ああ、うん」「それは」「…凄い、才能だと思う」 「僕なんて、もう、すっかり頭おかしくなっちゃったよ」 「……」 「そろそろ議論にも飽きてきたわね」 「ねえ」「リスカ、やってみない?」 「え?」 「…さっき、0点とか言ってたけど?」 「別に死にたいわけじゃないもの」「リストカットで死ねるわけないじゃない」 「5%くらいで死ぬらしいけど」(…まあ、5%くらいなら今更、あって無いようなもんか) 「カミソリ、あるかしら?」 「僕が髭そってるやつでよければ」 「ふふ」「貴方が毎日ヒゲを剃ってる、この使い古された錆びかけの刃で、これから私の白魚のような柔肌を傷つけようというのね」 「ゾクゾクしちゃう」 「っていうか……あなた、ヒゲとかあるの?」 「失礼な、ちゃんと生えてるよ」 「ちょっと見せてちょうだい?」 ・顔を開いて見せる少年。それを見て、「うっぷ」「おろろろろろろ」 「ひどいなあ」 「ブッサイク…今世紀まれにみるブサイク面だわ…」「うっぷ」「ぷっふふ、ブサイク過ぎておかし…あーっはっはっは!!!」 「吐いたり笑ったり、失礼な子だよほんと」 「ふうん、その顔、毎日これで剃ってるんだ?」 「毎日っていうか、たまに?」 「ばっちいわね。病気移さないでよ?」 「病気なんて持ってないよ」 「鼻がもげるかも!きゃははははは!」 「梅毒とはまた、今時アグレッシブな病気だなあ」「それとホントキャラ固定して?」何で唐突に笑い上戸」 「それじゃあ」「はい」「手を出して?」 ・カミソリを持ったまま、少年に手を差し出す少女。 「え?」 「自分の手首を切るんじゃないの?」 「自分で自分を傷つけるなんて、ばかみたいじゃない」 「私は、貴方の肉を切り裂いて、その血しぶきが飛ぶさまを眺めたいのよ」 「サドだなあ…」「はい」・いいながらも手を差し出す。 「素直な子は好き♡」 「っ」 「意外とあっさりしたものね」 「何の感慨もなく切ったね…」 「そりゃあ、ここからが本番だもの」 「さ」 「今度は、貴方の番よ」 「…………………」「え?」 「あの、え?」 「早くなさいな」「そのままだと貴方、貧血で倒れてしまうわ」「じゃあ治療してよ」「嫌よ」「まだ儀式は終わってないの」 「儀式?」 「………さ」「私の手首に、傷をつけなさい」「他でもない、貴方が」 「………」 ・手首を見る。カミソリを手に取る。ふるえる。 「何を震えているの?」「やられたことを、やり返せばいいだけじゃない」「なんなら、憎しみを込めてくれたっていいわ」 「ほら、早く切らなきゃ、貴方の血が全部抜け落ちてしまうかも」 ・カタカタと震えたまま刃を入れる。 「っ!!」「いっ……た…」 「ごめん」「大丈夫?」 「…平気よ」「生きてる、証拠」「ふふ、なんだか、そうね、リストカッターって、こんな気持ちなのね」 「うわ、ゾクゾクする…」「血が抜けてく感触って、独特よね」 「血の気が引くって言葉がそのまま似合う感じ」 「まあ実際に引いてるからね」 「ねえみて、ほらほら」「むにーっ」 ・切り裂いた肉を開いて見せる少女。 「あたたたたっいたーい!」 (グロ…) 「はあー…」「でも、きっと、普通はみんな、自分で切るのね」 「誰にも言えず、一人で」「心に闇を抱えたまま、それを明かせず」 「あげく、切った後で、ネットや友達に晒して、自虐して、自慢して、そうして、血だけじゃなくて、人まで、みんな引いていってしまうの」「一人ぼっちよ」 「そんな誰よりも、今の私は…ずうっと幸福なんだわ」 「素敵…」 「…」「手を貸して?」 ・手首を合わせて、抱き合う。 「……ほら」「なんだか、互いの脈動が伝わってくるみたいでしょう?」 「…これって」「相手の血管に、自分の血が入ったりとか…するのかな?」 「するわけないじゃない」「したとしても、同じ血液型だから、大丈夫よ」「…雑菌とか」「そんなの、今更だわ」「……僕の血は、汚い、から」「それも、今更よ」・言いながら血を舐める少女。 「ふふ」「喉に絡みついて、飲みにくいわ」「貴方も飲む?」・口の中の血を、少年の口に向けて垂らす。 「……まずい」 「でも、飲めなくはないわ」 「苦いけど、苦しくはない」 「辛いけど、辛くはない」 「そういう味」 ・ぽろぽろと泣く少年。 「…あの」 「手を、握っても…いい?」 「…手首をくっつけたまま、なら良いわよ?」 「ん……」「あれ、出来ない…」 「ふふ」「そうよ、手を握ると、自然、手首は離れてしまうわ」「ね?ほら、どうやっても、くっつかないでしょ?」 「どちらかしか、繋がれないように出来てるの」 「私たちの関係は、どちらがより相応しいのかしら?」 「脈打つ血管に、血を混ぜ合うこの行為のほうが、ずうっと甘美に思えるわ」 「ね、手を上げて?」 ・二人で手をあげる。手首をつけたままだと、手のひらを開く形になる。二人で花を作っているみたい。 「ほら、お花みたいでしょう?」「血で出来た真っ赤な彼岸花なんて、いかにも雅で、毒々しくて、素敵じゃない?」 「…ポエミーだ」 「ポエムは大事よ」「醜い私たちは、ただそれだけでは美しくあれないから」 「美しいものは、手ずから創造しないと手に入らない」「言葉を尽くして、美しい言葉で飾り立てて」「ようやく、人並みなの」 「言葉を尽くしましょう」「私たちの美しさを伝える、愛の詩を、世界にばらまきましょう」 「誰も聞いてないよ」 「そんなことはないし、そうだとしても構わないわ」 「誰も聞く人がいなくても、ただそこにあるだけで、美は、確かに存在するのよ」 「そして、それだけでいい」 「二人でいられることは喜ばしいことだけれど、私は、例え一人だったとしても、同じく言葉を尽くして自分を美しく着飾ったと思うわ」 「さ、おいで」 ・ぎゅっと抱き合う。手首をくっつけたまま。 「このまま血が固まったら、ずうっと、離れられなくなるかしら?」 「ふふ」「ねえ、私、ムラムラして来ちゃったわ」「……ごめん、でも、僕」「構わないわよ」「…指で、してちょうだい?」 ・手マンしたり、首筋を舐めたりする少年。 「あ」「は…♡」「んっそう…上手ね…」・頭を撫でる少女。 ・二人の体は密着して、擬似的に融け合う。 ・少年は勃たない。セックスは出来ない。 ・朝。カタカタと扉が鳴る。 「…んっ」 「…風かな?」 「いいえ、もう朝だもの。用務員が鍵を開けに来たのかも」 「……ああ、うん、そうかも」 「脱出するわよ。荷物はまとめてあるわね?」 「うん」 「それじゃ…!」 「せいっ!!」 扉を蹴破る。 「いまのうちよ!!」 「うん」 「モタモタしない!」 ・走る二人。廊下に倒れている黒焦げの死体。 「邪魔!!」 ・それを蹴飛ばす少女。 「ひどいことするなあ」 「病人じゃあるまいに、あれくらいで死にゃしないわよ!」 「うん、まあ、蹴り飛ばしたくらいで今更だけど」 「そうでしょう?」 「マズイわね、人が多い!このままじゃ囲まれるわ」 「そうかなあ?」 「ここから飛び降りるわよ!」 「あ、うん」 「――とぅっ!!」 ・かっこよく飛び降りる少女と、ぴょーんとどうでもいい感じで飛ぶ少年。 ・自動販売機からタバコを買う。ガコン、と落ちてくるタバコ。 「ねえ」「タバコって、大人がすぱすぱ吸ってるから、なんとなく試してみてるけど」 「これのどこがいいのかしら?」 「さあ、僕にはなんとも」 「貴方は吸わないの?」・少女が吸いかけのたばこを渡す。「ん?」 「…」・少年、手にとって吸う。「けほっけほっ」 「返す」「いらないわ」 「私の吸いかけのタバコ、吸いたかったんでしょ?ありがたく最後まで自分で吸いなさい」 「……」・しょんぼりする少年。そこに不意打ちでキスしてくる少女。「何凹んでんの、バカね」・少女は笑う。 ・手をだす。一緒に歩く。 「ねえ」「ちょっと…いい?」「なあに?」 「思ったんだけどさ」「こうしたら、いいんじゃないかな?」 「?」 ・手を握りながら、手首をくっつける方法。 ・きょとんとした少女。少しだけ得意げな少年。 「……」 「ね?」 ・ぱあっと華やぐような笑顔。 「ふふっ」「あははは!」 「すごいわ、これは大発見よ!」「人類史がくつがえるわ!!」「学会で発表しなきゃ!!」 「くつがえらないよ」 「あははははははは」「もう世界は制覇したも同然ね!」 「制覇してないよ」 「あははははははははは!!」 ・楽しそうに笑う少女。それを見て、ほっとする少年。 「それじゃあ東京ね!これから東京を目指しましょう!」 「今の素晴らしい発見を、あるべき場所で発表するの!」 「特許を取る必要があるかしら?」「いいえ、もう法律を改変すべきね!」「この法則を発見した私たちなら、大統領にだってなれるはずよ!」 「まあ」「なれなくは、ないかも」 ・辺りに転がる死体。静かな場所。 ・ジサツ波動。世界を襲った災厄。その波動が世界中を覆って、人間や動物はみんな黒焦げの炭とも違う、よくわからない物質になった。 ・ジサツ波動を防ぐ鍵は、アルミホイル。僕はそれを、とあるゲームで知った。知って、信じた。来たるジサツ波動。僕はアルミホイルで身体を丸めて、そして、生き残った。 ・死んだほうが良かったと、すぐに理解した。 ・外を歩く。とある田舎道。車が事故っていた。後ろのトランクがガタガタと揺れている。鍵を「ジサツ」した男から奪い、開ける。 ・誘拐され、アルミ製のアタッシュケースに入れられていた少女。彼女は偶然生き残った。そして、開く。 ・中に入っていたのは、少女。 「あら」「おはようございまーす、精が出ますねー」 「あはは、そうなんですか?」「やだもー、お上手ですね、そんなこと言ったって手伝いませんよー?」 「いえいえ、でも私たち、大事な旅の途中なんです」 「はい、そうなんですよ」「それじゃあ、またいつかどこかで」 ・少女は炭化した死体と話している。 ・いや、正確には「僕には炭化した死体にしか見えない」何かと話している。 ・僕の見る世界と彼女の見る世界の、どちらが正しいのか。 ・僕の主観において、主観情報を持ちうるのは彼女と僕だけ。だから僕にとっては、1対1。 ・彼女にとっては、僕だけがそんな妄言を吐いている。だから彼女にとっては、100対1。 ・彼女は、僕の言葉を笑う。 ・僕には、未だに、どちらなのか分からない。 ・分からないが。 ・とりあえず、とりあえずネットは、ジサツ波動が世界を襲ったあの日から。ずうっと、使えないままだ。 ・少年と少女は、全国の廃校を転々として、空き教室で暮らしている。 ・大きなかばん。退廃の旅路。電子書籍って便利よね。沢山の本を、この一冊に詰め込んで、持ち歩けるんだもの。 ・僕らの生活、これがないと成り立たないよね。まあ、新しい本買い足したりは出来ないけど。ネット、使えないものね。うん、まあ、そういう言い方もできるかな。 20歳になるまで生きていけるお金はあるわ。 20歳になったら、二人で死ぬか、結婚するか、選びましょう? あらゆる退廃をこの身に窶して、それでもなお、生きる希望を捨てられぬというなら。 その時こそ、この世はそんな汚れた命でさえ生きていく価値のある、この上なく素晴らしい物だって、証明されるもの。 私たちは、その証明を胸に、つまらない現実も厳しい社会も、きっと強く生きていけるわ。 辛くなったら、また、溺れてしまえばいいのだから。気楽なものね。 あらゆる退廃を網羅する僕らの旅路は続く。 少女には一つの妄想癖がある。 まだこの世界が生きているという妄想。 まだ人類が沢山生き残っていて、普通の生活をしているという妄想。 少年はそれを指摘しない。意味が無いからだ。 少年と少女は、ぶっちゃけブサイクに描くこと。 少女は身体のラインは綺麗でいいけど、顔は美人ではない。決して。でもどこか可愛げのある、ゆるキャラっぽい造形。 少年はもうもっとブサイクでいい。デブではない。ほっそりしたチビ。 退廃しているのは、僕らではない。 それどころかこの世界で、僕らは、唯一退廃していないと言っても良いかもしれないのだ。 ・滅んだ世界。作中に出てくる学校はすべて廃校。ジサツ波動が世界を襲った。みんな死んで、灰になった。僕らは、アルミホイルがジサツ波動を防ぐことを知っていた…というより、信じてみた、唯一の人類だ。 ・結果、僕達だけが生き残った。 ・20歳になったら、心中か、結婚か、選ぼうと約束している。 ・滅んだ世界を認められなくて、世界はまだ生き続けていて、社会は存在し続けていると信じている、思い込もうとしている少女。そんな彼女は、反社会的なものに惹かれる。 ・どうせ世界は滅んでいる。二人だけで何年も生きていけるわけがない。少年には分かっている。人間だけじゃなく、あらゆる動物が死滅した。動物性蛋白質のない世界で、これからどう生きていくのだ。 ・いや、実は逆なのかもしれない。彼女が見ている世界が本物で、僕が見ている世界が偽物なのかもしれない。僕の見ている世界こそが、僕の妄想なのかもしれない。 ・そう思うことで、僕は少しだけ安心する。彼女の存在が、僕の心の支え。僕の終わってしまった世界の全て。 ・少女は、よく裸で少年を抱きしめて寝ている。少年は服着てる。少年はED(勃起不全)。そのため、少年と少女は、あらゆる退廃を通してなお、セックスだけはしたことがない。 ・少年は、自分が「彼女を孕ませたい」と思うことが出来なかった。極度の緊張。自分という存在のコンプレックス。彼のペニスは見にくく歪んでいる。歪な形。彼女はけれど、ペニスの本当の形なんて知らないのだけれど、少年にとってそれはコンプレックスだ。 ・ジサツ波動によって歪んでしまった自分の体、自分の遺伝子を、彼女の中に混ぜてしまうことが恐ろしかったのだ。 ・そんな彼が、この、歪んだからだと歪んだ世界で生きていこうと決心するようになって、初めて勃起不全が解消される。そこで二人は、愛情によって結ばれる。 ・後ろ暗い退廃の日々を送り、現実逃避し続けていく中で、少しずつ、少しずつ、心の殻を解き放って、お互いが混ぜあわせられるようになった。 ・なんてことのないセックス。けれど、これ以上ない幸福。退廃なんて、いらないのだ。そんなことは知っていた。けれど、このまわりみちが、きっと、唯一世界の中で退廃しなかった僕らには、必要だったのだ。 ・きっと、この世界と同じくらい、汚れなければならなかったのだ。 ・彼女の見る世界を信じよう。幸せな世界を信じよう。 ・彼女の作る、形のない肉を食べよう。見えもしない野菜を食べよう。 ・彼女の愛を、存分に食べて生きよう。 ・沢山の子供を作ろう。子孫を増やして、また、繁栄しよう。 ・そう願うが、子供は、生まれなかった。 ・何年経っても、生まれなかった。 ・子供は永遠に、生まれなかった。 そう願いながら、僕らは滅んだ。 幸せだった。 人類が滅んだ世界。 法が機能しなくなった世界で残された二人。(本当はどこかにもっと人がいるかもしれない) ジサツ波動。人類だけでなく動植物も死滅。 僕と君は、生きてる世界がズレてるんじゃなかろうか? 僕の見ている世界では、人類は死滅した。 君の見ている世界では、未だ人類は生きてて、世界は豊かなままなのか? だとしたら、僕が生きていくのには、君が必要なのか。 君の見ている世界を信じるのか。僕の見ている世界を信じるのか。 人類が滅んだ世界。 暗く淀んで退廃的な世界。 法なんてない。 主観ではなくデータが必要。 薀蓄のある話。 形のないもの。 主観が二人しかいないということの現実の不安定感。 後ろ暗くて、退廃的なものを求める。 「不謹慎な議論を、しましょう」 「はあ」 「私、どちらかと言うと、自分で自分を切るより、誰かに切られたいし、誰かを切ってみたいのよね」 「相手とどれだけ深く物事を共有したかによって、お互いの絆の深さって決まると思うのよ」 緑化した世界。 遠くでは戦争が起こっている。ジサツ波動と呼ばれる、波動存在との戦い。 人の肉体と精神を蝕み、最終的に人を真っ黒焦げの炭素繊維に変えて死に至らしめるその波動と、人類は長い長い戦争をしていた。 ジサツ波動によって人類が死滅した区画は、皮肉を持って"緑化地帯"と呼ばれる。 九州地方の人類は死滅した。 人類が滅んだ世界の領土。 橋を渡った先では、まだ人類は生きている。 ごく狭い閉鎖空間。 醜い異形の生物。男である、ということは解る。だが、それ以外はよく分からず、言葉も通じない。 性欲だけの、下等な生き物。何の役にも立たない。力だけは強いから、逆らうと危ない。 そこから出なければ何もしなくても生活していけるという安心。 そこにいる限り大人にならなくていいという価値観。 ジサツ波動。 ○退廃研究部 ジサツについての話。 大好きな女の子と一緒にいたいというエゴのために、人類を滅亡させた少年。 人を本気で好きになったことがあるだろうか? その人のことが、好きで好きでたまらなくて、気づけばその人のことばかり考えてしまって、 その人の前だとどうしても冷静になれなくて、ただ喋ってるだけで楽しすぎて、でもそれ以上踏み込めないことが楽しさ以上に辛くて、 好きな人の気まぐれと自分の衝動によって生まれた、最上の幸せと最悪の不幸にひたすら振り回されるのだ。 自分の気持ちだけに、理不尽すら感じる。 片思い。 そう、片思いだ。 自分が、彼女に好かれているビジョンが無い。 妄想してみても、それはやっぱりどうあがいても妄想で、 一瞬勘違いしてみても、それはすぐに否定されて。 否定されるたびに死にそうになるくらい悲しくて、心臓が鉛になったみたいに重いんだ。 彼女が他の男と仲良くしている姿とか、 その男よりも自分との距離を感じた時とか、 それなのに自分なんかと友達で居続けてくれるせいで、 僕はかすかな、妄想の、虚構の、希望から逃れられないでいるんだ。 恋は膿んでいく。 時間をかけて。 時を超えて。 膿んでいくんだ。 心のことば。 心からのことば。

【ネタ帳お蔵出し】:退廃研究部

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