同級生の複製品 1話先行公開版
Added 2019-12-08 17:18:48 +0000 UTC現代から時間が大きく進んだいつかの未来。 人類が積み上げてきた機械技術の向上によって人間と容姿も人格も殆ど変わらないアンドロイドが製造されるようになり、人々の生活や町並みは大きく塗り替わった。 些細や日常生活の手助けから事務作業肉体労働の補助、風俗店の性接待、交通機関のガイド役等。もはやその姿を見ないことは無いとすら言えるほどの進出ぶりを見せていた。 それと並行するように、人間と同じ存在、道具、友達、備品と、個人によって無数に分かれる機械人形への扱いは、日常や仕事、いくつものライフスタイルに強く影響していた。 ある人物は、アンドロイドを新しい家族として迎えて人間と同じように扱い、またある人物は動く展示品として扱い、店舗の終業時間となれば立ち姿のまま電源を切られ次の日の朝を待たされる。 どのように扱われていようとも、アンドロイドという存在の素晴らしさは色褪せることは無い。 そしてその能力は、いつしか人間の手にも機械化という形で届くようになった。 生まれ持った生身の身体を捨てて、一切の全てを電子部品と金属部品で構成された存在となることで、アンドロイドの利点を持ちながら人間としての待遇も享受するという、まさしく至れり尽くせりの全身改造。 当初は年齢制限を設けられていたが、いつしか対象年齢は無制限となり、未成年の時点で機械化した者にはメモリに保存された記憶履歴から計算された身体の成長が施されるようになった。 人間と機械の境界は殆ど存在しないと言っても過言ではない未来の世界。 しかし、アンドロイドや完全機械化を果たしたサイボーグは、どこまで行っても機械であることは間違いない。 生身であることの脆弱性が存在するように、機械だからこその脆弱性もまた存在するのである。 * * * 「おっはよー尚希! どうしたのそんな沈んだ顔して、寝不足?」 「あー……おはよう……まあそんなとこ……」 秋ももうすぐ終わる時期、都内のとある高校の三年生の教室。次々と生徒達が入室してくる登校の時間帯。 ぐったりと気怠げに机に突っ伏している男子高校生の近藤尚希。 そんな彼に気さくに話しかけてきたのは、隣の席の七瀬紗耶香。 女子生徒の中でも比較的背が高く、制服の下からでも理解できる程の造形美を感じさせられる体型を持ちながら、男子生徒の注目を集めるであろう大きさの豊満な胸を兼ね備え、顔立ちもほんのりとあどけなさを残しながらも周囲より大人びた、お姉さん的魅力溢れる顔立ちに似合うさらさらと艶めく髪。 まだ成人していないにも関わらず境目から両方の魅力をかけ合わせたような、快活な雰囲気を帯びる彼女は、この高校でも憧れの眼差しや人気を集めている人物であった。 そんな紗耶香と尚希は、そこそこに仲の良い関係性を持っている。 三年連続で同じクラスというやや腐れ縁に近い付き合いの長さに、出会うのはほぼ学校内程度ではあるが、そこそこ気軽に話し合う同士。 特に今は席が隣り合っていることもあって、休んだ日の後には授業内容データを端末にコピーさせてもらったり、忘れ物を貸してあげたりと、まさしく友達という雰囲気があった。 「もう、寝ないのは身体に毒なんだからちゃんと寝なよ? 一体何やってたのよ」 「…………なんでもいいだろ…………ふああねみい…………」 気さくに話しかけてくるのは紗耶香側からの方が多く、肩を軽く叩いたり拳でコツンと叩いたり出会い頭になんでもない話題をふっかけてきたりと、隣り合ってからは特にそのような状況が多くなっていた。 「えー別にいいじゃない。映画でも見てた? 配信とか?」 「まあそんなとこ。飯食ってもまだ微妙な気怠さあってさ……」 「そりゃそうでしょ。けど、相変わらずすごいよね。一人なのにちゃんと朝ご飯食べてるとか」 尚希の両親は現在長期の海外業務へと出張しており、もう高校三年生ともなれば一人でもなんとかやっていけるだろうという判断と、きちんとした話し合いのもとに、実質一人暮らしの状態が作り上げられていた。 一人で朝起床し、準備も整え朝食も済ませ、そして登校する。 そんな事情を知っている紗耶香は、口に出した通りすごいなあと素直に称賛していた。 「つっても、パン焼いたりインスタントばっかだけどな。俺んちにもアンドロイドの一体くらい買ってくれりゃいいのに」 「まあその方がいいよね……あ、そういえば私ね……あっ、先生来た」 ふと何か新たな話題を切り出そうとしていたその時、教室に担任を務める女性教師が入ってきた。 長袖の特徴の無いスーツ姿に首筋から見える端子、首や手首からはっきりと見える継ぎ目は、彼女がアンドロイドであるというこれ以上ない特徴を示している。 「皆さんおはようございます。本日の欠席者は0名ですね。しかし今は季節の変わり目。体調を崩しやすい時期なので、もし体調が悪くなる前兆があったり、なんだか気分が悪いかもしれないと思ったら、遠慮なく端末から私に知らせてくださいね」 肉声との違いが全くと言っていい程にわからない電子音声と、優しげな印象を作り出す笑顔多めの話し方、何より美人教師として造られた彼女の造形が、朝の教室の空気を和らげる。 生徒全員の机にはやや大きめな携帯端末が備え付けられており、持ち出しや個人所有の端末ともデータ共有が可能となっている。 さらにはアンドロイド教師の電子頭脳とも無線通信によって繋がっており、体調不良や 質問には、現実での授業を行いながらも一対一で直接応答してくれる。 まさに理想的な教育環境が構築されていた。 「あっ、もう佳奈子さんったら。充電をし忘れてしまったんですね」 眼球のレンズで生徒達の状態を一人ひとり確認していくと、端席で首がかくんと項垂れたまま動かなくなっている女子生徒を一人確認する。 先生は仕方ないなあという仕草を見せつつ近づき、首筋に二つ端子に机から伸びる充電ケーブルを差し込んであげた。 佳奈子と呼ばれたややギャル系の雰囲気を帯びた女生徒は、下を向いたまま虚ろになった瞳に光を取り戻し、ゆっくりと感情のない動作で首を上げた。 「充電が開始されました。バッテリー残量は現在1%です。セーフモードを解除し、人格データ今田佳奈子を起動します」 とても機械的な言葉遣いで淡々と喋った後、数秒の沈黙から佳奈子は自然な表情を取り戻した。 直後、恥ずかしそうに顔を赤らめながら軽い口調で謝った。 「あーごめん先生、ちょっと昨日夜更ししてたらスリープモードすら入らず充電も忘れちゃってさぁ」 「佳奈子さん、たとえ機械の身体になっても睡眠は大切ですよ? 充電は人間の食事と同等のものなんですから、ルーティンにでも組み込んでおいてくださいね」 「はーい……みんなごめんね? あたしあいっかわらずこういうとこ抜けてんだよねぇ〜」 人間と機械が入り混じり、現代技術が投入された学校環境。 まさしく次世代の子達が育て上げられるには絶好の環境と言えるだろう。 「それじゃあ一時間目の国語はそのまま始めますから、必要なファイルの準備を済ませておいてくださいね」 そして朝会が終わると、そのままスムーズに授業へと入っていく。 尚希は先程紗耶香が言いかけたことは何だったんだろうと思いながらも、ほんの一瞬だけだったためにすぐに記憶の隅へと移動させ、そのままいつものように授業へ意識を傾けていった。 * * * 「ただいまぁー……うーさみいっ」 「おかえりなさいませ、尚希さん。飲み物は必要ですか?」 「いや大丈夫。部屋の暖房つけといて」 「尚希さんの部屋の暖房を起動しました」 一日の授業を終え下校、一人だけの一軒家に帰宅した尚希。 扉が開くと同時に玄関の明かりが点灯し、備え付けのAIスピーカーに話しかけて一人部屋に着くまでに快適な環境を作ってもらう。 「ったくよ……紗耶香の奴、いっつもあんな近い距離で話しかけてきてよ……」 小さく愚痴っぽい口調で独り言をつぶやきながら、疲れを床に流すようにふらふらとした足取りで移動する尚希。 自動ロックの鍵を開け部屋に入り、端末の入ったカバンを優しく放り投げる。 そして、やや乱れたベッドの上に頭から突っ込んでいった。 「あーーーーもーーーー!! あんなかわいいのに近づかれたらドキドキするに決まってんだろうがよーーーー!!」 無数に混ざりあった感情を声にして、ベッドの中へと吐き散らす尚希。 彼は美少女の紗耶香とそれなりに仲良くなっても、絶対に学校では動揺や焦りを見せないようにと平常心を装いながら、その裏では思春期らしい性の感情を爆発させていた。 あんなエロい体をしていて、あんなに可愛い容姿をしていて、それでいて気安く触れ合ってくるのだから何も思わないわけはない。 なんとか平静を保っているが、側にいたらいいニオイもする。 青少年の心がそれで乱されないわけがなく、尚希は時折その時の記憶を用いて自慰や妄想に耽る時もあった。 「…………あーーーー…………はぁ…………飯でも食うか」 もっと深い関係になりたい、セックスもしてみたいと邪な気持ちを抱くこともあるが、彼女は間違いなく高嶺の花。そこまで踏み込む勇気もわかない。 そんな機会かいつか訪れればいいんだけどなと思いながら、尚希は一回に降りてキッチンに向かい、夕食の準備を始めた。 「ほんと、アンドロイドくらい欲しかったな。慣れたけど飯作るのめんどくせえ……」 家事や一人だけの家内を見る度に思う、家事手伝いをしてくれるアンドロイドがほしいという願望。 女性型がいれば、悶々とした感情を今以上に抱えなくても済むのかもなあと思ったり、用意された飯を久々に食べてみたいとも思ったりしながら、尚希はこの日も自分の為に簡単な料理を支度した。 * * * それから二週間ほど経った、気怠げな気持ちになる月曜の朝。 いつもよりも早く目が覚め、身体もそれなりにスッキリとした気分に満ちていた尚希は、せっかくだからと散歩も兼ねたちょっとした大回りで登校することにした。 いつも決まった最短の道で歩いていた分、周囲の光景は代わり映えしない味気ないものと感じてしまう。 尚希は月曜朝の憂鬱を少しでも和らげるためな、余裕があるなら寄り道も兼ねてそんなルートを通ってもいいだろうと思いながら、携帯端末をある程度頼りにしつつ外へと歩き出した。 「さっみい……結構冷え込んできたな……」 冬へと近づくにつれて、冬用制服だけでは物足りなくなる時期へと入っていく。 普段の通学路には無いコンビニでホットドリンクや念の為のカイロを買いつつ、改めて新鮮な道を進んでいく。 道中には、冷え込む温度ながらそれを気にしていないかのような露出度の高い女性も見受けられる。 思わず肌寒い感覚をその身に受けてしまいそうな女性の肌には所々に継ぎ目が見受けられ、それが無い人物にも、首筋に接続用端子が確認できた。 「すげえなあ、機械ならあんな格好もできるもんなんだな……」 機械だからこその冷感対策や、感情値への影響緩和と、人間よりも即効的な対策を施すことができる機械人形達。 エロいと思いつつ寒そうという印象を抱きながら移動していたその時、尚希はやや広い間隔の建物と建物の間で立ち尽くす、妙に身綺麗なスーツ姿の女性に目が移った。 「なんだアレ。なにしてんだあんなとこで」 隙の見当たらないくらいに着こしている、多くの人々行き交うビル街の中を歩いていそうな姿とは対象的に、朝日と建物の影の狭間に立っている姿はどこか妙な興味を誘うものがある。 数秒の間その女性を目にしていた直後、その人物が尚希の方へと近づいてきた。 目前まで距離を縮まった頃には、その女性の関節部に入っている継ぎ目や瞳の奥で動くレンズが視界にはっきりと入ってきた。 「おはよう学生さん。ちょっといいかしら?」 「え、まあはい」 高校までの道程の余裕から、思わずはいと答えてしまった尚希。 「貴方はどこかのアンドロイドや誰かのコピーが欲しいと思ったことはない?」 「……はっ? いや別に……アンドロイドなら欲しいと思ったことはありますけど」 コピーとは一体どういうことなのか。女性はそのまま押すように話を進める。 「貴方にこれをあげるわ。これをアンドロイドやサイボーグの端子部分に差し込めば、この中に全データのコピーが行われるの。それが出来たらまたここにいらっしゃい。後日、それとそっくりそのまま同じ機体をプレゼントしてあげる」 そう言って手渡されたのは、手の中に収まる大きさのUSBメモリ。 質問するような間も入れさせず、予め入力されたメッセージの如くつらつらと説明を口にする女性。 だいたいの内容は理解したし何をすればいいかもわかったが、なぜ初対面の相手にこのようなことをしているのか。 どう考えても怪しい勧誘としか思えないが、その女性の無機質にも感じる勢いに押されたまま、尚希はああ、はい、と生返事を度々返していた。 「それじゃ、また後日待ってるわね」 全て説明し終えると、女性はまるでゲーム内NPCのように再び影の中へと消えていった。 「……なんだったんだ一体」 結局流れのままに受け取ってしまった尚希。 そのまま適当に捨てるわけにもいかないしと、どうにも処理に困る状況となってしまった。 「……まあいいか。行くか」 現状ではどうにもすることはできないが、まあ帰って捨てればいいかも思いながら、内心で時間に余裕を持ってよかったと安堵しつつ改めて高校へと向かっていった。 そして教室。休日明けの生徒達がそれぞれ友人と話したり予習したり、改めての荷物確認と、千差万別の行動を取っている。 「そういやまだ来てないな紗耶香。いっつもこのくらいには来てるのに」 ふと時計を眺めると、間もなく朝会が始まる時間。 普段であれば既に来ているはずの紗耶香の姿がどこにも見えなかった。 休日中に風邪でも引いたんだろうかと思ったその時、教室の入り口にその紗耶香の姿が確認できた。 しかし、その姿はいつもより明らかに違うものがあった。 「おはよー。みんな元気?」 「おはよ……えっ、紗耶香!? なんだか前より肌綺麗になってない? もしかして……機械化した?」 「そ、当たり! 私ね、一昨日誕生日だったからさ、18歳の記念として完全機械化してもらったんだー!」 「えーすごーい! 肌ぷにぷにしててやわらかーい!」 紗耶香は休日の間に訪れた誕生日の記念として、以前からしようと考えていた全身機械化を行っていた。 側にいたクラスメイトの女子が早速、頬に指で触れたり手足の人工皮膚に触れたりと、興味津々に触れ合っていく。 見た目には全く人間と区別のつかないその姿。首筋の接続端子が無ければ、人間のままだと言われても見破ることは難しい。 「マジか、あいつ機械化受けてたのか……」 何も聞いていなかった尚希は、遠くからその話を聞き驚きを隠せなかった。 そんな素振りも見せていなかったのに、いつ頃からそれを考えていたんだろうと思っていると、その紗耶香が着席のために尚希の方へと近づいていった。 「おはよー尚希。どう? 私機械化したんだよ?」 いつもと変わらない人間らしい動作で腰を曲げ、ぐっと顔を近づけて生まれ変わってから最初の挨拶を交わす紗耶香。 ぐっと眼の前に現れた瞳の奥では、レンズや内部機構が彼の顔を見るためにせわしなく動いている。 顔の皮膚も産毛や毛穴一つ見当たらず、人間の肌に限りなく近い質感ながらほんのりと人工物の雰囲気を醸し出していた。 なんでもない機械の動作なのに、彼女がそれを行うとなんだか魅力的にも、なぜだか背徳的にも感じて胸の鼓動が高鳴ってくる。 尚希は内心の感情を無理矢理抑えながら、いつも通りの対応を返した。 「お、おう…………すごいな。けど、どうしたんだよいきなり。それするみたいなの一度も言ってなかったじゃねえか」 「まあね。皆をびっくりさせたいなーって思って。まだこの身体に慣れてないところだけど、これから少しずつ慣れていくんだ」 そう言うと、紗耶香は注目させようと何度も口に指を差す。 「ほら、こういうこともできるんだよ。機能全部わかったわけじゃないけどさ、こういう所で私機械になったんだなーって思ったりするの」 紗耶香は唇をきゅっと閉じたまま、はっきりとした発音で喋りかけた。 口内の状態や唇の動作に左右されないスピーカーからの発話。新しく革新的な玩具をもらってはしゃぐ子供のようにも見えた尚希は、思わず笑みが溢れた。 「腹話術やりたい放題じゃねえか」 「そういうこと! ま、私がその人形みたいなもんだけどね!」 「すげえなあ……ああそれと、誕生日おめでとうな」 遠くから話を聞いていた中で、そういえば確かにそんな時期だったなと思っていた尚希は、何気なく祝いの言葉をぶつける。 紗耶香はほんの少し時間が止まったような隙間を作った後、柔らかな笑顔で返す。 「ありがと尚希。あ、そろそろ朝会始まるね」 ひとまず会話を中断し、着席して荷物を整理する紗耶香。 全身機械化した後でも、いくつかの細かな動作が気になる以外は人間だった頃とそんなに変わらない。 まさか彼女が機械化するとは思わなかったが、これからの日々にさしたる影響もなさそうだと、尚希はこの時思っていた。 * * * その日の夕方、既にクラスの皆が帰宅しもぬけの殻になった頃。 尚樹は図書館に危うく返し忘れていた本を返却しに行き、その時間を教室に残した携帯端末の充電に当てて、それから帰宅しようと考えていた。 「昼に使いすぎたなぁ……しかもその後の授業中充電できなかったし」 普段あまり利用しないこともあって、少々道に迷いながらも自分の見通しが甘かったことを反省する尚希。 早く帰ろうと教室に足を踏み入れると、そこには誰もいない教室の中で一人だけ、自分の机の周辺で何か探しものをしている様子の紗耶香の姿があった。 「あれ、どうしたんだよ紗耶香」 「ああ尚希? ちょっと鍵落としちゃって。うち早く無線キーにしなよって言ってもいっつも後回しになってさぁ。もうこういうことがあるから嫌なのよね」 「その辺りにありそうなのか?」 「目ぼしいとこは探したし、一時間前までは確かにあったからこの辺りだと思うんだけど……」 大変だなあと思いながら周囲を見渡すと、紗耶香が探している地点から大きく離れた場所に鍵らしき金属の物体が光を反射しているのが見えた。 誰かが無意識に蹴り飛ばしてしまったのだろうか、それを教えようと紗耶香の方を向いたとき、彼女の首筋にある電子機器と接続可能なことを示す端子に目が移る。 直後、尚希は早朝に出会った謎のスーツの女性、そして渡された怪しいUSBメモリのことを思い出した。 「コピーして……自分のものに……」 目の前の状況と、口にしていた言葉が合致する。 そんなこと思うわけがないと思っていたが、まるで神が示し合わせたかのようにその状況が訪れた。 思えば今まで、魅力的な体型を持った美少女でありながら自分に気さくに話しかけてくれる度に、無理矢理抑え込むような劣情を催していた。 仲が良いだけに彼女自身に手を出すことはできない。しかし本当にコピーが手の内に入るなら、そんな溜め込んだ情欲を吐き出せるのではないか。 危害を加えるようなことは駄目だとわかっていても、尚樹の手は自然とポケットに伸びていく。 そして、そのまま流れるようにUSBメモリを持って手を伸ばし、そのまま差し込んだ。 「ねえちょっと手伝ってくれな…………………」 直後、普段通りにスムーズに話していた紗耶香の喋りがぴたっと中断された。 それどころか、手足や身体、口や瞳の動作も全て、まるで時間が止まったかのように動かなくなってしまった。 USBメモリのランプは点滅しており、データコピーを行っている最中であることは伺えるがそれどころではない。 「う、動かなくなった……お、おい紗耶香……?」 ピタリと同級生が動かなくなり、焦らないはずがない。 尚希は恐る恐る肩に触れて軽く揺らしてみるが、膝をついて探しものをする四つん這いの姿勢から変化する気配は全く無く、まるで物を揺らしているような揺れ方をしている。 彼女を壊してしまったのだろうかと罪悪感に苛まれるが、ふと尚希は彼女の頬に軽く触れてみる。 「本当だ……柔らかい」 女性的な人肌の柔らかさに、人間のそれとほぼ変わらないがどこか作り物っぽい体温。 指で突いてみても、精巧な人形の如く動きだす様子はない。 その内なる欲求はエスカレートし始め、今度はぽかんと開いた唇に触れる。 指先で触れるだけで鼓動が高鳴る。その感触が脳に刻み込まれる。 軽く下に力を入れると紗耶香の口が今よりも開き、口内に溜まっていた人工唾液がだらっと垂れてきた。 「やべっ、拭いとかないと……」 もしまた動き始めた時にこれを見られたら、停止中にべたべた触れていたことを察せられて何言われてしまうかもわからない。 ポケットからハンカチを取り出し床に落ちた粘液を拭き取るが、口内から出るそれが溢れるのが止まらない。 尚希は首少し上に動かし、唾液の排出をせき止めた。 「…………動かないなら、ちょっとだけ触ってみても…………」 興奮で呼吸が荒くなる。 反応しない今なら何をしても大丈夫、なのかもしれない。 尚希は出会う度にいつも視界に入ってはその魅力に劣情を催していた乳房を、制服越しに触れてゆっくりと手を上下させるようにして触れた。 「うわ……すげ……これが紗耶香の巨乳か…………」 制服の感触越しにでもわかる、手に伝わる至福の感触。 生の乳房に触れたことはないが、おそらくこれもほぼ生身と遜色の無い出来なのだろう。指と手のひらで軽く握る度に幸福感と性欲が溢れ出す。 こんな直接的な行為に至っても、紗耶香は微動だにしない。 このままでは行くところまで行ってしまうかもしれない。理性のタガが外れそうになったその時、USBメモリのランプが点滅から常時点灯に変化した。 おそらく紗耶香の全データコピーが完了した合図なのだろう。 尚希は生唾を飲み込んでその場の衝動を抑え、少し距離を取ってからUSBメモリを引っこ抜き、ささっと素早くポケット内に仕舞った。 「………………い? これじゃ今日帰れるかわかんないって……」 メモリを抜くと、紗耶香の動作は停止する直前から何事もなかったかのように再開した。 素肌や唇、身体や胸にはっきりと触られたことなどまるで気づいている様子もない。 機械の都合の良さが今まで一緒にいた同級生の美少女に当てはめられたことに、興奮混じりの複雑な感情を抱き、思わず返答に詰まった尚希。 「ん、何赤くなってんの? あっ、もしかして私のこの体勢に反応しちゃった? 尚希珍しくそういうとこ見せたわねー」 紗耶香の視覚にも、どれだけ抑え込んでもその興奮の度合いが見て取れる。 まさかその理由が彼女の身体に直接触れたからなど思いもしない。 「そんなんじゃねえよ…………それと、鍵っぽいのあそこにあるぞ」 尚希は詳しくは口にせずぼかしつつ、偶然見つけた鍵の在り処を指し示した。 「えっほんと? あーあった! もうなんであんな遠くにあんのよー!」 紗耶香は眼球のレンズを調節し、指差した方向を確認する。 「たぶん、誰かが蹴飛ばしたとかじゃねえの?」 「あーほんとだ、踏んだ跡みたいなのがちょっと付いてる。もーついてないわーこれ」 人間のそれよりも無数に出来ることが増えた眼球をこれでもかも駆使する紗耶香。 「ありがとね尚希。んじゃ、ちょっと急いでるからまた明日ね!」 長話をしている余裕は無いと、紗耶香はお礼の言葉と笑顔を向けて颯爽と教室から去っていった。 「…………俺も、一回あそこにいってから帰るか」 一瞬で過ぎ去った幻覚のような時間。しかしそれは夢ではない。 言っていたことが正しければ、今この手元にある小さな記憶領域の中に、紗耶香の全てが詰まっている。 冒涜的とも思うが、今は好奇心や性欲、いくつもの欲求の感情が勝っている。 尚希は改めて荷物をまとめ、初めて通った通学路目指して下校していった。 * * * 「ご協力ありがとうございます。確かにコピーデータはお預かりしました。提供していただいたデータを元にすぐに作成致しますので、それまでお待ち下さい」 まるで大企業の受付嬢のような、出会った当初とはまるで違いすぎる、場所の雰囲気にさらに似つかわしくない丁寧な応対と魅力的なプログラムの笑顔を向けつつ、スーツ姿の女性は提携に頭を下げてUSBを受け取った。 「もしよろしければ、連絡先を交換致しますか? 当機体は24時間、いついかなる時でも質問にお答えします」 とてもマニュアル的な発音とやり取りが、ほぼ人間にしか見えない大人の女性と相まって奇妙ながらどこかドキドキする魅力を醸し出す。 尚希はとりあえずそれに了承すると、女性の電子頭脳と携帯端末の間で情報交換が行われた。 「情報を取得しました、近藤尚希様。今後ご相談の際は、事前に私、ミシェルへとご連絡ください。それでは、これからもよろしくお願い致します」 色香を醸し出す人工的な美人女性に様付けで呼ばれると、作り物だとわかっていてもなんだか胸の鼓動が早まってくる。 情報交換が終了すると、ミシェルは改めて完璧な角度で頭を下げて、建物の影へと消えていった。 「…………やっぱものすげー怪しいけど、大丈夫なのか」 流されるまま、欲望のままに事を進めたが、今更になってスパムに引っかかったかのような不安が押し寄せる。 やってしまったものは仕方ないので、これが本物であることを信じるしかない。 尚希はとりあえず誰にも見られていないだろうかと周囲を見回した後、改めて自宅へと戻っていった。 * * * そして木曜日の夕方、高校から帰宅してきた直後の尚希は、いつものようにどっと溜まった疲労をベッドに沈めていた。 夕食の時間までまだそこそこあるので、準備は後回しにでも出来る。 結局音沙汰のないコピー製造のことなど殆ど頭の片隅に置かれ、変わらない日常に思考が傾いていたその時、尚希の携帯端末から通知音が二回鳴り響く。 「誰からだ……?」 慣れた手付きで端末を手に取り、友達からだろうかと思いながら画面を明るくすると、一方は紗耶香から、そしてもう一方はミシェルからのメッセージだった。 「マジできたのか……?」 とりあえず紗耶香からのメッセージを先に開き、明日少し手伝ってほしいことがあるという内容を確認する。 ひとまずそれを置いて、慌てるようにミシェルのメッセージを開く。 『近藤尚希様、この度は私共のサービスをご利用して頂き誠にありがとうございます。USBメモリ内に保存された七瀬紗耶香のコピー機体はもう間もなく到着します。もし不具合や故障が確認された場合は、お気軽にご連絡ください』 いきなりの到着予定通知。何日前に来るというものではなく、もうすぐ来るといきなり教える忙しなさ。 本当に大丈夫なのかと思いかけた直後、玄関の来客アラームが室内に響いた。 「嘘だろマジかよ」 間もなく来ると言ったら本当に来た。 内容が内容だけに、もしかしたら近所の人に見られたら不味いのではないかという予感が脳裏を過り、急いで玄関に走り、ドアを開けた。 「お待たせしました近藤尚希様。こちらがご依頼の商品となります」 玄関の前に立っていたのは、巨大な縦長の箱を地面に置き、身体全体を覆う服と顔が隠れる程の大きな帽子を被ったミシェルそっくりの女性だった。 「え、ミシェルさん?」 「いえ、当機体は近藤尚希様が出会ったミシェルとは別個体となります。お客様のデータは同型機体間で共有されています。それでは、こちらをお受取りください」 簡潔に自身の説明を行った後ミシェル2は、笑顔のままやや重そうな挙動で箱を室内へと運び入れていった。 「どうも、ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています」 最初に出会ったミシェルと全く同じ動作と角度の礼を向けて、ミシェル2はそのまま玄関を去っていった。 予想外の出来事に思わず呆気に取られたが、尚希の興味はすぐさま長箱の方に向けられた。 「本当に……この中に入ってるのか」 人一人入るにはやや大き目にも感じるが、周辺機器でも入っているのだろうかと考察を巡らせるが、指が蓋へと伸ばす覚悟ができない。 しかしずっとこうしているわけにもいかない。尚希は意を決して手を伸ばし、思い切って箱を開封した。 「うわっ……! ほ、本当に紗耶香の……コピー……? なのか?」 衝撃を和らげる発泡スチロールに固定されて詰められていたのは、綺麗な仰向け姿勢で目を瞑った、全裸の紗耶香そっくりの人形だった。 今まで見たことのない彼女の全裸姿。ただの複製とはいえそれが目の前に広がっていることに息を呑む。 一度運び出す前に、本当に一緒なのだろうかとデータコピーの際に触れた頬や唇に恐る恐る触れてみた。 「おんなじだ……冷たいけど」 本物と違い、物体的な冷たさに染まっていたが、感触自体は間違いなく紗耶香のそれと同一。 片手に収まりきらない大きさの乳房も軽く握ってみるが、制服越しに揉んだ感触とだいたい似通っているような気がした。 「これ……やばいな」 ぐるぐると胸中を駆け巡る感情がうまく整理できず、語彙力が失われた感想しか出てこなかった尚希。 既に彼の一物は、衣服の下から主張するほどに張り詰めている。 ひとまず尚希は、玄関でどうこうしても仕方ないと、何度か引きずりながらもなんとか自室へと運び出した。 「お、重てえ……これ紗耶香の分の重さだけじゃねえだろ……何入ってんだよ」 運搬中、ごとごとと揺れる度に明らかに四肢が箱にぶつかるのとはまた違う音が鳴っていた。 その正体も確かめる為、ひとまずコピー紗耶香を箱の中から引きずり出す。 ごろりと力無く床に転がった彼女は、胸が潰れるようなうつ伏せの姿勢となった。 「これ、もしかして紗耶香の私服なのか? 制服に下着……ええ……?」 コピー紗耶香本体の下に詰められていたのは、彼女が着用している衣服一式だった。 どうしてこんなものがあるのだと、まさかコピーというのは嘘でこれは本人じゃないのかという疑念が過る。 直後、箱の中に複数枚の用紙を発見する。使用前に必ず読み込んでくださいと注意書きが書かれたQRコードが印刷された紙と、同梱された衣服は全て、記憶データから全く同じ物を仕入れた物だという説明書きを見つける。 とりあえず要らぬ不安は消えたと安堵し、尚希はQRコードを携帯端末で読み取ると、ストア経由ではないアプリのダウンロード画面が起動した。 煩わしいと思いながらインストールまで終えると、自動的に無数の項目が並んだメニュー画面が表示された。 どうやらこのアプリは、コピー紗耶香を自由に操作する為の道具らしい。 「こういうのは後でいい。とりあえず起動させてみるか」 人格データ変更やタスク設定などの様々な設定メニューが存在するが、いきなり全部を確かめてなどいられない。とりあえずまずは起動しよう。 尚希は再びコピー紗耶香を仰向けに戻し、アプリ内の電源ボタンをタップした。 すると、コピー紗耶香の身体が一瞬かくんと震えた。 そして、無表情のままゆっくりと目を開くと、天井を向いたまま喋り始めた。 「アプリからの命令を受信。送信者、近藤尚希。所有者と確認しました」 その口から発された声は紛れもなく紗耶香そのものだが、いつも聞いている快活で生気溢れた声とは対象的に酷く無感情であり、人間味が感じられない。 コピー紗耶香は続けて注意事項をそのまま伝える。 「近藤尚希様への注意事項です。当機体は複製された人格データをデフォルト設定として稼働します。初回稼働時は、所有者がオリジナルの全データをコピーした時点でのスタートとなります。所有者とオリジナルの間柄、関係、状況によっては、トラブルの原因となります。予め、アプリ内での人格データ設定を操作可能な状態にしてください」 おそらくミシェル達が組み込んだ注意事項をただひたすら淡々と読み上げるコピー紗耶香。 少なくともこの喋りには、声以外に紗耶香らしさを全く感じない。 とりあえず言われるがままに人格データの設定項目を開くと、そこには一人称、三人称、間柄、好感度と、膨大な数のメニューがずらりと並んでいた。 これだけ自由に彼女を操作できるということなのだろうが、いくら複製とはいえまるで自由意志というものが存在していないようにも思える。実際そうなのだろう。 「故障やトラブルが発生した場合は、アプリ内からお問い合わせください。それでは、これから当機体を心ゆくまでご堪能ください」 到底紗耶香が言わない言葉を最後に吐いて、再びコピー紗耶香は目を閉じた。 それから三秒ほど経ってから、紗耶香はどこか表情が柔らかくなった状態で目を開いた。 「………………い? これじゃ今日帰れるかわかんな……あれ? ここどこよ?」 再度目を覚ましたコピー紗耶香は、まさしく数日前の一時停止した直後の言動そのまま再生して動き出した。 当然今の彼女には、自分がコピーされた物だという自覚はなく、自分を七瀬紗耶香本人だと当たり前に思っており、家の鍵を探していたのに突然仰向けの状態で教室ではない場所に移り変わったと認識している。 いきなり知らない場所に移動して何が起こったのかわからない。制服を着ているはずなのになぜだか肌寒さを感じる。先程までの時間帯も日付も合っていない。なぜいつの間にか仰向けになっていたのかもわからない。 理解できない事象が重なりながらも、コピー紗耶香は今どこにいるのか確かめようと起き上がると、そこには巨大な箱と隣り合う尚希の姿があった。 「あっ、よかった……尚希いるんじゃない。ねえ何があっ…………えっ? なんで私、服着てないの…………?」 一緒に教室にいた友達もいてホッとしたのも束の間。コピー紗耶香は下着一枚すら着けていない自身の全裸姿に、一瞬電子頭脳がフリーズし固まった後、戸惑い始めた。 ぺたぺたと全身に触れ直しても、制服や下着はどこにも着いていない、乳首や陰部丸出しの状況。 先程の無表情とはうってかわって赤面し、身体を屈める。 その普段の押しの強さとは正反対の様子に、尚希はだんだん興奮が燃え上がっていく。 「ねえ尚希、あんた何があったか知らない? なんでこんな状況になってんのよ……そもそもここどこなの? なぜかGPSも起動できないし……もう私不具合起きてるの? ちょっと、聞いて……?」 一度下を見つめつつ脳内で情報整理を行うが、全く何が起きているのかわからない。 回答を求めても何も返す気配が無く、ぼーっとしてるのかと尚希の方を向く。 そこには、ズボンを脱ぎ捨て下半身を露出した、息の荒いクラスメイトの姿があった。 「えっ、何してんの尚希。あんたそういうことしようとする人だったの!? もしかして、ここにいきなり連れ出したのも尚希!?」 安堵と信頼の気持ちから一転、欲望を剥き出しにした尚希に敵意を向け始めたコピー紗耶香。 服を脱がせた上で性欲の捌け口にしようという意図が見える状態。瞳のレンズを細かく動かしながら睨みつける。 「少しうるさいな……」 湯水のように湧き出る性欲。目の前にいるのは紗耶香ではなくそのコピー。 それならただのラブドールのように扱っても、自分の都合のいいように使っても何も問題ないはず。 尚希はアプリから、突然大声を出されないように音声ボリュームを下げた。 「最っ低……あんたのこと信じてたのに、こんなことする奴だったなんて。今からあんたをぶん殴ってでもいいんだから、絶対に許さないからね」 長い付き合いによる感情の蓄積も、既に崩れ去ったことを示すように名前ですら呼ばなくなったコピー紗耶香。 自分の声が小さくなっていることにも気づかず、悪態をつきながら立ち上がろうとしたその時、我慢の限界と、尚希が思いっきり体重をかけてコピー紗耶香を押し倒した。 「なっ! 来ないでよ! 触らないで! 離して!」 当然コピー紗耶香はこれに抵抗する。 好意の無い剥き出しの敵意で引き剥がそうとするが、機械の身体で力も上なはずなのになぜか引き離せない。 度々割れ目に当たる一物の感触が、今は不快極まりない。膣の入り口がきゅっと閉まる。 「いやぁ! 離してよ!! この…………」 痺れを切らした紗耶香は、全力の侮辱と共に力を振り絞って吹き飛ばそうと、尚希の顔に平手打ちをかまそうとした。 だが、その頬に当たる直前で、コピー紗耶香の手は止まる。 同時に、必死の抵抗と罵倒の声も止まった。だが、フリーズした様子ではない。 直後、コピー紗耶香の手はそっと頬に優しく触れ、尚希の顔を目の前まで手繰り寄せた。 「大好きだよ尚希。私、尚希にだったらこの身体捧げちゃう……ほら、一緒に今からセックスしよう?」 つい数秒前とは180度切り替わったコピー紗耶香の感情。 まるで尚希のことしか見えていないような紅潮した表情に、緊張の解けた姿勢。 絶対に挿れらないようにと固く閉まっていた膣部は自ら開放され、早く受け入れたいと言わんばかりに人工愛液が染み出していた。 「はは、本当にアプリでどうにでもなるんだな……セクサロイドみてえだ」 「うん、私、尚希のセクサロイドでもいいよ……?」 尚希は叩かれる直前、コピー紗耶香の人格データに、好感度最大と性欲の感情値増大、従順になるオプションを付加させる変更を加えていた。 その設定変更は即座に適用され、コピー紗耶香はほんの一瞬で尚希のことを全裸にしたことなど帳消しにするくらいの運命の人だと認識するようになった。 ただの複製された電子データとはいえ、一人の人間が簡単にこうも変えられてしまう姿はまさしく電子情報と金属部品で構成された機械人形だということを思わせる。 だが同時に、同級生をこんなに辱めていることにこれ以上ない程の背徳感を覚えていた。 「じゃあ……俺を気持ちよくしろよ……?」 「もちろん……尚希様の為なら、私なんだってするわ……」 ついでに所有者への名前呼びに様を付けるように咄嗟に変更する尚希。 一人の人間をここまで玩具のように遊び倒せるという倫理に背いた感覚。 アンドロイドが欲しいとは思ったが、まさかこんな最高の形で実現するとは。 尚希は服越しに当たる乳房と、だんだん人肌に近い温かさになっていく下半身の表面にあてられ、欲望のままに勃ち上がった一物をコピー紗耶香の女性器ユニットに挿入した。 「あああっ!! い、いきなり……ぃ……あんっ……尚希様ぁ…………こんな、あ、はあっ………あんっ…………初めてが尚希に……あんっ、あんっ」 処女のまま機械となった紗耶香。その認識をそのまま受け継いでいるコピー紗耶香。 たった今設定された想い人に初めてを捧げることができ、人格データが幸福感に包まれている。 気まぐれにまた設定を変えられ、様付けが名前呼びから消えたことにもなんの自覚もない。 コピー紗耶香は尚希の肉棒を根元まで包み込み、下半身の動作とは独立した動作の肉壁で刺激していった。 「うっ、うあっ……! すごっ……腰振ってないのに……ああっ……!」 本来の紗耶香には組み込まれていない、男性を喜ばせるための機械的な性行為テクニックを駆使して愛する尚希をひたすら気持ちよくしてあげる。 処女なのに、性行為に入ったこともないのにどうして自分がそんな知識を持っているのか。自分が紗耶香本人だと疑わないコピーは、自身が抱える矛盾に気づかず、肉欲のままに己の女体を開放してあげる。 「ん…………尚希……尚希……ぃ…………私、尚希のことがだいすき……あっ…………ああっ! こうしてキスしてると……あんっ……頭の中が一杯で…………あはっ…………」 コピー紗耶香は両手で尚希の顔を引き寄せ、愛情のままにファーストキスを捧げた。 シリコンの唇を生きた人間の口に重ね、無味無臭の人工唾液が絡んだ作り物の舌で、軽く恥ずかしそうに舌の先端を突く。 スピーカーから明瞭に人格データが発する衝動のままの言葉を喋り、愛する尚希の感触が伝わる度に電子頭脳とバッテリーが熱くなる。 「尚希、私の胸……あっ、あっ、あんっ、揉んでいいよ……私の身体、おっ……全部尚希のものだから…………あああっ!!」 「はぁ……はぁ……ん……あっ…………すげえ柔らかい…………きもちいい…………!」 一度口を離して隙間が空くと、尚希はその言葉に甘えて激しく乳房を揉みしだく。 おそらくは人間の頃のそれに限りなく近い、またはさらに触り心地よく造られているであろう溢れんばかりの乳房が手の中で踊り、男の欲望をさらに引き出させる。 大好きな同級生に自分の身体をもて遊ばれ、快感と幸福の絶頂に溺れるコピー紗耶香。 膣内で早く精を吐き出したいのが感じられる。電子頭脳内のプログラムがそう教えてくれてる。 機械になってよかった。こんなにも尚希のことを感じられるなんて。 「ねえ、私の膣内、んあっ、は……きもちいい……?」 「はぁ……はぁ…………う……あっ…………はぁはぁ…………」 返答が確認できません。もう一度質問をしよう。 「ねえ、私の膣内……あっ、あっ、きもちいい……?」 「ああっ…………す、すげえ……きもちいい…………セックスってこんなに…………ううっ……」 自分の身体が気持ちいいという、今のコピー紗耶香にとって最大の賛辞が、電子情報となって電子頭脳内を駆け巡る。 肉棒が擦れるごとに人工愛液が空気を含んで擦れ合い、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる。 ピンク色の肉壁はさらに活動を活発化させ、人工愛液を分泌し、その奥に備わる子宮ユニットがぶるぶると震える。 「ねえ、出していいよ? いつでも出していいよ? 大好きが止まらないの。尚希への大好きがね、ああっ! 私の膣内に、尚希のが欲しいの、あんっ、あっ、あっ、ああんっ!」 あまりの気持ちよさからか、何かしらのプログラムの齟齬か、初めてなのにも関わらずコピー紗耶香の淫乱ぶりに異常に拍車がかかっている。 そんな同級生の偽物の姿と、身体全体の生々しい作り物の感触によって、尚希の情欲は腰を振り肉が擦れ合う度に昂り、間もなく己の溜め込んだ精を吐き出そうとしていた。 「うっ! あっ、あ…………ううっ…………さ、紗耶香……あっ、そ、そろそろ………ぐっ……ううっ……!」 今までの手淫や単体女性器ユニットとは比べ物にならない女性器ユニットの気持ちよさ。 それがずっと密かに劣情を催していた同級生ともなれば極上。 尚希は湧き起こる性感のままに白濁液を膣内に吐き出した。 「あはああっ! あっ、あっ、あっ、あああああっ!!! 尚希の熱いのが……ぁ…………あっ……私の中に…………きもちいいの…………あんっ! あっ、あっ…………」 愛する尚希の射精に合わせて、コピー紗耶香も絶頂の声を上げてぶるぶると全身を快感にうち震わせる。 肉壷に注がれた精液は、相手の液を保存する機能も備わっている子宮ユニットが吸い込み、ピンク色の肉袋の中へと溜め込まれた。 「あっ……あ…………尚希の液が……ぁ…………子宮の中に……ぃ…………な……おき…………あんっ……きもちよかった…………ん…………あっ…………」 「は……ぁ…………ぅ………………ああ…………最高だった…………紗耶香…………」 初めての性体験に、極度に体力を消費した尚希と、それに同調するように興奮の息を作り出すが、その裏では感情値や快楽信号を冷静に処理しながら人格データの反応を検出しているコピー紗耶香。 一人と一体の初めての性夜は、歪ながらも大きな幸福感に包まれていた。 床にはコピー紗耶香から流れ出た人工体液の溜まりがいくつも小さくできている。 尚希は一物をずるりと抜くと、付近のティッシュで拭き取り立ち上がった。 「風呂入ってくる。そこから動くなよな……」 「ええ、待ってるわ尚希」 明確な待機命令を与えて、一度浴室へと向かう尚希。 一体何があったのか、夢中になっていたからはっきりと思い出せないが、なんだか脳の奥まで刻まれた気がする。 同級生だが同級生ではない。限りなく近いがそれに記憶や人格までも似せて造られたコピー人形。 改めて考える程に背徳感が止まらない。そして、頭の中が纏まらなくなる。 とりあえずまずは身体を洗い流そう。尚希は区切りのリフレッシュに向かった。 「尚希の精液私の中に……あは…………私の初めてが……嬉しい…………」 一方で、無理矢理最大まで引き上げられた好感度と、性欲を上昇させられたまま残されたコピー紗耶香。 動くなと命令されたので、部屋を出ることはできない。小さな一室が今の彼女の世界。 それでもこの機械人形にとっては、幸せに満ち溢れている瞬間でもあった。 「ふふ…………私と尚樹が愛し合ったって言ったらみんなびっくりするかな……あはっ…………麻里も驚くだろうなぁ……だってだいすきなんだもの…………ふふふ…………」 紗耶香としてのデータが、彼女という存在をエミュレートしつつ、行く場所など無いのに高校の同級生にカミングアウトしたらどうなるかなどと思考する。 それが無駄なこととも知らず、決して訪れない登校の日を待ち遠しく思いながら、欲望のために生まれた複製品は尚希が戻ってくるのを今か今かとクリトリスを弄りながら待っていた。 こうして、一人の高校生とその同級生美少女のコピーとの、情欲と肉欲に溺れながら、オリジナルとの日常に板挟みになる日々が幕を開けたのであった。