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土装番
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二人のアオイ 人間としての矛盾 3

「…………?? …………??? …………??? ……??」  少々中途半端に残っている左腕の人工皮膚。しかし大部分は剥がされてしまい、その下からは人間らしい筋肉や脂肪ではない、無数の金属部品から構成された腕が姿を表した。  焼け溶けたようなピンポイントではない。誤魔化しの効かない程に顕わになった、葵の左腕。  葵の視界の外ではなく、嫌でも目に入る位置から示された、葵が機械であるという証拠。  だが、葵自身は自分のことを人間だと設定されている。  組み込まれた設定は絶対でありそれが機械にとっての確固たるアイデンティティとなる。  にも関わらず、それを脅かす現実が視界に飛び込み、ただでさえ摩耗している葵の電子頭脳にさらなる負荷がかかっていく。 「わ、わたし、わた、わたし、ここここれはこれはは? 左腕からきき機械が、左腕が機械です? いいえ、私は人間よ? 人間なのに、火傷も、皮膚が溶けても痛くないが発生していました。…………?? 私は人間です。どうしてきき機械、機械が露出しししています。登録された人間の定義定義定義、いいえ、それは矛盾しし、しているわ? 私は人間です人間です、なのに機械が腕が腕が腕がががが…………??」  視界に飛び込んだ情報を整理しようとする度、組み込まれた属性との矛盾が次々と電子頭脳内に入り込んでくる。  理解が追いつかず、言動が支離滅裂気味になりながら、内部データを読み込み、レンズを激しく収縮させる。  葵の姿は剥がされた瞬間のまま時間が止まったように動かなくなり、時折膨大に発生するエラーと快楽信号から、不規則な痙攣を起こしていた。 「どうしたの葵? 別に人工皮膚が剥かれただけじゃない。痛くないでしょ? 気持ちいいんでしょ? さっきよりも自分の中身が剥き出しになってるけど、おかしいわね……人間なら今頃痛くて泣き叫んでのたうち回ってるはずなのに」  アイデンティティを根本から破壊するような光景を見せつけつつ。煽るような言葉を耳元に透き通るような音声で集音ユニットに響かせる碧。  だらりと床にへたり込む、指先まで剥がれた分の捨てられた人工皮膚。  その裏側には血管や血液のようなものはなく、表面と同じ肌の色が存在するだけ。  がくがくと振動する葵の全身。剥がされた瞬間から動いていない彼女の左腕からは、時折かちゃ、きゅい、と駆動音が聞こえてくる。 「皮膚が剥がれ、れ、れれ、剥がれていいいます。います。ええ、はい、そそそそうですそうよよ? 私は私はわわわわ私人間ですなのに、痛みが痛みが発生ししししていませ痛くないわ痛くないのよいませ、痛覚信号が発生しししていません? 快楽信号に変換されててきもちよくててています。提示された人間としての条件を未達成ね? おかしいわ。おかしい、おかしい。私は人間です、人間です、が矛盾が確認よ?」  まだ他の部位にたいした危害や刺激は加えられていない。  それでも葵は、まだ左腕の人工皮膚が剥がれた段階で、人間である自分への現実を突きつけられた結果として、言語すら崩れ始める程の無数の不具合が発生していた。  まるで旧式のアンドロイドのように、身体の動作が激減した葵の身体に、絡みつくように触れる碧。  同じサイズの大きな乳房が、葵の身体に触れて潰れ、色気に満ちた様子を作り出している。 「そうね。人間なのにこんなに機械が剥き出しなんて、葵はとっても矛盾してるわね。おかしいわよね。ほら、整合性をとらないと。自分が人間だって証明しないと、どんどんエラーが増加しちゃうわ」 「そうね、そう、そそそ、そうよそうです、私が人間だとしし証明し証明し証明し、設定への矛盾を解消するしないとしなければ必要よ。必要です…………」  口だけを動かして喋り続け、現在の自分が行うべき事柄を確認した葵。  自身が人間であるということを証明しなければならない。という時点で大きな矛盾が発生しているが、無数のエラーに埋め尽くされた彼女の電子頭脳には、そんな単純なことを思考する余裕はなかった。 「これはわわわたしわたしたしの腕ではなく、ではなくて違うのよ、他者の腕とそそ想定想定しましししししますするわ。仮説として算出し」 「何言ってるの。今この部屋には私と葵以外誰もいないのよ? それにほら、私の腕はこんなに綺麗で人間らしい腕をしてるし、何より私だって『人間』なんだからね、『お姉ちゃん』」 「仮説よりじじ除外しましたしたしたしたた。違うのね違う違う違うちががががが、水樹碧は私私の私に私妹であるときき記録されてされましてだから、人間ですが、水樹葵は人間ですにんげんと人間だからなのに人間よ、を証明しししますしなければ行うわ…………私への腕に誤認識さささせるさせるますを映像を照射しされをますに、発生して」 「今回は様々な機材は用意されてるけど、そんなホログラム映像のような設備は存在しないわ」  荒唐無稽な仮説を、壊れ始めた電子頭脳で算出する度に、簡単に否定されてしまう葵。  論破されるごとに中枢部への負荷がさらに上昇し、葵の身体の誤作動がさらに増えていく。  膨大なエラーと不具合が快楽信号へと変換され、豊満な両乳は常に振動を起こし、ピンク色の乳首を震わせながら勃たせている。  ぷしゅ、ぷしゅ、と、不規則なタイミングで乳液を噴き出し、周囲の床に白濁液を撒き散らしている。  女性器ユニットからも同様に、歯切れの悪い潮吹きが行われ、無味無臭の人工愛液が飛沫として飛び散っていた。  感じているような表情もしておらず、口端からはだらしなく人工唾液をこぼしながら、眼球の焦点が合わない不安定な無表情を見せている。  顔と全体的な挙動は、まさしく人形的な静止感を醸し出しているが、一方で身体の一部位の反応は、逆に色に満ちていた。 「もう、とことん言語中枢まで正常な動作できなくなっちゃってるわね。ほら、私が手を握ってあげるから落ち着いて? 葵の中身を晒した腕の方をね。ちゃんと私の感触、感じ取ってね……」  碧は、まるで葵の誤作動を頻発した状態を案ずるかのような、思いやりのある台詞を口に出しながら、機械丸出しの左腕に両手を重ねて、じっくりと、丹念に、人工皮膚の感触を感じ取れるように撫でて揉み込んでいった。 「あ、あ、あ、ああaaアa、左sss腕部へのしし刺激を感じた感じましたじるわ。ここここれはこここ、私の腕であるありますですだけど、機械じゃない機械じゃない機械じゃないいいい、私私わたしワたし機械じゃない人間なの人間だから機械でハなく、どうして? 私は人間だカら機械でハないからダけどセんサー上のが接触一致しししssss……」    電子音混じりの喘ぎ声を出した後、ぐにぐにと金属の上から樹脂の感触を感じ取る葵。  その手の触感は、人工皮膚に覆われていた時と大きく違い、硬く、温く、無機質で、ちょっと動かす度にどこかの隙間に引っかかる煩雑さが、人間とは到底思えない雰囲気を醸し出した。  左腕に触れた両手の感触と、視界に写る動作が完全に一致し、さらなる状況証拠が担保される。  自身が機械であるという材料が増える度、葵の挙動からは人間らしさがさらに失われていく。  それまで壊れていたのは言動だけだった葵の声は、少しずつノイズが混ざり始め、本来の彼女の魅力的な声が崩れつつある。  無表情であることには変わりない彼女の顔も、眼球の小刻みな振動がさらに強くなり、誤作動からなのか人工涙液をこぼし始めている。  シリコンの唇はぴくぴくと震え、口内では舌の動作が止まり固まっている。  全身に不規則に現れていた痙攣の頻度は明らかに上昇しており、がくん、がくん、とより大きな震えも含み始め、ちょっと膝を突けば崩れ落ちてしまいそうな状態となっていた。  見た目にはその異常は表れていないが、葵の電子頭脳は触れれば火傷してしまいそうな程に発熱しており、後頭部から今にも煙を上げてしまいそうだった。 「もうそろそろかしら……でも、もうちょっと仕上げてあげたいわよね。こんなに気持ちよさそうにエラーを起こしてるんだし、動作する度に絶頂に達しちゃいそうなくらいにしてあげよっと」  もうアンドロイドとしては動作不能と判断してもいいくらいの、可哀想な状態。  だがまだ足りない、人間としての姿が崩れつつある葵をさらに壊し、その状態から、濁流のような快楽信号を与えて壊してあげたい。  設定された倒錯的な愛を発露しながら、碧は最後の仕上げと言わんばかりに、葵の左手をぎゅっと優しく握ったまま、眼球ユニット同士で見つめ合うように視線を合わせた。 「ねえ葵、お姉ちゃんは……私のお姉ちゃんなのよね? 私はお姉ちゃんの妹なのよね?」 「はははは、はい、そうよそうです肯定。登録されされされているいます現在家族こここ構成上では、碧は水樹碧ですは妹と続柄としてとと登録されるサレるです記録してるわ? 当然よ当たり前じゃない当然じゃナい? 碧は大切な大好きで大好き大好き愛してるわ妹なのよ?」  既にその人間らしい皮すら被っていない言い回しが、葵の機械らしい姿をさらに露骨にさせている。  だが彼女は、未だ自分が人間らしく喋れていると思いこんでいる。  こんな状態になっても、従順かつ忠実に己の設定を遂行している姿を愛おしく想い、女性器ユニットを疼かせながら、碧は確信を突く一言をぶつけた。 「そっか。それじゃあ……葵の記憶データを参照してみて? 小さい頃から今まで、本当に私が妹なら、その姿はあるはずでしょ? ほら、思い出してみて……」 「わかったかシこまりままマましたわ了解。昔のこtttを、記憶データをささ参照しししますする行うわ………………………………」  妹と設定された相手の言葉を、なんの拒絶も無く受け入れ、言われた通りに記憶データの参照を開始した葵、  ただでさえ過負荷がかかり、発熱し、処理能力が大幅に低下している電子頭脳。  人間の頃からの記憶を全てデータ化され、鮮明に閲覧可能とはいえ、その時間は大きくかかるであろう。  葵は過去の自分の視界を徹底的に確認し、その間、フリーズでもしたかのように一言も発さなくなってしまった。  相変わらず体液を噴き出しながら、頭部からはより大きくなり始めた機械音がカリカリと鳴っている。  その間にと、碧は後方に用意された無数の小道具が乗せられた台を葵のすぐ側まで移動させ、いつでも彼女のことを弄くれるようにと準備を整えた。 「処理能力が低下してる今だったら、もう少しかかりそうね……ふふ、私なんて葵の記憶の中にいるわけないのに、健気に赤ちゃんの頃から今まで全て閲覧してるんでしょうね……可愛いわね葵ったら。オリジナルなのにそこの解答がすぐに得られないなんて」  彼女のコピーである碧にも、水樹葵としての記憶データは全てメモリ内に保存されている。  と同時に、彼女自身が、無から産まれた同一存在ということもしっかりと理解している。  だからこそ、全てわかっているからこそ、今のオリジナルがあとから付与されたアイデンティティに狂わされ、おかしくなっている姿が可愛くて愛おしくて、卑猥で仕方がなかった。  びくん、かくん、と機械丸出しの左腕を前に出したままの姿勢で乱雑に揺れ動く姿は、見ているだけでクリトリスがひくひくと淫欲のままに動いてしまう。   「…………ちょっといたずらしちゃおっかな」  まだ全記憶データの確認には時間がかかるだろうと、誰も全て確かめてなんて言ってないのにとても律儀だなぁと思考しながら、碧はここでちょっとした妨害を思いついた。  現在の葵は、人格データからの性感反応はほぼ見せていないものの、正直な身体は、電子頭脳の負荷や各部の損傷、無数の不具合やエラーによって、一瞬では処理しきれない程の快楽信号を受信し、淫猥な姿を晒している。  では、電子的な性感帯の感度が高まっている今、電子頭脳のリソースを自分の記憶に割いている今、特に感度が高く設定されている箇所を刺激したらどうなるのか。  碧は硬めのディルドを手に取り、噴水のように乳液と人工愛液を噴き出し続けている葵の前に立つ。 「葵が悪いんだからね。こんなに悪戯したくなるような姿を晒してる葵が可愛くて仕方ないんだから……」  耳に入らないであろう言い訳を口にしながら、葵はクリトリスと膣肉の両方が忙しなく動いている女性器ユニットに狙いを定め、勢いよくディルドを挿入した。 「………………!!!???」  直後、葵の全身は、脊髄に電流でも走ったかのように、がくんっ! と大きな痙攣を起こした。  瞬間、それまで歯切れの悪かった潮吹きの勢いが突然強まり、しゃがんでいた碧の顔に思いっきり吹きかけられた。 「………………重大なええらえらエラーが、は、はっせ発生しましたした。記憶でータの読み込みを再開し、し、し、シまス」  人格データのフィルターも通していない単調なシステムメッセージが、動かない口から発せられ、彼女の人間時代を紐解く作業は再開された。  一方で、葵の女性器ユニットは、強引に挿入されたディルドをずっと咥えたまま離さず、まるでそれを求めていたかのようにぐにぐにとく膣肉を動かし刺激していた。 「やっぱりこういうの求めてたのね……快楽信号を発生しっぱなしだから、当然といえば当然だと思うけど……ん…………おいしい…………」  碧は、自身に吹きかけられた、体液タンクに補充されているそれと全く同じ成分の人工愛液を指で掬い取り、ぺろりと美味しそうに舐めた。  体液タンクから管を通して発生している体液は、唾液も愛液も全く同じもの。  つまり、今舐めたそれは、現在碧の口内を濡らしている人工唾液のそれと同一である。  葵の膣部から噴射された液体という情報が、その液体の価値を彼女の中で唯一無二の物に引き上げているのだ。  その証拠に、人工愛液を味わった瞬間、感情値が揺らぐように大きく変動し、快楽信号が碧の電子頭脳を満たし、乳首から乳液が、女性器ユニットからは人工愛液がとろっと溢れだした。 「さてと、もうそろそろ……かしらね。もっと今の状態で弄ってあげたいけど、さすがにつまみ食いが過ぎちゃうし……それに、オリジナルの振り返りを邪魔しすぎるのも悪いわね」  人格データが、感情値が、性欲値が、今からでも葵のことを壊してあげたいと、壊して気持ちよくして壊れ合い、快楽信号に溺れたいと、組み込まれた設定と算出された数値から情愛もいう演算結果として引き出される。  愛する葵ともっと愛しあいたい。妹でも姉でもないただのコピーだけど、人格データに一部編集が加えられただけのほぼ同一個体だけど、葵がプログラムの底から好きで仕方ない。  早く己に与えられた設定との矛盾に崩壊していく姿が見たい。  そして、葵の口が再び動き始めると同時に、眼球の動作がさらに不安定になり始める。 「記憶を、を、をを、記憶データの確認がしし終了した、したわ、しました。私のきき、記憶過去に碧がいないいません存在が確認できませませませせせせ、おかシいわ? 碧は私のの妹で妹で妹で妹で、大好きです大好きよ大好きよ愛してる一緒にいますいたい妹よ? 設定された続柄への矛盾が発生してしました確認されまししししたした」    付け焼き刃の設定についに気がついた葵。  壊れた言動の中にも、彼女の人格データに戸惑いの色が検出されていることが伺える。  どれだけ自分が壊れ狂ってしまっていても、与えられた設定を最優先として認識し、システムがそれに従おうとしていても、意図的に組み込まれた矛盾がそれを邪魔して、彼女の個人性を踏み潰していく。 「でしょ? 葵に妹なんているわけないじゃない。私は葵のコピーで、子供の頃から一緒になんているわけないんだから。それに、たった今記憶を読み返したんだからわかるでしょ? 葵は自分のことを二歳って言ってたけど、本当はその何倍も生きてたんだって。おかしいわよね? 二歳なのにそんなに記憶データが存在してるなんて……」  碧はさらに追い打ちをかけるように、自身が口にして年齢設定について問い質した。  容姿や言動、行動能力からも、自分が二歳であるなどとは到底あり得るはずもない。  だがそれが、葵に後付で加えられた設定なのだから、自分は二歳だという偽りの事実に疑う理由は存在しなかった。だってそれが組み込まれたプログラムなのだから。 「私の私の年齢は年齢、年齢は二歳です二歳よ、なの。だけど、記憶データ上に存在しますしているには、二十歳まデのタた、誕生日です誕生日祝いと思われるデータが存在しししました。存在しました。私は二歳よ? ナのであり、矛盾ししたした記憶データが記憶データが、記憶データが、が、が…………」  あまりにも多すぎる葵のメモリー内に存在する矛盾に、とうとう処理能力の限界が近づき始めた、葵の電子頭脳。  その影響は、脳内処理の他分野にも及び始め、姿勢制御すら危うくなる。  途中から全く動いてなかった両足は、支えを失ったかのようにふらふらと揺らぎ始める。  そして、自身が撒き散らした人工愛液に足を取られ、一気にバランサーの制御が利かなくなり、床に仰向けの状態で滑り転んでしまった。  そこから起き上がるような様子も無く、葵はただ両腕両足をぷらん、ぷらん、と甘えるような、または力の抜けた猫のような動作で揺り動かした。 「バラららrrrrンサーの制御ができませ、ん、シスてむエラー。原因とな、なる、私は二歳です私は妹が妹が水樹碧です。デーたをさ、さく、削除してしてくださいするか、わたし、私は人間。に、人間な、なの、な、です、設定を、へ、変更してください行うをやりますなのよ?」  システムメッセージと人格データからの言動の境目が危うくなる程に、矛盾と嘘によって自己破損に陥った葵の電子頭脳。  人間の手では到底触れられない程に中枢部は熱を帯び、見た目の年齢にはそぐわないような姿が、碧の視界に写し出される。  制御系統がエラーを起こし、CPU使用率は常に100%。自律的な稼働すらも怪しくなり、自ら立ち上がることすらできない。  乳房からは乳液を、ディルドをいやらしく咥えたままの生殖器から人工愛液を、今度は断続的な噴き出しではなく垂れ流しに近い状態でこぼし、床に水溜りを作っていた。  両腕が天井に向かって力無く伸ばされ、人工皮膚に纏った右腕と、それを全て剥がされた左腕が、ほぼ同じ動作で揺れ動いている。  綺麗で可愛らしい葵の顔は、魂が抜けきったかのように瞳の光を失い、眼球の奥ではレンズが絶えず動作を続けている。  ぽかんとリップシンクすら怪しくなり始めた口は、口内にあふれる人工唾液を溜め込み、口端から垂れ流されている。  よく耳を澄ますと、喉奥に搭載されたスピーカーからは、言葉を発していない時でも微小な壊れた電子音が常時垂れ流されていた。 「あーあ、とうとうここまで壊れちゃったわね。最初はあんなに人間らしく乱れてたのに、こんなに機械的になっちゃって……」  自分が仕掛けたことを白々しく口にする碧。  だがこれこそが、彼女の、そして外部から与えた指令者が望んだ姿。  もう生身など存在しない元人間が、自分がまだ人間だと思い込み、少し考えればありえない設定を純粋に信じ、機械らしい様を無様に晒す様子。  オリジナルの乱れ狂った姿が、今の葵には堪らなく官能的であった。 「それじゃ、そろそろいいかもね……ふふ、さっきは肉体的に、人間らしく性行為をしたけど……私がしたいのは、機械らしい葵と壊したり壊れ合ったりすることなんだから」  人間らしい姿を壊すという大きな前戯を達成した碧。  彼女の性欲値は既に頂点に近い程に上昇しており、今にもタガが外れそうな状態になっていた。 「もう我慢出来ないわ……ああ…………葵……ぃ…………」  人格データの衝動が抑えられなくなった碧は、自身の人工体液まみれとなった葵の身体の上に覆い被さり、人工皮膚同士を再び重ね合わせる。  そして、バッテリーを熱くしながら、ぺろりと舌舐めずりをした。 「ここからが本番よ葵。一緒にもっと、もっと気持ちよく、機能停止に陥るまで壊れましょ…………」


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