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土装番
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機械人形だけの秘境村 1話先行公開版

 現代より少し未来の時代。人類は陸海空その全てにおいて移動する術を確立し、宇宙からも地上を見下ろせる技術を手に入れた。  しかしそれでも、まだまだ人々が滅多に足を踏み入れない、踏み入れられないような場所もあり、中には交通の便が悪く秘境のような扱いになっているような所もある。  そんな場所に、誰もが羨むような世界があるかもしれない。自然に発生したものでも、人為的に作られたものでも、そこにはロマンがある。  これは、とある秘境に偶然足を踏み入れ、そこに住もうと決心した先で思わぬ出会いと発見をし、予想外の人生へ転がった男の話である。 * * *  季節は夏前。梅雨による雨の連続な日々から抜け、一気に暑くなり始める時期。  そんな時期にひとり、車を走らせてギリギリ車両が通れるかどうかという幅の、木々が空を遮る道を自分の車で走っていた。 「まさか、誰もこんなとこ通ろうなんて思わないもんな。けど、前と酷さはあんま変わんないし、やっぱりある程度手入れはされてんのかな」  落ち葉と枯れ木、草と土ばかりの道を走る人物の名前は大塚健吾。  フリーランスとして働いており、持ち運び可能な端末を用いて様々な依頼を受けて活動している。  そんな彼は今、つい最近まで住んでいた街を離れ、山奥の秘境まで引っ越しにやってきていた。  その場所とは、彼が以前趣味の秘境探索をしていた際に偶然発見した、夢のような村だった。 「はぁ……あんな美人ばっかのところに本当に住めるとか、マジで夢みたいだ。今でも信じらんねえ。あの時見つけられてよかった……」  遡ること一ヶ月前。ある小さな噂を聞きつけた彼は、入念な準備のもと車を走らせた。  その噂とは「ある山奥、木々が生い茂る一見するとまともに進めなさそうな道の先に、美女だらけの綺麗な村がある」というものだった。  到底信じられないし、妄想が爆発したようなありえないシチュエーションのような、荒唐無稽な噂としか思えない。  健吾も同じように思っていたが、場所がいつか行ってみたいと考えていた山なのもあって、彼はついでに噂の真相を確かめてみようと車を走らせた。  そして彼は、本当に見つけてしまった。美女だらけの村を。 『ようこそ。外から人が来るなんて珍しいですね!』 『おー外から来たのかお前? こんなとこまで来るなんて物好きだな。ま、それなりにゆっくりしてけよ』  どこを見渡しても必ず視界には美少女や美女が目に飛び込んでくる。  農作業に従事したり、暇な時間に遊んでいたり、手伝ってあげていたり、道の整備をしていたり。  まるで異世界にでも迷い込んだようなその場所。健吾は衝動的に、かつ確固たる意志でこう思った。ここに住みたいと。  最初は住めるかも怪しいなと思ってはいたものの、村長のもとを訪ねて相談すると、驚くくらいにスムーズに話が進み、あっさりと転居が成立した。  手続き諸々こちらでやっておくと言われ、それも本当に叶えられた。  今でもその点に関して驚いてはいるが、ともかくいくつかの面倒がすっ飛ばされたのは良い事だと、健吾は感じていた。    そして、ギリギリ通れなくもない、到底まともとは思えない道を進み続けた先、彼はようやく見つけ出した奇跡の村にたどり着いた。 「よかった、やっぱり夢じゃなかったな……翡翠村」  その場所の名前は翡翠村。木造の家屋が立ち並び、至るところに田畑が見られる、自然と共にある印象を強く受ける所である。  様々な作物が栽培されており、それらを彼が見た美女や美少女達が、農機を駆使したり手作業も交えて力強く励んでいる。  まるで現代社会の営みから隔絶されたような場所にも見えるが、その分緑や青い空の美しさは格別なものがあった。  健吾は早速、前回も使った、かろうじて車両を停められそうなスペースに駐車し、住民との挨拶も交わしながら村長の邸宅へ向かった。 「おお、待ってたぞ健吾さんや。まさか本当に住むという者がいるとはな」 「あはは、ここはやっぱり自分の理想とも言える場所ですから」 「女目当てか?」 「い、いや! そういうわけじゃなくて」 「ははは、隠さなくても良い。翡翠村の女は皆美人ばかりだ。そちらの考えていることなどお見通しだが、だからといってどうこうしようなどとは思っておらんよ。そなた以外は全員、ここに来るまでがしんどすぎるし立地が悪すぎると言って住む者はいなかったからのう」  彼が対面した、やや古めな言葉遣いをする村長の名前は八重樫美幸。ややダウナーかつ古風な雰囲気を感じさせる女性である。  年齢は彼女が言うには27歳。さらさらとしたセミロングの銀髪に、流すような半目の瞳が美しさと色気を思わせ、細く筋の通った顔立ちが美貌という言葉をそのまま形にしている。  やや細身ながらも、それが衣服の下から盛り上がる乳房の大きさを強調させている。  歩き姿も様になるスタイルの良さに、見惚れるような曲線美。まさに美人ばかりな村の長と呼ぶに相応しいような人物だった。 「さて、ひとまず書類の受付はもう終えているからな。あとは住む家だが」 「あの、前回は家のことは心配ないって言ってましたけど、結局どういうことなんです?」  健吾は移住の話を取り付けた際、美幸に「住む家の心配はない」と言われていた。  アパートやマンションのような類が見られない村ゆえに、借家でも扱わなければならないか、家を買うかしかないと思っていつつも買う覚悟はできていた彼からするとそれは予想外の言葉だった。  結局それの真意はなんだったんだろうかと今日まで引っ張られていたが、それがようやく明かされることになった。 「少し外に出ろ。すぐにわかる」  健吾は彼女に誘われるがままに家の外に出ると、唐突に遠方に向かって指を差した。 「あれがこれから住んでもらう家じゃ。満足いくだろう?」  その先には、周辺にぽつぽつと見える他の家よりも見た目大きく、立派な木造建築の家が建っていた。  古びて使われなくなった家になっているような雰囲気でもなく、遠くから見てもきちんとした佇まい。健吾は思わずぽかんと口を開いた。 「え、あれが…………??」 「元々あそこはちょうど空き家だったからな。丁度よいと思ったまでよ。そちらの求めている設備もきっちりと揃えられている。簡易的だが駐車場となるスペースもあるし、今停めてある場所にそのまま置いておいても構わないが……どうする?」 「じ、じゃあ……隣でお願いします」            想像以上にいたれりつくせりな状況に、ここまでもてなして貰っていいのかと逆に不安になり始めた健吾。  怪しさこそ強くあるが、それでもここに住む価値は充分すぎるくらいにある。村長の言う通り、あわよくばこの村の美人に手を出せればもう言うことなしだが、見たり交流できるだけでもお釣りが来る。自然のそれとは別の良い空気が吸える。  もし何か起きたなら、その時はすぐに逃げよう。それくらい気軽に考えつつ、健吾はひとまず村長への挨拶を終え、指定された自宅へと足を踏み入れた。 「うわっすげえ……ここ本当に俺が好きにしていいのか……?」  室内にはしっかりと電気が通っており、必要となるであろう家電も一通り揃っている。  いくつか生活用品や持ち運べるだけの家電を車に積んではいたが、これなら後から買い足すことなく快適に過ごせるだろう。  健吾は疲れもあって、最初から設置されているふかふかなベッドに倒れ込み、大の字になって沈んだ。 「これ新品じゃん…………はは……翡翠村サイコー……」  かなり手早く楽に転居が済んだ時点から思っていたが、あまりにも住心地が良いと直球な感想を抱いていた健吾。  住んでしまえばあとは楽なのに、それまでの過程がきついからやめたという、これまで村に来た者達のことを、健吾はこの時ばかりは内心でバカにしていた。  今日は大移動で疲れてしまったが故に何もする気は起きないが、明日からは面白い日々が送れそうだと彼は思っていた。  こうして、都会から秘境中の秘境へと移住した男の新生活が、ついに始まったのであった。 * * *  翡翠村移住から4日後。健吾は都会から田舎へ移り、新たなる生活を順風満帆に謳歌していた。  環境の変化によってしばらくは苦労するだろうと想定していたが、彼には殆どそんなことはなかった。  秘境中の秘境である通り、交通機関などまず存在しないが、そもそもそのような大掛かりな移動をする必要もなく、車で事足りる。  食事も非常に美味しく、近所の住人が作りすぎて余ったものをいつも分けてくれていた。  農作物や肉類も分けてもらい、時には山中へ狩りに出かけた住人がその成果をくれたりもする。  そして、この4日間で新たな交友関係も生まれた。 「健吾さんの仕事って大変なんだね……ずっと座って画面に向き合い続けないといけないし」 「まあ、自分にはそっちの方が性に合ってるんでね。むしろ、いつも畑の管理や雑草の処理とか、毎日細かく手を入れないといけないそっちの方が大変でしょう」 「はは、もう慣れちゃったから。健吾さんと同じように、あたしもこっちの方が性に合ってるんだろうなって」  健吾と新たに仲良くなった女性の名前は田村真奈美。翡翠村に住んでいる、彼女が言うには22歳の女性である。  ふわっとしたブラウンヘアに、彼女の立ち振る舞いや笑顔から溢れる明るい雰囲気。  顔立ちもどちらかと言えば美人寄りだが、可愛らしさと大人びた美しさが両立している、目を引くような美貌を持っている。  それでいて普段着や作業着の下からでも盛り上がっている、ロケットと形容できるようなハリのある両胸に、ロケに来たモデルかと思ってしまいそうな、スラっとしたスタイルの良さ。  細身でありつつしっかりと肉がついている所にはついており、まさに魅力的という言葉が似合う女性だった。  そんな真奈美の家は、距離としてはちょっとだけ離れているものの、健吾とは一番近い場所にある。実質的なお隣さん同士。  出会う頻度も必然的に多くなり、その結果、お互いに座り込み話し合うくらいに仲良くなったのだった。 「どう? 今度ちょっとうちの畑手伝ってみない? いい運動になると思うけど」 「そうだな……じゃ、ちょっとお願いしてみようかな。そろそろいまやってる作業にも一区切りつくし」 「よっしゃ! ちょうど人手欲しいと思ってたんだよね! じゃ、そん時を待ってるから!」  ただでさえ容姿の平均レベルが異様に高い村の女性と、早くもこうして仲良くなれたことに、健吾は内心相当に気分が高まっていた。  村人との関係も良好で、衣食住全て申し分ない。まさに天国のような村だとしか思えなかった。  だがその一方で、健吾の中にはある疑問と疑念が生まれていた。  村へやってきて5日目の夜。彼は明かりのついた部屋の中で、あることについて考え込んでいた。 「………………やっぱこの村なんかおかしいよなぁ」  その疑問とは「山奥の村なのに異様に環境が整いすぎている」という点である。  見た目こそ自然ばかりで現代的な物品が全くといっていいほど見当たらない。にも関わらず、生活圏内でのインフラがしっかりと整っているのである。  ネットワーク環境は有線無線両方とも整っており、回線速度も申し分ない。健吾が持ち込んだノート型端末を用いたリモート通話もなんら問題なく行える。  携帯端末に入る電波も、大抵山の中では切れてしまうのに、翡翠村の中ではどこでもしっかり入ってくる。  元々備わっていた家電製品もほぼ最新型な上、空調設備も完備していて常に環境は快適。浴室はユニットバス付きで広い上に外気を感じられる窓もついている。そもそも電柱の類が見当たらないのにしっかりと電気も通っている。  都会のど真ん中でもないはずなのに、それと同等かそれ以上のインフラが整えられている。村全体の生活の雰囲気からしても、それは明らかにおかしいものだった。 「…………俺の家以外、どこも電気ついてないな。けど、さすがにまだ起きてんだろ……」      それに加え、住人の数はしっかりと確認できるはずなのに、健吾の自宅以外の家屋からはひとつとして室内の湿度明かりが見当たらない。  村には街灯のような類はほぼ無く、日が落ちれば月明かり以外は光源がなくなってしまう。その分室内の電灯の存在はとてもはっきりしているはず。  だからこそ、より村の不自然感が強まって感じるようになっていた。 「風習とか……でもないよなぁ。来てからずっと点けてるけど注意されたこともないし。んじゃあなんだこれ……?」    この村特有の風習があるというわけでも、儀式があるというわけでもないとは考えられるが、そうなると余計に疑問が湧き上がってくる。  ここはいっそのこと、その不自然さを解き明かしてスッキリしたほうがいいだろうと考えた健吾は、携帯端末と懐中電灯を持って外に出かけた。 「村長に聞けばさすがに何か分かるよな。あの人なら今でも起きてそうだし」  暗闇だと、田舎道はより足元が酷く感じる。目の前以外にも、足場となる部分にもある程度光を向けていなければ強い不安が生まれる。  健吾はいつもよりも遅くせざるを得ない足取りで、少しずつ村長の自宅を目指した。    「あったあった。一応少し明かりは点いてるんだな」  田んぼの横にある、用水路と隣接した道をゆっくりと歩き続け、ようやく村長の家が視界に入る地点までやってきた。  他とは違い少々の明かりがあることに少しだけ安心感を覚えたその時、彼の背後から誰かの足音が聞こえた。 (誰だ……? さっきまで誰もいなかったはずだろ……?)   耳に入った当初は野生生物かと警戒したが、それらしい足音ではなく日常で聞いたもの。  だがそれが逆に、彼の警戒心を別の方向に強めた。人影すら見えない状態だったのに突然自分の後ろをついていくような人物が果たしているのか。  抱いている疑念も重なり、翡翠村に来てから一番の不信感に胸中が支配された健吾。  足音からしても、明らかにこちらに近づいてきている。歩く速さを少しだけ上げているが、それに追いつかんばかりに向こうも速度を早めている。  これは早く村長の家に着かなければ。そう思いながら一歩大きく足を踏み出そうとしたその時、真っ暗な中で彼の肩を誰かが掴んだ。 「ちょっ」 「うおわあっ!?」  健吾は反射的にそれを勢いよく振り払った。皮膚に伝わったその感触はどこか柔らかい気がした。  直後、道のすぐ隣にある用水路側から、何かがぶつかる音と水が弾ける音が聞こえてきた。  払った相手が、そのままそこへ落ちてしまったのだ。 「やべっ!」  緊張感と湧いてきた恐怖によって誰が声をかけたのかもわからず、思わず反撃してしまった健吾は、慌てながら懐中電灯を音のした方に向けて、それが一体誰だったのかを確かめようとした。 「真奈美さん!? ああ、すみません。俺ついびっくりしちゃって……」  そこにいたのは、隣の家に住む真奈美だった。なぜ彼女が自分を追いかけてきたのかもわからないが、健吾は悪いことをしてしまったと謝罪の念が湧き上がった。  彼はすぐに、水に濡れてしまったであろう真奈美に近づいて引っ張り上げようとする。  しかし、健吾は彼女の様子がおかしいことに気づいた。 「えっ、ちょっとおい!? 大丈夫か!?」  用水路に落ちた真奈美は、流れてくる水に晒されながら頭をガクガクと震わせ、口をぱくぱくと無感情に動かし続けていた。  よく見れば、首元は不自然な方向へ折れ曲がっており、皮膚に異様なシワが生まれてしまっている。  胴体が不規則に何度も跳ねるように痙攣しており、服越しの両胸を弾んでいた。  用水路の向こう側に出ている右手も、泥の中に何度もばしゃばしゃと叩きつけるように暴れており、明らかに正常でない状態となっていた。 「まずいまずい! 早く引き上げないと……?」  これは非常にまずいのでは。そう感じて脇に腕を通したその時、彼は耳を疑うような声を聞いた。 「重大なそ、損傷が、損傷が発生しま、しました。ししししま、ちょっと健吾さ、健吾さ、ささささエラー、メンテナンスセンター、め、めめめ、メンテナンスセンタタタタタタ…………」  首が折れ、痙攣を起こしている重大な状態なのに、真奈美はずっと声を出し続けていた。  それも、まるで破損した音声ファイルのような狂った声を、唇の動作があっていない上に半分水没しているような状態なのに発し続けている。  かろうじて聞こえる内容は、まるで電化製品や端末に表示されるシステムメッセージのよう。  理解の追いつかない非現実的な光景に健吾は混乱しそうになるが、今はとにかく引っ張り出そうと持ち上げ、強引に道の方へ引きずり出した。  彼女の身体は、衣服が吸った水分を含めても女性としては明らかに重く、見た目と釣り合っていなかった。  なんとか真奈美の身体を地上に戻した健吾。救急車がこんなところに来るわけがなく、そういえば病院の連絡先も聞いていない。  どうすればいいかと頭を回した結果、ひとまず村長のところへ運び出そうと、背中に背負う形にするために彼女の身体を一旦起こした。 「えっ……なんだよこれ……金属か?」  痙攣を続ける真奈美の身体。そんな中、彼の目に飛び込んできたのは、おそらく落下した際についたであろう右側頭部の傷だった。  皮膚が抉れており、明らかに大怪我とも言える状態だが、その皮の下から顔を覗かせていたのは、鈍色の金属だった。  血は一滴も流れておらず、まるで車につけられるのと同じようなへこみが生まれている。  咄嗟に健吾は、頬を彼女の動き続ける口元に動かした。  未だ激しく動き続けているにも関わらず、彼女の口や鼻から一切の呼気が感じられなかった。 「なんだよこれ……なにがどうなってんだよ……!」  次々とわけのわからない非現実的な事実が飛び込んでくる健吾。  今はこれ以上考え込んでも頭がおかしくなってしまいそうだと思考を打ち切り、彼は真奈美を背中で抱え、乳房の柔らかな感触を感じながら、可能な限り急いで村長の邸宅へと走ったのだった。 * * *  怪我をしておかしくなった真奈美をなんとか村長である美幸のもとへ運び出した健吾。  その後、一旦客間の方へ案内され、ここで待っていてくれと美幸の指示を受けて、一度真奈美とお別れした。  一瞬の間に目に入ってしまった、数々の異質な光景と現象の数々。もしかしたらあれば幻覚なのではと思ったり、情報を整理しつつずっと考え込んでいるうちに、美幸が彼のところへとやってきた。 「こんな夜遅くによくもまあ。だが、真奈美を連れてきてくれたことは感謝しておるよ。あとはこっちに任せて」 「あ、ああはい」  思考に集中しすぎて思わず生返事になってしまった健吾。  お互いに向き合って椅子に座り、少しの沈黙を経て、話題は美幸の方から切り出された。 「さて…………健吾さん、見たんだろう?」 「えっ? な、なにをですか?」 「真奈美の皮の下にあった機械を」 「い、いや! そんなことは! 別にそんなものは……」  直球すぎる質問に、内心全身が跳ねそうになったが、なんとか平常心に近づけて嘘の言葉を返す。  美幸はそれをわかっているように、微笑みを絶やさなかった。 「そんなものは、というのはそれを見た者の言葉。普通なら、皮の下にあった機械という言葉に意味がわからないと顔に出すんだけどねえ」 「あっ……」 「そういう顔をしなくても良い。それを見たからといって、別に殺そうというわけでもないのだから。じゃが、知った以上はここがどういう村なのか、というのを説明せねばなるまいて」  まるで重大な何かを知ってしまった、知られてしまったという雰囲気が漂っていたが、知られた側である美幸は妙に落ち着いていた。  そして、翡翠村がどういう場所なのか、彼女の口から嘘偽りなく語られる。 「この村はな、女性型アンドロイドの実験場なんだよ。ここにいる者は全員、お前さんを覗いて全員機械仕掛けだ。元々は稼働テストの場所として作られたんだ」  健吾はそれを聞き、納得はした。だがそれ以上に驚愕の感情で埋め尽くされた。  そんな稚拙な都市伝説や都合のいい妄想のような場所が本当に存在するのかと。 「完全には信じられないであろう。さっきまで健吾さんは、家に来ようとしていただけなんだからな」 「えっ、なんでそれを知って……」 「この村にはありとあらゆる所に監視カメラが隠されておる。その映像は、管理機体である私が閲覧可能なサーバーに送信される。既にわかっておったよ」 「…………いやいや、そんなのまだ信じられませんって。そう言うことは後出しでいくらでも」  まだ信じきれない健吾が反論しようとしたその時、美幸が唐突に身に着けている衣服を脱ぎ始め、己の裸体を曝け出し始めた。 「ちょっと! いきなり何してんですか!?」 「何って、良いものを見せてやろうとしておる」  確かに彼女の極上の女体は良いものとしか言いようがないが、こんな真剣な空気でいきなり痴女のような行為をされても驚くしかない。  実際、美幸の素肌はとても素晴らしいものがあった。この村でも最年長らしいが、それでも現代社会で一線級のモデルやSNSで自撮りする度大人気を得られるようなポテンシャルがある。  艶めかしい所作で下半身まで脱ぎ去り、女性器が見える状態で立ち上がったその時、美幸は自分の両手で下腹部の薄い肉を掴む。  それから、指を食い込ませながら思いっきり左右に引っ張り始めた。      無駄肉を一切感じさせない腹部の皮膚に、強い力を感じさせるシワと過度なハリが生まれ、痛そうな印象を強く与える。にも関わらず、美幸は痛そうな顔も躊躇するような様子も一切見せなかった。   そして、十秒程その時間が続いたその時、彼女の腹部がブチブチと音を立て、左右に裂けてしまった。 「うわっ!? …………え……?」  思わず声が出て少しだけ仰け反ってしまう健吾。直後に彼を支配したのは、価値観をひっくり返すような驚きだった。  裂けた美幸の腹部からは、先程の真奈美と同様に血の一滴も流れていない。その破れた奥に潜んでいたのは、無数の機械部品と金属骨格、股間から伸びる女性器の全体構造を模したような肉肉しい筒だった。 「どうだ、これで信じたか? これが私らの『中身』だ。この村の住人には、生身を持つものはおらんよ。この生身のように見えるものも、ただの性行為の道具にすぎん」  啓かれた腹の中で、美幸はその子宮つきの膣ユニットをうねうねと蠢かせながら、左手で突如握り始めた。  すると、頬を紅潮させて喘ぎ始め、座りながら女体をよがらせる。 「あっ! あっ、あ……こうやって……人間では不可能な……あっ……行為も、可能だからな……あんっ…………だが、こういうことを自らできるのは……あんっ! 私だけだが……ああっ!」  全身を震わせ、激しい吐息を幻視しそうな動きを見せながらしばらくその場で特殊な自慰行為を続けると、美幸はびくんっ、と大きく身体を震わせた。  すると、割れ目から愛液の潮が噴出し、膣部や床を濡らしていった。  ようやく彼女の動作が落ち着くと、ゆっくりと視線を健吾の方に戻し、重力に従って乳を下に向けながら前のめりになった。  今の快感をまだ残しておきたいのか、美幸の片手は未だに軽く女性器ユニットを握っている。 「あっ……ん…………この村で、自分がアンドロイドだと認識しているのは、管理機体である私だけだ……それ以外は皆、自分が人間だと認識して動いておる……お前が助けた真奈美も、外部から来た人間に危険が及ばないようにするプログラムが、最も近い機体に働いただけだ……己の中身を見てしまうでもなければ、気づくことはないだろうな……」  健吾は、目の前の美人村長の非人間的ながら官能的な姿に興奮し、座った姿勢のまま勃起していながらも、なんとか座り位置を調整しつつ話に耳を傾けた。 「じゃあ、この村が美人ばっかりなのも……」 「そういうことだ……造り物ならいくらでも、最高の容姿を持てるからな……後から最新型が投入されるが、その際には住民全員に、その者が最初からいたというような記憶データが与えられる。皆最初から親しい者同士というわけだ……」 「なんで農業なんか」 「私らを製造した者が与えた、いうなれば副業だな……あっ……テストと同時に作物を作れば一石二鳥だ。出荷ルートもきちんとあるしな……それに、私らには赤外線センサーが搭載されておるからな……外灯がなくとも、暗闇でもはっきり見える……」 「だからこんなに人がいるのに、夜になってもどこも明かりがないのか……」  ようやく落ち着いてきた美幸は、改めて背中を椅子の背もたれに預け、ふんぞり返るような姿勢に戻る。  両乳は真っ直ぐ主張して上向き、下腹部の穴から覗かせる膣部と子宮は、小刻みに震えている。  同時にひっそりと見える陰核は、人工愛液に濡れたまま虫のように揺れていた。 「そういうことだ……だから、ここは秘境の実験場というわけだ。電力網も地面に埋めて整備されてるし、ネットワーク回線も電波含めて整えられている。機体管理に必要だからな。これで満足したかな? この村の秘密について」                    「正直、都市伝説みたいな話としか思えないし現実感全く無いけど、本当のことなんだもんな……今でも信じらんねえ。…………待てよ、ならなんで今俺にそのこと話したんだ? このタイミングで」  噂話にすらなっていなかった真実が明らかになり、まだ自分の中で噛み砕けていないながらもなんとか受け入れた健吾。  しかしそこで気になるのは、なぜたった今こうして明かされたのかということである。  まさか、どうせ口封じするのだから隠しておく必要もなくなったということではないだろうか。その可能性も考慮して思わず身構えたが、美幸は紅潮したままの顔で面白そうに笑いかけた。 「別に消そうなどとは思っておらんよ。だが、いずれ来るはずだった時だ。今までは立地や環境で住もうとする者はいなかったからな。そこでだが……健吾さん、お前にこの村を好きにする権利をやろう」 「…………はぁ!?」  彼女から投げられた申し出は、予想を遥かに上回るうえに突拍子のないものだった。 「この村を作った責任者は、元々アンドロイド以外の存在が住み着くようになった時点で、その者をテスターとして認定し権利を提供しようと考えておった。それがお前だ、健吾さん」 「待て待て待て、話が突然過ぎて」 「わかっておる。だか、これはかなり良い提案だぞ? この村はいわゆる箱庭。外部では倫理的に許されないことでも何をやってもいい。住人を壊しても犯しても停止させても、どんな扱いをしてもいい。どうせ直せば良いのだから」 「…………仮にも村長がそんなこと言っていいのか?」 「あくまで私は管理機体だからな。ただ他よりスペックの高いだけで、村長という設定を加えられているにすぎない。私にも何をしてもいいぞ? 他の村人と同様にバックアップも予備機体も揃えてある。村からは見えないところで修理環境も充実しておるからな」  非現実的な現実が次々と流れ込んでくる。しまいには、村すべてを好きにしていいとまで言われてしまった。  とてつもない情報の数に頭が回りきらないが、これは確かに彼女の言う通りとても良い提案なのは間違いなかった。  自然豊かな環境へちょうど移住したかったというのも確かにあるが、何より彼を突き動かしたのは、美女や美少女ばかりの桃源郷だということ。  そんな彼女達に文字通り何をしてもいいというなら、もう住民票も移した手前、受けない理由はなかった。 「わかったよ。んじゃあその権利、ありがたくもらおうじゃねえか」 「そう言うと思っておったよ。じゃあまず、お前さんの携帯端末を差し出すがいい。接続口を向けるだけでも良いぞ」  何をする気なんだろうと思いつつも、健吾は言われた通りに携帯端末の接続口側を差し出した。  すると、美幸は首筋に右手を当てた後、そこにあるカバーを開け、電子機器に使われるような接続端子付きケーブルを引っ張り出した。  その端子が、端末に対応していることから、彼女がまさに製造されたモノであることがより強調させる。  接続が行われた直後、それまで常に艶かしい雰囲気で振る舞っていた美幸の表情が、煙がはらわれたように消え失せた。 「外部機器との接続を完了しました。設定されたタスクに従い、該当するアプリの送信を開始します」  先程まで喘ぎよがっていたとは思えないような、冷たく無感情で、抑揚のはっきりしている淡々とした声。  自動音声のようなシステムメッセージを発した直後、健吾の端末にあるアプリが自動でダウンロード。インストールまで勝手に進められていった。 「アプリの送信が完了しました。タスクの完了を確認。擬似人格の動作を再開します…………これでよし」  機械的な言動に一区切りがつくと、彼女の表情は元に戻った。  健吾が携帯端末の画面を覗くと、そこには管理用という非常に簡素な名前の知らないアプリのアイコンが表示されていた。 「それを使えば、この村にいるアンドロイドを好きに操作できるぞ。まあ、この後家を出た時点から、口頭でもなんでも聞くようにはなるがな。もっと色んな操作をしてみたくなったらそれを使うと良い」  健吾は言葉が出ず、返す言葉もなかった。 「さ、もう疲れただろう。今日はこれで帰ると良い。心配せずとも、色々試してみればわかる。気が向いたら私を使っても良いぞ」  その言葉は、とにかく整理と休憩の時間が欲しい彼にとっては一番欲しかった言葉だった。  生返事を繰り返しつつ、ひとまず玄関で頭を下げて、美幸の自宅を後にした。 「さあ、思う存分楽しむといい…………!?」  健吾を玄関から少し離れた位置から全裸のまま見送った美幸。  彼が玄関から出た直後、彼女の身体が一瞬びくんと震えた。それから何事もなかったかのように、運び出された真奈美への対応に向かった。  それから健吾は、実感のないまま懐中電灯の明かりを真っ直ぐに向けながら自宅に戻っていった。  軽い疑念による外出から始まった、世界をひっくり返されたような事態に、彼の身体と精神にはどっと疲労が溜まっていた。  色々確かめてみたくはあるが、今はとりあえず疲れを排除したい。彼は携帯端末を握ったままふかふかなベッドに流れ込み、そのまま倒れて眠りに入るのだった。 * * *     衝撃的な事実を知った次の日の朝。健吾は真っ先に携帯端末の画面を確認し、一連の出来事が夢でないかを疑った。 「ある……夢じゃないのかやっぱ」  だがそれはすぐに証明された。  村長自ら身体を開き、村の全てを好きにしていいと言われても、やはり全く実感が湧かない。  とりあえず眠気覚ましにシャワーを浴び、朝食の前に外へ軽く散歩に出た。 「あっ、おはよう健吾さん! 明日は雨になるって予報では言ってたんだけど、晴れてよかったよ!」  そんな彼に挨拶を向けたのは、昨日派手に壊れてしまったはずの真奈美だった。  首が折れ、全身を酷く痙攣させ、こめかみから金属を晒しながら、うわ言のようにおかしくなったシステムメッセージを喋っていたのに、今は元気な声を向けながら笑顔で手を振っている。  寝て起きるまでの間に、彼女はもう修復されたのだろうか。こうして見ても、彼女が血の通っていない機械だとは信じられない。  だが、その笑顔や元気な声もプログラムの産物なのだろう。そして、自分の言葉と手元のアプリで自由に操れてしまうのだろう。  落ち着いてきた彼の脳裏にいくつもの欲望が浮かび上がり、タガが外れる音が鳴った。 「おはよう! けどこれから雨降るんだろー!」 「そうなんだよー! 今日の予報だと雨の時間がズレてるだけだったー! この後も気をつけてー!」   「そっちこそー!」  彼女を人間だと思いこんでいた頃と変わらない他愛のないやり取り。言動や振る舞いから見ても、真奈美は自分が人間としておかしい動作や言葉を発していたことなど記憶の片隅にも置かれていないのだろう。  記憶が削除されたのか、それとも覚えていてもおかしいとも思っていないのか。  だが今はそんなことはどうでもいい。手始めに軽く試してみようという欲望が渦巻く健吾は、家の前で雑草を抜いている途中の彼女のもとへ近づいていく。 「あれ、どうかした健吾さん?」  一旦作業の手を止めて、丁寧に応対し始める真奈美。  気温や湿度が上がり始めている影響か、彼女は朝でも薄着で素肌を晒している。  機械の身体だからこそ虫刺されを気にする必要もないし、仮に毒蛇のような生物が出てきてもたいして影響もない。  そんな彼女を都合よく使うことができるなんて。あれだけのものを見せられても、まだ1%だけ全てを信じきれていない健吾は、この場で少しだけ、勇気を持って確かめてみることにした。 「なあ真奈美さん、少しだけいいか?」 「いいけど、なに?」 「今この場で全部服を脱いで裸になってみてくれ」 「うん、いいよ」  変態的な指示に、真奈美はなんと戸惑いや疑問を抱くことすらなく、笑みを絶やさずそれを受け入れ、言われた通りその場で服を脱ぎ始めた。  健吾は目を丸くして、脱いでいく様子をただただ見つめる。  そうして真奈美は、朝の日差しに照らされながら、産毛一本すらない輝かしい人工の女体を空気に晒した。  彼女の皮膚の美しい質感は、触らずとも視覚的にもわかるほど。  社会的にどう考えてもおかしい今の状態。それでも真奈美は、先程と同じ笑顔のまま健吾の方を向いていた。 「そういえば、健吾さんって雨具は揃えてる? ほら、都会の方から来たって言ってたからさ」  それから、今の状態が当然であるかのように話を続け、豊かな乳房を歩く度に揺らしながら近づいてきた。  おそらく彼女は、本当に平常通りに振る舞っており、健吾を誘惑するような意図は一切ない。  その異様さがまた、彼女の非人間感を強調し、より物らしく扱いたくなる気持ちを強めた。 「なあ真奈美、今度は自分の腹を引き破って中身を晒してくれ」 「うん、いいよ」  会話の文脈に関係ない命令を二つ返事で聞き入れ、真奈美は昨晩の村長と同じように、両手をすべすべとした腹部に当てて人工皮膚を掴み、思いっきり左右に引っ張り始めた。          自然の音が響く中で鳴る、樹脂製の皮膚が裂けて千切れる音。  そうして、彼女の下腹部からは、村長と同じ形状の膣ユニット、子宮ユニットが姿を表した。  全裸姿でかつ微風による刺激を受けているからか、彼女の女性器ユニットは小さく震えている。  健吾はぐいっと真奈美との距離を縮め、晒された膣ユニット部分を握り、少し力を入れて圧迫しながら爪を食い込ませた。 「そういえば、雨具は持ってきてなかったな。傘一本しか持ってきてない」 「長ぐ、靴は絶対、に、よ、用意し、用意したほ、したほうがいいよ。ぬか、ぬかるみが、濡れ、濡れたら土が、濡れたらぬかるみがで、出来て足取られた、足、あ、あ、あ、足取られたりす、する、足取られたりするから」  造り物の生殖器を虐めながら、健吾は日常話を続けた。  すると、真奈美は自分の性器を激しく弄られているにも関わらず、まるで何もされていないかのように話を続けた。  しかし、直接性器を側面から刺激されることによる快楽信号が膨大なのか、彼女の喋りは途切れ途切れで、手が震え唇も震えている。  快感による女性器ユニットの反応は露骨で、握った手からはっきりと振動の感触が伝わってくる。  真奈美は喘ぎ声ひとつ出していないが、まるで葉についた害虫をはらうスプレーの如く、人工愛液の潮を雑草や土に向かって噴き出していた。  乳首も固く勃ち始めており、全身の震えに連動して乳房が波打つ。  本来ならば嬌声を上げているはずだが、現在真奈美の擬似人格は平常時のまま稼働しており、各感情を示す数値が変動していない。性行為時、または性愛を発露するパラメータが変化していないまま快楽信号を強制的に処理させられているため、動作の矛盾が発生してしまっていた。  きちんと手順を踏むように、それを匂わす言動や行為を受けて変動し、誘惑的な振る舞いや頬を染めたり声色を変えるような動作に入るが、村長を除いた翡翠村の住人には、たとえ快楽信号が発生するとしても直接女性器ユニットを弄られて気持ちよくなるような行為を性行為として設定されていない。  結果、真奈美の擬似人格には反映されておらず、いかにもちぐはぐな振る舞いをするようになっていたのだった。  明らかにとても感じているのに、普通に人間の田村真奈美として振る舞う姿が官能的かつ、人間として滑稽でとても昂ぶらせられた健吾。  99%が100%になり、全ての疑念が払拭されたことで、確かめたいことも全てわかったと感じた彼は、最後に命令をぶつけた。 「あーわかった。それじゃあ真奈美、自分で頭掴んで首を捩じ切れ」 「わ、わか、わかった、い、いいよ、いいよ。わか、かかか、いいよ」  話の流れに沿わない割り込みのような指示。実質的な自殺命令を、真奈美はプログラムされた設定に従って従順に受け入れた。  快楽信号に震える両手でこめかみを挟み、思いっきり力を入れて捻じり始める。  ぶちぶちと人工皮膚が断裂し、金属骨格が歪み、配線が断裂する。  そして、彼女の首はとうとう捩じ切れ、頭部と身体は離れ離れになってしまった。 「■$@あ02めガ3、■雨■、き、きききyyyyoouu………………」  首が捻れた際に喉奥のスピーカーが潰れたのか、彼女の声はそれまでの女性らしさからはかけ離れた、電子機器らしいノイズだらけになった。  ゆっくりとピッチが下がり、どんどん壊れたおもちゃのような声に変わっていき、とうとう何も言わなくなってしまった。  断裂し落下した彼女の顔は地面に落ち、開いたままの眼球に土がつき、舌が雑草に当たる。  残された身体は、頭部を失ったまま、残存した電子頭脳からの信号を反映し、ガクガクと震え続けていた。  仰向けに倒れた彼女の身体は、本来ならばどれほど官能的な反応を見せたのか、ずっと膣ユニットと子宮ユニットがバイブのように震えている。  実質的な電動ラブドールのような状態になり、あとは停止するのを待つだけとなった真奈美。  初めてこの村の住人を、しかも隣に住む住人を玩具にして壊した気分は、健吾にとってこれまでの人生では決して味わえない格別なものとなった。 「…………こういうことが、これから毎日できるのかぁ」  最高の気分。それに少しの間浸ろうとしたその時、彼の携帯端末に、まだ登録していないはずの美幸からの通話が来た。 「あれ、まだアカウントとか聞いてないよな……?」  疑問に思いつつも、高揚した気分のまま彼はそれに出る。 「もしもし」 「おお、よかった。ちゃんと出てくれたか」 「なんで美幸さんが登録されてるんですか」 「昨日の夜、インストールしたついでにな。それよりも、早速一体壊したみたいだな。こちらでも把握しておるよ」 「……なんか、プライベートを監視されてるみたいで嫌だな」 「気にせんでよい。あくまで運営管理のためのものだ、それにお前に対する不利益はないとも。だがそれと一緒に少し頼みたいことがあってな……設置しているアンドロイドを破壊するなら、そうした後でこちらへの連絡をくれんか?」 「毎回ですか……?」 「ああ。どの機体が壊れたのかはこちらで把握は出来るが、あくまでうちの設備が把握するだけでな。その後の操作や運搬指示を送るのは私だし、家にいない時もあるからな。出来れば速やかにやってくれ。それじゃ、これからも存分に楽しむと良いぞ」               その言葉を伝えると、通話はそこで終わった。 「…………ま、それくらいならいいか。なんせ、こんなことできるんだからな。これくらい軽い必要経費だ」     隣人の機械らしさとやや倒錯した女体としての魅力を楽しんだ後、健吾は日の光を全身に浴びながら自宅に帰っていった。  彼がその場を離れた後も、真奈美は回収されるその時まで、首のない身体がびくびくと気持ちよさそうに痙攣を続けていた。  気の休まる環境と美女達を求めてやってきた翡翠村。彼の目標と願望は一夜にして一変した。  この村の女性もとい、女性型アンドロイドは全て自由に使っても良い。どんなことをしてもよい。そう言われたら、欲望のままに動く以外にないのである。  こうして、健吾の翡翠村移住新生活は、本当の意味で今日この時から幕を開けることになったのだった。


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