SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
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魔法学校の日常5

 大陸東部に位置するゼガゼス魔法女学園は全寮制である。 夜の帳が下り始めた頃、寮の1階にある大浴場は徐々に生徒たちで賑わい始める。 「私が1番乗りみたいですね」 最初にやってきたのは、3年生のタラッサだった。 女性としては背が高く、身長は170cm近い。 短めに切られた銀色の髪は毛先だけが黒く、彼女の白い肌を引き立てるアクセントとなっている。 顔立ちはやや中性的だが、首から下は女性らしい非常に起伏の富んだラインを描いている。 「・・・」 掛け湯をして湯船に入ろうとしたところで、ふとタラッサの中に好奇心が芽生えた。 「少しぐらいならいいでしょう」 そう言いながら、両脚を揃えて湯船に沈める。 直後、彼女の両脚は溶け合うように融合し、あっという間にイルカのような尾びれへと姿を変えた。 「・・・」 両脚の変化が終わると、タラッサはそのまま器用に湯船を泳ぎ始める。 その姿を見れば、誰でも彼女を人魚だと思うだろう。 しかし、彼女は人魚ではない。 生き物に変化する魔法を応用して、人魚に化けているだけである。 「ふぅ・・・」 ひとしきり泳ぐと、タラッサは両脚を元に戻してゆっくりと寛ぎ始めた。 その数分後。 ぐるるるるるる~っ。 ふいに彼女のお腹が低く鳴った。 この学園の生徒たちは皆、「オナラが出やすい」という悩みを抱えている。 それはこの学園の3年生である彼女とて、例外ではない。 「んっ!」 彼女が小さく息み声を漏らした直後、 ゴボボボボッ! その尻からピンポン球ほどの泡が無数に生み出される。 それらは次々に水面へと到達し、強烈な硫黄臭を撒き散らしながら消えていく。 「くっ・・・!」 自分の生み出した臭気に、思わず顔を顰めるタラッサ。 (今日のはいつも以上に酷いですね) 臭気が霧散するまで誰も来ない事を祈りつつ、タラッサは心の中で呟く。 しかし、 「よっ、タラッサ!」 「先客はタラッサだったのね」 臭気が霧散するより早く、新たな入浴者が2人やってきた。 クラスメイトのロザリンドとジュリエットだ。 「ん?この悪臭(におい)・・・タラッサ、もしかして屁こいた?」 ロザリンドがスンスンと鼻を鳴らしながら問い掛けてくる。 「その通りではありますが、もう少し訊き方を考えてください」 タラッサが頬を朱に染めて抗議する。 「そうよ。せめてオナラって言った方がいいわよ」 「どう言ったって、屁は屁だろ」 そんな会話をしながら、2人も掛け湯をして湯船に入ってくる。 「ふぅ、やっぱり1日の締め括りは風呂だよな~。シャワーだと、どうも疲れが取れたって気がしないんだよ」 ロザリンドが身体を大の字に広げながら言う。 「その意見には同意するけど、少しは慎みを持った方がいいわよ」 「別にいいだろ。女同士なんだから・・・んっ!」 そう言った直後、 ゴボボボボボォッッ!! ロザリンドの尻からも大量の泡が生み出される。 タラッサ以上の量と数のそれらは水面で次々と弾けていき、周囲に強烈な腐卵臭を充満させる。 「むぐっ!?い、いい加減にしてください、ロザリンド!」 「何だよ、タラッサ。お前も屁こいたのに、アタシはダメだって言うのか?」 「そ、それは・・・」 「他にも人がいるんだから、少しは配慮しなさいよ。それが原因でクロノと揉めたの、もう忘れたの?」 言葉に詰まるタラッサに代わり、ジュリエットが窘めるように言う。 「あれは向こうが勝手に突っかかってきたんだよ!」 「いえ、原因は完全にあなたです」 タラッサの指摘が入ったところで、 「おっ、何か賑やかだな」 新たな入浴者が入ってきた。 最近、この学園に転校してきた1年生、ボルビだ。 頭部に生えた1対の角が示す通り、彼女は人間ではない。 人間に化身できる高い知能と強い魔力を持ったドラゴンだ。 「アタシも混ぜてくれよ」 そう言いながら、ボルビも湯船に入ろうとする。 「待ってください、ボルビ」 「ん?どうした?」 「そうではなく、ちゃんと入る前に掛け湯をしてください」 「ああ、そうだったな」 タラッサの言葉に頷き、ちゃんと掛け湯をしてから湯船に入るボルビ。 「それで、何の話をしてたんだ?」 湯船に入ると、ボルビの身体に変化が起こった。 両手足が鱗に覆われ、尻の部分から長い尾が生えてくる。 どうやらリラックスするために、化身のレベルを下げたらしい。 「屁だよ、屁。アタシが屁をこいたら、こいつらが文句を言ってきたんだ」 「そうなのか?別にオナラの1発や2発で文句言う事ないだろ。女同士なんだし」 ボルビがロザリンドと同じ意見を口にする。 前述のように1年生であるボルビだが、ドラゴンである彼女の年齢はタラッサたちの10倍近い。 そのためか、上級生に対しても全く遠慮がない。 「そういう問題じゃ・・・・ゴメン、ちょっと失礼するわね。んっ」 そう断りを入れると、 ゴボボボボボッッ!! ジュリエットもオナラを放った。 それによって生じた泡も水面で強烈な腐卵臭とともに爆ぜて消えていく。 「ジュリエットだって屁こいてんじゃねぇか」 「だから、オナラするなと言ってるんじゃなくて、一言ぐらい断りを入れろって言ってるの」 「でも、誰かが屁をこいても無視するのがこの学園の方針だろ?」 「だから、私が言いたいのは・・・はぁ、もういいわ。身体を洗いに行きましょう」 理解させるのを諦めたのか、ジュリエットが溜め息を吐いて湯船を出ていく。 「ちょっ、アタシを置いてくなよ!」 ロザリンドも彼女を追って、湯船を出ていく。 「あの2人もいなくなったし、ちょっと羽を伸ばしていいか?」 「どうぞ」 タラッサが頷くと、 「ありがと」 ボルビの背中に巨大な翼が出現した。 *  ロザリンドとジュリエットが湯船を出てから程なくして、新たに10人ほどの生徒が大浴場にやってきた。 その中に、ボルビの知った顔があった。 「あっ、ボルビさん」 「タラッサ先輩も来てたんですね」 同じ1年生、ポーシャとチタニアだ。 「ああ、お前らも来たのか。悪い、場所取っちまってるな」 ボルビが背中の翼を引っ込めると、2人も掛け湯をして湯船に入ってくる。 「ん?ベリンダは一緒じゃないのか?」 「ベリンダなら、あそこにいますよ」 チタニアが指差す方に視線を向けると、見覚えのある小柄な少女の姿があった。 自分たちの入っている大きな湯船とは別の、少人数用の小さな湯船に入っている。 「あれ、寒くないのか?」 ボルビの疑問は尤もだ。 ベリンダの入っている湯船には、彼女の頭ほどある氷が浮かんでいるのだ。 「ベリンダは熱いお湯が苦手なんです」 「それでも限度があるだろ。そもそも水風呂だろ、あそこ」 水風呂といっても冷水ではなかったはずだが、今はもう完全に冷水になっているだろう。 「ベリンダの場合、水風呂が適温らしいです」 「そうなのか」 どうやら問題はないらしい。 「そういえば、もう学園には慣れましたか?」 視線を戻すと、目が合ったタラッサが問い掛けてきた。 「まあな。思ったよりいい場所だぜ。飯は美味いし、授業も面白いしな」 「それはよかったです」 「ところで、前から不思議に思ってたんだが・・・何だ、あれ?」 ボルビが尻尾の先で指したのは、大浴場の中央にある女神像だった。 タイミングを見計らったように、女神像の手にした大きな壺からキラキラとした黄色い粒子が溢れ出してくる。 「ほら、風呂に入ってる奴が増えると、あそこから黄色いのが出てくるだろ?そうすると、すぐにあそこに生徒たちが集まってくる」 ボルビの言葉通り、女神像の周りには1年生らしき数人の生徒が集まっている。 しかし、彼女たちはすぐに女神像から離れてしまい、また別の生徒たちが女神像に集まってくる。 「あれはその・・・消臭魔法、です」 「消臭魔法?ああ、そういう事か」 ポーシャの説明で、大体の事情を理解する。 要するに、あの黄色い粒子は1種の消臭剤で、女神像に集まっている生徒たちはあそこでガス抜きをしているのだ。 「やっぱりオナ・・・アレを嗅がれるのを恥ずかしがる人も多いですから」 主食が繊維質の多い芋である事。 魔力生成のために、常人より多くの食事を必要とする事。 この学園の生徒である以上、オナラの量が多くなるのは仕方のない事である。 それでも、うら若き乙女である生徒たちにとって、人前での放屁はやはり抵抗を感じるものなのだ。 「此処には女しかいないんだし、オナラなんて好きに出せばいいと思うけどなぁ」 「ボルビさんは自重してください」 「同感です」 チタニアの言葉に、ポーシャが深々と頷く。 以前、ボルビのオナラでかなり酷(くさ)い目に遭っただけに、かなり実感の篭もった言葉である。 「あの時の事はちゃんと謝っただろ・・・っ」 ぐるるるるるるる~っ! ずっとオナラをしていたせいだろうか、ボルビのお腹が低く鳴った。 それに呼応するように、 ぎゅるるるるるる~っ! ごろごろごろごろ~っ! ぐるるるるるるる~っ! ポーシャたち3人のお腹からも重低音が聞こえてくる。 「まさか4人同時に腹が鳴るとはな」 そう言いながら、ボルビが湯船から立ち上がる。 先程話していた女神像の所へ行くのだろう。 「「「っ!?」」」 そう考えた3人のお尻に衝撃が走った。 ボルビが湯船の中で長く伸ばした尻尾を使って、彼女たちの尻を叩いたのだ。 ゴボボボボボボッッ!! ゴボボボボボォッッ!! ゴボゴボゴボォッッ!! 間を置かず、3人の尻から無数の泡が生み出されてくる。 それらが濃密な臭気を伴って水面で次々と弾ける様子は、まるで湯船が沸騰しているかのようだった。 「くんくん・・・何だよ、このぐらいの悪臭(におい)なら、大騒ぎするほどでもないだろ」 湯船の湯がすべて腐った卵にでも変わったかのように感じるほどの悪臭(におい)だが、ボルビは涼しい表情を浮かべている。 そんな彼女に、 「ボルビさん!」 「いきなり何するんですか!」 「そういう問題ではありません!」 3人は鼻を摘みながら一斉に抗議する。 「そんなに怒るなよ。アタシも1発オナラすれば、おあいこだろ?」 「「「!?」」」 驚愕、いや、戦慄する3人が待ったを掛けるより早く、 「んっ!」 ボルビが息んでしまう。 その結果、 ゴボゴボゴボゴボゴボゴボッッッ!!! 湯船が煮え滾ったかの如く、激しく泡立つ。 腐った卵どころではない。 腐海のような凶悪な激臭(におい)。 「むぐっ!?」 「ごはっ!?」 「ぐふっ!?」 その臭気を至近距離で浴びた3人が呻き声と共に意識を失う。 当然ながら、その大量の臭気は周囲にも拡散する。 『・・・』 その場にいる大勢の生徒たちの批難の視線を浴びて、 「えっと・・・すみませんでした!」 ボルビは深々と頭を下げた。 *  ボルビが周囲から顰蹙を買っていた頃。 女神像を挟んだ反対側のジャグジー風呂では激しくも静かな駆け引きが行われていた。 「・・・」 「・・・」 やや幅を空けて浸かっている2年生のミランダと3年生のクロノだ。 ジャグジー風呂というのは、浴槽内の装置によって湯船が泡立っている。 本来はマッサージ効果のためだが、2人がこの風呂を選んだのはそれが目的ではない。 ごろごろごろごろ~っ。 ぎゅるるるるるる~っ。 そう、2人が此処へ入った理由は同じ。 彼女たちは猛烈にオナラがしたくなり、それをジャグジーの泡で誤魔化したかったのだ。 (いつまで入ってるのかしら、この娘?) (早く出てくれないかしら、この先輩) 互いに横目で相手の様子を窺いながら、心の中で呟く。 徐々に張り詰めていく空気。 「おっ、ジャグジー空いてるのか」 それを破ったのは、新たな入浴希望者だった。 「モーナ・・・」 その入浴希望者に、クロノは見覚えがあった。 クラスこそ違うが、自分と同じ3年生のモーナだ。 「モ、モーナ先輩もジャグジーに?」 ミランダも彼女とは何度か顔を合わせた事がある。 というか、己の拳を武器にする魔法使いなど、1度会ったら忘れないだろう。 「まあな。やっぱり派手に暴れると、肩が凝るんだよ」 そう言いながら、モーナが腕をぶんぶんと回してみせる。 その動きに伴い、小振りのスイカほどもある胸が大きく揺れる。 「・・・」 肩が凝るのは、その巨大な胸のせいではないだろうか。 そう思ったミランダだったが、黙っていた。 「オレも入っていいか?」 「「ど、どうぞ」」 まさかオナラがしたいからダメだとも言えない。 2人が頷くと、モーナもジャグジー風呂に入ってくる。 ちょうど2人の間に割って入る格好だ。 「そういえば、昼間の模擬戦は盛り上がったよな」 「驚いてただけよ。何処の世界に、刀に噛み付く魔法使いがいるのよ」 楽しげなモーナに対し、クロノは何処か呆れたように応じるクロノ。 「・・・何があったんですか?」 気になったのか、ミランダも会話に参加してきた。 「今日、クラス合同で模擬戦をやったのだけど、モーナが私の刀を歯で受け止めたのよ」 「丈夫な歯をお持ちですね」 「歯に魔力は纏わせてただけ・・・んっ」 ふいにモーナが言葉を詰まらせた。 ぐるるるるるる~っ! 間を置かず、彼女のお腹が低く鳴る。 「悪い。ちょっとしたくなったから出るわ」 モーナが湯船から出ようとした瞬間、 ガシッ! その両手が同時に掴まれた。 「ん?」 首を左に回してみる。 「別に出なくてもいいですよ。私は気にしませんから」 ミランダが左手を掴んでいた。 「・・・」 今度は右を向いてみる。 「そうよ、モーナ。私も気にしないわ」 クロノが右手を掴んでいた。 「気にしないって、ちょうど女神像の前は空いてるし」 「「いいから、此処でしなさい(してください)!」」 「わ、わかったよ」 2人の迫力に気圧され、モーナは再び湯船に身体を沈める。 「臭くても文句言うなよ・・・んっ!」 ((今だっ!)) モーナが息んだタイミングで、2人もお尻に込めていた力を抜いた。 ゴボゴボゴボゴボォ~~ッッ!! モーナの尻から溢れ出した大量の気泡により、元から泡立っていた水面がさらに泡立つ。 その陰で、 コポコポコポコポ・・・ッ! コポコポコポコポ・・・ッ! クロノとミランダの尻からも無数の小さな泡が溢れ出す。 そう、2人がモーナを引き止めたのは、彼女のオナラで自分のオナラを誤魔化すためだったのだ。 「むぐぅっ!?ちょっ、これは想像以上に酷い悪臭(におい)だな。2人とも大丈夫か?」 硫黄と腐肉を混ぜたような悪臭に悶絶しながら、モーナが両側の2人に問い掛ける。 「え、ええ、大丈夫よ。それより、もう出ないのかしら?」 「もっと出してもらっても大丈夫ですよ!」 「いや、さすがにこれは臭すぎるだろ」 彼女自身は知らないが、都合3人分のオナラが混ざり合っているのだ。 その悪臭(におい)が彼女の予想を上回るのも当然である。 「やっぱり女神像(あっち)でしてくるよ。臭い思いさせて、悪かったな」 申し訳なさそうに言って、モーナが湯船を出ていく。 「「あっ・・・」」 小さく声を上げる2人だが、この状況で引き止めるのも不自然だ。 残念ながら、諦めるしかない。 「「・・・」」 どうしたものか。 思案を巡らす2人の元に、 「あれ?モーナ先輩、こちらに来ませんでしたか?」 救世主(?)が現れた。 1年生のコーデリアだ。 以前、モーナと一緒に魔物退治に行って以降、仲良くなったらしい。 「モーナなら、あっちにいるわよ」 クロノが女神像の方を指差す。 「そうですか」 1年生でも「女神像」という単語だけで通じる。 この学園の生徒がいかにオナラに悩んでいるかが窺えるだろう。 ぎゅるるるるるるる~っ! 「じゃあ、私もあっちに行ってきますね」 低く鳴った自分のお腹を擦りながら、女神像の方へ歩き出そうとするコーデリア。 「「待って」」 それをクロノとミランダが同時に呼び止める。 「な、何ですか?」 先輩2人に呼び止められ、コーデリアは戸惑いながらも足を止めた。 「あっちは混んでるし、この中でしたら?」 「そうね。それがいいわ」 「えっ!?」 先輩2人の言葉に、コーデリアが驚きの声を上げる。 「ほら、人数が多いと、消臭魔法も効きにくくなるでしょ?」 「そこまで多いようには見えませんが・・・」 「何か、言ったかしら?」 「い、いえ、何も。では、失礼します・・・」 有無を言わさぬクロノの迫力に気圧され、コーデリアはおずおずと湯船に身体を沈める。 「ひゃあっ!?」 だが、位置が悪かった。 ちょうど気泡の噴射が彼女のアナルを直撃したのだ。 結果、 ゴボゴボゴボゴボゴボゴボォ~~ッッッ!!! コーデリアの尻から大量の臭気の泡が溢れ出す。 そのタイミングを逃さず、 コポコポコポコポ・・・ッ! コポコポコポコポ・・・ッ! ミランダとクロノもこっそりと放屁する。 だが、彼女たちは1つ大きなミスをしていた。 「「っっっっっ!?」」 コーデリアのオナラがモーナを凌ぐほどの量と悪臭(におい)だった事だ。 濃密かつ強烈な腐卵臭に、自分たちの放った臭気が混ざり合い、鼻腔で最悪の不協和音を奏でる。 「す、すみません!」 コーデリアが申し訳なさそうに深々と頭を下げる。 「ごほっ、ごほっ・・・だ、大丈夫よ」 「こ、このぐらい大した事ないわ」 「やっぱり私、女神像の方でガス抜きしてきます!」 そう言い残し、コーデリアが勢いよく湯船を飛び出していく。 「「・・・」」 それから1分ほど黙っていた2人だが、 「ねぇ、ミランダ」 クロノが意を決したように口を開く。 「な、何ですか?」 「あなたも、その、したいのよね?」 「・・・はい」 もはや隠す意味はないと判断したのか、ミランダがゆっくりと頷く。 「一緒にしましょうか」 「はい」 「じゃあ、せーのっ」 「「んっ!」」 2人の息み声がユニゾンした直後、 ゴボゴボゴボゴボゴボォ~~ッッ!! ゴボゴボゴボゴボゴボォ~~ッッ!! 2人の尻から大量の泡が溢れ出し、周囲をさらに強烈な悪臭(におい)に染め上げた。 *  ミランダとクロノの争いが終結した頃。 大浴場の隅にあるサウナでも小さな争いが起こっていた。 「ふぅ・・・」 「はぁ・・・」 オフェリアとクレシダの2年生コンビだ。 サウナには2人しか入っておらず、彼女たちは並んで座っている。 「そろそろ、降参したらどうですか・・・?」 「そ、それはこっちの、台詞だ・・・」 睨み合う2人だが、全身は汗だくで、声にも力はない。 既に限界を超え、意地だけで踏ん張っている状態なのだ。 (クレシダだけには、負けられない・・・) (オフェリアにだけは、負けられない・・・) 激しく火花を散らす2人だが、それも長くは続かなかった。 「「もう限界(だ)!」」 2人は全く同時に立ち上がり、競うようにしてサウナを飛び出し、隣接する水風呂に飛び込む。 「ふぅ・・・」 「生き返るわ・・・」 火照った身体が冷えていくのを感じ、2人は大きく息を吐く。 「・・・」 そんな2人に批難の視線を向けている者がいた。 先に水風呂に入っていたベリンダである。 2人が勢いよく飛び込んできたために、思いっ切り水飛沫を被ったのだ。 「あっ、ごめん。水掛けちゃったな」 「すみません。気が付かなくて」 ベリンダの視線に気付き、2人が頭を下げる。 「・・・」 ベリンダが首を小さく左右に振る。 どうやら許してもらえたらしい。 「本当にごめんな。こいつが意地になったせいで・・・」 「意地になってたのは、あなたでしょ」 「何だと!」 「何ですか!」 水風呂に入った事で回復したのか、2人がまた言い合いを始める。 そんな2人を見て、 「・・・」 ベリンダは両手に氷製の銃を召喚し、それぞれの顔に突き付ける。 「ちょっ、そんなに怒る事ないだろ」 「こ、こんな所で武器を出さないでください」 抗議しつつも、ベリンダの静かな怒りに気付いた2人は大人しく両手を挙げる。 「今回は引き分けという事にしましょう」 「そうだな」 喧嘩を続けるのは危険と判断し、2人は大人しく湯船に浸かる事にした。 その様子を見届けて、ベリンダは両手の氷銃を消滅させる。 数分後。 「うぅっ、さすがにちょっと冷えてきたな」 「そうね」 サウナの後とはいえ、さすがにずっと水風呂に浸かっていれば、身体が冷えてくる。 そろそろ此処を出て、温まり直そう。 そう考えたところで、 ごろごろごろごろ~っ。 ぎゅるるるるるる~っ。 冷えてきたせいか、2人のお腹が同時に鳴った。 「「うっ・・・」」 小さく呻いてお腹を押さえる2人。 此処を出て女神像の方へ行きたいが、下手に動くと出てしまいそうだ。 「「・・・」」 無言でベリンダを一瞥する。 この状況で放屁したら、また怒るのではないか。 (何で後輩にこんなに気を遣ってるんだ、アタシ?) (一応、先輩ですよね、私?) そもそも他人の放屁は黙殺するのが学園の鉄則だ。 堂々と出してしまおう。 2人が結論を出す直前、 ゴボボボボボボボォ~ッッ! 水面に無数の泡が生じた。 間を置かず、濃密な腐卵臭が周囲に漂う。 ((これって・・・)) 2人が視線を向けると、 「・・・」 ベリンダが申し訳なさそうな表情で、ぶくぶくと水の中へ沈んでいく。 「ぷっ」 先に吹き出したのは、どっちだったか。 いずれにしろ、次の瞬間には2人は爆笑していた。 「気にするなよ、ベリンダ。ちょうどアタシもしたかったんだ」 「実は私もです」 「!」 2人の言葉を聞き、ベリンダがゆっくりと浮上してくる。 「お前もまだ出るだろ?」 「この際、3人で此処を泡風呂にしちゃいましょう」 「・・・」 悪戯っぽく言う先輩2人の言葉に、ベリンダは無言で頷く。 次の瞬間、 ゴボボボボボボボォ~ッッ! ゴボボボボボボボォ~ッッ! ゴボボボボボボボォ~ッッ! 3人の尻から大量の泡が溢れ出し、水面を激しく泡立たせる。 「むぐっ!?」 「ぐふっ!?」 「っっっ!?」 鼻腔に強烈な腐卵臭が流れ込むが、 ゴボボボボボボボォ~ッッ! ゴボボボボボボボォ~ッッ! ゴボボボボボボボォ~ッッ! 3人が放屁をやめる事はない。 ぷうううぅぅぅ~っ。 耳を澄ませば、至る所から聞こえてくる放屁音。 ブボボオオオオオォ~~ッッ!! 鼻で息を吸い込めば、様々な悪臭(におい)がブレンドされた臭気。 バフゥッ!!ブバスッ!プオッ! そんな臭気の音楽会と共に、大浴場の夜は更けていく。 終


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