魔法学校の日常 3
Added 2018-10-03 14:23:11 +0000 UTC争いというのは、些細な切っ掛けで始まる事も少なくない。 争う両者の間に確執があれば、なおさらだ。 それまで積み重なったものが何かの拍子で一気に爆発するのである。 大陸東部にあるゼガゼス魔法女学園。 その広大な一角で始まった争いも、その好例といえるだろう。 いくつかの共通点こそあるが、争う両者の印象はほぼ正反対である。 「あなたという人は、いつもいつも!」 まず、怒りの表情で青黒い刀を振るう長身の少女――クロノ。 腰まで伸びた漆黒のストレートヘアに、それが映える白い肌。 顔立ちはキリッとしており、彼女自身が研ぎ澄まされた美しい刃のようにも見える。 「アンタこそ、いちいちうるさいんだよ!」 対するは、何処か面倒そうな表情で、柄の長いハンマーを振るうパワフルな少女――ロザリンド。 光の加減で濃い緑色に見える、ウェーブのかかったショートヘア。 顔立ちは綺麗というより可愛らしく、何処か親しみやすさを感じさせる。 このように正反対な2人だが、共通点もある。 それはどちらも甲乙付け難い美少女であり、豊満なバストとヒップの持ち主であるという事だ。 「滅ッ!」 クロノが高速で愛刀ハネトラを振るう。 その軌跡は青い魔力の刃となってロザリンドに迫る。 「ふんっ!」 そんな処刑人の鎌の如き一撃を、ロザリンドはハンマーを軽々と振るって打ち砕く。 魔法で筋力を強化しているとはいえ、驚くべき怪力とスピードである。 「やっぱり片手間で倒せる相手じゃないよね」 ロザリンドは表情を真剣なものに変えると、手にしたハンマーを高々と掲げる。 次の瞬間、 「っ!」 晴天のはずの空から彼女のハンマーめがけて雷が降り注いだ。 普通なら無事では済まない天よりの一撃。 だが、ロザリンドは火傷1つ負っていない。 それどころか、 「さあ、第2ラウンドといきましょうか!」 雷を纏ったハンマーを手に、力強くそう宣言する。 この2人が争う事になった切っ掛け。 それは・・・オナラだった。 * 朝。 クロノは目を覚ますと、すぐにトイレに向かう。 これだけなら、それほど変わった行動ではない。 変わっているのは、トイレそのものと、そこに入ってからの彼女の行動だ。 まず、トイレそのもの。 他の部屋のトイレが洋式なのに対し、この部屋のトイレは和式になっている。 極東の島国出身である彼女には、こちらの方が使い慣れているのだ。 次に、彼女の行動。 トイレに入った彼女は必ずドアの内側に描かれた魔法陣をなぞる。 すると、魔法陣が淡く輝き始め、組み込まれた術式が発動する。 それを確認してから、ようやくクロノはゆっくりと便器の上にしゃがみ込むのだ。 もし、第3者が彼女の姿を見たら、首を傾げた事だろう。 理由は簡単。 彼女は下着はおろか、ズボンすら下ろしていないからだ。 どうしてズボンを下ろしていないのか。 その理由も簡単。 「んっ!」 ぶうううううううううううう~~~っっっ!!! 彼女のしたかったのが排尿や排便ではなく、腸内のガス抜きだからだ。 個室全体を大きく震わせるような大音量のオナラ。 その音が個室の外へ漏れる事はない。 扉に描かれた魔法陣による消音魔法で、外部に漏れる放屁音をすべて打ち消しているからだ。 とはいえ、消音魔法はオナラの悪臭(におい)までは消してくれない。 「ぐっ・・・!」 そのため、オナラの悪臭(におい)がクロノの鼻腔まで襲い掛かってくる。 卵と肉をまとめて腐らせたような、かなり強烈な腐敗臭だ。 「今日は、いつも以上に悪臭(におい)が強いわね」 昨日、少しビーフシチューを食べ過ぎただろうか。 「んっ!」 ぶおおおおおおおおおおおお~~~っっっ!!! そんな事を考えながら、クロノは2発目のオナラを放つ。 1発目にも負けないほどの轟音が響き渡り、個室内に充満する臭気がその濃さを増す。 「後は一気に・・・ふんっ!」 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぅぅ~~~っっっ!!! 腸内のガスをすべて出し切るべく、先の2発を凌ぐような特大のオナラを放つクロノ。 都合3発のオナラで、ひとまず腸内のオナラを出し切る事ができた。 しかし、まだトイレを出る訳には行かない。 最も大事な作業が残っているのだ。 「だいぶ減ってきたわね。また作っておかないと・・・」 そう言いながら、彼女が収納棚から取り出したのは、キャップの付いた1本のボトル。 大きさは8cmほどで、透明な容器内は淡い黄色の液体で満たされている。 それをシャカシャカと振り、キャップを回して周囲に振り撒く。 これは1種の強力な消臭剤で、学園の生徒たちが「ポーション」と呼んでいる魔法薬だ。 このポーションを振り撒いて個室内の悪臭(におい)を打ち消し、ようやく彼女のガス抜きは終了する。 彼女は毎朝、この防音、ガス抜き、消臭の一連の作業を行っているのだ。 ぐるるるるる~っ! ドアノブに手を掛けたところで、彼女のお腹が低く鳴る。 「はぁ、ポーションが1本無駄になったわね」 溜め息混じりに呟いて、 ぶうおおおおおおおおおおおおおお~~~っっっ!!! 彼女は本日4発目のオナラを放った。 * 魔法を使うのには、それなりのエネルギーが必要となる。 そのため、このゼガゼス魔法女学園の生徒は普通より食事量が多い。 加えて、この地域の主食は繊維質の多い芋である。 この2つが合わさると、どういう事になるか。 ぷうううぅぅ~っ。 答えは、3年生の教室の一角から聞こえてきた音。 そう、生徒たちは普通より圧倒的にオナラが出やすいのだ。 誰かのオナラによって静まり返る教室だが、それも一瞬。 すぐに何事もなかったように、授業が再開される。 この学園では「誰かが放屁しても無視する」というのが暗黙の了解なのである。 「・・・」 この慣習について、クロノに不満はなかった。 前述のような事情がある以上、不可抗力でオナラが出てしまうのは仕方のない事である。 それでもオナラした者を批難するというのは酷であろう。 クロノが不満を持っているのは、同じオナラでも別の事だ。 「・・・」 さり気なく教室内を見回してみる。 クロノの席は最後尾の中央。 ほんの少し首を左右に振るだけで、教室全体を見回す事ができる。 (あの娘みたいね) 声には出さず、心の中で呟く。 その視線の先では、1人の女子生徒が申し訳なさそうに小さくなっている。 先程のオナラをしたのは、ほぼ間違いなく彼女だろう。 彼女のように申し訳なさそうにしているなら批難する気はない。 むしろ好感が持てるぐらいだ。 批難すべきは―― ブブブウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 今度は大音量の放屁音が教室内に響き渡った。 「っ!」 すぐさま音源の方へ視線を向ける。 そこにいたのがロザリンドだった。 先程の女子生徒とは対照的に、しれっとしている。 あれだけ大きな音の放屁をした上、周囲に強烈な腐卵臭を漂わせているにもかかわらず、だ。 (少しは申し訳なさそうにしなさいよ!) 土下座して謝れとまでは言わないが、せめて一言ぐらい詫びてもいいはずである。 それすらないというのが、彼女の抱く不満なのだ。 ぐるるるる~っ。 ロザリンドのオナラに誘発されたのか、クロノのお腹からも重低音が聞こえてくる。 「くっ・・・」 さり気なくお腹を擦りながら、時計を一瞥する。 授業が終わるまで、後15分。 それまで待てるほどの余裕はない。 (仕方ないわね) 周囲を警戒しつつ、机の中に入れてあったポーションを掴む。 それを机の中で静かに振り、キャップを回して左手に隠し持つ。 「んっ・・・」 プシュウウウ・・・ッ。 準備が整ったところで、慎重にお尻から力を抜いて放屁する。 乙女の溜め息――要するに、すかしっ屁だ。 そのすかしっ屁と並行し、左手に隠し持ったポーションを自分の尻に振り掛ける。 かなり神経を使うが、これで周囲に悪臭(におい)が充満する事もない。 フシュウウウ・・・ッ。 「ふぅ・・・」 オナラを出し切ったところで、小さく息を吐く。 彼女は授業中にオナラをしたくなるたびに、今のような作業をしている。 自分の強烈なオナラで、周囲に迷惑を掛けないための配慮だ。 そんな彼女の努力を嘲笑うように、 ブオオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! またロザリンドが無遠慮なオナラを放ち、教室内に強烈な腐卵臭が充満する。 「ぐっ・・・」 「ごほっ、ごほっ・・・」 さすがに強烈だったのか、生徒たちが小さく呻いたり、咳き込んだりしている。 それでもロザリンドに悪びれた様子はない。 結局、教師が無言でポーションを振り撒いて消臭し、何事もなかったように授業が進められていく。 「・・・」 パキッ。 「あっ」 無意識に力が入ったのか、持っていたペンが折れてしまった。 慌てて別のペンを取り出し、授業に集中しようとする。 ブウウウオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! そこで、ロザリンドの3発目の放屁音が耳朶を打った。 「・・・」 思わず愛刀ハネトラを召喚しようとして、理性が急ブレーキを掛ける。 こんな所で刀を振り回したら、迷惑レベルはオナラの比ではない。 (落ち着きなさい、クロノ。すべては授業が終わって、昼休みになってからよ) 気持ちを落ち着けるべく、大きく深呼吸する。 そのタイミングで、 ブボボボボボボボボボボボォ~~~ッッッ!!! ロザリンドが4発目のオナラを放つ。 「むぐぅっ!?」 意図せずして、ロザリンドのオナラを吸い込む形になってしまい、強烈な悪臭(におい)に鼻腔を蹂躙される。 この時点で、クロノの怒りは頂点に達した。 * 授業時間の終了を告げるチャイムが鳴り響き、教師が教室を出ていく。 教師が扉を閉めるのを見届けて、 「ちょっと、あなた!」 クロノは一目散にロザリンドの席へと向かった。 「ん~っ、何だよ、うるさいな・・・」 机に突っ伏していたロザリンドが眠そうな表情で顔を上げる。 「さっきのオ・・・アレよ!少しは周りに配慮できないの?」 「アレって?」 「オナラよ、オナラ!さっきの授業中、4回もしてたでしょ!」 「そんなに怒鳴るなよ。屁ぐらい誰でもするだろ?」 怒り狂うクロノとは対照的に、ロザリンドは全く悪びれない。 「確かに『出物腫れ物、所嫌わず』という言葉もあるわ」 「そうだろ?」 「でもね、物事には限度というものがあるの。あれだけ大きなオナラをしたんだから、皆に謝罪の1つぐらいはすべきでしょう?」 「そうか?誰かがオナラしてもスルーっていうのがこの学園のマナーだろ?」 「それはオナラをされた側の話で、オナラした側は違うでしょ!」 「じゃあ、どうしろっていうんだよ?屁をこくたびにポーションで消臭しろっていうのか?」 「だから、その態度が・・・ああもう!」 苛立ちがピークに達し、それをぶつけるように乱暴に机を叩くクロノ。 「このままじゃ埒が明かないわ!表に出なさい、決闘よ!」 ビシッと校庭の方を指差すクロノに対し、 「ふぁ~あ、わかったよ・・・」 ロザリンドは欠伸混じりに応じた。 * そして、話は冒頭に戻る。 「さあ、第2ラウンドといきましょうか!」 高らかに宣言し、ロザリンドは手にしたハンマーの先をクロノの方へ突き出す。 それに呼応してハンマーを包んでいた雷がクロノめがけて降り注ぐ。 「ハッ!」 万物を焼き尽くす神罰の如き一撃を、クロノは刀の一振りのみで消滅させる。 とはいえ、闇雲に刀を振るった訳ではない。 感覚を研ぎ澄まし、刀身に纏わせた魔力で正確無比に雷を断ち切ったのだ。 「やるねぇ、今ので決まったと思ったのに」 ロザリンドが少し驚いた様子でハンマーを構え直す。 「たかが屁の事で、何をマジになってるの?」 「そのたかが屁のマナーすらマトモにできない人に言われたくないわ」 クロノはロザリンドから視点を外す事なく言い返す。 「私も本気で行くわよ」 そう言うと、クロノは左腰に鞘を召喚し、そこに刀を納めてしまう。 だが、勝負を放棄した訳ではない。 これは最速の一撃を放つための下準備なのだ。 それを感じ取ったのか、 「・・・」 ロザリンドもハンマーを構えたまま動かない。 1秒、2秒、3秒・・・時間が経つごとに、両者の間に渦巻く空気が張り詰めていく。 ゴクリ・・。 2人の戦いを遠巻きに見守っていた生徒たち。 その誰かの喉が鳴る。 それが合図となった。 「「!」」 2人が飛び出したタイミングは全くの同時。 クロノが鯉口を切り、神速で抜刀する。 ロザリンドもヘッドに雷を集中させ、同じく神速でハンマーを振るう。 互いに全力を出し切った、必殺の一撃。 しかし、それらが相手を仕留める事はなかった。 「「っ!?」」 突如として飛来した1本の黒いハルバードが両者の攻撃を受け止めたからだ。 1拍遅れて、 「はいはい、喧嘩はそこまでよ」 ハルバードの持ち主と思しき女子生徒が両者の前に割って入ってきた。 身長はクロノたちと同じぐらいで、胸や尻も2人に負けないほど豊満だ。 ロザリンドよりやや明るい色の髪を長く伸ばし、前髪は左に流している。 顔立ちは整っており、ロザリンドと似た雰囲気があった。 「「ジュリエット!?」」 女子生徒の名を知る2人が同時に彼女の名前を呼ぶ。 ジュリエット。 2人のクラスメイトで、ロザリンドの従姉妹である。 「少し頭を冷やしなさい」 そう言うと、ジュリエットは片手でハルバードを持ったまま、器用に尻をロザリンドの方へ向けた。 そして、 ブブブッブウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! ロザリンドの顔めがけて特大のオナラを放つ。 「むぐっ!?」 その強烈な腐卵臭に悶絶するロザリンドを他所に、 「あなたもね」 今度は尻をクロノの方へ向ける。 ブボオオオオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! そのまま2発目のオナラを放つと同時に、地を蹴って2人から大きく距離を取った。 「ごほっ、ごほっ、えほっ・・・!い、いきなり何するのよ!?」 「相手の顔めがけて屁をするなんて、アタシでもしないぞ!」 クロノとロザリンドが悶絶しながら抗議する。 「ゴメンなさい。でも、このぐらいしないと、あなたたちの本気勝負を止められないでしょ?」 小さく頭を下げ、ハルバードを構え直すジュリエット。 「あのまま戦ってたら、間違いなく2人とも無事では済まなかったわ。たかがオナラの事で怪我するなんて、バカらしいと思わない?」 「喧嘩を吹っ掛けてきたのは、クロノだよ」 「なっ、原因を作ったのは、あなたでしょ!?」 「はいはい、そこまで」 今にも喧嘩を再開させそうな2人に対し、ジュリエットは手をパンパンと叩いて仲裁に入る。 「とにかく2人とも武器を収めてなさい」 ジュリエットがハルバードの柄頭で地面を叩くと、 「「なっ!?」」 虚空から出現した光の鎖が2人の身体を瞬時に縛り上げる。 「ちょっ、何するのよ!」 「早く解けよ!」 それほど強力な呪縛ではないが、必殺の一撃を放って疲弊した2人にそれを振り解く余力はない。 「ひとまず場所を変えましょうか」 そう言うと、ジュリエットは光の鎖で縛った2人を引っ張って校庭を後にした。 * ジュリエットが2人を連れてきたのは、彼女自身の部屋だった。 「此処なら誰の迷惑にもならないから、好きなだけ戦っていいわよ」 そう言いながら、ジュリエットは後ろ手にドアを閉める。 「この状況で、どうやって戦えっていうのよ!?」 「2人で蹴り合えっていうのか?」 「そんな訳ないでしょ」 2人の言葉に首を左右に振り、ジュリエットがハルバードの柄頭で地面を叩く。 直後、その動きに呼応するように、クロノとロザリンドの身体が浮かび上がった。 「喧嘩の原因はオナラでしょ?」 ハルバードが床に対して水平にされると、2人の身体も床に対して水平になる。 但し、2人は向かい合ってはおらず、それぞれの頭が相手の足の方を向く格好になっていた。 「だったら、オナラで決着をつければいいのよ」 ジュリエットがハルバードを軽く振ると、 「むぐっ!?」 「もがっ!?」 2人の身体が上下逆さま、俗にいうシックスナインの状態で密着する。 身長が殆ど同じなので、2人とも相手の尻に顔を押し付けるような格好だ。 「この状態で1発ずつオナラして、先に『参った』といった方が負け。シンプルでいいでしょ?」 説明を終えると、ジュリエットはゆっくりと2人の身体をベッドの上に着地させる。 「こんな勝負で納得する訳ないでしょ!」 「クロノが認めなくても、ロザリンドはOKみたいよ」 「えっ?」 クロノが戸惑いの声を漏らした瞬間、 ブブブブッオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 彼女の顔を生温かい熱風が呑み込んだ。 発生源は言うまでもなく、ロザリンドの尻である。 「むうううううううっ!?」 大量の腐った卵を鼻に流し込まれたような感覚に、クロノが苦悶の声を上げる。 「あっ、悪い。腹を押されたから出ちゃったよ」 さすがにゼロ距離での放屁は申し訳ないと思ったのか、ロザリンドが謝ってくる。 だが、 「っ!」 そのオナラは消えかけていたクロノの怒りに、再び火をつけた。 「どうして・・・」 「お、おい、どうした?」 「どうして私ばっかりオナラで悩まなくちゃいけないのよ!ふんっ!」 ぶぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぉぉ~~~っっっ!!! 怒りの共に放たれたクロノのオナラがロザリンドの顔に襲い掛かる。 「んーーーーーーーっ!?」 自分のオナラに勝るとも劣らない強烈な腐卵臭。 その直撃を受け、ロザリンドも先程のクロノと同じように苦悶の声を上げる。 「おい、こんな状態なんだぞ!お前まで屁をこく事ないだろ!」 「その台詞、そっくりそのままお返しするわ」 「ちゃんと謝っただろうが!」 「謝って済む問題じゃないでしょ!」 「言ったな!ふんっ!」 ブブブブブブブブブブブブブウウウ~~~ッッッ!!! 売り言葉に買い言葉で、ロザリンドがクロノの顔めがけてオナラを放つ。 「むぐうううううううっ!?」 その強烈な腐卵臭による衝撃は、ロザリンドのハンマーで殴られるのに匹敵するかもしれない。 オナラは可燃性の成分が含まれている。 だからという訳ではないだろうが、このオナラがクロノの怒りをさらに燃え上がらせた。 「自分のオナラがどれだけ周りに迷惑を掛けているか、考えた事はないの!ふんっ!」 ぶうううぅぅううぅぅぅうううぅぅ~~~っっっ!!! 怒りに任せ、2発目のオナラを放って応戦する。 「むぐううううううっ!?」 悶絶するロザリンド。 唐突だが、「右の頬を叩かれたら、左の頬を差し出せ」という言葉がある。 しかし、ロザリンドはそんなタイプではない。 「ふんぬっ!」 右の頬を叩かれたら、叩いた相手の顔面に膝蹴りを叩き込むタイプである。 ブオオオオオオオオオオオオオオォォ~~~ッッッ!!! クロノへの怒りを露わにし、渾身の力を込めて特大のオナラを放つロザリンド。 「やったわね!」 「そっちこそ!」 どんどんヒートアップしていくクロノとロザインド。 最初は交互にしていたオナラも、 ぶううううううううううううううう~~~っっっ!!! ボッフウウウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! やがて先を争うように、オナラを浴びせ合うようになっていく。 魔法を学んでいるといっても、2人も肉体的には普通の人間である。 いくら出やすい条件が揃っているとはいえ、無限にオナラが出る訳ではない。 ぶぼおっ!!ブブゥッ!!ぶびぃっ!!ブバスッ!! 腸内のガスが尽きてきたのか、いつの間にか短いオナラを連続で浴びせ合うようになっていた。 「いい加減、負けを認めなさい!」 「それはこっちの台詞だよ!」 それでも2人の怒りはまだ納まらない。 ブウウッ!!ぶおぉっ!!ブボォッ!!ぶぶぅっ!! 室内の空気をオナラ色に汚染しながら、2人のオナラ合戦はいつ果てるともなく続いた。 * 壮絶なオナラ合戦を繰り広げる2人に気付かれないように、ジュリエットはそっと部屋を出る。 2人のオナラが混ざり合った壮絶な悪臭(におい)に、嗅覚が耐えられなくなったのだ。 「思った以上に凄い泥仕合になったわね」 自分から提案したとはいえ、あれを消臭するにはポーションが何本必要だろうか。 取り敢えず、扉の前に簡単な風の結界を張っておく。 これでオナラの音や悪臭(におい)が外へ漏れる事はないはずだ。 「今夜は部屋を使えそうにないし、別の寝床を確保しておいた方がよさそうね」 そう呟いて、ジュリエットはポケットから簡易通信機を取り出した。 終