クリスマスの機械人形達 1話先行公開版
Added 2020-12-18 16:12:18 +0000 UTC現代よりも年代の進んだ、ある未来の話。 人類が長い歴史の中で理想を抱き求め続けていた、人間そっくりの被造物である人形は、テクノロジーの進歩によって飛躍的な成長を遂げた。 金属部品と電子部品、樹脂によって製造された機械人形、アンドロイドは、かつては精巧な見た目から稚拙な動作を繰り返していた頃からは考えられない程に人間に近づいた。 自然な受け答えに、人体らしさを付与する補充型の体液。 人工の人格による人間らしい感情表現や動作は、まさしく新しい人類と言っても過言ではなかった。 それと同時に、人間を機械の身体へと誘う機械化技術も飛躍的進歩を遂げ、今では脳を含めた全身を無機物へ置き換えることが可能となっていた。 新しく人間の世に生まれ落ちた機械への憧れ、もっと知らない世界を体験したい、身体の自由が欲しい、ファッションとして身体を作り変えたい。 人間が抱く様々な願望や欲望を、機械化は新たな形で叶え、それらはアンドロイドの登場よりも遅れてはいるものの、同じように人間の世に浸透していった。 そして、そのアンドロイド製造と機械化事業を同時に受け持つ、ある大企業が存在した。 その名前は、クリケル。 ある程度安価な機体から高級品のアンドロイドや周辺機器はもちろん、安全かつ比較的安価な機械化手術も提供する。 自社で家電量販店も受け持ち、その規模は全国にも及んでいる。 様々な世代から支持を受けているクリケルは、今や業界トップクラスの存在感を持つ大企業として認知されるようになった。 そんなクリケルは、他の企業と同様にクリスマス商戦に力を入れている。 これは、そんなクリスマス前後に起きた、クリケル内部、そしてその商品を求めたユーザー達の様々な物語と性事である。 * * * 「いらっしゃいませ! 現在クリックストア新縮西口店では、クリスマスキャンペーンを開始しています!」 「クリックストア恒例のクリスマスセール! セール品の内容はどうぞ、稼働中の店員にお気軽にお申しください! そして、指定金額以上の商品、またはアンドロイド一体ご購入の方には、豪華賞品が当たる抽選コードをプレゼント!」 「ご通行中の皆様、是非クリックストアへお越しください!」 クリケル直営の家電量販店、クリックストアでは、スタッフとして自社製造のアンドロイド、そして全身機械化改造を行った女性社員が、店頭にて客引きの声出しを行っていた。 見た目麗しい彼女達は、常にその人工的に造られた美しい肢体、または人間時代から整っていた女体を晒しながら、指定された衣装や制服と一緒に人々の目を釘付けにしていた。 現在、新縮西口店にて客引きの声掛けを行っているスタッフ達は、全員が工場製造のアンドロイドであり、さらに惜しげもなく肌を露出したクリスマス仕様のサンタコスを身に着け、笑顔を振り撒いていた。 人工の素肌に鳥肌など当然立つはずもなく、寒さに震える様子も一切ない。 本来はそのようなリアクションを取ることもできるし、温感センサーも勿論実装されている。 が、現在彼女達はそれらの機能を切っている為、太股や腹部、腕を晒しても平然としていられた。 通行人の目に、母親の腹から産まれたわけでもないのに備わっているへそが造られた、魅力的な腹部が目に入る。 「すみません、この商品はまだありますか?」 「少々お待ち下さいね! データベース内から在庫確認を行います………………お待たせしました。現在在庫は3点残っていますよ! 5階にて店頭販売を行っております」 「ありがとうございます」 人間らしい笑顔をアイドルやモデルのように振り撒いている間も、彼女達にはスタッフとしての仕事が存在する。 稼働中のアンドロイド達は、常に無線によって店舗内のデータベースと繋がっており、提示された商品を検索して在庫確認を行ったり、その場の客からの要望に対して該当する商品の提供を行ったりと、検索サービス的役割も負っていた。 もし場所がわからなければ、同行、または店内スタッフにメッセージを送信し、順次対応を行ってもらう。 アンドロイド、または機械化スタッフ同士によって端末を介するやり取りも省略され、より高レベルのサービスを提供できるようになっていた。 「いらっしゃ……いませ! 現在クリックストアで……は、クリスマスセ……セールを……行っています! クリ……スマ……スキャンペーンでは……」 電子機器らしくバッテリーによって動いている彼女達は、その電力が無くなれば当然動作が鈍くなっていく。 常に搭載されたスペックをフルに生かして稼働している彼女達は、時に途中で作業を中断させることもできずに動き続け、バッテリーが切れかけることもあった。 そうなると、人間らしくあるように、人間に近づくように造られた彼女達からは、その付与された人間的雰囲気が欠け始める。 動作は緩慢になり、言葉に不自然な切れ目が生まれ、そんな正常とは言えない状態でも、プログラムされた笑顔は保ち続け、声色や言動も本来のそれを保とうとしている。 それが逆に人間としてのおかしさを生み出し、違和感が発生していた。 「ご通行中の皆様! 是非クリ……CN00011653のバッテリー残量を確認。残り1%。私のバッテリーと共有し、事務所へと運搬します」 共に稼働しているうちの一体が、その事態を検知し、宣伝セリフを途中で中断して、CN00011653の側に近づく。 サンタコスのポケットに入ったケーブルを取り出し、お互いの首筋のカバーを開放して充電端子を露出した。 二体のアンドロイドから表れる、人工皮膚の下の金属面。 お互いに接続が完了すると、錆びついた人形のようになっていた個体の表情は消え、同時に運搬役を負った個体も無表情となった。 「所属機体との接続を実行しました。バッテリーへの送電を最優先に行い、停止命令を送信します」 「抽選コーーーー……ドをプレ……ゼ………………所属機体との接続を確認しました。バッテリー残量に伴い、省電力モードにて稼働。受信した命令に従い、一時的に作業を中止します」 それまでとは打って変わって、感情など無い、抑揚がはっきりしながらも淡々とした言動で報告的メッセージを口にすると、スタッフは充電が切れかけた個体の肩を持って移動。 スタッフ用の入り口から店舗内に入っていった。 「ごめんね、迷惑かけちゃって。バッテリー残量をちゃんと管理して、予め通知しておけばよかったわ」 「いいんですよ。その時の対策は想定済みなんですから。だからこうして状況に応じた行動ができるわけですし。それに、私もバッテリー残量が残り17%なので、代わりの二体に声掛けを要請して、私も充電に入りますよ」 「そうなのね。それならよかったわ」 搭載された擬似人格によって、人間が介在していないにも関わらず、人間同士のような会話を行うアンドロイド達。 その姿がより人間らしさを作り出し、さらなる性能の証左と製品価値を生み出す。 二体は一旦ケーブルを取り外した後、そのまま天井から充電ケーブルの垂れ下がった待機場所へと移動し、接続した。 「充電を開始します」 「充電を開始します」 プリインストールされている音声データから選択された、それぞれ微妙に違う声で同じシステムメッセージを喋り、二体は目を開けたまま小さく笑みを浮かべて動かなくなった。 彼女達以外にも、何十体ものアンドロイドが予備機体として控えており、そのどれもがぴくりとも動かず待機している。 とても人間らしい容姿なのに、まるで展示された人形のような姿を見せている。 そんな彼女達は、スタッフであると同時に店頭に並べられた商品でもある。 「なあ、あんたもセールの対象なのか?」 「はい! 私は現在店舗スタッフとして稼働していますが、同時に店頭商品としてもここに立っていますよ。もしよければ、店内のアンドロイドコーナーへ案内しましょうか?」 客引き中の一体に話しかけたのは、スーツに身を包んだ会社員の成川春樹。 彼は今年一年頑張り通した折に、何か自分へのご褒美をクリスマスに出来ないだろうかと考えていた。 そんな時、彼の目の前に購入できる美女が入ってきたのだった。 彼が話しかけた女性型アンドロイドの、個体番号CN00020546は、他の個体との大きな差異は無いが、容姿の年齢設定は二十代中盤程を示していた。 AIによって、製造時に自動的に美少女や美女として造られるように設定された彼女達は、性能こそ同じでもそのような人間らしい外見的個性が生まれるようになっている。 それが、より唯一無二の商品価値を作り出していた。 当然、オーダーメイドや同一の見た目を作成することも可能である。 「いや、あんたを買いたい。いいだろ? 商品なんだし」 春樹はあんたが欲しいと、まるでプロポーズのような言葉で目の前のロボットに意思を伝える。 すると、笑顔のまま数秒間時が止まったように動かなくなる。 そして、それから復帰した直後、姿勢を正して両乳が真下を向くように頭を下げた。 「かしこまりました。この度は私達クリケル社の機体を選択して頂き、誠にありがとうございます。購入後は譲渡準備が伴いますので、すぐにはお客様と行動することはできません。最低でも約二時間程かかりますが、自宅への発送を行いますか?」 「それで頼む。発送日は12月25日で。クリスマスプレゼントだからな」 「かしこまりました。では、ただ今から購入手続きに移らせて頂きますが、決済はどのように行いますか?」 「クレジットで」 「かしこまりました。クリックストアのアカウントはお持ちですか?」 春樹は、携帯端末に表示されたコードを提示し、抜かりなくポイントを加算してもらう。 そのコードは眼球内のカメラによって読み込まれた。 「いつもありがとうございます。では、クレジットカードを提出してください」 春樹はカードを財布から取り出すと、スタッフは掌の上にそれを乗せる。 眼球ユニット内のレンズが収縮し、手の中に搭載された読み取り機構が、カード内に組み込まれたICチップから個人情報を含めた様々な情報を解析し、自動的に決済を承った。 「決済が終了しました。この度が私を購入して頂き、改めてありがとうございます! 私、成川春樹様に求められてとても嬉しいです! それでは、これより私は発送準備へと入りますので、到着日をどうかお待ち下さい!」 購入前後で、明らかにその表情や声色の明るさの度合いが大きくなったように感じられる。 誰かの元に行けることが嬉しいということを演出する為なのか、はたまた擬似人格が実際にそういう反応を示しているのか。 その詳細を知る由も無いが、買われたCN00020546は、改めて深々と頭を下げた後、バッテリー切れ寸前の機体が運ばれたのと同じ出入り口へと消えていった。 それからすれ違い、代わりとばかりに別の機体が姿を現し、呼びかけのポジションに収まる。 「いらっしゃいませ! こちらクリックストアでは、現在クリスマスセールを開始しています!」 何事もなかったかのように、同僚が一人いなくなるといった認識も無さそうな人造の笑顔で、通行人に素肌と笑顔を振り撒く。 そんな姿を眺めながら、春樹はその場を後にした。 * * * 所属する会社を離れ、ユーザーの元へと移動することが決定したCN00020546。 早速クリスマスに配達する準備を進める為、一時的にメンテナンスルームへと向かっていく。 身につけていた制服を脱ぎ捨て、産毛やシミ一つないまっさらでつやつやとした素肌を晒す。 寒がる様子は一切なく、何の恐怖心も見せないまま、彼女は冷たい作業台の上に仰向けとなった。 メンテナンスルーム担当のアンドロイドスタッフ一体が、売られた個体を見下ろしつつ、周囲に洗浄用具を備えたロボットアームを待機させた。 「これより、CN00020546の出荷準備を開始します」 そう言うと、スタッフの一体が彼女の頭を両手で挟み、もう一体が上半身を軽く持ち上げつつ、頭部を180度回転させる。 人間のように首が抵抗する様子は無く、スムーズにその視線を真後ろを向いた。 かちゃりと無機質な着脱音が鳴ると、その頭部はあっさりと空中へと離れ、断面部の金属面を剥き出しにした。 まるでマネキンヘッドのようになった女性の頭部。 人間らしい血色を保っている姿が、より人ではない様子を強調する。 「後頭部ハッチを開放してください」 「了解。後頭部ハッチを解放後、デバッグモード用接続端子を開放します」 首だけのCN00020546は、痛がる様子も一切ないまま、所属機体からの指示に従い、人工頭皮の貼られた後頭部を開放し、自身の中枢である電子頭脳を冷たい空気に晒した。 温かみを抱きそうな程に人間と変わらない姿から、血液の一滴もなく露出する金属部品の塊。 人間ならば、自分の頭の中を露出しているなど、泣き叫び命を乞うような状態だろう。 だが彼女達は、それを機能に組み込まれた当然のこととして自ら行っている。 電子頭脳内の接続端子に端末から伸びるケーブルが接続され、同時にロボットアームによって、首の無い身体の体勢が整えられていく。 そして、スタッフの手によって端末な操作されると、繋がれた彼女の口からシステムメッセージが漏れ出る。 「現在保存されている記憶データ、パーソナリティ情報等の、人格データを除く全データの削除を行います。この操作は、一度実行された場合はキャンセルできません。並びに、削除されますデータの復旧は出来ません。お気をつけください」 ぱくぱくと言葉に合わせた口の動作。 頭部だけで動いている姿が、より被造物らしさを強調する。 商品として出荷するにあたって、従業員として稼働していた時の記憶データやシステム情報は全て削除される。 会社の機密保全と、ユーザーの所有物としての尊重を行う為である。 かつて同僚として動いていた者にも、それらしい同情や感傷を抱くこともなく、必要なこととして、スタッフは迷いなく実行した。 「実行が認証されました。これより、人格データを除く全データの削除を行います…………」 それまで積み上げたものが消されるというのに、淡々とした声色はちっとも変わらない。 その間に、ロボットアームは首から下の洗浄を開始していた。 体表面は細かな汚れを洗い流し、付着したゴミを綺麗に取っていく。 その作業は膣内やアナルにも及び、まるでセックスドールを相手にしているかのような動きで、容赦なく洗浄用ブラシを挿入し、二つの肉穴を磨いていった。 「………………指定されたデータの削除が完了しました。新しいデータをインストール、またはスタートアップ設定を行ってください」 クリックストアスタッフとしてのデータが削除され、ユーザーの物になる準備が整った。 予め組み込まれたシステムメッセージを何度も垂れ流すが、電子頭脳内に施す作業は終了したとばかりに電源が切られ、CN00020546の瞳から光が失われた。 一通りの洗浄作業が終了し、その工程は頭部にも及ぶ。 胴体部から両腕、両足、上半身、下半身が梱包しやすいように離れ離れにされている最中、頭部は逆さ吊りの如く頭頂部が真下を向くようにひっくり返され、毛髪が重力に従い垂れ下がった。 金属の断面についている穴から、精密機械にも使用可能な洗浄液が注入されると、口や鼻、眼から体液のそれでない液体がだらだらと溢れ出た。 その中には、無機物で構成された頭部に溜まっていたホコリや微細な汚れが混じっている。 洗浄が終了し、濡れたマネキンヘッドを扱うように液を拭き取ると、バラバラになった身体と共に彼女は仮の箱にまとめられ、台車に乗せて運ばれていった。 あとは充電などの小さな作業の後、梱包され、クリスマスに購入者の元に運ばれるのみ。 その間、電源を切られている彼女に所有者の元に行くのが楽しみなどと感情を見せることもない。 ただ虚ろな顔で、暗い箱の中で、所有者に使われる時を待つだけであった。 * * * クリスマス当日。 人々が祝いの日に浮かれ、クリスマスというイベントを楽しみ、無数の喜楽の感情が渦巻く日。 その日、サンタからの贈り物とばかりに、早朝から成川春樹の自宅に荷物が届けられた。 「おはようございます。成川春樹さんの自宅ですね? クリックストアの配送サービスです」 ドアの向こうから聞こえてくる、電子的に造られた女性の声。 ようやく来たかと、子供の頃から胸に刻まれたプレゼントの嬉しさが蘇りながら玄関のドアを開ける。 そこにはクリケル社の物に近いロゴの刺繍が入った、サービスごとに統一された制服を着た女性型アンドロイドが立っていた。 側にあるダンボール箱は、人間一人分の大きさが収まっているとは思えないくらいにコンパクトで、少しだけ実在性を疑いたくなった。 「ありがとうございました。これからもクリケルグループをよろしくお願いします」 宣伝を欠かさず、制服下の膨らみがはっきり見えるくらいにしっかりと頭を下げると、配達スタッフは急いでその場から離れていった。 「……本当に入ってんのかこれ…………うわ重っ!」 ひとまず家の中に持ち込もうとしたその時、箱の大きさとは明らかに比例しない重さが手に伝わった。 まさしくアンドロイド一体+αの重さ。 踏ん張る声を出しつつ家の中に運び出し、リビングのコンセント側の壁まで動かすと、春樹ははやる気持ちを抑えきれず、ハサミを持ち出して箱を包むガムテープを裂いていった。 そして、蓋を開くと、そこには彼が求めていた光景が現れた。 「あれがこんなにまとめられてるのか。どうりでこんな大きさなはずだよな」 まるで少女向け人形セットの如く、外された両腕両足が綺麗に詰められ、惜しげもなく素肌を晒す上半身と下半身が、無数の梱包材と一緒に箱の中に収まっている。 頭部も同様だが、機体の中枢部分だからか、他パーツとは隔てて梱包材を特に使われており、虚ろな目のまま口の中にも押し込められている。 「えっと説明書は……とりあえず簡単に組んでいけばいいんだな」 春樹は購入後間もなく送信された電子説明書を開き、記載された組み立て方に従って手を付けていく。 改めて外気に触れた、元スタッフの身体。 その感触は、作り物とは思えない程にやわらかく、人間の肌に近いかそれ以上の気持ちよさが手から感じられる。 だが、発熱していない分、人工皮膚から伝わるのは金属特有の冷たさのみ。 このままクッションにしてしまおうかとも一瞬よぎるが、春樹はその思考を捨てて、股間を勃たせながら組み立てていった。 繋げて回し、かちっ、と音が鳴る度に、人間らしさを取り戻していくCN00020546。 最後に首まで繋ぎ終えると、そこにはクリックストア前で見かけたスタッフと全く同じ姿が生まれた。 「制服越しにもわかってたけど、やっぱエロいなロボットは…………早速電源を入れるか」 人の形が取り戻されても、生気のないガラス玉はただ天井を写す。 そして、首元のカバーを外し、手動で電源を入れると、静かな部屋に小さな駆動音をたてほぼ全データ削除後初めての起動が開始された。 「…………起動しました。今回は、私達クリケル社製アンドロイドを購入して頂き、誠にありがとうございます。当機体の製造コードはCN00020546。型番コードは……スキップが入力されました」 天井を向いたまま、ぐるぐると眼球を動かして春樹を捉え、その方向に目線を固定したまま喋り続ける。 正面から見れば、若干ホラー要素を醸し出している。 長々とした口上はどうでもいいとばかりに、端末側からスキップ操作を行うと、与えられた信号に従ってシステムメッセージを更新した。 「続けてスタートアップ設定を開始します。成川 春樹 様からは、事前に個人情報を取得していますので、入力の必要はありません。なので、当機体のパーソナリティ設定を行います。まずは、私の名前を設定してください」 子供の頃も、親も存在しない彼女達が、所有者から与えられる新しい名前。 春樹は悪戯心から、一回だけ遊びでふざけた名前を伝える。 「じゃあ、チンコで」 「申し訳ありませんが、公序良俗に違反する名称は禁止されています。名称データベースから、ランダムで設定しますか?」 機械的な口調で卑猥な名前をつけるなと、当然ストップをかけられた。 そういうところもちゃんと対策しているのかと感心しつつ、春樹は元々考えていた名前を改めて口にした。 「冗談だよ。ちゃんと決めてるからさ。そるじゃあ、陽子で」 「陽子 ですね。かしこまりました。私の個人名称として、陽子 を登録しました。続いて、続柄設定を……」 それから続けて、口頭で次々と口にされる様々な設定を固めていき、ようやく本起動直前となった。 その間も、陽子の身体は暖房がかかっていながらも冷たい床にくっついたまま、人形らしく動かなかった。 「全ての設定が終了しました。それではこれより再起動を行い、その後に擬似人格を起動します。どうぞこれから、末永く陽子 をよろしくお願いします」 アンドロイド的な嫁ぎのシステムメッセージが伝えられると、陽子の目の光は一旦失われ、駆動音もゆっくりと収まった。 それから五秒も経たないうちにそれは復活する。 「…………再起動しました。パーソナリティ設定の適用が完了しました。これより、擬似人格を起動します…………」 感情のない声が、空気に向かって放たれる。 その直後、陽子の表情に、クリックストア店頭で振る舞っていた時のような自然な柔らかさが取り戻され始めた。 そして、ゆっくりと全裸のまま起き上がると、まるで親しい友人に出会ったような笑顔を見せ、軽く首を傾けて挨拶をし直した。 「おはよう春樹! そしてメリークリスマス! これから私は貴方の家でお世話になる陽子よ。貴方がつけてくれた名前、ずっと大切にするからね。それから、共に幸せに暮らしていきましょ」 コードの羅列によって形成された人工の人格が、日にちに合わせた言葉を口にし、まだ冷たい両手で春樹の手を握り、胸躍らせる行為で挨拶を向けた。 両腕で寄せられた乳が、それまでラブドールのようだった陽子から、生の色気を生じさせる。 「あ、ああ。よろしくな。にしても、思ったより結構雰囲気変わるな。人格データが動くだけでそこまで違うのか」 「当たり前じゃない。私達の擬似人格は、より人間らしい振る舞いが出来るように組み込まれたマスターピースだもの。それが稼働してない時は、家電製品の音声メッセージとあまり変わらないから。けど、どんな状態でも春樹が好きだってことは変わりないからね」 機械的な振る舞いと、金属面を剥き出しにしたバラバラな状態を経ての、とても人間らしい姿は、あまりにも大きなギャップがある。 スムーズかつ細かなフリも交えながら喋っている陽子は、全裸でかつ継ぎ目が見えるという点を除けば、どうみても人にしか見えない。 そんな彼女と、これから一緒に親密な日々を築けるとは、我ながらなんと素晴らしいクリスマスプレゼントか。 そう思いながら、春樹は早速、アンドロイドに対して試してみたかったことに手を付けることにした。 「さ、これからどうしよっか春樹。春樹がの頼み事なら、なんでも聞いてあげるから」 「そんじゃあ……少しお前の下半身で遊ばせてくれないか?」 「もう、いきなりそういうこと頼んじゃうの? 私はもちろんいいけど……」 陽子は、一瞬のロード時間のような隙間を空けてから、ちょっとだけ恥ずかしそうにもじもじと振る舞う。 蠱惑的な様相の彼女を目に楽しみつつ、春樹はキッチンへと向かい冷蔵庫を開けた。 「まだセックスはしねえよ。けど、そういう機能もしっかりあるって知ってから、一度は反応とか見てみたかったんだよ。だから、少し遊ばせてもらうぜ」 春樹が取り出したのは、野菜専門スーパーで購入した長く太めのキュウリと、一緒に冷やしていたローションだった。 それを持って陽子の元へ戻ると、ボトルの蓋を開けつつ目的を口にした。 「陽子、上半身と下半身離しても動けるのか?」 「ええ、可能だけど。無線接続が行われるし、下半身にはミニバッテリーが組み込まれてるから、稼働はできるわ」 「それじゃあ……切り離して床の上にいろ」 なぜそのような指示を与えられたのか、陽子は性行為関連を中心に理由付けを思考するが、それらを中断し、ひとまず所有者の指示通りに動くことにした。 「わかったわ。けど、私の下半身を使おうにも、体液タンクは今空っぽだから気をつけてね」 陽子は上半身を後ろに傾けて床に座ると、かちゃりと胴体部から冷たい着脱音が鳴った。 人工皮膚の継ぎ目部分から上半身が離れ、断面から内部機構を晒しつつ真っ二つになった。 陽子の下半身は、力無く倒れる様子も無いまま、上半身と同様に断面部からきゅい、きゅい、と駆動音を鳴らしつつ、細かくバランスを調整して姿勢を保っている。 身体が離れ離れになっているにも関わらず、陽子は平然としており、痛がる様子は一切ない。 春樹が求めている事柄を予測し、陽子は両足を小さく開き、女性器部分に触れやすいように晒した。 「これでしっかり反応するのか、まず試運転してみないとな」 何を使おうが、ロボットの膣内に挿入するのは、発泡スチロールやジップロックに入れるのとたいして変わらない。 春樹はキュウリと無機物の生殖器の入り口にローションをかけ、容赦なく奥まで挿入していった。 ずぶずぶと膣肉はそれを受け入れ、陽子の上半身はぴくぴくと反応を示す。 「どうかな春樹……私の女性器ユニット……」 「結構締め付けてるな……痛いとかは無いのか?」 「大丈夫……私は、痛覚信号も……自由に切れるし……今は快楽信号が発されてるから……何も問題ないわ……」 キュウリを上下させるごとに、ぐちゅぐちゅと空気混じりに擦れる音が聞こえる。 ちらっと上半身側に視線を移すと、断面部から見える機構がより激しく動作し、身体を支えている指がぴくぴくと床とついては離れを繰り返していた。 頬はほんのりを赤くなり、唇もどこか悩ましげな歪んでいる。 彼女の言う快楽信号が発生していると如実に表すかの如く、両乳房のピンク色の先端が、ぴくぴくと揺れていた。 だが、一向に喘ぎ声を上げる様子は無い。言葉は詰まっているが、その雰囲気は気持ちよさからというよりも、快楽信号の処理時に発生する負荷からの物と感じる。 もっとこのアンドロイドが淫乱に動く様を楽しんでみたいと、春樹は断面部から覗かせる子宮型タンクを見ながら、ぐちゅぐちゅとキュウリを激しく動かし、子宮口を超えて奥まで突っ込んでいった。 ピンク色の球体の内側から、何かが張る姿が見える。 同時に、バイブのように振動する姿が確認できた。 「へえ、これってこんな風に動くのか。周りがパーツばっかだから、なんか余計生々しいな」 「えぇ……私達……は……生殖器官に関連した……箇所は……人間に限りなく近づくように……デザインされてるの……けど、私はあくまで……セクサロイドとしての……設計じゃないから、それらのシリーズに……比べて…………再現性には……欠けるかな…………」 「だからそんな風に喘ぎ声も出ないのか?」 「違う……わ……現在、快楽信号の処理が……初回だから……うまく……効率的に出来なくて……それと……現在性行為と、認識して……無いから……嬌声を発していな……い……だけなの…………声を出すように……する……?」 肉体的な快楽行動をしながらも、機械的な認識のまま言葉にする姿は、まさしくロボットらしい。 春樹はその質問にイエスと答えようとしたが、一旦ここはこらえて、しばらくこの姿を楽しむことにした。 「いや、もう少しだけこのままでいろ。それで、挿れてるキュウリ締め付けてみろ」 「わかった……わ…………女性器ユニットの出力を……上昇させる…………」 みちみちと、わずかに潰れるキュウリ。 その状態で上下に動かすと、陽子はガクガクと両腕を震わせ、頭を小さく揺らした。 きゅいい……と、駆動音が若干強くなり、機械的な喘ぎ声を聞こえてくる。 試しにと、断面から手を入れて、子宮型タンクを右手で掴みつつ、左手でキュウリを動かしてみる。 一気に性感がほとばしったのか、両足がぴんと張り、かくかくと痙攣し始めた。 「は、春樹……と、とっても激し……くて…………想定された……行為を逸脱してるの…………快楽信号の処理がお、追いつかな……くて、CPU使用率が100%で……」 アンドロイドらしい、カタカタと機械的な狂い方を見せ始めた陽子。 そろそろいいだろうと、春樹は彼女の性器を楽しみながら指示を与えた。 「もういいぞ、そろそろ喘いでも」 「このままだ、と……正常な動作、に影響を及ぼす、お、恐れ…………ああっ! あっ! 春樹、いっ! あんっ! とっても気持ちいいの! 私、性感反応を示すの初めてで……ああっ!! あんっ!」 許可を得たと同時に、途端に生々しく激しい嬌声を上げ始めた陽子。 まるで呼吸まで幻視しそうな上半身の佳がる動作に、今にも仰向けに倒れて痙攣しそうな下半身。 作り物の生殖器に二方向から攻められ、平常時と同じ姿を保てるはずもない。 同時に、内部部品に触れるごとに、今の陽子には快感として導き出されている。 性行為時と認識した後には、そう反応するように設定されている為、極端な話、電子頭脳に触れられても幸せだと感じる。 製品として、どのような要望にも快く応える無機物の人間。 そんな陽子は、所有者によって最後の遊びを与えられようとしていた。 「そろそろいいかな……こんだけ乱れるなら、俺が使っても楽しめそうだし。んじゃあ、最後に思いっきりやってみるか」 そう言って春樹は、子宮型タンクを内側から突き出たキュウリごと握り、左手も準備を整える。 そして、右手に思いっきり力を入れ、肉袋をキュウリの先端を潰すように握った。 同時に、肉壁への刺激を与えようと、残った分を思いっきり奥まで押し込んだ。 「ああああっ!! あ、あ、あああっ! はる、き……いいっ! あっ! ああああっ!!!」 ぐしゅっ、と汁が微量に溢れ、内部でそれが折れ、全てが膣内に押し込まれた。 下半身はびくびくとこれまでで一番の痙攣を示し、人工愛液を出したそうな空気の排出音を出しながら、バランスを崩しぐったりと仰向けになった。 中折れしたキュウリが角度を変え、子宮型タンクの中からその形を主張している。 電気信号が吹き飛びそうな程の気持ちよさを初めての膣から与えられた陽子は、幸せそうな表情のまま、視線を愛する春樹へと向け続けた。 「こんなにエロい姿見せる女が売ってるなんて、いい時代だよなぁ」 「あっ……ぁ…………春樹……ぃ……私、初めて……を……春樹に使ってもらえて…………嬉しい……の…………あっ……」 割れ目からキュウリの汁混じりのローションを垂らしながら、ぴくぴくと人間らしい事後の反応を示す陽子。 人間としては明らかに雑な扱いだが、陽子からはそれは所有者から与えられた使用時間だと捉えられており、擬似人格は喜の感情を算出していた。 自然に産まれた人間よりも、未だ不自然な部分が拭えないアンドロイド。 それでも、人間の為に動く美しい人型という存在は、誰にとっても非常に素晴らしい物なのは間違いない。 「セックスだけじゃねえけど、これなら末永く毎日が楽しくなりそうだな。これからもよろしくな陽子。最高のプレゼントだよお前は」 「あ、あっ……私も…………そう言って……もらえて……光栄よ…………これからもよろしくね……春樹…………」 こうしてまた、クリケル社製のアンドロイドは新たなユーザーを得て、人々の満足度にさらなる貢献をもたらした。 クリスマスの日に、クリケル社から機械による幸せを受け取ったのは、春樹だけではない。 それは、正式な手続きから後ろ暗い物まで、数え切れない程の人々に与えられている。 これは、機械の人型から人々に与えられた、無数のクリスマスプレゼントの話である。