SamSuka
土装番
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理想をその身体で 2/2

 移り変わってその日の夜。ようやく頭が目覚めてきたような感覚が巡ってきた知香は、いつもよりも少々遅いペースで筆を走らせ、残ったイラスト作業を進めていた。 「もー……こういう時スロースターターすぎるって……」  ちゃんとした生活リズムで起きられなかった時の自身の出足が遅い様にぼやく知香。  自分でもちゃんとした習慣が崩れればそれは当然だろうとは思ってはいるが、だとしても、どんな生活でもどんどん動ける都合のいい身体が欲しい。そんな妄想を片隅に、愚痴りながら手を動かす。 「麻里もいないしさ……寂しいって……早く帰ってきてよーーーー」  一人静かな空間で、壁越しの生活音も聞こえない寂しさ。作業用の動画やBGMをかけることもできるが、今はなんだかそんな気分でもない。  帰らないときは深夜まで帰らなかったりするため、はっきりとした帰宅のタイミングもわからない。  早朝から出かけて何をしているんだと思いながら時間を消費していたその時、玄関からチャイムが鳴り響いた。 「こんな時間に何だろ」  夜遅くの珍しい訪問。少なくとも麻里ではない。麻里は大抵チャイムも鳴らさずズカズカ入ってくる。  だとしたら面倒くさい勧誘や訪問販売の類だろうかと思いながら、知香は重い腰を上げてインターホンの前まで歩いていく。  玄関前のカメラを確認すると、何やら大きな縦長の荷物を置いた宅配員らしき人物が、玄関の前で待機している。 「こんな荷物頼んだっけ……もしかして麻里が……でも、そんな話も聞いてないしなあ」  おそらくは住所でも間違えたんだろうと自分を納得させ、知香は玄関まで向かい、ドアから顔を出す。 「あの、すみません、住所間違えてませんか? 私、こんな荷物を頼んだ覚えは……」 「いえ、こちらで合っていますよ。橘麻里さんからの依頼でして、住所も記入されています」 「ほんとだ……」  配達員が差し出した受取用紙を見ると、確かに自宅の住所が記載されていた。  となれば、この荷物は麻里が送ってきた何かということになる。知香は心の中で小さくため息をついた。  知香はひとまず受取サインを書き、運ばれてくる重そうな荷物を受け取った。その箱には、ワレモノ注意の貼り紙が貼られている。  体重をかけつつ押しずらして、その大きな箱をリビングまでなんとか運んでいく。 「いったいなんなの……こんな大きな荷物」  いったい麻里は何を送ってきたのか。もしかしたら、これが早朝から出ていった理由なのか。  あてのない考察をしても仕方ないと、知香は早速その箱を開封した。 「………………!!? えっ、なにこれ……」  知香の目に飛び込んできた配達物の中身。それは全裸のままに梱包され、目を開けたまま仰向けの状態で緩衝材に埋まった麻里の姿だった。  その目には一切の生気を感じられず、天井を向いているにも関わらず何も見ていないようにも感じられる。  知香は驚きのあまり、口を手で覆って尻餅をつく。 「えっ、ちょっと、配達員さん!? これって」 「すみません、まだ荷物がありますので」  一体これは何が起こっているのか。もしかしたら危ないことに巻き込まれてしまったのではないか。  気が動転した知香は、この箱を配達した男に詰め寄ろうとするが、まさかの返答に一瞬立ち止まり仰け反ってしまう。  その間にも次々と玄関へ運ばれていく謎の荷物。どれもが例外無く、一番最初の麻里が入っていたものと同じ大きさをしていた。 「どうも、ありがとうございましたー」  結局、人間一人分入ったような巨大な箱を10箱運搬し終え、配達員は頭を下げて知香の自宅から去っていった。  玄関からリビングに繋がる廊下には、道が塞がってしまう程にその箱で埋まってしまっていた。 「……一体なんなのこれ」  一気に空間が塞がってしまった状態に辟易した様子の知香。だがそれよりも、この中身のことが気がかりである。  もしあれが麻里本人ならば一体どうしてしまったのか。知香はリビングに置いたままの開封済みの箱の側へと戻り、改めて中身を確かめた。 「…………本物なの?」  どこからどう見ても、その人体は麻里本人。ずっと側にいるのだから見間違えるはずもない。  目を開けたまま人形のように動かないそれに、知香はぐいっと顔を近づけてみる。  すると、麻里の身体には産毛一つすら無く、とても自然だがほんの僅かに不自然な程に肌がつやつやしていた。  人工物だと言われればそう受け取ってしまいそうな、そんなギリギリの境界。感触を確かめようと手を伸ばしたその時、玄関からガチャンとドアの開けられる音が聞こえてきた。 「ただいまー! 遅くなってごめーん!」  その声の主は、紛れもなく麻里だった。  まるで何事もなかったような声の調子で帰宅の挨拶を口にしたことにも驚きを禁じ得ないが、なによりも目の前にその本人の身体があるのに入口から声がしたことにまず、理解が追いつかなかった。 「本当に来てる……うわっ、通りづらっ」  早々に愚痴をこぼしつつリビングへと向かう麻里。  知香の前に表したその姿は、早朝の外出前となんら変わらないオシャレで美人かつ可愛らしい麻里そのものだった。  唯一違う点は、大きめのボックス型の荷物をバッグのように肩からぶら下げているところである。 「ま、麻里……?」 「あっ、本当に届いてるんだ! すっごー……しかもめっちゃそっくりじゃん」  開封された箱の中の自分を見て、感心しつつ楽しそうに笑いながら、つんつんと指で頬を突いた。  仰向けの麻里はぴくりとも動く気配はなく、ただされるがままに頭を揺り動かしている。 「ねえ麻里、これってどういうこと?」 「ああこれ? あたしね、今日機械化手術受けたの。話に聞いてた通り、本当にあんなに安いとかやばいわあれ」 「機械化……?」 「あれ、昨日聞かなかった?」  確かに昨日、麻里は知香に対して機械化したらどうするという質問をぶつけたことは覚えている。  しかしその時は、あくまで冗談や話のネタ程度のものだろうという認識だった。だがそれが本気だったとは思いもしなかった。 「確かに聞いたけど……」 「でしょ? だから今日、ロボットにしてもらったってわけ。今もうあたしの頭ん中にがんがんWi-Fi入ってんだけど」  麻里の電子頭脳は現在、自宅に設置されたネット回線を利用してネット上に接続できるようになっている。  帰るまでの道中や施設内でも、それは機能体験の一環として行っていたが、いざ使用してみると便利で仕方ない。  麻里は目の前の知香と会話を交わしながら、とあるファイルを探すためにネットサーフィンを実行していた。 「じゃあこの荷物って」 「あたしが壊れたときの予備。どれも精巧に造ってあるらしいし、知香も見分けつかなかったんじゃない?」  「うっ」  痛いところを疲れたと、小さく抑えるような唸り声を上げて目をそらす。  そんな姿を可愛いと思いながら、麻里は知香のことをニヤニヤと見つめていた。 「さって、そろそろあたしがやりたかったこと、やってみよっか」  意地悪な質問で、知香の可愛らしい姿を見て満足した麻里は、再び相方の方を意味深に見つめる。  そして、ゆっくりとエスコートするように手を差し出した。  全裸ではなくきっちりと着飾った状態でのそれは非常に様になっており、思わず心臓がとびだしてしまいそうになる。  知香はその引っ張られるように歩き、二人はその引っ張った知香自身の部屋へと入っていった。  その後も、完璧に再現された開封済みの麻里の予備機体は、ぱっちりと開けられた眼を固定したまま、次の起動を待つが如く待機し続けていた。  いつものように知香の部屋へと転がり込んだ麻里は、早速自分のオシャレな服を次々と脱いでいき、最後には全裸の状態になり、それを見せつけた。  ただでさえしなやかかつ整っていた麻里の身体。機械化したというその身体は、無駄を削ぎ落としたかのようにさらなる美しいボディラインと、元から張りのある乳房の姿がさらにエロティシズムに溢れている。  「どう? すごいっしょ?」 「うんすごい……イラストそのまま現実になったみたい」 「ほんと!? それすっごい言われたかった! ありがとう知香ー!」  イラストみたいだという極上の褒め言葉に気を良くした麻里は、目の前の相方に思いっきり抱きついた。  人肌のようでそれよりも気持ちいい肌の質感に、情欲を掻き立てる柔らかい乳房。  今この行為はそういう性的なものじゃないとわかっていても、思わず胸が揺れ動く。 「それじゃ、始めるわ。知香はもし何かあったときのためにしっかり見ててね」  思いっきり抱き寄せ満足した様子の麻里は、知香の目の前で正座の姿勢で座り、両手をこめかみに当てて頭を回し始める。  すると、麻里の頭は人間ではまず不可能な半回転を行い、部屋の入口の見える真後ろまで顔が向いた。  そして、カチっという音と共に、その頭はあっさりと外れてしまった。  頭部を失った麻里の手は、その頭を道具のように扱い、再び半回転させて知香の方を向く。 「どう? どう? デュラハンみたいでしょ?」  これまでにない程のはしゃぎっぷりを見せる麻里。  表情はまるで身振り手振り動かして踊っているかのようだが、一方の身体はただその頭を持っているだけで微動だにしない。  知香は長く一緒に過ごした分、このような人型クリーチャーのような格好をしたかったことはよく知っている。それが実現できたとなれば、嬉しさが溢れ出すのは仕方ない。 「それでね……頭部ハッチを開放します」  次は何を見せてくるのかと待ち構えた次の瞬間、表情豊かにその色を変えていた麻里の表情が、感情のこもっていないシステムメッセージ調のセリフと共に消え失せた。  その直後、金髪のボブヘアーで整えられた後頭部が、とても小さな駆動音と共に上下左右に開き、頭部内に収められた電子頭脳を晒しだした。  人工の頭皮に植え付けられた人工頭髪は、ハッチについていくように分かれて垂れ下がる。 「これが今のあたしの脳なの。あたしの全部がここにデータになって入ってるんだって。すごくない?」   表情を取り戻した麻里は、再び頭部を180度回してその中身を見せつける。  一見すれば、自分を作り上げる中枢を晒すという正気を疑われるような行為だが、麻里はそれを楽しそうにかつ真剣に行っていた。  と同時に、まさしく自分が今までにずっと望んでいたこのアブノーマルなシチュエーションが、麻里の抑えきれなかった性欲を次々とあぶり出す。  あたしは今、知香に中身を見てもらってる。まるで食肉シチュみたいな感じで曝け出してる。首も外れてるし、それなのに身体は平然と動いてる。とってもたまらない。もっときもちよくなりたい。シコみが止まらない。 「あたしね、こういうのね、ずっと、ずっとやりたかったの」  再度頭部を回して、開かれた後頭部を身体へと向ける。  改めて知香の方を向いた麻里の表情は紅潮し、意味のない見せかけの興奮の息を漏らしている。  身体の方もそれに連動しているのか、ぴくぴくと乳首が動いては勃起しており、頭部と太腿によって見えなくはなっているが、女性器ユニットもひくつきながらじわじわと人工愛液を滲み出させていた。  そして、その幾多の願望の一つをつぶやきながら首を太腿で固定し、両手は電子頭脳へと向かわせ、ゆっくりと触れる。 「ああっ! ……これ……こういうの……」  ちょっと自分の中枢に触れただけでも、頭の中に燃え上がるような快感と違和感がほとばしる。  手術直前にも要望として脳に触れたり掴んだりしてもらったが、それとは似て非なる感覚。その気持ちよさに、麻里は一瞬で虜になった。 「あたし……自分の脳掴んでる……これ……やりたかった……あんっ……されたかったの…………あっ……ああっ……!」  触るだけでは飽き足らず、麻里の手は滑り込むように電子頭脳を掴み撫でていく。  人間としてではなく、道具として扱われているような感覚が、今までイラストの中でしか見られなかったような理想のシチュエーションが叶えられている。体験できている。  顔の中で溢れる快感が無線接続を通して身体にも走り、全身を蕩けさせつつ痙攣させる。  そんな姿を、知香は一切引くこともなく、むしろ食い入る様に見守っていた。 「あああっ……ああっ……あっ……ぎっ!? なななにかおお音がががが……」  電子頭脳に触れる麻里の手の力は、エスカレートしていくうちに撫でるものから握るものへと変化していった。  快楽信号に身を任せてその力を強めていき、麻里の中枢はどんどん圧迫されていく。  当然の結果とも言うべきか、強めすぎたそのパワーによって、ほんの一部分を破損させてしまった。  麻里は一瞬電子音混じりのような悲鳴を上げ、誤作動を起こした音声を発する。  だがその損傷も、麻里には快楽信号として処理され、さらなる快感へと変わっていく。  知香に向けられたその表情は、右目は真っ直ぐと向きながら小刻みに震え、左目ははっきりと白目を剥いている。  身体は勃ち上がった乳首から締まりかけの水道のように人工の乳液が溢れ、床には人工愛液が垂れ流された。 「あああ、頭がここ壊れ壊れれれれれ、あっ、あっあっ……ぴっ……きききもちいいい……かかか快楽信号を信号をしし処理するするするのがとととっても気持ちいいのののの……」  徐々に電子頭脳にかけられる圧力が増していく。  軋むような音に破損音、人間の脳からは到底鳴ることはありえない音が、麻里の人と変わらない容姿から発されていく。  その言動も、普段の明るい雰囲気から機械的な淫乱さとも言うような乱れ様に変わり果てる。  頭部から発される快楽信号が無線を通して身体へと流れ、快感に浸るような震えを発する。その度に柔らかく大きな乳房がいやらしく揺れる。 「こここ。これれれれがしししたくしたくしたくて仕方ありませんだったわ。もっとしたいのもっとととと、がぴっ!? ぴいっ!?」  生身ではないものの、ついに叶えられたアブノーマル性癖の願望。崩れた言動からその嬉しさを発露していたその時、圧された電子頭脳からそれまでよりも大きな破損音が響いた。  それと同時に、麻里は電子音丸出しの悲鳴と嬌声の入り混じった声をあげ、身体はびくんと痙攣しながら人工の母乳と愛液を噴き出した。 「ぴっ……がぴっ……きゅ……い……がが……」  だらしなく舌を出し、規則的に身体を震わせる麻里。  その姿を知香は、生唾を飲み込みつつ眼を釘付けにした。  その一方で、リビングに放置された麻里の予備機体。一番最初に開封された一体の瞳の奥が小さく光る。 「現稼働機体の破損が確認されました。無線通信により全データを移行。完了後、起動します」  麻里本人の声で口に出される、無感情なシステムボイス。唇が動く度に、口内に詰められた梱包材が見え隠れする。  その一言だけつぶやいた後、再び口を閉じて目蓋を閉じないまま待機する。  そして、データ移行の完了を確認すると、数回瞬きの後、再起動した。 「…………あんっ……あっ……あっ……」  ラブドールのような様相から一変、麻里は身体を震わせ色香に満ちた表情で喘ぎ始めた。  絶えず発信されていた快楽信号の残り香が、移行した後の機体でも処理され続け、その結果、起動して早々にとても強い快感に襲われたのだった。 「……あれ、あたし……うえっ! なにこれ……」  我に返り周りを見渡すと、そこは知香の部屋ではなく荷物が大量に置かれたリビング。  それから間もなく、口内に詰められた梱包材の違和感に思わずえずき、手を突っ込んで人工唾液の染み込んだそれを取り出した。  その直後に、女性器ユニットの中にも感じた違和感から、同様に手を入れる。現れたのはまたもや梱包材。今度は人工愛液が染みている。 「ああそっか、説明書に書いてるのはこういうことなのね」  麻里は一旦落ち着きを取り戻すと、電子頭脳内にインストールされた説明書の該当項目を開く。  そこから、破損した、または修復不可能と判断された場合は、予備機体に全データを移行して再起動するという、まさしくたった今行われた通りのことが記されていた。 「…………あはは……あっはっは……この身体さいっこう……」  麻里はついさっきの壊れていた時の記憶を引きだす。  そう、こういうことがやりたかった。絵の中でしかできなかったこの身を裂き壊されるような行為が。  心の奥底からの喜びを滲み出しながら、麻里は愛液で濡れた女性器をそのままに、再び知香の部屋へと向かった。 「がぴゅい……ぴっ……がっ……」  電子頭脳が潰れて移行、全く同じ痙攣と電子音を繰り返す麻里だったもの。  気持ちよさそうに壊れて震える様を、知香はずっと眺めていた。 「気持ちよさそうだけど、大丈夫かな……」  一緒にいる間、何度も何度も自分に言っていた願望がようやく叶い、それについては素直に祝福する知香。  だかそれはそれとして、ここまで壊れて大丈夫なのかとやや心配になってくる。  そんなことを思っていた直後、その部屋に生まれ変わった麻里が入ってきた。 「あっ、まだ動いてるわ……」 「……へっ?」  思わずその光景に、間抜けな声を上げてしまう。  狂った表情と性欲を掻き立てる痙攣を続ける麻里の後ろから、元気にどこにも異常がない全裸の麻里がやってきた。  当初からの理解できなかった状況が、さらに追いつかなくなってくる。 「ああ、なんかこの身体ね、もう修復できないってなったら全部予備の身体の方に移されるみたい。そんで、今リビングから戻ってきたの」  簡単な説明をされても、簡素な生返事しか返せなかった。 「ああ、すっごい気持ちよかった……やっとあたしの願いが叶ったわ」 「ぴゅいいっ!? ががっ……ぴっ……じじじ重大な損傷損傷損傷……」  今まで通りの人間らしい動作で、一歩一歩知香の側まで近づいていく。  その途中で、麻里はその抜け殻の電子頭脳を軽くこつんと小突く。停止するのも時間の問題とはいえ、未だ稼働している壊れかけの抜け殻は気持ちよさそうな反応を示し、システムメッセージと共に全身をガクガクと震わせた。  二つの麻里の声が聞こえてくるというその奇妙さに、知香からは思わず苦笑がこぼれだす。 「ねえ知香、急にこんなことやっちゃってごめんね。けど、人間の身体でできなかったことができるって思うと、居ても立っても居られなくなったの。こんな身勝手だけど、これからも一緒にいてもいい?」  何の相談も無く行われた機械化手術。大切なパートナーにちゃんと話さずにいなかったことを謝罪しつつ、これからも共に過ごしたいと口にする麻里。  その答えは決まっていた。 「当たり前じゃない。あんまり気にしてないからさ」 「あんまりって、じゃあちょっと気にしてるってこと?」 「そうじゃないって! もー言葉尻とらえてそういうこと言うー」 「ごーめん、ごめんって! ……これからもよろしく知香」 「こちらこそ」  夜に突然起きた麻里のちょっとした機械化騒動は、二人が愛しそうに抱き合うことで収束した。 「がぴっ……きゅい……電子頭脳のうのうのうの破損んんん……コールセンタタタタタタへられ連絡を推奨推奨推奨……」  その側では、壊れた麻里の身体が機械的な喘ぎ声とシステムメッセージという嬌声を上げているという、なんとも奇妙かつ倒錯的な光景が広がっていた。 * * *  その日の就寝前、壊れた身体を片付けて風呂に入った知香は、どっと押し寄せた疲れから、今日はこの後も何もせずに眠っていようと考えていた。 「ほら見て知香! めっちゃちゃんと作られてるっしょ? しかも元より綺麗にされてるし」  自室までの通り道。麻里はその他の未開封の箱を開け、入っていた予備の自分の身体を好き勝手に弄くり倒していた。  動かないのをいいことに、通りがかった知香に対して、自分と同じ姿の機械人形の女性器ユニットを、両足を広げつつこれでもかとおおっぴらに見せつける。 「うん、すごいし綺麗だと思うけど、自分をそんな扱いして気にならない?」 「えっ、なんか捉えられた奴隷とか催眠とかクローンをおもちゃにするとか、そんな感じみたいでエロくない?」  ああそうだった。麻里はそんな奴だったと今更なことを思い出して素直に納得する。 「私はもう寝るね。今日はもう疲れた……」 「うん、おやすみー」  前のめりにぐったりとした姿勢で、知香はその場をふらふらと後にした。  未だ飽きることなく予備の身体で遊ぶ麻里。四肢を動かしたりキスしたり、胸に埋まったり女性器ユニットをいじったりと、その無反応さに情欲を煽られながら、その溜まりに溜まった念願の欲望を開放していく。 「こんな日が来るなんて……はーーーー……もうマジ現代技術サイコーって感じ」  まるでラッパーの歌詞のように科学技術に心からの感謝をしながら、麻里はひとまずの気分が落ち着くまで、ずっと自分と全く同じ姿の機械人形で遊び尽くしていった。


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