魔法学校の日常7
Added 2019-02-04 12:22:40 +0000 UTC大陸東部に位置するゼガゼス魔法女学園。 当然ながら、そこには生徒だけでなく、彼女たちを指導する教師も在籍している。 彼女――ヒマリアもその1人だ。 背は160cmを少し超えるぐらい。 淡い茶色の髪をひとつ結びにし、教師の証である白い制服を纏っている。 黒に近い濃い灰色の瞳が印象的な顔立ちは歳相応に大人びているが、何処か少女のような愛らしさも感じさせる。 一方、生徒たちより成熟した身体は美しいラインを描いており、胸や尻など出るべき所は平均以上に出ていた。 そんな彼女は今、10人ほどの生徒と対峙している。 間合いは約10m。 生徒たちはそれぞれに武器を手にしており、見事に臨戦態勢を整えていた。 「誰からでもいいぞ。早くかかってこい」 「行きますっ!」 ヒマリアの言葉に最初に応じたのは、クロノだった。 瞬時にヒマリアとの間合いを詰めるが、愛刀は腰に差した鞘に納めたままだ。 だが、それは彼女が最速の一撃を放つための準備なのである。 「覇ァッ!」 気合いと共に、抜刀。 一切の妥協なく、放たれた必殺の一撃。 その神速の斬撃がヒマリアを捉える事はなかった。 「なっ!?」 クロノの顔が驚愕に歪む。 ヒマリアがやった事は身体をわずかに後退させただけだ。 たったそれだけで、刀の切っ先は彼女の首筋ギリギリを通過してしまった。 「次!」 そう叫びながら、ヒマリアがクロノの横をすり抜けていく。 「応っ!」 続いて仕掛けたのは、鎚を手にしたロザリンドだった。 重さを感じさせぬ速度で放たれた最重量の一撃。 それを難なく躱すヒマリアだったが、回避した先にジュリエットが待ち構えていた。 ロザリンドの攻撃はこのための布石だったのだ。 彼女が横薙ぎに振るうハルバードが神速で迫る。 しかし、 「なっ!?」 声を上げたのは、ジュリエットの方だった。 ヒマリアは掌に小さな魔力障壁を生み出してハルバードを受け止めると、反対にハルバードを掴んでジュリエットの身体を軽々と持ち上げたのだ。 さらに、持ち上げたハルバードをジュリエットごと投げ付け、隙を突こうとした別の生徒まで牽制してみせる。 そんな風に、ヒマリアは生徒たちの攻撃を次々と捌いていく。 そして、最後の生徒の攻撃を捌いたところで、 「っ!?」 ヒマリアが初めて表情を変え、大きく横に飛んだ。 次の瞬間、巨大な鞭が数秒前までヒマリアのいた地面に巨大なクレーターを生み出す。 「チッ、躱されたか!」 頭上から悔しそうな声が降ってくる。 「何してるんだ、ボルビ!」 ヒマリアが怒鳴る。 そう、巨大な鞭の正体は1年のドラゴン娘、ボルビの尻尾だったのだ。 「悪い、面白そうな事してたから、つい・・・」 ポリポリと頭を掻きながら、ボルビが尻尾を引っ込めてゆっくりと降りてくる。 「自分のクラスの授業はどうしたんだ?」 ヒマリアが問い掛けたところで、 「ボルビさん!」 校舎の方から声が聞こえてきた。 視線を向けると、こちらへ走ってくる小柄な少女が見えた。 身長は140cmを少し超えるぐらいで、殆ど起伏はない。 顔立ちは幼さを強く残し、外側に跳ねた茶色の髪が犬の垂れ耳を連想させる。 彼女の名前は、エララ。 制服に身を包んでいるが、学園の生徒ではない。 彼女が着ているのは、ヒマリアと同じ白い制服。 そう、彼女はれっきとした学園の教師であり、ボルビの担任なのである。 「授業を放り出して、こんな所で何してるんですか!」 「悪かったよ、エララちゃん」 「む~っ、頭を撫でないでください!」 自分の頭を撫でるボルビに、頬を膨らませて抗議するエララ。 この光景だけを見れば、彼女が教師だと思う者はいないだろう。 「私は教師で、ボルビさんは生徒!私の方が年上なんですよ!」 「いや、ボルビの方が年上だろ」 ヒマリアが呆れたように突っ込みをいれる。 ボルビは人間に化身しているが、人間の何倍もの寿命を持つドラゴンである。 年齢でいえば、彼女の方が100歳ぐらい年上だ。 「とにかく!教室に戻りますよ、ボルビさん!」 「はいはい」 「それでは、ヒマリア先生。お邪魔しました」 ペコリと頭を下げて、エララがボルビと共に去っていく。 その背中を見送って、 「・・・続きやるか」 ヒマリアは授業を再開した。 * 放課後の職員室。 「ん~っ!今日も疲れたな~」 報告書の提出を終えたヒマリアが大きく伸びをする。 後は教員寮に帰って休むだけだ。 「お疲れ様、ヒマリアちゃん」 終業モードになったエララが話し掛けてくる。 この2人は同い年で、共にこの学園の卒業生という間柄である。 「昼間はゴメンね」 「ああ、ボルビの件か?別に気にしてないよ」 そう応じて、ヒマリアが椅子から立ち上がる。 「今さらだけど、この学園にドラゴンが編入してくるとは思わなかったよな」 「そうですね。獣人(ビースト)やエルフの生徒さんは前からいましたけど」 エララの言う通り、この学園の生徒は人間だけではない。 学園創始者であるゲサギ博士の「学ぶ意思のある者を拒むな」という言葉に則り、様々な種族の生徒が在籍しているのだ。 「ゲサギ博士も草場の陰で喜んでおられる事でしょう」 「勝手に殺すな。あの人、90歳超えてるけど、まだまだピンピンしてるぞ」 会話に参加してきた3人目に、ヒマリアは即座に突っ込みを入れる。 3人目の名前は、リシテア。 ヒマリアと同じクラスを担当する座学の教師である。 身長はヒマリアより少し低いぐらい。 優しげな印象を受ける顔立ちで、おっとりした雰囲気を纏っている。 胸と尻はこの場にいる3人の中で1番大きく、それがさらに母性的な印象をより強めている。 「本当にお元気ですよね、ゲサギ博士」 「あれなら、後20年は大丈夫だろうな。さてと――」 ヒマリアが立ち上がったところで、 「失礼しま~す」 ボルビが大きな木箱を抱えて入ってきた。 「ボルビさん。何か御用ですか?」 「いや、エララちゃんにじゃなくて・・・」 「私か?」 自分に向けられた視線に気付き、ヒマリアが前に出る。 「昼間、授業を邪魔しちゃっただろ?そのお詫びに、これ持ってきたんだ」 そう言うと、ボルビが抱えていた木箱を差し出した。 「何だ、これ?」 「アタシが作ったリンゴの果汁酒だよ」 「お酒ですか!?」 ボルビの言葉に、エララが目を輝かせる。 見た目こそ幼い彼女だが、実際には3人の中で1番の酒豪である。 「あんまり生徒から物を貰うのはよくないんだけどな」 「そうなのか?」 「とはいえ、せっかくの厚意だ。有り難くいただいておくよ」 そう言って、ボルビから木箱を受け取るヒマリア。 木箱いっぱいの果汁酒はそれなりの重さだが、ヒマリアは軽々と抱えている。 伊達に教師をやっている訳ではないのだ。 「喜んでもらえてよかった。じゃあ、私はこれで」 「ああ、ありがとう」 「どういたしまして」 ヒマリアの感謝の言葉に応じて、ボルビは職員室を後にした。 * ヒマリアは自室に戻ると、抱えていた木箱を部屋の隅に置いた。 「さて、あいつらが来るのは夕飯後だけど・・・少し片付けておくか」 足の踏み場がないとまでは行かないが、片付いているとはいえない。 机には書類が散乱しているし、ベッドの上には脱いだ服、床には洗濯後の服が無造作に置かれている。 リシテアはともかく、エララに見られたら何を言われるかわからない。 ぐるるるる~っ! 「くっ、片付けの前に、すっきりしておくか」 そう言うと、ヒマリアは身体をくの字に曲げ、尻を後ろへ突き出した。 直後、 ブブブブブブウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 轟音と共に、部屋の空気が激しく震えた。 間を置かず、大量の卵と肉をまとめて腐らせたような悪臭(におい)が周囲に立ち込める。 教師であるヒマリアは生徒たちより大規模な魔法を使用する事ができる。 しかし、その分だけ食事量も増えるため、生徒たち以上にオナラの量と悪臭(におい)が凄まじい事になっているのだ。 その証拠に、たった1発で室内は凶悪な臭気で汚染されてしまっている。 「まだ出るな・・・んっ!」 ブボボボボボボボボオオオオオ~~~ッッッ!!! 室内に充満する悪臭(におい)を気にした風もなく、2発目のオナラを放つヒマリア。 「もう1発・・・んっ!」 ブウウウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 3発目のオナラで臭気がさらに凶悪さを増すが、ヒマリアは涼しい表情だ。 それどころか、 「くんくん・・・今日はいつもより悪臭(におい)がきついか?」 自分から臭気を吸い込み、悪臭(におい)の評価までしている。 とはいえ、このまま客人を迎えるのは失礼なので、消臭しておかなくてはならない。 「えっと、ポーションは・・・」 ポーションというのは1種の消臭剤で、透明な黄色い液体に満たされた8cmほどの小瓶である。 それをシャカシャカ振ってから周囲に振り撒くと、室内に充満していた臭気が急速に薄まっていく。 「やっぱり1本じゃ足りないか」 かなり薄まりはしたが、まだ完全には臭気が消えていない。 しかも、 ぎゅるるるるるる~っ! 間の悪い事に、再びお腹にガスが溜まってきた。 「仕方ない。勿体ないが、これも使うか」 そう言って、ヒマリアが手に取ったのはポーションと同じ形の小瓶だった。 しかし、中の液体はポーションより金色に近い色をしている。 「まずはこの腹に溜まったガスを・・・ふんっ!」 ブボオオオオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 爆発。 そう形容するしかないような特大レベルのオナラが部屋全体を震わせる。 凄まじいのは音だけではない。 音に見合うだけの猛烈な臭気は、あっという間に室内の空気を汚染してしまう。 「ふぅ、今度こそ大丈夫だな。いや、もう少し出るか・・・んっ!」 ブバスッ!! 「よしっ、これでもう出ないな」 腸内が空になったのを確認し、金色の小瓶をシャカシャカと振り始めるヒマリア。 これはハイポーションと呼ばれるもので、通常のポーションより強力な消臭剤だ。 その証拠に、こちらを振り撒くと、部屋に渦巻いていた猛烈な臭気が嘘のように消えてしまう。 「残り2本、か」 ハイポーションの残量を確認し、小さく溜め息を吐く。 ハイポーションは効果が強い分、作るのに手間が掛かる。 それでも自分のオナラの消臭に、ハイポーションは不可欠だ。 「・・・作るか」 もう1度、小さく溜め息を吐いて、ヒマリアはハイポーション作りに取り掛かった。 * 食堂で夕食を済ませ、部屋に戻って暫くすると、エララとリシテアがやってきた。 2人が酒の肴を持参したため、即座に酒盛りへと移行する。 「ぷはぁ~っ!この1杯のために生きてるんですねぇ」 エララがグラスに入った果汁酒を一気に飲み干しながら言う。 「せめて乾杯ぐらい・・・まあいいか」 指摘するのも面倒なのか、ヒマリアもグラスを傾け始める。 「今さらですけど、このお酒、私たちが飲んでも大丈夫なんでしょうか?」 「大丈夫だろ。ボルビだって、人間が飲んでいいものかぐらいは確認してるって」 「いえ、そういう意味ではなく・・・」 「ああ、そういう事か」 リシテアが片手でお腹を撫でているのを見て、彼女の言わんとする事を理解する。 「それこそ本当に今さらだろ。もうエララが1本空けそうだし」 「2本目、開けますね」 ヒマリアが言うのを見計らったように、エララが2本目の瓶を開封する。 「あいつ1人で8割は飲んで・・・っ!」 ごろごろごろごろ~っ! ヒカリアの言葉を遮るように、彼女のお腹が低く鳴る。 ボルビがくれた果汁酒は、彼女の主食の1つであるドラゴニアン・アップルで作られている。 このドラゴニアン・アップルには「食べるとオナラが出やすくなる」という性質がある。 元からオナラの量と悪臭(におい)が凄いヒマリアがそれを飲むと、どうなるか。 「悪い、ちょっとでかいのが出る・・・んっ!」 ブウオオオオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 結果は「ちょっと」どころではない大音量かつ激臭のオナラである。 「むぐっ!さすがヒマリア、凄いオナラですね」 元の腐卵臭に、つまみで食べた生ハムとチーズの悪臭(におい)が加わり、さらに凶悪さを増した激臭(におい)。 常人なら悶絶必至だが、リシテアは少し顔を顰めただけである。 「お前に言われたくないな」 「あっ」 ぐるるるるるる~っ! 今度はリシテアのお腹が低く鳴った。 「私も催しちゃったみたいです。んっ!」 リシテアが小さく息んだ直後、 ブブブッブウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 彼女の尻からもオナラが放たれる。 音と悪臭(におい)。 どちらもヒマリアに引けを取らない強烈な1発だ。 「お前のオナラだって似たようなもんじゃないか」 「ふふふ、そうですね」 鼻をもぎ取りたくなるような猛烈な臭気の中、2人は涼しい表情で会話を続けている。 彼女たちの会話が途切れたのは、それから30秒後の事だった。 プウウウウゥウウゥウゥウウゥゥウウゥゥ~~~ッッッ!!! ふいに壊れたラッパを思いっ切り吹いたような音が室内に響き渡る。 間を置かず、 「「むぐっ!?」」 2人の鼻を筆舌尽くし難い激臭(におい)が襲った。 「エララ!」 鼻を摘んだまま、ヒマリアはすぐさま臭気の発生源に抗議する。 「あははは・・・ごめんなさい」 エララが申し訳なさそうにペコリと頭を下げる。 それがいけなかった。 前傾姿勢になった事で、腹部が圧迫されたのだ。 ブオオオォオォオォオオォオォォオオオォ~~~ッッッ!!! それによって、エララの尻から2発目のオナラが噴き出す。 「「むぐっ!?」」 「お前、いい加減にしろよ・・・」 ヒマリアが右手にロングソード、左手に短縮(カービン)タイプのライフルを召喚しながら言う。 「確かに少しは自重して欲しいですね」 リシテアもその手に青い柄の槍を召喚する。 2人とも笑顔ではあるが、目は全く笑っていない。 「そ、そんなに怒らないでくださ・・・っ!?」 ブブッブウウウゥゥウウウゥゥウウゥゥゥ~~~ッッッ!!! エララの謝罪を遮るように、また彼女の尻からオナラが噴き出してくる。 「ぐふっ!?」 「むぐっ!?」 鼻腔に流れ込む凶悪すぎる臭気に、2人の手から得物が零れ落ちる。 「ハ、ハイポーションを・・・」 机に置かれたハイポーションへと手を伸ばすリシテア。 彼女が消臭を試みる一方、ヒマリアは正反対の行動を取った。 「んぐんぐんぐ・・・!」 なんと新たに果汁酒の封を開け、そのままラッパ飲みし始めたのだ。 しかも、驚異的な肺活量で、あっという間に丸ごと1本を空けてしまう。 「ちょっ、何やってるの、ヒマリア!?」 「ぷはぁっ!うるさい!アタシらだけ臭い目に遭うなんて不公平だろうが!んっ!」 ブボボボボオオオオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! ヤケ気味に言い放ち、尻をエララの方に向けて特大のオナラを放つヒマリア。 「むぐうううううううっ!?」 チーズ臭の割合が強い臭気に襲われ、エララが苦悶の声を上げる。 「いきなり何するんですか!」 「先にオナラしたのは、お前だろうが」 「私のはわざとじゃありません。ふんっ!」 プオオオォォオォォォォォオオォオォォオ~~~ッッッ!!! お返しとばかりに、エララもヒマリアめがけてオナラを放つ。 「ぐはっ!?やったな!んっ!」 ボッフウウウウウウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 再びエララの方に尻を向けてオナラを放つヒマリア。 これに対し、 ブブブウウウウゥゥゥウウゥウウゥウゥゥ~~~ッッッ!!! エララも彼女に負けない特大のオナラで応戦する。 腐卵臭、チーズ臭、腐肉臭。 臭気の3重奏が室内で最悪の不協和音を奏でる。 「ふ、2人とも喧嘩はやめ・・・」 最大の被害者は観客ポジションになってしまったリシテアだ。 この状況において、彼女がとるべき最善の手は何か。 考えるまでもない。 2人を残して、部屋を出てしまえばいいのだ。 もしくは、手を伸ばしていたハイポーションを使ってもいい。 しかし、2人への怒りとオナラの凶悪な臭気による思考力の低下が彼女に最悪の選択肢を取らせた。 「んぐんぐんぐ・・・!」 ヒマリアに倣った、果汁酒のラッパ飲みだ。 とはいえ、さすがにヒマリアのように1本丸ごと空ける事はできない。 「ぷはぁっ・・・うっ」 瓶を半分ほど空けたところで、彼女の腹から重低音が聞こえ始める。 「くっ・・・」 腹部を襲う痛みに耐えたのは、ほんの一瞬。 ブブブブウウウウ~~~~~~~~~~~~ッッッ!!! すぐに2人の方へ尻を向け、出口を求める腸内のガスを解き放つ。 2人には1歩譲るものの、腐肉の割合が強い猛烈な臭気だ。 「むぐっ!?お前まで参戦するのかよ・・・ふんっ!」 ブブブブウウウオオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 「負けませんよ~!ふんっ!」 ブウウウオオォオオォオォオォオオォォォ~~~ッッッ!!! リシテアの参戦に、ヒマリアとエララも猛烈な勢いのオナラで応戦する。 結果として、3人は互いに背を向け合い、尻を突き出して円を描くような格好になった。 いつの間にか3人ともボトムスを脱ぎ捨てており、三者三様の尻とショーツが丸見えになっている。 3人とも白だが、デザインは大きく違う。 「ふんっ!」 ブボボボボボボボボボボボボボボボボボボ~~~ッッッ!!! ヒマリアは装飾のないシンプルなショーツ。 「んんっ!」 プオオオオォォオオォォォオォォオォォ~~~ッッッ!!! エララのもシンプルなデザインだが、青い縁取りがされており、クマらしき動物のバックプリントがある。 「ふんぬっ!」 ブブブッブウウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! そして、リシテアのものは他の2人とは異なり、レースがあしらわれた高級感のあるデザインだ。 いつ果てるともない3人のオナラ合戦。 「むぐっ・・・」 最初に限界を迎えたのは、リシテアだった。 (な、何でこんな事に・・・) 自分はただ3人で仲良くお酒が飲みたかっただけなのに。 朦朧としてきた意識の中で、彼女の目に留まるものがあった。 机の上に置かれている小瓶。 先程使おうとしていたハイポーションだ。 (これを、使えば・・・) 室内に渦巻く臭気が消えれば、2人も我に返ってくれるだろう。 「っ」 殆ど机に倒れ込むような格好で、ハイポーションを掴み取る。 「ど、どうした、リシテア?もう、ギブアップか?」 挑発するようなヒマリアの言葉にも、あまり覇気が感じられない。 彼女もエララ、リシテア、そして自分のオナラの悪臭(におい)でかなりのダメージを受けているのだ。 「っ・・・」 ヒマリアの言葉を無視して、ハイポーションの小瓶に魔力を流し込む。 魔力によって活性化したハイポーションが輝き始めたのを確認し、キャップを回して周囲に振り撒く。 小瓶から溢れ出した光り輝く金色の粒が室内に渦巻く臭気をみるみるうちに打ち消していく。 「よかっ、た・・・」 最後の力を使い果たしたリシテアがその場に倒れ込む。 「お、おい、リシテア」 慌てて駆け寄ろうとするヒマリアだが、興奮状態から覚めた彼女の気力も限界だった。 「うっ・・・」 1歩踏み出した瞬間、視界が大きく揺れる。 「マズイ・・・」 どうにか踏み留まろうとするも叶わず、ヒマリアはその場にバタリと倒れ込む。 ほぼ同時に、 「ふぅ・・・」 エララも意識を失った。 * 時を同じくして、教員寮の廊下を歩くボルビの姿があった。 「アタシとした事が自分の分の酒まで渡しちまうとはな」 ポリポリと頭を掻きながら、ヒマリアの部屋の前までやってくる。 「おっと、入る前にノックするんだったな」 ドアノブを回そうとしたところで気付き、尻尾で器用にドアをノックする。 しかし、返答がない。 「あれ?留守なのか?」 念のため、もう1度ノックしてみるが、やはり返答はない。 「やっぱり留守か。ん?」 ドアノブを回すと、意図せずしてドアが開いてしまった。 「鍵かけてないのか。無用心・・・なっ!?」 視界に飛び込んできた光景に、ボルビは言葉を失う。 室内にヒマリア、リシテア、エララの3人が倒れ伏していたのだ。 しかも、そのうちの1人、リシテアは何やら空の小瓶を握り締めている。 「まさか変な魔法薬が漏れたのか?」 いずれにしろ、悠長に考えている場合ではない。 「呼吸は・・・大丈夫だな。頭を打った形跡もない・・・ん?」 3人を抱えて立ち上がろうとして、足に何かが触れる。 視線を落とすと、そこには見覚えのある空瓶が転がっていた。 「これって、アタシが持ってきた酒・・・」 それが2本も空になっている。 そして、リシテアの手にある小瓶。 よく見ると、生徒たちが使っているポーションの瓶に似ている。 果汁酒とポーションの空瓶、外傷もなく倒れている3人。 以上の事から導き出される結論は、1つ。 「私のせいじゃない・・・よな?」 この後、医務室で目覚めた3人にボルビが八つ当たりに近い説教を受けるのは、それから10分後の事だった。