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アヤワスカ
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魔法少女ミラクル・コトハの物語 第一話 動き出した物語

 ボク、竜胆コトハの物語。その終わりはあまりにも唐突だった。


 焼けるような激痛が胸を襲う。


「あぁ・・・う・・・ぅぁ・・・」


 ボクはうつ伏せになって、力なく悶えることしか出来ない。


 ドクドクと胸にうがたれた傷から血が流れていく。


 意識が薄くなっていく。


 ボクの物語が、幕を閉じようとしている・・・


 ・・・ある日なんの前触れもなく、図書館に魔物が現れた。真っ赤な頭巾を被った狼の魔物は恐ろしい咆哮を上げながら、その鋭い爪で何人もの人を切り付けてしまった。


 つい先ほどまで静寂に包まれていた知識の館に悲鳴があがり、恐怖と混乱が空気を満たしていく。


 逃げ惑う人々の中にあって、一際どんくさく逃げ遅れてしまったボクが魔物の爪にかかるのは、考えるまでもなく当然の帰結だった・・・


 ドン!


 脇腹に衝撃を受けて、ボクはゴロリと転がされた。仰向けになったボクの視界の真ん中で、魔物が大きな口を歪ませて嗤っている。


「ねぇお嬢ちゃん、アナタの瞳が苦痛に歪んでいるのはなぁぜ?」


 魔物がボクに語り掛けてくる。


「ぅ・・・ぁ・・・あぁぁ・・・」


 もちろん、ボクは力なく呻くだけで答えることなんて出来るはずもない。


「それはアタシを愉しませるためよねぇ!!!」


 ズム!


 爪で引き裂かれた胸が・・・魔物の大きな足に・・・踏みにじ・・・られて・・・


「っぁああああああああああ!!!!」


 目の前がチカチカするほどの激痛に、消えかけていた意識が一気に現実に・・・逃れられない地獄に引き戻されてしまう。


「ねぇお嬢ちゃん、お嬢ちゃんの苦悶の声がこんなにも甘く響くのはなぁぜ?それはアタシを悦ばせるためよねぇえ!!!」


 グリグリグリグリ・・・踏みにじられて・・・あぁぁ・・・傷口が抉られていく・・・


「あぐぅ・・・うぁ・・・あぁあああああ!!!」


「お嬢ちゃんの身悶える姿が美しいのはなぁぁぜ?それはアタシを昂らせるためよねぇぇぇええ!!!お嬢ちゃんがまだ年端もないその命を、まだ蕾のままのその命を、ここで無残に散らされるのはなぁぁああああああああああああぜぜええええええええええええ???それはアタシをぉおおおおおお・・・」


 その時、


「もうやめてぇ!!!」


 どこに隠れていたのだろうか。女の人が魔物に向かって体当たりをした。その手にはカッターナイフが握られていたけれど、そのあまりにも非力な刃は魔物の硬い皮膚に傷一つつけることはできなかった。


「なによアンタ!!!」


 魔物の太い腕が女の人を振り払う。その華奢なカラダが吹き飛ばされ、背中から壁にたたきつけられ、そのまま倒れ伏してしまった。


「何なのよ!何なのよアンタ!!せっかくアタシが気持ちよくなっていたのに。アタシはね、アンタみたいな年増に用はないの。アタシはね、このお嬢ちゃんみたいな小さな少女にしか興奮できない変態なんだからね。んもう!」


 そう言いながら、魔物が女の人のほうへ歩みを進めていく。きっと止めを刺すつもりなんだ。

 ボクを助けようとしてくれたがために、あの女の人は殺されてしまうんだ・・・


「くっ・・・このぉ!!」


 ボクは力を振り絞って、足元に転がっていた本を魔物のほうへ放り投げた。


 とさ・・・


 本は力なく魔物の足元に落ちた。


「あらなぁに?必死に抵抗しようとしてくれているの?やだなにそれ。そそられるじゃない!」


 魔物がボクの方に振り返り、そして一歩一歩こちらに近づいてくる。


「この・・・この・・・」


 ボクは必死に辺りに散らばっている本を魔物へ投げつける。


「健気ねぇ。もう興奮しちゃうじゃない。ほら、ちゃんと頭を狙ってごらんなさいな。ほら、頭に当たったら、もしかしたらアタシを倒せるかもしれないでしょう?」


 自分の頭を指さしながら挑発する魔物の頭に、ボクの投げた本の角が、


 ガス!


 ヒットした。


 次の瞬間


「痛いじゃないのよぉおおおおおおお!!!!!!」


 ドン!


 衝撃と共にボクのカラダが吹き飛ばされてしまった。


 魔物に蹴り飛ばされたと理解した時には、ボクは書架にたたきつけられて、


 ガラガラガラガラ・・・!!!


 崩れ落ちる書架と本の雪崩に呑み込まれてしまった・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・


「う・・・あぁぁ・・・」


 ・・・ボクを包んだのは闇。


 本の山に埋もれて、一切の光の届かない闇。


 だけどボクの目は、確かにその本の挿絵がしっかりと見えていた。


 そこには、一人の女の子の姿が描かれていた。蠱惑的でコケティッシュな姿の少女の姿が・・・


 カラダのラインがはっきり分かる白のピッチリレオタード。レオタードの股の部分、その淵は赤いヒラヒラした布で装飾されている。

 胸元には真っ赤なブローチ。両手足は赤くピッチリしたロンググローブにロングブーツ。

桃色の髪をツインテールに結ったその女の子は、


 見れば見るほどボクそっくりだった。


『これは君の物語だよ』


 本にぼうっと文字列が浮かんだ。


『ここで終わるはずだった君の、新しい物語だよ。』


 これが・・・ボク?


 心臓がドキドキした。


 パパが魔物に殺されてからずっとボクは夢想していた。魔法少女になって憎い魔物を成敗していく自分の姿を。

 我ながら〇学生らしい荒唐無稽な妄想で、現実のボクはあまりにも無力で臆病だけど、ずっと心のどこかで夢に見ていた。


 そのボクが心に描いていた姿そっくりのボクの絵が描かれた本。そしてそこに浮かんだ言葉。


 これは死ぬ前に見る夢や幻想の類なのだろうか・・・


『夢や幻想で終わらせるのは君次第さ。』


 また新しい文章が浮かぶ。


『どうする?ここでこのまま可哀そうなコトハちゃんの物語を終わらせる?それとも・・・』


 そんなの聞かれなくても決まっている。ボクは・・・ボクは・・・


『それなら、新しい物語の、新しいページを開こう!!』


 そして本が光を放って・・・パラパラとページがめくれて


 ボクは・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・


「アンタ・・・何なのよ・・・」


 突如立ち上がった光の柱の中から現れたボクの姿を見て、魔物は大きな口をあんぐりと開けた。


「ボクは魔法少女ミラクル・コトハ!もうこれ以上君の好きにはさせない!!」


 ボクは妄想の中で何回も繰り返したポーズを決めて、そう名乗りを上げた。


「あらまぁ・・・なんてハレンチなのかしら!」


 ボクの姿を見て、魔物はそんなことを言い放った。失礼な。確かにカラダにピッチリとしたレオタードは恥ずかしいけど・・・でも、


「ハレンチなんかじゃない!」


 振りかざしたボクの手に魔法のスティックが現われる。そしてそのまま振り下ろすと、魔法のビームが魔物に向かって放たれた!


 ビームは魔物に直撃し、


『ギィヤァアアアアアアア!!!』


 凄まじい断末魔あげながら魔物が爆発四散する・・・と思っていた。だけど悲しいかな、現実はそう甘くなかった。


「ん?何したのかしら?」


 とキョトンとした顔を浮かべているのから察するに、ボクが放ったビームは魔物に傷一つ与えてないみたいだ。


 なんてこと・・・変身してもボクはまだ無力なのだろうか・・・


「うふふふふふ・・・分かっちゃったわ。お嬢ちゃんがそんなハレンチな格好になったのは、アタシにもっと甚振ってほしいからよねぇええ!!!!」


 そう言って、魔物は体の前で両腕をクロスさせた。


 ぐ・・・ぐぐぐ・・・


 腕の筋肉に力がたまっていく音が聞こえる。腱がググっと縮み、血液が滾っているのが分かる。


 強烈な一撃が来るのが分かった。


 どうしよう・・・まずはこの身を守らなきゃ。


「喰らえぇ!!!!」


 クロスしていた両腕を開くように、左右の腕が振り下ろされる。


 バンッ!


 凄まじい破裂音と共に空気弾のようなものが斬撃を伴って放たれる。


「くっ!」


 ボクはスティックを突き出した。光の壁がボクの目の前に出現する。


 ギャリギャリギャリギャリ!!!!


 光の壁に斬撃が激突して、イヤな金属音が響き渡る。


 次の瞬間、ボクは微かな風を感じる。


 ボクのそば、すぐ隣に音も無く着地した魔物が鋭い爪で脇腹を抉ろうとする。


 ブオン!


 とっさに飛びのいたボクのギリギリ近くで、魔物の腕が空を切る。


 ブォン!ブォン!ブォン!!


 二撃、三撃、四撃・・・次々に魔物の腕が空を切る。ボクは魔物の攻撃を全て躱していく。


 骨の軋む音、空気の変化、筋肉の盛り上がり具合・・・全てを明瞭にとらえることが出来て、相手が何をしようとしているのかがよく分かる。だから面白いくらいに、その攻撃をよけることが出来る!


「は・・・ははははは・・・」


 思わずボクの口から笑い声が漏れ出ていた。


 分かった。分かってきた。戦い方が分かってきた!


「狼退治には、やっぱりこれだね!」


 スティックが瞬時に猟銃へと変化する。


 思った通りだ。大事なのはイメージ。想像力がボクを強くする。


毎日毎日本ばかり読んできたボクにとって、なんておあつらえ向きの力なんだ!!


 バーーーン!!!


 銃口から弾丸が放たれる。


「うごぉ!!!」


 お腹に弾丸を受けた魔物の体が吹き飛んでいく。


 うん。イメージ通りだ。実にいい感じ。


 ガシャーーーンと音がして、魔物がたたきつけられた入口自動ドアが砕け散る。ちょっとやり過ぎたかな。でも魔物と戦うんだから、周りに気を配っていたらとてもじゃないけどやりきれない。


「えい!」


 ボクはスティックを高く突き出した。そこから光のシャワーが辺り一面に降り注ぐ。机も本も、そこにあるものすべてをポヨンポヨンのクッションにして、それから倒れている人達を治療しながら守る光の眉でくるんであげた。


「ふぅ・・・」


 そこまでして、ボクは少し立ち眩みがした。魔法の力も無尽蔵ではないみたいだ。頭を使って戦わなきゃいけないみたい。うぅぅ・・・計算とかは苦手なのに・・・


「やるじゃなぁいやるじゃない・・・アタシお嬢ちゃんを見くびっていたわぁ~~~」


 ガラガラガラガラ・・・ガラスの破片の中から魔物が立ち上がる。


「そんなお嬢ちゃんにクイズ出すわねぇ~~~アタシのお耳がこんなに大きいのはなぁ~~~~ぜだ?それはね、アナタの悲鳴がよく聞こえるようによ。アタシのお目目がこんなに大きいのはなぁ~~~ぜだ?それはね、アナタの苦しむお顔がよく見えるようによ。アタシのお口がこんなに大きいのはなぁ~~~~~ぜだ?それはね、貴様をぶち殺すためさぁああああああ!!!!!!!!」


 そう叫んだ魔物の口から石礫がいくつも噴射されて、猛スピードでこちらに向かって飛んでくる。


 ボクは再び光の壁を作り出す。


 けれど、


 弾丸のような石礫に対して、自分の作り出した壁があまりにも心もとなく思えてしまう。光の壁が粉々に砕かれるイメージが鮮明に湧いてしまった。


「だ・・・だめ・・・」


 必死にそのイメージを打ち払おうとしたけれどダメだった。


 ガシャーーーーーン!!!


 ボクが思い描いたとおりに光の壁が砕かれて・・・いくつもの石が・・・胸に・・・


 ダダダダダダダダダダダダ!!!!


「あぐっ・・・うぁ・・・あぁあああああああああ!!!!!」


 なすすべもなく小さな胸に石を受けて・・・ボクは立ち尽くしたまま仰け反って悶えてしまう。


「うくぁっ・・・あぁぁ・・・うあぁああ・・・あぁあああああ!!!」


 無数の石の弾丸を滅茶苦茶に撃ち込まれる。その一撃一撃を、明確に感じてしまう。耐えがたい苦痛を一つ一つ、ボクの胸は丁寧に味わってしまう。


 秒間に何発も打たれる石礫・・・無数の激痛が・・・あぁぁ・・・胸から止まることなく送られてくる。

 

「うぁあ・・・ああぁ・・・んあぁあああああ・・・」


『あ、伝え忘れてたけど、神経が冴えわたる代償に、痛みや苦しみ、性感も全部数十倍になってしまうから気を付けてね。』


 ボクの頭に、そう書かれた本のイメージが浮かんできた。ボクを魔法少女へと導いた本だ。


 そんな・・・気を付けてって言われても・・・


 ・・・気の遠くなるほどの石礫の掃射が終わって、


「うぁ・・・あぁぁああ・・・」


 ガクン・・・倒れそうになったボクの胸に、


 ザクッ!・・・魔物の爪が突き刺さった。


「あがっ・・・っぁあ・・・あぁあああああ・・・」


「うふふふふふふふ・・・まだおねんねには早いわよぉ~~~」


 ズクン・・・ズクン・・・


 ボクの胸に突き刺さった爪が脈を打って・・・あぁぁあ・・・血が・・・吸われていく・・・


「う・・・うぁ・・・あぁぁ・・・ぁ・・・ぁぁ・・・」


 戦うことが・・・あぁぁ・・・こんなに苦しいなんて・・・


 ダメ・・・ダメだ!こんなことで弱音を吐いていたら。


 ボクはボクが望む魔法少女になったんじゃないか・・・力と勇気を振り絞って・・・魔物を・・・


 倒さなきゃ・・・いけない・・・


のに・・・


 ズボ・・・乱暴に爪が引き抜かれ、ボクは魔物の腕に倒れてしまう。


「んぁぁああ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


もう、自力で立つことすら出来ない。


「ほぉら、その可愛いお顔をちゃんと見せて頂戴♪」


 頭を掴まれたボクは、無理矢理顔をあげさせられてしまう。


「あぐっ・・・ぁ・・・ぃぁ・・・」


 魔物の大きな目がボクを見つめる。そのどこまでも暗い瞳に見つめられると・・・あぁぁ・・・とてもこの魔物には敵わないように思えてしまった。


 あ・・・あぁぁ・・・ダメ・・・負けるイメージをしてしまったら・・・カラダから力が・・・抜けていく・・・うぁぁ・・・せっかく・・・変身したのに・・・魔物に負けてしまうなんて・・・


「いいわぁ~~~敗北のヒロインの表情はたまらないわねぇ~~~そのお顔を、もっとよく見せて頂戴。」


 そう言った魔物の口が大きく開いた。その口の奥に深い闇が広がっている。


 その闇の中から何かがズリズリと這いずってくる。


「あ・・・あぁぁ・・・あぁぁ・・・」


 ボクはその異様な光景から目が離せなくなってしまった。


 闇の中から、真っ赤な二つの目が現われて、そしてそれがドンドン大きくなって・・・そして・・・


 狼の口から少女が・・・真っ赤な頭巾を被った女の子の上半身がヌルリと飛び出てきた。


「うふふふふふふ・・・恐怖しているのね・・・可愛いお顔。アタシね、今まさにこの瞬間、正義のヒロインが、完全に狩られる側になるこの瞬間が大好物なの~~~!!!」


 ボクの顔を小さな手でペタペタと触りながら少女の魔物がそう口にする。


「ぼ・・・ボクはまだ・・・負けてな・・・い・・・」

 

 心が敗北に染まりそうになるのを、必死に振り払おうとする。


「まぁ嬉しい。それならまだまだ愉しめそうね。」


 少女の魔物が微笑んだ。そして、


 ブォン!


 狼の魔物がボクを高く放り投げて・・・そこにめがけて赤い頭巾の少女の魔物が発射された。


「アタシの頭巾が赤いのはなぁ~~~~~ぜだ!?」


 少女の手には大きな鋏が握られていて、そして


 ザク!ザクザクザク!!!


 空中で・・・ボクを何度も何度も切り刻んで・・・


「うぁ・・・あぁぁ・・・あぁああああああ!!!!」


 ボクは何も抵抗することもできずに、一方的にズタズタに切り裂かれていく。


「それはね、獲物の返り血をた~~~~~っぷり浴びたからだよぉおおお!!!」


 ブスリ!!


 鋏が・・・胸の真ん中に深く突き刺さった。


「あがっ・・・っぁあああ・・・」


 そのままボクは・・・背中から地面に・・・


 叩きつけられる・・・なんて生易しい事では済まなかった。


 着地点に狼が両手を上げて・・・爪を高く掲げて・・・


 ボクの背中はその爪に貫かれて・・・


 ドシュ!!!


「うぐあぁあああああああああああああああ!!!!」


 胸を鋏・・・背中を爪に刺し貫かれて・・・あ・・・あぁぁ・・・さらに・・・


 ドン!


 鋏の柄の上に、少女が着地して、


 ずむ・・・上下の刃がさらに・・・ボクに深く沈み込む。


「あぐっ・・・ぐぁ・・・あがっ・・・あぁああああああ!!!!」


 カラン・・・


 何かが床に落ちる音がした。


 それは力を失ったボクの手から、スティックが零れ落ちた音だった。


 それは無慈悲なまでに冷たい、敗北の音だった。


「ねぇねぇ狼さん、どうしてこの子はワザワザ責められるために変身したの?」


 少女が鋏の柄をユッサユッサと揺らす。


「それはね、この子はハレンチなコスプレして虐められたい変態だからだよ。」


 狼が、背中に突き刺さった爪をグリグリと動かす。


「う“ぁ“・・・あぅぁああ・・・」


「どうしてこの子は、敵う筈もないのに立ちはだかったの?」


「それはね、正義のヒロインの自分を貶めて欲しかったからだよ。」


 爪と鋏・・・そして言葉がボクを責めなじる・・・


「どうしてこの子は、されるがままにやられっぱなしなの?」


「それはね、敗北のマゾヒロインだからだよ。」


 言葉がボクを・・・貶める・・・


 あ・・・あぁぁ・・・ボクは・・・敗北のマゾヒロインなの?


 そんな・・・あ・・・あぁぁ・・・負けるために・・・ボクは・・・


 ちがう・・・ボクは・・・


 ボクは・・・


「どうしてこの子は、こんなにされてもまだ死ぬこともできずに惨めに苦しみ続けているの?」


「それはね・・・」


 狼の言葉を遮って、ボクは叫んだ。


「それは君たち魔物を倒すためだぁあああああああああ!!!!!」


 瞬間、辺りが光に包まれた。


 イメージしたのは浄化の光・・・禍々しい魔物と、それが創り出したモノを打ち消す聖なる輝き。


「「うぎゃぁあああああああああああ!!!」」


 少女と狼・・・二体の魔物の断末魔があがる。


 全てが光の中に消えて・・・そして・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・


「あぐぅ・・・うぁ・・・あぁぁ・・・ぅぅ・・・」


 膝立ちになったまま、ボクは苦しみ悶えていた。


 あまりにも強烈な力を使った反動で、ボクの全身は焼けるような痛みに襲われていた。


「う・・・あ・・・あぁぁ・・・も・・・もう・・・残って・・・ない・・・の・・・に・・・」


「うふふふふふふふふふふ」


「うふふふふふふふふふふ」


 魔物達が・・・笑っている・・・ボクはもう・・・戦えないのに・・・


 魔物達は体を失って生首だけになっている。それでも宙を漂いながら・・・あぁぁあ・・・じっくり値踏みするように・・・欲望に滾った視線を・・・ボクに・・・


「ねぇねぇ狼さん、この子の小さなおっぱいが、二つもついているのはなぁ~~~~ぜ?」


「それはね、アタシと赤ずきんちゃん、二人に一緒に虐められる為さ~~~~!!!」


 心臓がドクンと高鳴る。


 あ・・・あぁぁ・・・また胸を・・・そんな・・・胸ばっかり・・・あぁぁ・・・どうして・・・


「うふふふふふふ・・・お嬢ちゃん・・・死にゆく魔物の最期の責めを・・・」


「すべての欲望をぶつけるとっておきの胸責めを味わって頂戴ね~~~」


 魔物達の生首が・・・あぁぁあ・・・ボクの胸に嚙みついて・・・


「あぐ・・・ぁぁああああああああ!!!」


 ザクザクザク!!!


 鋭い牙が・・・薄い胸に突き刺さる。


「っぅ・・・ぅぁ・・・あぁあああああ・・・」


ジュルジュルジュル・・・


 血を・・・体液を・・・啜られる・・・


「んぁ・・・ぅぅ・・・ぁぁああん・・・あぁあああああ・・・」


 ボクはお尻をついて、そして


「ぃぁぁああああああ・・・」


 上半身を仰け反らせて悶え喘いだ。


 あ・・・あぁぁ・・・魔物に胸を・・・胸を責められて・・・ボクはされるがままに・・・あぁぁ・・・


『どうして君は、魔物に胸を責められながら感じているんだい?』


 ボクの頭の中で本が問いかけてくる。


 感じるって・・・あぁぁ・・・エッチな気分になることでしょう?・・・そんな・・・ボクは・・・感じてなんか・・・


『それならどうして君は、そんなに艶めかしい声を上げているんだい?』


 そんな声・・・あげてなんか・・・


 ちゅくちゅく・・・


 魔物達の舌が・・・ボクの乳首を・・・


「あぁああん・・・」


『ほら、今もこうして喘いでいるじゃないか。』


 ち・・・違う・・・今のは・・・


『魔物を倒す力を得ながら、魔物に責められて感じるヒロインには罰が必要だね。』


 本の言葉と共に、


 ズキン!!


 心臓に・・・激しい痛みが・・・


「あぐぅ・・・ぁぁあああ・・・うあぁああああああ!!!」


『君の心臓には魔法の茨が巻き付いている。この茨はね、君が感じれば感じるほど、心臓をきつく締め上げていくんだよ。』


 そ・・・そんな・・・


「んっぁあああ・・・うぁあああ・・・あぁあああああああ!!!」


『大丈夫。死ぬことなんかないから。』


 クチュ・・・ジュルジュル・・・


 乳首を責めるほどにボクが激しく反応するのが面白いのか・・・魔物達は・・・集中的に・・・そこを・・・


「んはぁあっ・・・んゃぁあ・・・あぁあああっ・・・はぁああん・・・」


 ただでさえ・・・何十倍も敏感になっているのに・・・しつこくされて・・・


「はぐぅ・・・んぁ・・・あぁぁああああああ・・・」


 ボクは・・・あぁぁ・・・魔物がこと切れるまでずっと・・・延々と続く胸責めに・・・あぁぁん・・・身をくねらせ悶え続けた。


『コトハ・・・魔法少女ミラクル・コトハ・・・これは君の物語だ。君が望んで、君が始めた物語だ。』


 こうしてボクの物語は幕を開けた。


 恥辱と苦しみに満ちた幕開けだけれど、


 それでも・・・この物語を絶対にハッピーエンドに導いてみせるから・・・


 う・・・あぁああ・・・ボクは


 ボクは・・・負け・・・な・・・い・・・


魔法少女ミラクル・コトハの物語 第一話 動き出した物語

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