SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
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魔法学校の日常 1

 科学よりも魔法が発達した大陸。 その東部に創立されたゼガゼス魔法女学園。 そこでは、多くの生徒たちが日々、高みを目指して、学び、変わっていく。 今日も敷地の一角では、生徒たちによる模擬戦が行われていた。 両手に古式拳銃を手にしているのは、この学園の2年生であるオフェリア。 ポニーテールにされた、腰まで届くほど長い緑がかった白い髪。 整った顔立ちは大人びており、首から下も女性らしい起伏に富んでいる。 彼女に対するは、古式ライフルを手にした、同じく2年生のクレシダ。 その容姿はオフェリアと正反対で、髪は赤みの強い短髪、顔立ちは美少年と見紛うほど中性的だ。 首から下も起伏にやや乏しいが、均整が取れて引き締まったラインを形成している。 「防御だけでは、私は倒せませんよ!」 「そっちだって、アタシに当てなきゃ何発撃っても意味ないぞ!」 2人の戦いは膠着状態が続いていた。 オフェリアの2挺拳銃から放たれる無数の魔力弾。 クレシダはそれらを回避し、あるいはライフルを起点に展開した魔法障壁で捌いていく。 両者の均衡が崩れたのは、模擬戦が始まって10分が経とうとした時だった。 オフェリアが2挺拳銃に魔力をチャージするために生じた、一瞬の隙。 「っ!」 それを見逃さず、クレシダは素早くライフルを構え、引き金を絞った。 相手の急所を狙った正確無比な1発。 「くっ!」 オフェリアはその銃撃を左の肩当てで受け止める。 完全回避は不可能と判断したのだろう。 さらに、オフェリアは無事な右手で拳銃を構え、クレシダの足元めがけて銃撃する。 「何処を狙って・・・っ!?」 言い終えるより早く、クレシダはオフェリアの意図を理解する。 銃撃によって土煙が舞い上がり、彼女の視界を覆い隠したのだ。 「そこかっ!」 気配だけを頼りに、ライフルを構える。 それとほぼ同時に、土煙の中からオフェリアが飛び出してくる。 ライフルと2挺拳銃。 それぞれの銃口が相手の急所を捉えた。 *  唐突だが、このゼガゼス魔法女学園に在籍する殆どの生徒たちは、ある共通の悩みを抱えている。 その原因は食事である。 といっても、不味い訳ではない。 問題は主食として出される芋だ。 魔法を使うには、それなりのエネルギーが必要となる。 そのため、この学園の生徒たちは同世代の少女より食事の量が多い。 そんな彼女たちの食事が繊維質の多い芋だと、どういう事になるか。 考えるまでもないだろう。 ぷううぅぅ~っ。 ふいに食堂の何処からか壊れたラッパのような音が聞こえてきた。 今は昼休みで、食堂内は多くの生徒たちで賑わっている。 その中で、音の発信源である少女は赤面して俯くが、それを見咎める者はいない。 この学園では、誰かがオナラをしても黙殺するというのが、暗黙の了解になっているのだ。 そんな一幕もあった食堂の、1番隅のテーブル。 「・・・」 「・・・」 4人掛けのテーブルに、並んで座る2人の少女。 オフェリアとクレシダだ。 今は他のテーブルも空いているが、2人が来た時はこの2席しか空いていなかったのだ。 「・・・」 「・・・」 2人とも一言も話す事なく、黙々と食事を口に運んでいる。 険悪な雰囲気だが、2人はいつもこんな風に仲が悪い訳ではない。 むしろ、普段は仲がいい方である。 だが、模擬戦の後だけは決まって険悪な雰囲気になる。 理由は、銃を手にする者としての考え方の違いだ。 ライフルの精密射撃を武器に、スナイパーとして「1発必中」を旨とするクレシダ。 2挺拳銃の手数を武器に、ガンマンとして「相手を仕留める事」を旨とするオフェリア。 全く正反対の考え方を持つ2人の考え方は決して交わる事がなく、模擬戦の度に対立しているのだ。 重苦しい沈黙の中、先に口を開いたのは右側に座るクレシダだった。 「さっきの模擬戦、勝ったのはアタシだからな」 彼女の発言に対し、 「先生の話、聞いてなかったんですか?さっきのは引き分けです」 オフェリアも負けじと言い返す。 「お前の肩当てを吹っ飛ばしただろ!」 「あれは攻撃に対する防御で、私にダメージを与えていません。そうでしょう?」 「・・・」 オフェリアの問い掛けに答えず、クレシダは食事を再開する。 それを見て、オフェリアも食事を再開する。 どのぐらい無言の時間が続いただろうか。 クレシダの方に動きがあった。 ゆっくりと上体を左に傾け、尻の片側を持ち上げていく。 直後、 ぶびぃっ!! 彼女の尻から汚らしい破裂音が響いた。 間を空けず、卵の腐ったような悪臭(におい)がオフェリアの鼻に届く。 「っ!」 無言でクレシダを睨むオフェリアだが、それ以上の事はしない。 他人の放屁は黙殺するのが暗黙の了解となっている以上、下手に文句を言う事ができないのだ。 しかし、この条件はクレシダも同じである。 「・・・」 今度はオフェリアに動きがあった。 ゆっくりと上体を身体を右に傾けていく。 ちょうど先程のクレシダと正反対の態勢になったところで、 ブバスッ!! 彼女の尻からも破裂音が聞こえてくる。 「っ!」 鼻に届いた腐肉のような悪臭(におい)に、すぐさまオフェリアを睨み付けるクレシダ。 とはいえ、自分も彼女と同じで下手に文句を言う事はできない。 そこで、彼女が取った行動は―― ぶぶぶうぅっ!! 先程と同じように身体を左に傾け、先程以上に大きなオナラをする事だった。 「っ!」 そんなクレシダの行為を、オフェリアは宣戦布告と受け取った。 ブブブゥーッ!! 今度は腰を90度回し、尻をクレシダの方に向けてオナラを放つ。 「ぐっ!?」 明らかに自分に向けた放屁。 その強烈な悪臭(におい)に、クレシダも黙殺を決め込んではいなかった。 ぶううううう~っ!! 彼女も腰を90度回転させ、尻をオフェリアの方に向けてオナラを放つ。 これに対し、 ブオオオオオ~ッ!! オフェリアも同じくオナラで応戦する。 ぶぶぶうう~~~ッッ!! そして、クレシダもオナラを放ってやり返す。 腐った肉と腐った卵。 2種類の臭気が混ざり合い、より凶悪な悪臭(におい)となって周囲を漂い始める。 ブブッブウウウ~~~ッッ!! そんな臭気の応戦が暫く続き、 「いい加減にしろ!臭いだろうが!」 オフェリアが何度目かのオナラを放ったところで、クレシダが勢いよく立ち上がった。 「その言葉、そっくりそのままお返しします。あなたのオナラは黙殺できるレベルを超えています」 「何だと!やるか、こいつ!」 興奮したクレシダの掌に魔法陣が出現し、そこから愛用の古式ライフルが召喚される。 「いいでしょう。受けて立ちます」 それを見たオフェリアも立ち上がり、両手に古式拳銃を召喚する。 一触即発。 その空気は2人の頭を襲った衝撃で打ち破られた。 「いつまで下らない事やってるのよ」 2人が声のした方に視線を向けると、呆れ顔のクラスメイト――ミランダが立っていた。 薄い金色の癖っ毛をショートにし、前髪は右下がりのボブにしている。 瞳はルビーのように紅く、整った顔立ちからは何処か高貴な雰囲気が感じられる。 彼女の両手には長さ50cmほどの白いバトンが1本ずつ握られており、これで2人の頭を叩いたのだ。 「止めないでください、ミランダ。元はといえば、クレシダがわざと私に向けてオナラをしてきたんです」 「わざとって決め付けるなよ!お前こそ、わざとアタシに向かってオナラしてきただろ!」 今にも戦闘開始しそうな2人を、ミランダは両者の顔にバトンの先端を突き付ける事で制止する。 「喧嘩はそこまで。早くしないと、昼休みが終わっちゃうわよ」 食堂にいた他の生徒たちは既に姿を消している。 残っているのは揉めているクレシダとオフェリア、そして仲裁に入ったミランダの3人だけだ。 「「・・・」」」 ミランダの指摘を受け、クレシダとオフェリアが無言で食事を再開する。 そんな2人の様子の様子に一抹の不安を覚えながらも、ミランダは食堂を後にした。 *  トイレには、大きく分けて2種類ある。 女性用と男性用だ。 このうち、クレシダとオフェリアが使うのは、言うまでもなく前者である。 そして、同じクラスに在籍するこの2人が同じ階の、同じトイレを使うのも何ら不思議な事ではない。 問題は、これに3つの偶然が重なった事だ。 「ふぅ・・・」 個室にクレシダは個室に入ると、便座に腰掛けて大きく息を吐いた。 この時、1つめの偶然が起きる。 彼女が個室へ入ったすぐ後に、オフェリアもトイレに入ってきたのだ。 2つめの偶然は、この時点で空いていた個室がクレシダの隣だけだった事だ。 そのため、オフェリアはクレシダの隣の個室に入り、便座に腰を下ろした。 もし、第3者が個室内の2人の姿を見たら、違和感を覚えた事だろう。 クレシダは下半身を包むショートパンツを脱いでおらず、オフェリアの方もややタイトなスカートをそのままにしている。 そもそも2人とも下着を穿いたままなのだ。 これが3つめの偶然。 2人がトイレに来た目的が同じだったのだ。 「んっ!」 今回も先に動いたのは、クレシダだった。 彼女の口から可愛らしい息み声が漏れた直後、 ぶううううううう~~~っっっ!!! 食堂で放ったものより、さらに大音量のオナラが彼女の尻から放たれた。 悪臭(におい)の方も強烈さを増しており、あっという間に個室内が濃密な腐卵臭に染め上げられた。 「うっ、我ながら酷い悪臭(におい)だな」 自らが出した臭気を吸い込み、クレシダが顔を顰める。 だが、臭気は彼女の個室内だけに留まらなかった。 個室の下にある3cmほどの隙間を通って、隣の個室に流れ込んでいく。 「むぐっ!?」 突如として隣から流れ込んできた腐卵臭に、オフェリアが苦悶の声を漏らす。 (今の声からすると、これはクレシダのオナラですね) 壁を叩いて抗議しようかと考えたが、すぐにやめる。 理由は簡単。 自分も今から同じ事をするからだ。 「んっ!」 オフェリアがお尻の力を緩めると、 ブボボボオオオオオオ~~~ッッッ!!! クレシダを上回る大音量のオナラが放たれた。 「はぁ・・・」 解放感から大きく息を吐くオフェリア。 個室内に充満していた腐卵臭に、さらに強い腐肉のような悪臭(におい)が上書きされる。 そして、 「ごはっ!?」 その臭気は先程とは逆のルートを通ってクレシダの個室へと流れ込んだ。 (今の声、あいつもガス抜きに来たのか) 心の中で呟く。 それにしても大きなオナラだった。 たかがオナラと言われれば、それまでだろう。 しかし、何となく負けた気分だ。 (そうとなれば、やる事は1つだな) 「ふんっ!」 ぶおおおおおおおおおお~~~っっっ!!! 先程より力を込めてオナラを放つ。 「むうううっ!?」 個室内の空気が強烈な腐卵臭に汚染されるが、オフェリアより少し大きいオナラを出す事ができた。 (私と張り合う気ね、クレシダ) 隣の個室から聞こえてきた放屁音と流れ込んできた腐卵臭で、クレシダの意図を理解する。 5歳からの付き合いは伊達ではないのだ。 そして、この2人は基本的に似た者同士である。 (くだらないけど、負けっぱなしというのは癪ね) 故に、オフェリアが取る行動も1つである。 「ふんっ!」 ブウオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 力強く息んで、より大きなオナラを放つ事だ。 「ごほっ、ごほっ、えほっ・・・!」 個室内に充満する腐肉のような悪臭(におい)に噎せてしまうが、今のはクレシダのオナラより強烈だったはずだ。 「ぐっ!?」 これに対し、クレシダも黙ってはいない。 「ふんぬっ!」 ぶぶっぶううううううううう~~~っっっ!!! 渾身の力を込めてオナラを放つ事で、オフェリアのオナラに対抗する。 (クレシダも本当に負けず嫌いね) 鼻を摘みながら呆れるが、彼女は気付いていない。 自分も彼女に比肩する負けず嫌いである事に。 「ふんぬっ!」 ブブブブブブブブブブブブゥ~~~ッッッ!!! その証拠に、彼女も渾身のオナラを放ってクレシダに対抗している。 (今のは互角か) (今のは互角ね) 放屁音での勝負は頭打ち。 同じ結論を出した2人は即座に勝負方法を変更する。 すなわち、 「「ふんぬっ!」」 どちらがオナラを出し続けられるかというサドンデスだ。 ぶうううううううううううう~~~ッッッ!!! ブボオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 2人の尻から同時に特大のオナラが溢れ出る。 「むううううっ!?」 「んむうううっ!?」 自分の放った臭気に悶絶する2人。 「「ふんっっ!」」 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ~~~っっっ!!! ブウウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! それでも「相手に負けたくない」という気持ちが彼女たちに放屁を続けさせる。 「「むんっ!」」 ぶぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぉ~~~っっっ!!! ボッフウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 2人は渾身の力で放屁を続けているが、重大な事を失念していた。 自分たちの放った臭気が隣の個室だけでなく、他の個室や個室の外にも漏れ出しているという事だ。 この時点で、トイレ内には大量の卵と肉をまとめて腐らせたような激臭(におい)が充満していた。 ぶぶっぶううううううう~~~~~っっっ!!! ブウウウウウウウウウウ~~~~~ッッッ!!! 両者の個室内から何発目かの大放屁が聞こえたところで、 「「っ!?」」 2人の頭に衝撃が走った。 「な、何だ!?」 「これは・・・」 2人の視界に飛び込んできたのは、見覚えのある白いバトン。 これが彼女たちの頭を殴ったのだ。 バトンが扉の向こうに消えると、 バンッ! 2人は同時に勢いよく扉を開けた。 扉の前には、2人の予想した通りの人物が立っていた。 ミランダだ。 両手のバトンをくるくると回しながら、怒り半分、呆れ半分といった表情を浮かべている。 「いきなり何するんだよ!」 「不意打ちは卑怯ですよ!」 「私に抗議する前に、少しは周りの状況を見なさい」 「「えっ?」」 ミランダに指摘され、2人はようやく我に返る。 トイレ内に充満する巨悪な臭気。 個室から漏れ出した2人の臭気が混ざり合ったものだ。 それを吸い込んだのか、数人の生徒たちが鼻を摘みながら、こちらに抗議の視線を向けている。 「これでわかったでしょ?自分たちが何をするべきか」 ミランダの言葉を受け、 「「すみませんでした!」」 2人は同時に深々と頭を下げた。 *  トイレでの1件の後も2人の仲は改善せず、ついに放課後を迎えてしまった。 喧嘩しているとはいえ、彼女たちが帰るのは同じ学校の寮である。 結果として、2人は廊下を並んで歩く事になったが、一切視線を合わせようとしない。 「・・・」 「・・・」 どちらも一言も話さない重苦しい空気。 そこに割って入ったのは、窓の向こう、階下から聞こえた悲鳴だった。 「「っ!?」」 すぐさま窓の外に視線を向ける2人。 彼女たちの目に飛び込んできたのは、 『ボオォォォォォ・・・・ッ』 1体のゴーレムだった。 身長は3mほどで、生み出すのに失敗したのか、そのシルエットはかなり歪だ。 下半身はなく、右腕の手首から先も地面に埋まったような格好になっている。 そんな泥ゴーレムが唯一マトモな左手をゆっくりと伸ばしている。 その先には、下級生と思われる小柄な生徒が怯えた表情でへたり込んでいた。 おそらく彼女が泥ゴーレム作りに失敗したのだろう。 状況を把握したところで、2人が同時に動いた。 窓枠へ足を掛け、そのまま空中へと身を躍らせる。 2人がいるのは3階だが、此処は魔法学校。 着地の直前に風の魔法を発動して減速、着地と同時に武器を召喚して引き金を絞る。 クレシダのライフルが泥ゴーレムの頭を吹き飛ばし、オフェリアの2挺拳銃が右手を蜂の巣にする。 しかし、これで終わりではない。 ゴーレムの作り方はいくつかあるが、この泥ゴーレムは魔法石を使用するタイプだ。 コアである魔法石を破壊しない限り、すぐに再生してしまう。 案の定、頭と右手を吹き飛ばされたゴーレムが再生を始めていた。 「おい、こいつのコアは何処だ!?」 「あ、ああ・・・」 クレシダが問い掛けても、下級生は震えているだけで答えない。 あまりの恐怖で答える余裕がないのだ。 「とにかくこいつはアタシたちで何とかするから、お前は逃げろ!」 「は、はい!」 クレシダに促され、下級生が慌てて逃げていく。 それを確認し、クレシダは再び泥ゴーレムと向き合う。 彼女が下級生を逃がしている間も、オフェリアは泥ゴーレムに対して銃撃を続けていた。 泥ゴーレムは顔や腕、肩など様々な場所に被弾しているが、すぐに再生してしまう。 「ゴーレムそのものの性能は申し分ないですね」 「制御できなかったら意味ないけどな」 クレシダは泥ゴーレムから距離を取ってライフルを構えると、銃口に魔力をチャージして引き金を絞る。 通常の2倍近い出力で放たれた魔力弾は泥ゴーレムの腹部に大穴を空けるが、それもすぐに塞がってしまう。 『ボオォォォォォ・・・・ッ』 「チッ!これでも時間稼ぎにならないのかよ!?」 クレシダが舌打ちする。 「やはりコアを見付けないとダメですね」 そう言いながら、オフェリアもクレシダの隣まで後退してくる。 その表情には疲労の色が見え隠れし、額には玉の汗が浮かんでいた。 『ボオォォォォォ・・・・ッ』 2人が後退したのを見てか、泥ゴーレムの方にも動きがあった。 ゆっくりと胸を張るような姿勢になったかと思うと、その腹部から無数の泥団子を放ってきた。 「ちょっ、そんなのアリかよ!?」 「思った以上に厄介ですね・・・」 飛来する人間の頭ほどもある泥団子を、クレシダとオフェリアは次々と撃ち落としていく。 『ボオォォォォォ・・・・ッ』 文字通りの身を削る攻撃だが、泥ゴーレムの大きさに変化はない。 腹部から泥団子を撃ち出す一方で、地面から新しい泥(土)を補充しているのだ。 そんな無尽蔵に降り注ぐ泥団子に対し、迎え撃つ銃口はわずかに3門。 徐々に対応しきれなくなり、撃ち漏らしを回避する数が増えていく。 そして、 「っ!?」 捌ききれなかった泥団子の1つがオフェリアの右肩に被弾する。 命中した泥団子は瞬時に水分を失って硬化し、彼女の右腕全体を覆い尽くす。 しかも、次の泥団子がすぐ目の前に迫っていた。 「くっ!」 すぐに左手の銃で迎撃しようとするが、とても間に合わない。 (ここまでのようですね・・・) 2発目の被弾を覚悟するオフェリアだったが、 「っ!?」 背後から飛来した魔力弾が目の前の泥団子を跡形もなく四散させる。 それだけでなく、魔力弾が掠めた事で彼女の右腕を覆っていた泥までもが吹き飛ばされてしまった。 (本当にいい腕ね) 背後でドヤ顔を浮かべているであろうクレシダの姿を想像し、口角を吊り上げる。 『ボオォォォォォ・・・・ッ』 ふいに泥ゴーレムが泥団子を放つのをやめた。 「弾切れ、か?」 クレシダがライフルを構え直しながら呟く。 しかし、それは悪い意味で裏切られた。 『ボオォォォォォ・・・・ッ』 今度は泥ゴーレムの足元から大量の泥が溢れ出したのだ。 「なっ!?」 「くっ!?」 すぐに地を蹴って空中に逃れる2人。 だが、それを見計らったように、再び泥団子が飛来する。 「しまっ・・・」 自分たちのミスに気付いたが、時既に遅し。 泥団子は2人の足に被弾し、落下した彼女たちを泥の地面に縫い止める。 「やられましたね」 「ああ、バカそうな顔して意外と賢いぞ、あいつ」 一応、得物を構えてみるが、現状ではあまり意味がない。 なにしろ相手はいくら撃たれても瞬時に再生してしまうのだから。 「どうする?」 「どうしましょうか」 身動きを封じられた状態で、2人は思案を巡らせる。 次の瞬間、戦況は大きく動いた。 「今日はとことん縁があるわね!」 金髪隻眼の少女――ミランダの乱入だ。 彼女は3階から身を躍らせると、空中で両手に白いバトンを召喚する。 それらを拍子木のように打ち付けると、生み出された波動が泥ゴーレムを包み込む。 「見付けたわ!こいつのコアはあそこよ!」 ミランダの放った波動に共鳴し、泥ゴーレムの首元が淡い光を放つ。 コアの場所がわかれば、2人の間に言葉は要らなかった。 オフェリアが即座に発光点を狙って2挺拳銃を連射する。 再生速度を上回る勢いで降り注ぐ銃撃。 程なくして、泥ゴーレムのコアたる赤い魔法石が姿を現す。 その好機を見逃す事なく、 「っ!」 クレシダのライフルから放たれた魔力弾が一撃で魔法石を破壊する。 『ボオォォォォォ・・・・ッ』 コアを失い、泥ゴーレムの身体が崩れ落ちていく。 同時に、2人を戒めていた泥も形を失ってボロボロと崩れ落ちていく。 「やったな」 「はい」 クレシダが突き出してきた左拳に、オフェリアも右拳を打ち付けて応じる。 「本当にいいコンビね、あなたたち」 溜め息混じりに言うミランダだが、その表情は何処か嬉しそうにも見える。 こうして泥ゴーレムの暴走と2人の喧嘩は終わりを告げた。


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