夜桜に行こうーー 俺の恋人は狼人だ。いわゆる日本人たちの常識とは少しずれているところもあるが、それが俺にはちょっとした刺激になっているのかもしれない。 そんな恋人が、夜桜というちょっとムードのあるデートに誘ってきた。ちょっと胸がキュンとしてしまった。 たまにはそう、雰囲気のいいデートもしたい。 コンビニで適当に飲み食いできるものを買って、いざ会場に向かった。 普段いかない地域の花見会場は、夜の闇も手伝って、少し遠くに出かけた気分になって心が弾む。 そこそこ有名な花見スポットだと聞いていたのだが、割と人が多い。これは座って食べる場所を見つけるのも大変なのでは… そんな俺の心配事などよそに、恋人はずんずんと花見会場の奥へと進んでいく。 「え~と、たぶんこの辺のはずなんだが…あ!あったあった!たぶん、あそこだ!」 恋人がぐいと俺の手をひっぱって、少し小さめなブルーシートを敷いている箇所へと走った。 「お!ここだここ!ダチがさっきまでここで花見してたらしいだけどよ、ブルーシート片付けてくれるんなら俺らに場所ごと貸してくれるって電話もらってな!いいなここ!人もまばらで」 なるほど、それで急に。 花見もソーシャルディスタンスをと一応対策をしているらしく、敷物と敷物の距離を一定以上あけるように案内されていた。 桜の花があまり見事ではないこういう奥のところは、それこそ周りとの距離がぐっと広がっている。 花より団子、じゃないけれど、恋人と一緒なら花もそこそこで十分だ。デートにまさに花を添えていただけて、感謝である。 コンビニ弁当を胃袋に流しこんで、ノンアルコールドリンクを飲みながら話ていたものの、早速することがなくなった。せっかくの花見だから、スマホをいじるのも興ざめだ。 気が散ってきたからだろうか、急に寒くなってきた。春の夜は思ったより寒い。両腕をさすっていると、恋人が寒いならくっつけよ、と抱き寄せてきた。 一目を気にしないこういう行動に付き合い始めた頃は、ドギマギして人の目が気になってしかたなかったが、もうそれも慣れてしまった。 「ん…やっぱり温かいなぁありがとう」 感謝の気持ちを伝えて、服越しにもわかる恋人のふわふわの毛並みを感じていた。 ふっと頭上が暗くなったと思ったら、頭上から恋人のマズルが降りてきた。 まぁキスぐらい…いっか。 獣人の舌は人より長い。 長い故にありえないほどのディープキスをしてくる。 舌の先を吸われ、軽く前歯で甘噛みされ、唾液がどんどん絡んでくる頃には、俺はキスに夢中になってくる。毎回そうだ。 そして毎回、気が付いたら股間をがっつり恋人に揉みほぐされているのだ… 「え…ちょ…ちょっとまって…ここで…?」 俺が正気に戻るとすかさずキスをしてくる。 頭の奥がじんじんとして、思考回路がとまる。あぁもうずっとキスしていたい… その間にも恋人はどんどん俺の下半身をわが物にしていく。気づくと俺はあられもない恰好になっていた…なんてことは、よくあることなのだ。 車の中だろうが、野外だろうが、お構いなし。 火がついたら止められない。 付き合い始めた頃は、悩んでいたんだ。こんなところで発情するもんじゃないって。 でも、仕方ないよね、大好きな気持ちには逆らえれないから。