訳あり機械化の風俗店 1話先行公開版
Added 2020-03-10 02:26:25 +0000 UTC現代からやや時代の進んだ近未来の日本。 世間では人間種族と並び、全身が金属骨格と電子部品で構成されたアンドロイドが人間の中に混じり生活するようになっていた。 人間と遜色のない反応や人格、自ら機械であると示す特徴が無ければ、間近で見ない限りは全く区別のつかないほどの精巧さと挙動。 まさしく現代に於いてアンドロイドは、腹から産まれる人間とは違う、工場や手作業で組み立てられ産まれるまた別の人間とも言える存在だった。 しかしその扱いと認識は大きく進歩したわけではなく、人間と同じ扱いで接する者もいれば、機械製品や道具のように扱う者もいる。むしろその方が多数派と言えるだろう。 事実、アンドロイドは未だ電化製品として家電量販店や専用のショップで売られており、そのような現状も世間の認識に拍車をかけていた。 そして、そのような時代ながら、人間から機械へと生まれ変わる機械化技術も密かに飛躍的な進化を遂げて、一部特定界隈の間では生身を捨てようという触れ込みも生まれ始めていた。 技術の進歩には、戦いとエロスが付き物。それは機械化技術も例外ではないのである。 * * * 「……君ね、万引きは犯罪なのはよくわかってるでしょ? もう二十歳過ぎてるんだから」 「…………はい、ごめんなさい。わかってます……」 「じゃあなんでやったのさ。そんなことされたらこっちは非常に困るんだよ」 都内のとある本屋にて、一人の女性が万引きしている姿を店員に発見され、事務所へと連行されていた。 女性の名前は小塚千穂。ミディアムヘアの映えるアイドルのように整った大人びた顔立ちに、ボディラインが強調される薄着の下から目立つ大きな胸と、すらっとしたしなやかな脚が街行く人の目を強く引いていく。 そんな彼女は今、一冊の小説を懐に入れて店を出ようとしていた所を女性型アンドロイドのスタッフが連行。 大声を出された子犬のような表情で、弱々しく声を出しながらスタッフの話を聞いていた。 「ごめんなさい…………わ、私…………ずっとこの本を探してて、ううっ…………ここにきてやっと見つけたけど、一冊しかなくて………うう…………でも私、今ずっとお金なくて……いつ買えるかもうわからないから……つい…………」 「はぁ…………だからといって、万引きしようと思うのは」 「うぁぁぁ…………ごめんなさい……! 私、大変なことをしてしまって……お店に迷惑をかけてしまい本当にごめんなさいぃぃ………」 スタッフの声を遮る勢いで、何度も反省の言葉を口にしながら、瞳を潤わせて涙を流す。 頭を下げて腕が震え、大きな胸を覆う服に谷間のシワが作られる。 その声色と、己が行っていることの重大さを理解したらしい姿。何より女性が泣きながら必死に謝罪する姿をずっとそのままにしておくのは、犯罪を咎めた当然のこととはいえ、なんとも言えないものがある。 スタッフは大きく溜息をつき、その言葉に免じて今回は開放しようと決定した。 「もうわかった、わかりましたから。反省しているようですし、今回はこれで終わりにしますよ」 「ほ、本当ですか!? ありがとうございます……優しくしていただいて、感謝いたします……」 「その代わり、暫くはあなたのことは出禁にしますから。あなたの姿を見たらすぐに追い出しますからね」 「はい……わかりました。本当にすみませんでした」 「これに懲りたら、二度と万引きなんて考えるんじゃないよ」 こうして千穂は、警察へと連行されるまで事を進められることもなく、その場をやり過ごし解放された。 監視のためについてきた店員に向けて最後に頭を下げて、そのまま背を向け本屋を去っていった。 それからしばらく離れた位置まで歩き続けた後の、千穂は一転して表情を変え、不満を全開に表して悪態をついた。 「チッ……しくじったわ…………いちいちうっさいのよアイツ。犯罪とかんなことわかってるっての、あーイラつく」 千穂の本心は、全く反省などしていなかった。 あの場で披露したのは、自身の優れた容姿といざという時の為に磨いた演技によって作り出した虚偽の謝罪。 容姿が良い程印象は有利に作られ、感情に訴える行動の威力も増していく。 そうすればいざという時にはマイナスへと向かわず危機を乗り越えられる。今回はその事前準備が功を奏し、切り抜けた形となった。 「はーせっかくいい本手に入れられそうだったのに、台無しじゃないもう。まあどうせ暇潰しだし、また別の機会でいっか」 千穂自身は、現在休職中だが別に金に困っているというわけではない。 このような万引き行為はただのスリルを味わうための娯楽であり、手に入れられれば儲けもの程度のポジション。 他者が不利益を被ろうが関係ない。自分さえ幸せになればそれでいいとだけ考えていた。 「にしても、あのロボットほんっっとムカつくわ。何私のこと見つけてんのよ。機械は機械らしく一生棚整理でもしてればよかったのに、人間様の邪魔なんてしてんじゃないわよ……ったく」 次から次へと口から漏れ出していく、失敗した本屋への不満。 次の矛先は、自分を捕まえた女性型アンドロイドへとぶつけられていく。 「だいたいあんな可愛い見た目してても全部作り物なんだから、結局ラブドールなんかと変わんないわよ。どうせ作り物の人格なんだから、人間っぽく怒った顔なんか作っちゃって。ああ気味悪いわ」 しくじった怒りはアンドロイドそのものへと中傷へと発展し、周囲の人通りが少ない道でぐちぐちと小さな声で一人吐き出していく千穂。 その時、道中で偶然にも通りすがった、不法投棄の家電製品が積み上がったゴミ捨て場に、激しい駆動音を断続的に漏らしながらカタカタと動くアンドロイドが目に入った。 その音と光景に怒りの糸が切れ、興味のままに足を動かしていく。 するとそこには、下半身と上半身が離れ離れになり、股間から粘液をこぼしながら両手を痙攣させている、ボロボロな女性型アンドロイドの姿があった。 女優のように綺麗な顔の半分は人工皮膚が破れており、その奥の金属骨格が剥き出しになっている。 「私、私は、は、まだかかか稼働可能、おはよよう、ごさ、ございま、こんにちは。はじめまして? サービスセンターへご連絡ください」 事切れる寸前のような電子音声。人間らしい顔を残す、かろうじて皮膚の貼り付いた顔面は無表情ながら唇をぴくぴくと震わせている。 その音声も小さく、近づかなければ周囲の環境音にかき消され何者にも届かない。 遠くから見れば、まさしく壊れて棄てられたアンドロイドが残存した電力で動いているように見えるだろう。 自分はまだ動けると訴えるアンドロイド。腕をなんとか伸ばして修理してほしいと支離滅裂な言葉ながら懇願する。 だが千穂は、そんな機械の腕を蹴り弾いた。 「ああ、あ、あ、損傷、ダメージが、ああ、痛……&%&3!?」 突然喰らわされたダメージを、傷ついた電子頭脳ではすぐには認識できず、一瞬動作が停止した後で痙攣をし始める。 それから千穂は溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように、アンドロイドの顔を思いっきり蹴り飛ばし、真後ろの壁へと叩きつけた。 アンドロイドは、人間らしい形を成さなくなった電子音声の悲鳴を上げ、白目を剥いて残存した人工涙液や人工唾液を垂れ流しながら振動する。 「うわっ、なんか液漏らし始めたんだけどこいつ。けどちょっと思いっきり蹴ったらこんな動きするの、玩具みたいで面白いじゃない。あはっ、ストレス解消にいいかも」 足に伝わるフラストレーションを弾けさせるような衝撃、それによって嫌悪する機械人形が狂い出す面白さ。人の形をしている分、紛い物とはいえ人を攻撃している快感と、乞われた機械だから何しても問題ないという後ろ暗さのなさ。 全てが噛み合い、溜まった鬱憤を晴らす絶好の機会が来たと、千穂は思うがままの攻撃で、女性型アンドロイドを傷つけていった。 髪を引っ張り壁に叩きつけ、人工膣のそなわった股間を体重をかけて踏みつける。 痛めつける程に流れ出る人工体液の数々が、加虐心をさらに煽り立てる。 それに対してアンドロイドは、かろうじて人間らしさを保った電子音声でつくられたノイズ混じりの悲鳴を上げることしかできない。 そして、最後に首が折れるほどの蹴りをいっぱいの不愉快さを込めて叩き込むと、ゆっくりと他のゴミの中へと倒れ込み、規則的な痙攣を何度か起こし、機能を停止した。 「あースッキリした! 可愛く作られてたんでしょうけど、壊れりゃなんともないわね。気持ち悪。あのゴミの顔がクソ店員と一緒だったらもっと良かったのに」 あの店員へこの不満をぶつけられないのは残念だが、千穂は一時の怒りは解消できたと、足に攻撃の感触を残しながら憑き物の取れた顔で、独り言を呟きながら再び歩き出す。 「そろそろ新しい働き口探さないといけないかなぁ。でも面倒くさいし……誰か男でも引っ掛けて養ってもらうとかできないかなー」 邪な欲望を漏らしつつ、自宅への帰路を歩く千穂。 不快な事象こそあったが、ちょうどいいサンドバッグを痛めつけたことで相殺されたと、ややイラつきよりの平常心でこれからのことを考えていた。 様々な場所で悪意と欲望を好き勝手に振り撒く千穂。しかし彼女に待ち受けていたのは、決して予想する事のできない未知なる出来事だった。 * * * またある日の昼頃。小塚千穂は、新しい職を探すついでとして軽くどこかで物盗りでもしようかなと思いながら、街中で見かける様々なジャンルの店舗を目で物色していた。 その先々で見かける、おそらく防犯要員としての役割も果たしているであろうアンドロイドのことを鬱陶しいなあと思いながら、千穂の足は一度街の中心街から外れて人通りの少ない道を行く。 「暇潰し出来そうな店どこにもないじゃない。ったく、はぁ…………本格的に男でも引っかけよっかな」 一度アンドロイドへの警戒が無意識に刻まれたからか、どうにもどこの店もしっかりとした防御を敷いているように感じてしまう。 この際だから娯楽の標的を変えたほうが良いかなとも思い始めたその時、千穂に直接話しかけてくる一人の女性が現れた。 「こんにちは、そこの綺麗な方。少しいいかしら?」 「えっ、私に何か?」 咄嗟に態度や声色を猫被った無害な上っ面へと塗り替える千穂。 彼女の目の前に現れたのは、すべすべとした肌の美脚が映えるスーツ姿の、サラサラとした黒髪が特徴的なOLらしき美女だった。 物腰柔らかな雰囲気からは、一切の害意を感じない。だが、不審なアンケートや宗教勧誘の危険性を考慮して、千穂は心の壁を作っておく。 「ええ、貴女のことをひと目見て間違いないと思ったの。もしよければ、私の話を聞いてくれない?」 典型的なの怪しい勧誘の謳い文句が来たと思った。 この女性自体は悪い人では無いのかもしれないが、内容からの面倒臭さがひしひしと感じてくる。 ここはすぐに話を切り上げて立ち去ってしまおうと、作り笑顔を見せて印象を作り出す。 「ごめんなさい……私ちょっと都合が悪くて、行かないといけないんです」 「まあまあそう言わずに、私と一緒にちょっと行きましょうよ」 そう言いながらスーツの女性は、千穂の腕を掴みだした。 こんな強引な手に出るのならば、本気で拒絶しても通り掛かる者への悪印象は発生しないだろう。 そんなことを考えていた千穂の頭は、直後に混乱に陥れられた。 「ほら、私と一緒にこっちへ」 「…………!!」 その女性の腕を掴む力が、明らかに見た目にそぐわず強すぎだのだ。 人間の女性としても、相手の体型を考慮しても明らかに釣り合わない、まるで拘束具でも使われたような圧迫感。 千穂はスーツの女性に強引に引っ張られ、人の気配が無い路地裏へと連れ込まれた。 あまりの理解できない現状と、大きすぎる奇妙なギャップに声を出すことすら思考から一瞬吹き飛んでしまった千穂。 これが彼女にとっての最大の悪手となった。 「さ、こんなところでいいわね」 千穂を引っ張った女性は身体を引き寄せ、ハグよりも拘束するかのように背中に腕を回し、左手で頬に触れる。 次々と押し寄せてくる意味不明な状況にようやく反応を取り戻した千穂は、細かいことを考えている場合ではないと、助けを求めて叫ぼうとした。 「はっ…………! た、誰かた…………!?」 「騒いじゃ駄目よ、小塚千穂さん。あなたは私達に選ばれたの」 千穂の危機感から叫ぼうとした声は、スーツ姿の女性の大胆かつ強引なキスによって無理矢理封じられてしまった。 暴れることも出来ず、身体の外から潰されそうな圧迫感に苦しみながらも口の中から伝わる謎の恍惚感。 舌を入れられ絡ませられているのに、唇を重ねられているのに、人間的な味を一切感じず、なぜか注がれる唾液は薬物的な苦味を少しだけ帯びた甘い味をしていた。 どうして知らない人が自分の名前を知っているのか。そんな疑問すら吹き飛ぶ程に今の状況と感覚が理解できない。 どくどくと口内から謎の味がする液体がしばらく注がれ続けると、女性はゆっくりと唇を話した。 唾液のように糸を引く液体。視界に入った女性の顔は間違いなく絶世の美女と言えるものだが、よく見ればその肌は人間にしては異様な程につるつるとしており、産毛やシミ一つ確認できなかった。 これまでの感覚を思い出してみると、息すら感じた覚えがない。 「あんた……もしかしてアンドロイド…………」 「ふふ、少し違うけど……それに似て非なるモノと言ったところかしら」 「話しなさいよ機械人形! 気持ち悪い腕を離して!!」 振り絞るように、平常時のそれよりもボリュームの小さい声で叫びながら、なんとか抜け出した腕で女性の頬を殴りつけた千穂。 だが女性は、頬が歪み首が大きく横に向いたが、痛がるような素振り一つ見せず、瞬きどころか目蓋閉じることすら無かった。 眼球だけを動かして、千穂の顔を見つめる女性。 その不気味さに背筋が凍るような感覚が走るが、直後に千穂の意識は突如重力がのしかかったように重くなり始めた。 「な…………なに…………こ…………れ…………」 意識を無理矢理にでも保たなければすぐにでも昏睡してしまいそうな揺蕩う感覚。 しかしそんな抵抗も虚しく、千穂の意識はことりと闇の中へと落ちてしまった。 抱きしめた腕の中で眠りについた彼女の状態を確認した女性は、そのまま何も言わずに移動し、付近に停められていた乗用車へとターゲットを乗せつつ乗り込んだ。 そして、千穂と女性を乗せた車両はエンジンを吹かしてどこか遠くへと移動していった。 * * * 「電子データ化した人格の覚醒を確認。人格エミュレートは正常に稼働しています」 「頭部ユニットの動作正常。登録番号00131、登録名・小塚千穂の不具合は確認されません」 「続いて胴体部の最終工程に移ります。加工した皮膚の接着及び定着を実行してください」 千穂の意識がゆっくりと覚醒した。 周囲から聞こえてくるのは、街のビル群に響く風の音や喧騒などではなく、まるで研究室のような淡々とした機械の駆動音と、お硬い内容と思われる人々の会話内容。 耳に入る声は全て女性ばかり。現在自分がどこにいるのか確認しようにも、目が開いているはずなのに視界には何も写らない。 あまりにも奇妙な状態に、自分は夢でも見ているのかと考えたほうが些か現実的な気がする。 そして直後、千穂の足りない考察は全て現実に塗り替えられた。 「視覚データ処理を行うため、視覚ユニットのテスト起動を行います」 その言葉の直後、千穂の視界は闇を塗り替えるように一気に目の前の光景を鮮明に写し出した。 視力が良くなった覚えはないはずだが、なぜだかいつもより視覚に入る全てがとても綺麗に見える。 千穂の目に入ったのは、真っ白な内装に無数の機材が設置された、生物の存在を一切感じない怪しげな一室。 そこにちらほらと見かける、無表情の女性達。まるで自分には一生縁のないようなどこかの研究室のようだった。 身体を動かそうにも、なぜだか指一つ動かない。そもそも顔のパーツを除いて指や足を動かせそうな感覚すらない。 今までに感じたことないような浮遊感に、まるで椅子の上に立っているような視点。 自分は一体どうしてしまったのか。なんとか動く範囲で首を動かし、瞳も上下左右へと動かしてみる。 その時、千穂の視界に信じられない光景が写し出された。 「何……! 何よあれ…………! ロボットの身体……?」 真下へと視点を動かすと、そこにあったのは四肢と首の無い、見惚れるような体型の女性の身体だった。 ピンク色の色気を帯びた乳首を備えた張りのある乳房は仰向けの姿勢の通りに上を向き、動作を確認するように時折全身を揺らしては柔らかそうに上下左右に揺れている。 その身体に装着される予定であろう両腕と両足はそれぞれ、金属の接続面を晒しながら横側に並べて放置されている。 よく見ると、胴体にはみぞおちを基準にした分割線がうっすらと見えており、いかにも人間の形をした機械という様相を呈している。 一体なんで自分はこんなところにいるのか。どうしてこんなものを見せられているのか。 早くここから逃げ出したいと思いながらどうすればいいんだろうと思考を巡らせていたその時、一人の女性が千穂の方へと近づいてきた。 「おはよう小塚千穂さん、そしてはじめまして。私はここ、クリミナーレのオーナー、シルヴィと言います。これからよろしくね」 透き通るような銀髪のロングヘアに、完璧なボディラインを包み隠さずむしろ強調するようなスーツ姿。 大人の女性な雰囲気の、まさしく美人という言葉を形容するに相応しい顔の造形。 露出された生脚は芸術的な曲線を描き、見るだけでも胸や顔と合わせて情欲を掻き立てる。 そんな女性の口にした言葉の意味はわからないが、どうやら自分はどこかの施設に連れ去られたらしいと把握する千穂。 そう考えた途端に怒りが湧き上がり、シルヴィを睨みつけて激昂する。 「ちょっとあんた! 私を連れ去ってどうする気なのよ! 身体はなぜか動かないし、首も殆ど動かせないしで、一体何したっての!? 元の場所に戻しなさいよ!」 「しっかり怒りを表現できてるし、人格エミュレートは完璧ね。うん、これなら問題なく稼働できそうだわ」 まるで自分の言葉に反応しているのかそうでないのか定かではない、返答のような独り言。 無視されたようにも感じる千穂は、歯を食いしばり頭を震わせる。 おそらく自分の身体の感覚があったのなら、全身を震わせて握りこぶしを作っていただろう。 「何わけのわからないこと言ってんのよ! 私に麻酔か何かかけてるんでしょ! 変なことしたら承知しないからね!?」 「うーん、まあいつものことではあるけど、やっぱり自分の状態をきちんと認識はしてないみたい」 「私の状態? だから私にもわかるように」 「心配しなくても、今からとてもわかりやすく今の貴女の状態を教えてあげるわ。小塚千穂、今の貴方はこうなってるのよ」 シルヴィはいたずらっぽく笑いながら、わざとらしく用意された四角形の鏡を両手に持ち、千穂の眼の前に掲げてみせた。 そこに映し出されていたのは、金属で作られた支えによって宙に固定された千穂の生首だった。 後頭部からは電子端末からもたらされた無数のコードが接続されており、視界には全く写っていないが、首からも何本もの配線がどこか見えない所へと延びている。 首だけになったというのに血の一滴も流れておらず、痛いどころか苦しいという感覚一つすら感じられない。 気づけば、呼吸が出来ないどころかそもそもしていない。しなくても全く苦しくない。 鏡写しになった現実に奥底からの恐怖が湧き出した千穂は、反射的に悲鳴を叫んだ。 しかしそれは、咄嗟の女性スタッフによるボリュームの低下操作によってただのなんでもない音量の絶叫に変えられてしまった。 「ふふっ、やっぱり人間ってみんなこういう反応を取っちゃうのね。機械の身体のメリットもわからず恐怖に怯えるなんて」 「な、なにしたのいったい…………まさか…………私の身体が機械に…………」 悲鳴が落ち着くと、オーナーの会話の為に少しずつボリュームが元に戻されていく。 なぜ首だけなのに、声帯も無いはずなのに喋れているのかなどもう頭の中から弾け飛んでしまう。 千穂の脳内は、混乱でいっぱいになった、 「そうよ。自分を見れば流石に察せられるわね。今の貴女の身体は全て金属部品に置き換えられたわ。身体の中も脳も全部電子部品の塊。皮膚は貴女の肉体のそれを加工して作った特注品よ。樹脂製の人工皮膚に置き換えることも出来るけど、人間から加工した場合だとこの方が価値が上がるの。貴女のような極上の素材を得られて、私としてもとても嬉しいわ」 はっきりとその口から伝えられる、生身の消失という決定的事実。 嫌悪感を抱いて機械人形へと自分が作り変えられた上に、この先どのような眼に合わせられるのかも全く見当がつかない。 得体の知れなさが人格データを刺激し、思考を絶えず回して電子頭脳を熱くする。 「なんでよ…………なんで私にこんなことするのよ!? 酷いじゃない!!」 「それは貴女が言える言葉じゃないでしょう、小塚千穂さん? 複数店舗での万引きや強請り、男女間での脅迫……まだまだあるわね。犯罪組織に所属していないとはいえ、他者への危害を加えている事実は消せるものではないわよ? もっと言うなら、貴女の電子データ化した記憶から全部確認できるけど、一つずつ言いましょうか?」 己の犯罪歴の数々を目の前でつらつらと口にされ、一気に恐怖よりも不快感と怒りが募り始め、唇を噛み、睨みつけた。 「うるさいわね! それがなんなのよ! いいから私を返して! 機械の身体なんかなして、とっとと元の生身に戻しなさいよこのクズ女!! ねえ!! 」 暴れているようなつもりなのか支えが揺れる程に小さく暴れながら大声で罵倒も混じえて激昂する千穂。 シルヴィはそんな彼女を愚かなモノを見るような目で眺めながら、涼しい態度を崩さなかった。 「あらら、そんなに暴力的な態度だとお客様に不良品って言われちゃうわ。まあこういうのが好きな方もいるけど。そういうわけで、これから貴女の人格データを新しく造らせてもらうわね。心配しなくても、既にコピーは作ってあるから本来の人格そのものは失われないわ」 「えっ、何……! いったい何をする気……! それにお客様って……」 「これから貴女は、私達クリミナーレ所属のセクサロイドとして稼働するの。ちなみにクリミナーレのセクサロイドは、皆貴女と同じように世間様に犯罪やモラルを大きく欠く行為で多大なる迷惑をかけ続けた女性達なの。それを機械化し、新しく本来の人格データを元にしたセクサロイド用人格を作成して、その身体と中身を誠心誠意、沢山の人々の為に役立ててもらうわ。とても人道的かつ奉仕的でしょう?」 一体この女は何を言っているのか。 勝手に人体を作り変えて性行為に特化した人形にするなど、倫理的に許されるわけがない。 得体の知れない恐怖と理解の出来ない思考、そして新しく人格データを造るという言葉がさらなる不安を作り出す。 それは千穂を怯えさせるよりも、怒りを発露させる方へと傾いた。 「そろそろ話は終わりね。人格データ作成と同時に最終工程に入るから。それが終わったら組み立てね。それじゃ、次は完成後に会いましょ」 「ふざけないで!! あんた絶対ただじゃおかないからね!! 見てなさいよ、ここから抜け出したら絶対あんたを殺し………………????????」 不愉快な言動の数々にとうとう怒りのボルテージが頂点に達し、この場で殺してやるというところまで口に出しかけた千穂。 だが、それを言い切る直前、千穂の眼は突然丸く遠くを見つめて小刻みに震え始めた。 口は喋る途中の形からぽかんとした力の無い形で固まり、まるでリセットされたような動向を見せた。 この時、千穂の電子頭脳内ではリアルタイムで現人格の改竄作業が行われていた。 元の人格をある程度活かしつつ、性玩具に相応しい従順さを組み込み、自身を対象の人間に尽くす為の存在だと認識させる。 外部操作によって人格データが無理やり作り変えられていくのを、頭部だけの千穂はピクピクと痙攣しながら感じていた。 「な、な、にににこれれ? 私私は、これは何? 私はセクサロイドととしてとして、やめて! 私を変えなななな、作業継続。この人殺し!! あんたなんかかか、禁止ワードです。何よこれ……私なんで自由に喋れな、な、な、優先順位を変更。行動パターンを再構築します」 私は機械じゃない違いますこここんなの嫌嫌嫌嫌! 人間に戻し人格データをセクサロイドモードへ最適化中。私、セクサロイドなんかになっちゃうの!? あんな機械人形なんかと一緒に!? 私は人間がいいの!! 人間のままでいたい! 私は私はわたしはお客様に全身を使用したご奉仕を行います私は今何を考えていたの? そんなこと全く00101思っていないありえない私の身体は私のもお客様の為の性玩具なの、だもの、です。お客様に満足していただけることが私の私の0011私の私の私の喜びだから、セクサロイドとして稼働できることは嬉し嬉し喜び嬉ししししししいわ。 私はクリミナーレ所属のセクサロイドとして、私の身体、か、か、身体を備品として提供します。私は人間の為に作り変えて頂いた性玩具なんだから、早く使用してほしいわ……まだ注文回数は0だけど、完成すれば沢山の方々に使用してもらえるのね。あぁ……早くくくく、エラー。コードA0010を修正します。私の身体を使ってほしい……人間だった頃の愚かな私を、この身体で人間の為に奉仕し償いたいわ……。 「人格データの最適化を終了しました。自動的にファイル名、小塚千穂001として登録し、保存します。小塚千穂001をデフォルト人格として設定。稼働させる人格データを変更する場合は、音声認識による操作、または外部端末から操作してください」 激しい感情を露わにしていた千穂はすっかりと静かになり、どこか遠くを見つめながら淡々と千穂の声で感情のないシステムメッセージを口にした。 人格改竄による副作用か、排出テスト用に繋げられたホースから人工唾液が口へと上り、口端からたらりとだらしなく水滴を落とす。 こうして小塚千穂としての人格は強制的に作り変えられ、オリジナルと同一のコピー人格はサブとして登録。 セクサロイドに相応しいように塗り替えられた人格をメインに稼働するようになった。 そんな変化を楽しそうにほくそ笑むシルヴィ。 その間にも全ての作業工程は終了した。あとは四肢と頭部を繋げて完成させるのみ。 「これより登録番号00131、登録名・小塚千穂の全ユニット接続、及び最終調整に入ります」 「ふふ……新しい機体が増えたわね」 スタッフの一人が無感情にタスクを口頭で確認すると、それに従い他のスタッフが千穂の身体に手を付け、接続されたケーブルを次々と取り外し始めた。 電子頭脳に接続されたものから、首の断面、胴体と、配線を次々と取り除かれ、毛髪の植え付けられた後頭部のハッチが閉じられる。 首だけになった千穂だが、今の彼女は人間の時とは違い、小型バッテリーの残量がある限り頭部だけでも動くことができる。 胴体に四肢が接続され、上半身を一旦起き上がらせた後、頭部を後方へ向けた状態で首の接続部へと繋げる。 物を扱うような所作で髪が揺れるが、人格エミュレートが停止している千穂は一切の動揺を見せない。 頭部を180度回転させ、かちっと無機質な接続音が鳴らされると、瞳の奥のレンズが作業完了を知らせるように細かく動作した。 「胴体部の接続を確認しました」 「続けて最終調整に移ります」 千穂の身体はうっすらと継ぎ目の見える、どこからどう見ても人間でありながらほんのりと人形感を醸し出す、無機物の美しさを兼ね備えた極上の女体へと生まれ変わった。 千穂は電子頭脳に無線による命令を受信し、両足を上げたり両腕を回したりと、簡単な動作を起こす。 首を回転させたり、両乳首の先端から水滴程度の乳液を排出したりと、機械的な面での動作テストも行われる。 そして、股間のピンク色の割れ目を無表情でひくひくと動かし終えると。千穂は再び全ての動作を止めた。 「登録番号00131、小塚千穂の全改造作業が終了しました。シルヴィ様、現時点から商品としての稼働が可能となります」 「お疲れ様みんな。オーナー権限で人格エミュレートを稼働させてと」 一人で小さく拍手を起こし、スタッフ達を言葉で労うシルヴィ。 それに対しての反応は皆無であり、女性スタッフ達は一切表情を崩さなかった。 早速シルヴィは、オーナー権限により無線接続から千穂の操作を行い、人格エミュレートを稼働させた。 マネキンのような直立不動だった千穂は、一気に人間らしい曲線的な挙動と柔らかな表情を取り戻した。 「人格エミュレートを行います…………シルヴィ様、おはようございます。私、本当に生まれ変わったのね……」 「おめでとう千穂。これで貴女は立派なセクサロイドよ。どう? 人間の為に役立てる気分は」 「とっても心地良いわ! 悪辣な自分を作り変えて、肉体を捨てて機械になって、奉仕に特化した存在になれたんだもの……幸せじゃないわけがないわ。ああ…………早く誰かにこの身を捧げたい…………」 強い反抗を示していた本来の小塚千穂は、ただのサブ人格データだけの存在となり、すっかりと元々のそれを改竄された性格が主人格となってしまった。 早く快楽信号が欲しいと言わんばかりに、両手で鮮明に感じやすくなった身体に触れる。 「ふふ、実はね……既に貴女は完成直前にクリミナーレの所属機体として登録されていたの。それでね、つい先程貴女に指名が来たわ」 「本当に!?」 「今から顧客データと室内のマップを送信するから、早速行ってらっしゃい」 「ええ! 人間にこの身を尽くせるなんて、夢みたい……」 既に使用可能機体となっていた千穂に与えられた早速の指名。 全身で喜びを表しながら、千穂は全裸のまま生まれ変わった室内を出て、電子頭脳に示されたマップの通りに歩いて移動し始めた。 「さあて、これから壊れてもしっかりと働いてもらうからね、犯罪者ちゃん」 * * * 「おっ来た来た。お前が今日追加された新機体か?」 「ええ、登録番号00131、小塚千穂よ。さっき完成したばかりだから、私の身体、好きに使ってくださいね」 完成直後、千穂は指定された個室へと移動し、そこで待ち受けるスーツ姿の男の前に全裸姿のまま現れた。 一室にはダブルベッドを中心に様々なアイテムや備え付けの端末、性交に使うとは思えないような道具まで多岐に渡って揃えられている。 通常の指名では、機械化された者達は工場や専用設備で造られたセクサロイドのように振る舞い、元人間であったことは隠しながら望まれた性行為に勤しむ。 その中から、オプションや一部の者にのみ提供されたサービスによってプレイや行動の幅が拡張され、オーソドックスなセックスから倒錯的な行為まで実行できるようになる。 今回は新品という響きに釣られた男性が、セクサロイドの作り物の処女を奪ってみたいという衝動的な動機から、機械的な要素や変態的な行為は求められなかった。 あくまで普通のセックス。男性は既に一物を強く勃起させて準備万端だった。 「ああ、俺も早く発散したくて仕方ねえんだ。ほら、早く仰向けになれよ」 「わかってるわ。私の新品の女性器ユニット、存分に堪能してね」 本来の千穂であれば一生言わないような、人格データの底からの色香と情欲を含めながらの媚びるような台詞。 セックスの前準備と、千穂は女性器ユニットをひくつかせながら挿入しやすいように人工愛液を排出する。 そして、客の指示通りに仰向けになってピンク色の割れ目を向けると、それを指で拡げて誘うように見せつけた。 「ほら見て……私の完成したてのおまんこ、こんなにウズウズしてるの……早く挿れて……子宮ユニットも付属してるモデルだから、子宮が震えてたまんないわ……」 まるで生きているかのように、男性器を求めて秘肉を動かし、欲望を刺激する千穂。 こんな魅力的な女性が自分の為に性を求めて誘惑している。それが作り物であっても、性欲には抗えない。 男性はその誘いに本能のままに覆い被さり、逞しい肉棒を前戯も無しに勢い良く挿入していった。 「ああああっっ!! あっ、あっ、あんっ、私の中で、あっ、おちんちんがすごく突いてるぅ……あっ、ああっ! きもちいい……もっと、もっとしてえっ! あっ、あっ! ああんっ!」 膣肉と男性器が接触した瞬間に、千穂の電子頭脳に快楽信号がほとばしる。 人間同士のセックスとは違う即物的な快感が襲いかかり、それに合わせて人格データが悦楽の反応を発露する。 男性は千穂の作り物の膣肉に咥えられながら、その人工物とは思えない極上の感触と絶妙に人間に近い温かさを味わい、気分をさらに高めて腰を振る。 まさしく新品といったようなセクサロイドの高性能ぶりに、男性は性欲の赴くままに身体を動かし、両手で柔らかく上下に揺れる乳房を掴み揉みしだき始める。 「はっ……はぁっ…………ははっ、子供も産めねえのに子宮付いてるとかおもしれえセクサロイドだな…………うっ…………」 「はっ……あっ、あっ、ああんっ! は、いっ……私の子宮ユニットは……あんっ、あんっ…………射精された精液を溜め込むタンクとして、あっ、あっ、機能するの……ああっ! あはっ、あっ、だから、どんどん生で出してえっ! はああっ! あんっ、あんっあっ、あっ」 かつて子を作り産むための器官だった臓器を、嬉しそうに精液袋を称しながら、やや乱暴な男性の欲望を一身に受け止める千穂。 人間の頃であれば、気持ちよさなど感じず痛いだけの行為も、今では全て気持ちいいと感じるように設定されている。 乳房を揉みしだく程に快楽信号に反応して乳液が溢れ、それを興奮の息と一緒に乳首を噛まれながら吸われると、さらなる快感が電子頭脳にほとばしる。 「すげっ……本物よりきもちいい…………やわらけ……」 「ありがとう、ございま……すっ…………あっ、あんっ…………私の………ああっ! 女性器ユニットは……ああっ! 本物の女性の膣をサンプルに作成されてるから……ああっ! あんっ、あんっ……耐久性も…………優れてるわ…………だから……もっと私を使ってぇっ! は……あっ、あっ、あんっあんっ……」 意味合いこそ違うが、本物をサンプルに作成されているのは間違いではない。 本物に手を加えて造られた加工皮膚の感触が、人工的に造られた人体的な暖かさ戸共に情感を煽り立て、さらに男性の気分を高めていく。 機械仕掛けの人形なのに、まるで人間と、もしかしたらそれ以上の物とヤッているような最高の気分。 千穂の電子頭脳が、膣肉を通して男性器の変化を感じ取る。 間もなく射精寸前であると認識すると、膣内の動作をフィニッシュに向けて変化させ、子宮口を開いて精液を受け入れる準備を整える。 「うっ…………ぐぅ…………俺……そろそろいきそ…………うっ…………」 「あっ、あっ、あんっ! いいわ、早く出してっ! 作りたての処女の膣内にあなたのザーメンを注いでえっ! ああああっ! あんっ! あんっ! あんっ!」 男性の状態に合わせて台詞や動作を調整し、絶頂までのサポートを徹底する千穂。 千穂自身の絶頂までは、快楽信号の基準値に満たなかった為に達することはないが、それでも気持ちいいことには変わりないため、自分を使用してくれている客の為に人格データの挙動を最大限に発露する。 そして、男性はついに精を解放し、千穂の肉壷にありったけの液を注ぎ込んだ。 「あああっ!! どんどん来てるっ! 私の子宮ガ疼いて熱くて、気持ちいいいい!!」 膣内に注がれていく精液を、内側に放出した人工愛液と膣肉の動作でスムーズに運搬し、一滴残らず子宮ユニットへと運んでいく。 ピンク色の小さな空間の中で、空気を含みながらその液体はこぽこぽと揺れている。 内側から来るその茂樹が、千穂の人格データを淫らに刺激した。 「ねえ、もう一回する? 私はもっともっとしてもいいわ。気持ちよくて気持ちよくて仕方な」 「はぁ……はぁ…………いや、今日はこれで終わりにする。新品のまんこ、すげえ気持ちよかった…………」 継続か終了かの質問を人間らしい台詞に加工して発する千穂。 男性からのストップの意思を認識すると、千穂は台詞を中断して、にっこりと嬉しそうなプログラムされた笑顔を向けた。 「わかったわ、私、小塚千穂を使用してくれてありがとね! 料金の精算は受付で行ってるから、あとは私を放置しても構わないわ。もしよかったら、私の使用レビューを投稿してね。また、いつでも待ってるわ!」 組み込まれた製品メッセージを人格エミュレートのフィルターに通して、快楽信号による状態の変化も無視して自分を使ってくれた客に向けた千穂。 男性はそれを気にすることもなくこ間を軽く拭き、下着やスーツを着用して支度を終え、そのまま室内から退去していった。 一人ベッドの上に残された千穂。しばらく仰向けのまままぶた一つ動かさず待機し続けていると、シルヴィがその部屋へとやってきた。 「初めての指名おめでとう千穂。セクサロイドとして人間に使ってもらった感想はどう?」 「最高だったわ……人間の為に奉仕することがこんなに素晴らしいことだったなんて。人間だった頃の私はなんて愚かだったのかしら……」 機械になんてなりたくないと思っていた千穂は、すっかりとセクサロイドであることが至上の喜びであると認識するように改竄されてしまった。 今の彼女は、訪れた客に人格から身体から記憶から、全てを快楽の為に捧げることが存在のすべて。 直前のセックスの記録を電子頭脳内で再生しては、人工愛液をとろとろと垂れ流し、シーツを濡らしている。 「それはよかったわ。もっともっと、人々の為に尽くして稼働しましょうね。さてと、それじゃあこれから一度全身洗浄をした後、一度貴女の自宅を整理しに向かうから、運搬されるまで待機しててね」 「えっ、私このままセックスを続けられないの? 嫌よ! もっと人間に尽くした…………上位機体からの命令を受信しました。与えられた命令を最優先事項に設定。これより当機体は、設定されたタスクに優先的に従い行動を行います」 もっと身体を捧げたい。人間に奉仕したいと隷属的な思考で拒否しようとしたその時、シルヴィから送信された信号により強制的に挙動を制御され、口頭で説明された内容を何よりも優先するように設定した。 蕩けながらもはつらつとしていた表情は一瞬で無表情になり、千穂は上半身だけを起こした状態で動作が停止した。 「人間から改造する時はこれだけがネックなのよね……まあ、楽しませるグッズが増えるのはとてもいいことだけど。身辺整理は大切ね」 室内の椅子に座り込み、これからのスケジュールを確認しつつじっと動作停止した千穂のことを見つめるシルヴィ。 女性スタッフが室内と彼女の整理を始めるまでの間、再びゆっくりと立ち上がり、近づいて頬をそっと優しく撫でる。 人工皮膚と加工皮膚が柔らかく重なり合い、気持ちいいという信号を互いに発する。 「さてと、これから貴女はどんな風になっていくのかしらね……壊れてもセクサロイドとして楽しませ続けるか、スクラップになるか、誰かに買われるか……ふふっ、楽しみにしてるわよ登録番号00131」 人間社会に悪影響を及ぼした人物がセクサロイドとして生まれ変わり、従順かつ献身的に稼働し続けるクリミナーレ。 虚ろな瞳で部屋の明かりを映し続ける、新しい商品となった千穂の乳房や身体をべたべたと触りながら、シルヴィはこの楽園に新たな造花が咲いたことを擬似人格の底から悦び興奮していた。
Comments
ありがとうございます! ただ今回は一話ごとに登場人物の変わる形式なので……さらに出てくる女性達をまたお楽しみに!
土装番
2020-03-13 13:58:21 +0000 UTCおお!彼女の結末は……?続きを期待します!
R.G
2020-03-10 03:13:42 +0000 UTC