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土装番
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見かけた女性を自分専用のロボットに 1話先行公開版

 遠い未来のある時代。ヒューマノイドテクノロジーが日が進むに連れて、時には徐々に、時には大きく前進し、ついに、一つの肉片も無いながらも人間と一切の遜色のない機械人形、アンドロイドが生まれた。  中身が電子部品、金属部品の塊であることを除けば人間でないことはほぼわからない。  その肌の質感も、間近で見れば違和感に気づくものの傍から見れば一切違いは見られない。  傷つけば痛がり、楽しければ自然に笑う。まさしく新たな人類として生まれたアンドロイド達は、次第に人間社会に溶け込んでいき、今ではすっかりと人々の一部となっていた。  それから少々遅れて、サイボーグ技術から派生した機械化技術も飛躍的に進展。  自らアンドロイドになりたいと志願した者が肉の身体を捨て、脳だけを機械に、脳以外の全てを機械に、さらには完全にアンドロイドと同一の存在となるということが身近な事象となっていた。  現在では一企業が機械化サービスを民衆へと提供し、人々を次々と作り変えるようになっていた。  もはや誰が母の腹から産まれ、誰が工場から生まれたのか。当人を調べなければ知る由もない。  しかし、技術の普及には負の側面もついて回る。  そしてそれは、どのようにして人々に悪影響を与えるのか、いつその厄を被るのかは誰にもわからない。 「本当にここであってんのか」  月明かりすら差さない曇りの夜空。電球一つの灯りすら無い真っ暗な裏路地を、端末から発される光を頼りに歩く一人の男がいた。  彼の名は板野英輔。彼はある日、偶然奇妙な機械化サービスに関する情報を手に入れた。  それは自らの意思によって自身の身体を作り変えるのではなく、他者に対してその改造を無断で行うという、なんとも無数の権利を侵害しているとしか思えない根も葉もない噂だった。  身内や友人はもとより、同級生、同僚、先輩後輩や部下上司、さらにはちょっとした情報さえあれば赤の他人まで手を加えてくれるというものである。  明らかに眉唾ものではあるが、そのとても魅力的な内容には興味を惹かれるものがある。  どうせただの都市伝説。嘘ならば行ってもなにもないだけ。ならばあることを願って向かうほうが良い。  そんなプラス寄りの心情を胸に抱き、英輔はここまで来たのであった。 「変なのに襲われたら洒落になんねえからな……」  このような暗がりでは、何者かに襲われる懸念も考えておかなければならない。  周囲に目を配りつつ、奥へ奥へ、時に曲がり道があるかどうかも確認しながら進んでいく。  しかし、独特の湿り淀んだ空気が続くばかりでそれらしい手がかりは一向に見当たらない。 「……やっぱ所詮は噂か」  心の準備はしていたとはいえ、やはり外れだとどうしても落ち込んでしまう。  こんなものだろうと諦めの念を込めて息を吐き、その場から去ろうとした次の瞬間、微かに駆動音のような機械的な音が聞こえてきた。  まさかと思いながら、その音の方向へとどんどん足を進める。  そして、英輔は暗闇の中で一筋の光が漏れている扉を発見した。  その側には、椅子に座っているフードを被った何者かと、やや大きめな犬小屋が設置されていた。  周囲の環境や立地も相まって、その姿は非常に見づらく、意識していなければ見逃してしまうであろうほどだった。 「本当にあったのか……! ここで間違いなさそうだな」  ようやく見つけた現代の桃源郷。本当に求めた場所なのか怪しいところではあるが、今は確認する時間も惜しい。胸の内の欲望と好奇心が止まらない。  英輔は足早にフードを被った人物の目の前まで歩き迫った。 「こんばんは。どのようなご用でしょうか」  聞こえてきた声は、二十代程であろう女性の声だった。  携帯端末から放たれる光と闇に慣れた瞳が写し出したその姿は、体格は小柄な女性のように見えるが、フード越しに確かに華奢な体型であることが察せられた。 「ここが、頼んだ人間をロボットに変えてくれるって場所か?」  フードの女性はしばしの間沈黙する。 「はい。ここはあなた様の口にした内容に合致する場所であると考えられます」  やや固めの口調に丁寧すぎる言動。最近のアンドロイドの擬似人格よりも人間らしくない口調。  未だ半信半疑な英輔は、不審に思いながら気になっていたことをぶつけていく。 「その口調からして、あんたはロボットなのか? とりあえずフードを脱いでみせろよ」  初対面にしてはやや強めの口調で目の前の女性に問う英輔。  多少なりとも不快感を覚えて、僅かに語気が強くなったり嫌悪を露わにするかどうかも兼ねてのものだったが、女性は一切動じる様子も無く淡々と答えていった。 「かしこまりました。では、フードを脱がせていただきます」  あっさりとその要求に答え、ばさりとそれを脱ぎ捨ててしまった女性。  その下から現れたのは、声とのイメージが強く結びつくようなわかりやすい無表情を見せる、ちょうど二十歳前後に見える女の姿だった。  フードの下には薄着すら着ていないのか、肩の素肌を晒して肩甲骨を浮き出させている。  もうちょっと今の衣服を引っ張ってしまえば、あられもない姿を空気に触れさせてしまえそうだ。 「あなた様の言う通り、私はロボットです。人間を元に作られたわけではなく、一から製造された、受付用アンドロイドです。申し遅れましたが、私は受付役のカリンと申します」  暗闇の裏路地で肌を晒すという危険極まりない身姿にも関わらず、眉一つ動かさず淡々と自身の出自や役割を口にするカリン。  本当にこんなロボットがいるようなところに、人間を改造するような設備があるのだろうか。  発見はしてもそのクオリティへの不安が募っていく。 「さっきも言ったが、本当に伝えた相手をロボットにしてくれるんだろうな? 今どきお前みたいなわかりやすいのが受付とかやってるの見ると、不安で仕方ねえぞ」 「申し訳ありません。私はコストを最小限に抑えて製造されており、いくらでも替えが利くようにというコンセプトの元に造られております。しかし、我々の機械化技術に関してはご心配なさらず。私達は依頼者の望み通り、人間を従順な機械人形に、依頼者に奉仕するラブドールに、汎用性を重視したサイボーグに、最新鋭の機能を兼ね備えた機体に。ご相談に応じた金額によって無限の対応をさせていただきます」  おそらくはそれこそ設定された通りの宣伝文句なのかもしれないが、目の前で対応するアンドロイドがこれでは、どうにも説得力に欠ける。  そんな反応を認識したのか、カリンは続けて側に置かれていた犬小屋へと手を向けた。 「信頼性が薄いと思われるのも無理はありません。そこで、こちらにサンプルを用意しています。どうぞご覧ください」  まるで捨て置かれているようだった大きめの小屋は、視界に入った当初は何かが入っているようには見えず、ただそこに偶然あるだけのものだと思っていた。  しかし、カリンの見学を促すような台詞の直後、その中からごそごそと動くような音が聞こえてきた。  一体何があるんだと、好奇心から自然と視線はそちらへ動いてしまう。  すると、入り口から人間の右手が出てきた。  しなやかですべすべとしたような女性的な手。だがその動作にはどこか違和感を覚えた。まるで人間ではなく、四足歩行の動物のような雰囲気。  続けて、頭、身体、下半身、足と、闇の中から全身の姿を現した。  その姿に、英輔は驚きを隠せなかった。 「いかがでしょうか? こちらはサンプルの一体として我々の制御下に置かれている女性、三澤美怜です」  鮮やかな長い金髪に、モデルのように均整の取れた身体。光を弾くようなすべすべした肌に、情欲を掻き立てる尻と太もも、そして四つん這いの姿勢から地面へ垂れ下がりながらも張りのある乳房。  見るからに素敵な容姿を持った美しい女性が、犬小屋の中から出てきたのだ。まさしくその小屋の主の如く、ぺたぺたと犬のように両手両足を動かして。 「この方はとある依頼人の元恋人であり、美怜が浮気をして散々自分のことを利用してきた恨みを晴らしたいという理由を受け、改造を行わせて頂きました。なおその後、依頼人は顔も見たくないという理由から所有権を放棄。引き取る人物は他に存在しない為、現在はこのようにサンプル品として使用させていただいています」  まるで捨てられた家具をリサイクルしたかのような冷たい言い草だが、一切の偽り無い事実なのだろう。  実際、きちんと手入れ自体は行われているようだが、長時間その姿を見ていると、ところどころに汚れがこびりついているのが散見された。  美玲は人間が行う犬の真似ではなく、まさしく犬のように一歩一歩両手両足を動かし、瞳の奥のレンズを大小させながら英輔の前まで近づいてくる。 「現在は犬らしい動作を行う為のプログラムを組み込んでおります。我々が製作するロボットは、このような操作や設定変更を自由に行なえます」 「あああっ……あんっ……」    カリンは手懐けるように美玲の首下を優しく撫でる。  成人女性の容姿をしていながら、ペットのように嬌声を上げる目の前の機械人形を見て、英輔は何を言えばいいのかわからなかった。 「な、なあ、本当にそれは元々人間だったのか? あんたらが造ったロボットってことも……」 「では、確たる証拠ではありませんが、本来の人格を起動させましょう。こちらのイヤホンを装着してください」  発言が浮かばない中から捻り出した質問に、カリンは想定していたかの如くスムーズにイヤホンを体内から取り出し渡す。  言われた通りにそれを耳につけるのを確認すると、カリンは美玲に命令信号を送信。  直後、四つん這いの身体をぶるっと震わせると、美玲は突如青ざめたような顔になり、その場でわたわたとふらつき始めた。 「何よこれ!? なんで私立てないの!? やだ……服着てないし、裸!? ちょっと、何がどうなってるのよ!?」  四肢を地面についたまま、戸惑いと怒りを表情に浮かべて激昂する美玲。  だが、その激しい声が聞こえているのは、イヤホンをしている英輔とカリンのみ。  それ以外のものからは、美玲が口をパクパクさせながら動き回っているようにしか見えない。 「なによあんたたち! あんたらが私にこんなことしたっていうの!? 覚えてなさいよ、私の彼氏にかかれば、あんたらなんて露頭に…………人格データを変更しました」  憤怒に染まっていた顔は、突然のシステムメッセージと共に無に帰り、直後に緊張感の無い先程までの顔へと戻っていった。  それに合わせて、カリンが美玲の女性器ユニットをいじると、彼女は気持ちよさそうに震えながら尻を左右に振り、片足を上げて人工愛液を噴き出した。 「いかがでしょうか? 内部機構から人格データ、外観、細部に至るまで自由に扱うことができるようになります。ところで、こちらにお越しいただいたということは、私共への依頼があると推察されます。どのような内容でしょうか?」  いくつもの納得させられる材料をこれでもかとわかりやすく突き付けられた英輔。  事実であればいいなというほんの軽い気持ちだったはずだが、ここまでのアンダーグラウンドが広がっていたことに衝撃を隠せず言葉が詰まってしまう。  だが、それすらも察してなのか、カリンが相手からの返答を引き出そうとしてくれた。  ここまでくれば、もう疑う必要性などどこにもないだろう。  人間らしい感情こそ乏しいが、どこまで優れたオペレーターなのだと思いながら、英輔は心の準備を整えて口を開いた。 「そうだな、俺が改造してほしいのは……」 * * * 「ごめーん! 待ったー?」 「待ってないよ、五分前くらいに来たばっかりだから」 「よかったぁ……ちょっと電車止まっちゃってさぁー」 「もう、だったらそれ送ってくれればよかったのにー」 「それが惜しいくらい急いでたのよ! ……あれ、でもそれで五分前くらいにってことは…………」 「あっ、バレちゃった」 「もー琴美も普通に遅刻してんじゃない!」  都内のある巨大駅の改札口前で待ち合わせをしていた、二十代前半ほどの二人の女性。  たった今来たばかりの女性は、直井川奈。鮮やかなセミロングの金髪にちょっとした幼さを残しながらも大人びた雰囲気と魅力的な顔立ち、柔らかさを感じさせる大きくふっくらとした胸が浮き出る薄着に、健康的ながらも色気に満ち溢れた美しい太ももと同居した美脚。  彼女のモデル顔負けの立ち姿は、視界に入れば思わず見惚れてしまうほどのものだった。  もう一人の女性は河野琴美。川奈に比べて露出は控えめではあるが、その体型は眼を見張るものがあり、肌も白く太陽に負けない輝きを見せている。  川奈に比べれば控えめな大きさながらも手に包みたい膨らみはどこか扇情的で、ボブカットの黒髪が風に揺れては落ち着いた可愛らしい顔立ちを引き立たせている。 「ささ、早く行かないと。遅れた分の時間取り戻さないと勿体ないでしょ!」 「そうしよっか。けど、さっき通り過ぎた時、あのカフェもう人いっぱいだったよ?」 「えーー! もう電車のアホー! どうしようこの後……行ける場所どこかあるかしら……」 「川奈と一緒なら私はどこでもいいけど?」 「そういうとこ大雑把よね琴美。じゃあ……駅ビルの中にしよっか」  二人はこの日、重要な話し合いや相談などといったようなものはなく、ただ二人で遊ぼうというだけの理由で集まっていた。  予定していた場所が今の所危なそうだということに落ち込む川奈。  内容だけ聞けば、惚気のような言動をしつつもその後の選択肢に幅を大きく拡げさせた琴美。  それならばと川奈は、とりあえず目の前の巨大な駅ビルの中で適当なカフェでも探して一緒に過ごそうかと考えた。 「そうする。あんまりこの中歩いたことなかったし」 「あれ、ほんと? ならちょうどいいじゃない。あたしも服やスイーツ買ったりするくらいで歩き回るとかしたことなかったなぁ」  偶然にも互いに向かう理由が噛み合ったことに、二人ははにかみながら笑顔を交わす。  なんだか通じ合ってるみたいで嬉しいと思いながら、二人は楽しそうに駅へと向かっていった。 「琴美はこれからどうしようかとか考えてるの?」 「うん。私は一度留学しようと思ってるんだ。綺麗な建物とか景色とか色んな写真や動画を見てるうちにね、一度くらい海の向こうに行くのも良いかなーって」 「すごいじゃない……もしその時が来たら、あたしに土産話とか色々ちょうだい? 楽しみにしてるから!」 「ま、まだ決まったわけじゃないから……そういう川奈はどうなの?」 「あたしはモデルとかやってみようかなって。散々周りから勧められてるし、自分でもそれなりには自信あるし」 「絶対いいよそれ! 川奈とっても美人だし引き締まってるしかわいいもの!」  二人はしばらく駅内を散策し続けた後、一軒のパンケーキカフェへと足を踏み入れた。  ふわふわで柔らかなパンケーキの上に添えられたバニラアイスと、それぞれに選んだソース。  川奈はシンプルにハチミツをかけ、琴美は酸味と甘味引き立つブルーベリーソースを選んだ。  ソースとアイスを少しずつトッピングのようにして削りながら、パンケーキと一緒に口に頬張りつつ、二人がこれからどのようなことをしていこうかという話題を話していた。  互いに腐すこともなく本心から褒めあい、長い付き合いから理解した長所に水を与える。  将来への不安という部分は無く、二人はただ純粋にこれから何をしていこうか、どうしようかという未来に希望を抱いていた。 「……でも、最近はモデルとかってアンドロイドが台頭してるんでしょ? 川奈はもちろんすっごく綺麗だけど、アンドロイドに太刀打ちできるのかな……」 「大丈夫、人間枠の方でやるつもりだから。けど、アンドロイドに負けるもんですか」 「機械化手術とかする気はないの?」 「ないない。あたしはこのままで行こうと思ってるし、人間のまま生きていこうと思ってるわ。そういう琴美はそれに興味あるの?」 「私もちょっと興味はあるけど、今はまだいいかなって。するにしても、もう少しこのままで、心を決めたときにやろうかなって」 「そっかー……琴美がもっと可愛くすごくなっちゃうんだ」  琴美の頬を楽しそうにつんつんと突く。 「ちょっと、そうなるって前提で言わないでよー。でもこの先、川奈と会うことも少なくなっちゃうのかなあ」 「大丈夫大丈夫。話せる機会なんていつでもあるし、あたしでよければいつでも付き合うし相談にも乗るよ? だから、自由にやってきなって」 「川奈……」  口の中のパンケーキの味がちょっと鋭く感じた。  友達ながらも優しくて美人で綺麗で。隣りにいてもちょっと遠く感じてしまいそうな憧れの存在。  そんな彼女の側にいることができて本当によかったと、琴美は静かに思った。 「ほら、早く食べよ? 今日はまだまだ長いんだし、せっかくだから色んなとこに行きましょうよ」 「……そうね、そうしようか」  今日はまだ出会ったばかり。楽しい時間はこの先にも残されている。  川奈も琴美もそれを長く味わっていたい、もっと色んな事を共有してこの日を終えたいと、二人はなんだかもっとおいしくなったような気がしたパンケーキを味わい飲み込んでいった。 * * *  それから一週間後の夜。一人で帰宅途中の川奈は、溜まった疲れを解すように両腕を上げて背伸びをしながら、うーんと声を上げた。  誰もいない夜道の中で、服越しに乳房が形を変える 「しばらく予定入ってるし……どうしようかな。あさってくらいに琴美に空いてるか聞いてみようかな」  日常の中にはいくつも心安らぐ瞬間があるが、やはり大好きな友達といるときが一番に満ち足りる。  互いにそこそこ忙しかったこともあって、そろそろ向こうも会いたくなってきてるんじゃないだろうかとほぼ確定に近い希望的観測を考えながら歩いていると、反対側から一人のスーツ姿の女性が歩いてきた。  その姿はまるでマネキンのように整っており、服越しにでも端正な姿がわかる。 「あの人、アンドロイドかしら」  大抵そういう人物は人間ではなくアンドロイド。多少の偏見も混じってはいるが、ほぼ間違いない。  何食べても体型変わったりしないの羨ましいなーと思いながらすれ違おうとした次の瞬間、女性は突然俊敏な動作で川奈へと飛びつき、身体全体を使って捕まえた。 「きゃっ! な……んーー!」 「捕獲対象、直井川奈の拘束を完了。意識レベル低下を確認した後、移送を開始してください」  シリコンの唇で、言葉を発しないように口を塞ぎ、一方でとても明瞭な発音でシステムメッセージを何者かへと発する。  先程までモデルのように綺麗だったスーツ姿からは人間の面影は消え、四肢と胴体は関節を大きく外して全身を拘束具のような異形へと変化させた。  女性の口から長い舌が喉奥まで挿入され、唾液を模した麻酔薬が流し込まれる。  川奈はなんとか涙ながらに抵抗を試みるが、その締め付ける力は尋常ではなく、機械的に動く瞳以外一切の動作を見せない女性の表情は、完璧な人間の顔立ちには不釣り合いな程に冷たかった。  そして、必死な反抗も虚しく、川奈の意識は闇に落ちていった。 「対象の昏睡を確認。移送を開始してください」  それを待っていたと言わんばかりに、女性は再びほぼ同じようなメッセージを発する。  すると、気配を消して待機していたのか、数体もの同じ姿の女性型アンドロイドが姿を現した。  そして、全身を歪に変形させた女性をそのままに、アンドロイドは眠りについた川奈を持ち上げて足早に去っていった。  その場にこれ一つとして痕跡を残さぬように。 「外部命令を受信。人格01・直井川奈を選択。人格エミュレートを開始します…………んん……う……あれ……あたしは…………」  奇妙な言葉の後でゆっくりと目を覚ました川奈。  瞼を開けた先に広がっていたのは、ドラマで見たような手術室のライトのような明かり。  一体自分に何があったのか。目覚めたばかりだからか、記憶が朧気ではっきりとしない。  現状を確かめるべく身体を起き上がらせようとした次の瞬間、川奈は強い違和感を覚えた。 「あれ……身体がうごかない…………?」  怪我をしたわけでもないのに、なぜか自分の身体がぴくりとも動かない。  感覚的に動かせるのは、首から上と胸だけ。  なぜ胸が動かせるのか。今までそのようなことは出来たこともないのに、突如自由になった。 「ん……あっ……これは……な……に……?」  初めての操作感のままに胸を動かすと、乳房がぷるぷると震えながら、突起した乳頭がぴくぴくといやらしく思考に合わせて動いた。  胸の中に何かが入っており、それが関節か何かのような役目を負っているような気がする。  不思議とちょっと動かすだけでふわふわとした気持ちよさがこみ上げてくる。  怪しさが止まらない状況にも関わらず、川奈は思わず色っぽい声を上げてしまった。 「直井川奈の起動を確認。改造作業は問題なく進行しています」 「状況を確認。最終段階への移行を許可します」 「かしこまりました。二分後に直井川奈のパーソナリティの変更を開始します」  だが、そんな快感に浸らせてくれる間もなく、周囲から聞こえた女性の声が川奈を現実に引き戻した。  四方から聞こえるその声はどれもが同じ調子、同じ声色。  しかも聞き間違えでなければ、川奈のパーソナリティを変更すると言っていた。  胸に抱いた快感が抜けないままに、川奈の顔は一気に困惑の色を取り戻す。 「な……ちょっと、一体……あんっ……なにする気なのよ!?」  視界に入った一人の女性の視線がちらっと向く。その間も、彼女の動作は止まらないままだった。  なぜだか身体の方向から無機質な金属音も聞こえる。 「これより、直井川奈の人格データに商品としての変更を施します。なお、オリジナルの人格データは保存し、上書きできないように保護しつつオプションとして扱われます」  女性が口にした言葉の意味がわからなかった。まるで自分がアンドロイドであるかのように言われているみたいではないか。  そう思いながら、川奈はなんとか動く首を起き上がらせ、寝転がっているはずの自身の身体に視線を合わせた。 「――――!! な、なによこれ……! あたしの身体が……!」  川奈の視界に広がったのは、以前よりもサイズアップした張りのある乳房に、綺麗なピンク色の乳頭、一切の産毛が無いすべすべな素肌。そして、まるで切り離されたように遠くに置かれた、機械的は断面を見せる胴体と下半身だった。  自分の身長を明らかに超えた不自然な位置で、自身の下半身がびくびくと震えながらゆったりと上下に足を動かし、腰をくねらせている。  まるで自分の身体が玩具のように扱われている。だがそれよりも、川奈はなんの了承もなく突然機械化されている事実に動揺を隠せなかった。 「なんで、なんであたし、アンドロイドになって…………」  そういえば、今までよりもどこか思考がクリアになっているような気もする。もしかしたら、脳まで全て改造されてしまったのだろうか。  川奈の心が激しくざわつき、唇が震え始める。  だがそんなことはお構いなしに、女性は最終工程に入る合図を行った。 「準備が整いました。これより、直井川奈の人格データを最適化します」 「ま、待って……やめて……あたしをどうす……」  流れない涙を流しながら、川奈はこれから洗脳されていくことに怯えて涙声で中止を懇願する。  女性達は、商品の発する音声には耳を貸すこともない。  そして、容赦の無い外部操作の介入が行われた。 「あああああ……あううああああ……ああ、あたしはあたしは……あああ……ぁぁ……」  電子データと化した川奈の意思に、外部から次々と変更や設定が加えられていく。  そんなのは絶対に嫌だと抵抗しようとするが、所詮今の直井川奈という人物のアイデンティティはプログラムの塊であり、手を加えられればどうすることもできない。 「いいい、や、いや、いやややや、あたしはにに人間で人間で人間で、アンドロイドじゃないのじゃないのののの!! あたしは直井川奈でででで、機械になるなんていや!! あたしは琴美が大好き大好きで、あたしは…………?」  何度も何度も自分は人間だと言い聞かせて、必死に抗おうとする川奈。  彼女の頭部はがたがたとベッドを揺らす程に震え、乳首が何度もぴくぴくと跳ねる。  だが、そんな人格を改竄されていく感覚に、川奈はだんだん快楽と安心感を覚え始めた。 「いいえ、あたしは人間です、人間……? ではなく、人間ではなく、依頼により改造を施されたユニットであり……? はい。了承します。やめてえええ!! あたしは人間に奉仕奉仕奉仕ししするためにに、あああたしはこの身体を捧げることが幸せ幸せ幸せ…………」  なんなのこの感覚は……? あたしはずっと前から人間で、人間なのにあたしはロボットになる……? なっています。なります。なりました。はい。あたしは機械化処置を施されてとても幸せです。あたしはユーザーに心地よく使用していただくために生まれ……? 調整中……生まれました。生まれたもの。私を使用していただけるユーザーは…………未入力。ユーザー名を入力してくださ…………受信中。ユーザー名、板野英輔。板野英輔様に早くお仕えしたいわ……ああ……私は、あたしはもっとこの機能を使用してユーザーへと奉仕をしたい……。 「あたしは、直井川奈は、板野英輔様に快適な生活を送り届けるためのロボットです。あたしの幸せは板野英輔様に壊れるまで使用していただくこと……」  名前を聞いたことも対面したことも、ましてや視界に入ったことすらない相手を様付けし、幸福感に満ち溢れた声色で、ユーザーと登録された見ず知らずの人物の名前を口にする川奈。  基本的にこの場で改造された人間達は、依頼者の意思がなければとても従順に設定されており、決してどのような命令があっても、人格エミュレートの反応以外では断ることはない。  あまりにも都合の良い奴隸ともいえる機械人形。だがそれこそが、人々を引きつける噂となっているのだった。 「設定を完了しました。編集した人格データを新たに保存し、人格02・直井川奈と定義。デフォルトの人格として設定します」  そんな行為に対して、女性は一切の喜びも嫌悪も示さず、淡々と作業を進めていく。  こうしてまた一人、血も涙もない女性型アンドロイド達の手によって、新たな機械人形が完成したのであった。 * * *  川奈が密かに改造された次の日。その機械化を依頼した張本人である英輔は、都市伝説通りに存在した機械化サービスからの連絡を受け、いまかいまかと商品の到着を心待ちにしていた。  英輔は川奈と出会ったことなど一度もなく、関係性すら全く無い赤の他人。  彼女を改造してほしいと思い立ったのは、通りすがりに見かけた相手がとても美人かつ好みであり、あんなエロに満ち溢れた身体も自分のものにしたいと考えたからである。  当然そのような独りよがりな夢は、まさしく夢物語に終わるのが多いが、それがまさか本当に叶えられるとは想像もつかなかった。 「早くこいよ……何も無かったら承知しねえからな……」  溢れ出る期待からの悪態をつぶやきやがらじっとしていたその時、玄関のチャイムが来客を知らせた。  ついに来たかと即座に立ち上がり、足早に向かって入り口のドアを開けると、そこには大きな荷物の箱と共に女性配達員が鎮座していた。 「ご依頼の商品をお届けに参りました。速やかに荷物を室内へお運びください」  そう言うと女性は、軽々と荷物を持ち上げて、位置関係を調節しながら英輔の家の中へと運び入れていった。  箱が全て収まりきったことを確認すると、女性は無感情な笑顔を向けて頭を下げ、その場から足早に去っていった。  去り際に、女性の表情がふっと無に帰る瞬間を目撃した。 「あれもロボットなのか……おっと、こうしちゃいられねえ。早く出さねえと……うわ重っ」  これまでのやり取りや挙動からして、受付の女と同じロボットなんだろうなと思いながら荷物を持ち上げると、予想外の重さに腕が引っ張られてしまった。  見た目に全く釣り合わない怪力に改めて機械らしさを感じつつ、英輔は自室まで依頼品が入った箱を移動させた。 「いちいち考えなくてもいいな。とっとと開けちまうか」  余計なことを思う時間も惜しいと、英輔はハサミを使って手際よく箱を捌いていった。  その先に姿を表したのは、バラバラの状態で綺麗に収納された一糸まとわぬ女体の姿だった。  四肢、下半身、上半身、首と大まかに分けられており、この光景だけでも一物が熱く滾るものがある。  収められた女性の顔は、間違いなく依頼したターゲットのそれであり、望んだ相手がこうして自分のものになったという実感をさらに高めてくれた。 「これが説明書か。それと……アクセスコード?」  彼女の全身以外にも、ローションらしき液体や肌色のクリームやジェル、そしてQRコードと謎のアクセスコードらしき文字列が記された紙が同梱されていた。  ひとまずそれは置いておいて、英輔は早速名も知らぬ彼女の組立作業に入った。  口内や体内に入った梱包材を取り除き、それぞれの部品を取り出していく。  肌や唇、太ももや胸を触る度に、人間と遜色無いどころかそれよりも気持ちいいようで、人間らしいほんのりと温かな体温を感じさせない、アンバランスで不思議な感覚を覚える。  いくら性的な行為をしても一切の反応を見せず、ラブドールのように欠片も動作を見せなかった。 「まずは首からか」  一旦はそのまま進めようと思ったが、このような機械の扱いはやはり最初はあまり突っ走らない方がいいかもしれないと、QRコードの説明書を読み込み、頭部から一つずつ繋げていく。  頭部、上半身、下半身、四肢を繋ぎ終えると、そこにはデフォルトの状態でも殆ど継ぎ目の目立たない機械人形が形を成した。  見かけた女性本人を改造したのではなく、そのそっくりのロボットを造ったと言われてもそちらの方を信じるだろう。 「んで、首筋のスイッチで起動か」  初めて買った家電に向けるような手付きで、英輔は仰向け状態の女性型ロボットをうつ伏せに動かす。  大きく柔らかな胸が自重で形を変える。  そして、周囲の皮膚との違いが全くわからない小さなパネルを開くと、そこには電源ボタンと充電用途らしき接続端子が姿を表した。  おそらく最初なら充電は大丈夫だろうと、英輔は説明書通りにボタンを長押しする。  女性型ロボットの胴体と頭部から、耳を澄まさないと聞こえないようなレベルで微小な機械音が聞こえてくる。  それから十秒程経ってから、床を向いていたままの顔が動き出す。  無感情に瞼を開き、瞬きをして上下左右に眼球を動作させる。  視線が奇妙な程に真っ直ぐ向くと、ぴくんと両手両足の指が震え、ゆっくりと四肢を動かし始めた。  一連の挙動は街に蔓延るアンドロイドの姿よりもどこか機械的で、この瞬間だけ見ればまさしく機械人形だという印象を抱かざるを得ない。  そして、寝転がったときの方向のまま立ち上がったロボットは、全裸のまま180度方向転換し、座り込んでいる英輔へと視線を合わせる。  眼球内のレンズを忙しなく動かし、英輔の顔にピントを合わせる。それがインプットされた所有者の顔だと確認すると、ロボットは定型文的な笑顔で頭を下げた。 「初めまして、板野英輔様。私は板野英輔様の専用アンドロイド、直井川奈と申します。直井川奈という名前は、依頼通りに原材料となった私の人間だった頃の名前と同一の物です。もしご希望でしたら、いつでも名前の変更は可能ですので、英輔様の望むものを是非入力してください」  とても丁寧に自分の説明を告げる、直井川奈と名乗った女性型アンドロイド。  そのアナウンスのような声も、すれ違いざまに耳にしたそれを寸分違わずそっくりではあるが、未だ抜けない精巧に作り上げた複製であるという疑い。  自分で人間を原料にしたとは言っても、それが本当かはわからない。 「おい、本当に人間を原料にしたのか? 単にそっくりに作ったってだけじゃないのか?」 「そう疑われるのも無理はありません。私は依頼通りに直井川奈から作り出された愛玩用アンドロイドです。この顔も、髪も、スタイルも、四肢も、声も、全て本人のものです。私の電子頭脳には、私が人間として産まれた時の記憶全てがデータとして保存されており、そちらの紙に書かれたシリアルコードには、クラウド上に保存された、英輔様が依頼した日から改造当日までの、第三者視点の生活風景を映像として残しています。私を楽しむときの特典として是非ともお楽しみください」  自身の魅力的な肉体やアイデンティティを、つらつらと付属品のように喋り説明する川奈。  既にそこには、機械となることを拒絶し叫んでいたような彼女の姿はない。今の川奈は、出会ったこともない英輔の従順なる下僕の機械人形である。 「大まかな説明は以上です。現在の説明は、予め組み込まれた説明用の擬似人格を通してのものとなっております。この後、本来の人格を調整し従順に作り変えた、人格02・直井川奈を起動します。なお、この人格データはデフォルトに設定されていますが、本来の人格を楽しみたい場合は、人格01・直井川奈がそれに該当しますので、お好みによって変更してください。それでは、人格エミュレートを開始します」  街中やネット上の広告、度々見かける機械化した人々とは似ても似つかない程に隷属的な川奈。  全身を電子部品に置き換えることは、新たな可能性を拡げると共にここまで人間の尊厳を奪うこともできるのかと驚きつつも、英輔は目の前の女体に胸の鼓動を高めていた。  そんな熱い視線に応えることもなく、再び目を閉じた川奈は眠りから醒めたように三度瞼を開いた。  それまでと違って明らかに表情が柔らかくなっており、仕草や細かな挙動にもとても人間らしさが宿り始めた。 「…………あっ、ちゃんと組み立ててくれたのね……嬉しいわ英輔様」  人格エミュレートを開始した川奈は、初対面のマスターに様付けで呼び、設定された強い好意で接し始める。  人間の時であれば恥じらいを見せていたであろう全裸にも一切気に求めず、その感情を全て英輔へとぶつける。 「本当に俺の物になったんだな……あの通りすがりに見た可愛い娘が」 「そうよ。あたしの全ては英輔様のもの。どんなことしてくれたって構わないわ。なんだったら自由にパーツを組み替えちゃってもいいし、壊しちゃってもいいのよ?」 「じゃあ、早速セックスとかしてもいいか?」 「もちろん。あたしの膣はね、英輔様を気持ちよくするためにあるんだから。ほら、とってもひくひくしてる」  恥じらいもなく、川奈は前面に下半身を突き出して、人工愛液で濡れ湿った膣を指で広げて見せつける。  主人を求めてひくひくと動く鮮やかなピンク色は、生物的な情欲を掻きたてる。  英輔は我慢できず、衣服を全て脱ぎ去り硬くなった男根を思いっきり突くように挿入した。 「ああああっ!! え、英輔様ぁ……激しすぎて、いきなり変になっちゃうう!! おっ、ああっ! あんっ、あああっ!!」  ぐちゅぐちゅと作り物の肉と生きた肉棒が絡み合う。  川奈の膣はこの世で最も愛する主人のために膣肉で優しくかつ大胆に攻め立てながら、人間ではできないような動作も交えて快感を与えていく。 「もっと、もっとほしいの……英輔様ぁ……あんっ、うあっ……」  所有者に性的興奮を与えられているという幸福感と、女性器ユニットからもたらされる快楽信号が重なり、川奈の人格データはピンク色に染まる。  あまりに予想外な、人間や単体の性玩具を超えた気持ちよさに、性欲が溜まりに溜まっていた英輔は、早速の交わり合いから間もなくして膣内に白濁液を撃ち込んだ。 「ああっ! いいいっ!! 英輔様のあついのがあたしのなかにいいい……あっ、あうっ……きもちいいの…………」  英輔の精液は女性器ユニットを通して、内部の肉筒に接続された無機質かつ単純な精液タンクへと注がれていく。  その位置は本来、子を成す為の子宮が備わっていた場所だったが、今の彼女にはそんなものは必要ない。ただ人間の為に奉仕する機械人形には、それで充分なのである。 「あっ……あっ……妊娠しちゃいそう……あたしの中ぁ……」  当然これも、人間らしい反応の為に施された台詞の一つである。  彼女自身も己の構造は理解しており、無機物となった今、受精のような生物的行為を行うことができないことは知っている。これは相手を喜ばせる為の見せかけの台詞だった。 「もう子作りもできねえロボットの癖に。おらっ、ケツ向けやがれ!」  もうこの女は、個人ではなく俺の所有物。何をしても許されると味をしめた英輔は、射精後の性欲冷めやらぬままに立ちバックのような姿勢を取らせ、女性器とアナルを向けさせた。  川奈の陰部はもとより、排泄器官だったはずのアナルも今は性器の一つとして作り変えられている。  人間とは違いとても清潔に作り変えられており、中出しされても膣内同様に子宮代わりのタンクに注がれるようになっていた。  英輔はアナルを舌で舐めて濡らした後、先程と同じく激しく突き始めた。 「ひあああっ!! あんっあんっ……もっと、もっとついてええ……アナル突かれて、作り変えられてとってもきもちいいの……あひいっ! こ、こんなの初めて……ひぎっ!!」 「こっちの締まりも最高だな……人間のそこなんて舐められたもんじゃねえけど、ロボットなら綺麗に作られてるもんなぁ……」  女性器ユニットに劣らない動作で一物を包んでは刺激し、新たな快感を主人へと与える川奈。  人間だった頃の彼女は紛れもない処女だったが、機械化させられるにあたって、相手を満足させる為のテクニックをインプットされていた。  それは人間にはできないものまで含まれている。 「もっと……もっとほしいの英輔様ぁ……どっちの穴も欲しくて欲しくて仕方ないの……もっと出してぇ……」  そうして二度目の絶頂を迎えた英輔。その液の量は衰えず、排出口であるはずの肉壺からそれは吸い込まれていき、再びタンクへと溜め込まれていった。 「はぁ……はぁ……うっ……そういやこいつ、取り外しもできるんだったよな……」  英輔はここで、川奈は身体の一部を取り外したままでも稼働させられることが説明書に記載されていたことを思い出す。  それなら尻を突き出したような姿勢のまま、上半身をひっくり返して胸を揉んだりキスしたりすることも可能ではないか。  英輔は早速外部操作から接続部のロックを外し、上半身と下半身を離れさせた。  かちゃりと人体に似つかわしくない音がなると、川奈の身体はあっさりと離れ離れになってしまった。  下半身の断面から僅かに顔を覗かせている透明な精液タンクの中では、二度吐き出された精がこぽこぽと揺れている。  まるで猟奇殺人の現場のようだが、それぞれ二つの部位は何も問題なく動いていた。 「あっ、ちょっと……何するんですか英輔様」 「こうするんだよ」  英輔は重そうに上半身をひっくり返して持ち上げ、腰の上へと背中を乗せる。  人間としては非常に歪んだ姿となってしまったが、今の川奈は何も不思議に思わない。むしろそれが望まれたものならば、喜んで受け入れる。 「あはあっ……英輔さまぁ……そんなに胸を強く掴まれたら……ぁ……すぐにイっちゃう……あんっ……」  上半身の快感に合わせて、下半身の腰が、膣が、指が、足がぴくぴくと呼応する。  どんな体位でも喜んで受け入れる理想的なラブドール。それが本物の人間から造られたという背徳感も合わせて、これほど極上な体験は決して他では得られないだろう。 「こんな名器が俺のもの……うあっ……お前……ほんと最高だわ……うっ」 「んあっ……あっ、あっあっ……あひいっ!! あ、ありがとうございます英輔様……あたし、英輔様の物になって、とっても幸せぇ……あはああっ!!」  大好きな友達のことなど一切思い浮かべず、彼女の機械脳にあるのは目の前の男への絶大なる作り物の従属心のみ。  全てを主人が望むままに捧げて、そこに疑問すら考えることもない。  巷に溢れるアンドロイド達よりもやや低いスペックで、汎用性を重視して造り変えられた彼女は、この日、予め貯められていた少ない充電残量を吐ききるその時まで、英輔の淫欲を心ゆくまで満たしてあげたのだった。


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