SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
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魔法学校の日常8

 学校とは、多くの生徒たちが学び、変わっていくための場所である。 しかし、学び、変わるのは何も生徒ばかりではない。 大陸東部に位置するゼガゼス魔法女学園。 その廊下を今、2人の女性が歩いている。 1人は、エララ。 仔犬のような印象を受ける小柄な女性だが、れっきとしたゼガゼス魔法女学園の教師である。 そして、もう1人。 身長は女性としては高めの165cmぐらい。 明るい茶色の髪をポニーテールにしており、美しく整った顔立ちは何処か憂いを感じさせる。 胸と尻は平均以上のサイズで、さらにウエストが細いために実際の数値より大きく見える。 彼女の名前は、ユミル。 本日付でこの学園にやってきた教育実習生である。 「本当に大丈夫でしょうか?」 「大丈夫ですよ。皆、とってもいい子たちですから」 不安げなユミルの言葉に、明るい笑顔で頷くエララ。 この表情だけを見て、彼女がユミルより年上と見抜ける者はいないだろう。 そんな話をしているうちに、2人は目的地である1年生の教室の前に到着した。 「では、私が先に入りますから、名前を呼んだら入ってきてください」 「は、はい」 ユミルが頷いたのを見て、エララが教室へと入っていく。 数分後、教室内が少しだけ騒がしくなり、程なくして静かになった。 「・・・」 廊下に1人になると、途端に不安が襲ってくる。 自分が通っていたのは、大陸南部にあるゼタセ魔法学園だ。 校風も教育方針も違うこの学園で、上手くやっていけるのか。 「ユミル先生、どうぞ」 そんな事を考えているうちに、名前を呼ばれた。 「・・・よしっ」 気合いを入れるように小さく呟いて、教室内へと足を踏み入れる。 『・・・』 生徒たちの視線が自分に集まるのを感じながら、教卓の前まで進む。 「ご紹介に与りました、教育実習生のユミルです。短い間ですが、よろしくお願いします」 簡潔に自己紹介すると、生徒たちから盛大な拍手が送られる。 (よかった・・・) 予想以上の歓迎ムードに、胸を撫で下ろす。 「!」 簡単な自己紹介を済ませたところで、1人の生徒がユミルの目に留まった。 彼女が座っているのは、窓側の最後尾。 身長2mはあるだろうか。 他の生徒たちより明らかに背が高く、頭には1対の捻れた角が生えている。 「?」 自分に向けられた視線に気付いたのか、件の生徒が小さく首を傾げる。 (あの娘はボルビ、人間に化身しているドラゴンさんです) エララが小声で教えてくれる。 (あの娘が・・・) 噂には聞いていたが、まさか自分が担当になるとは思わなかった。 (頑張ってくださいね) 小声でそう言うと、エララは教室の後ろへと移動していく。 「そ、それでは授業を始めますね」 人間に化身したドラゴンという予想外の存在に少し戸惑いながらも、ユミルは授業を始める。 彼女が担当するのは「魔法薬」に関する授業だ。 選択科目で複数のクラスが一緒になるため、普通の授業より人数が多い。 「この2種類の薬草はよく似ているので、調合の際は注意が必要です」 それでもユミルは自分なりに一生懸命に授業を続けていく。 そんな彼女の気持ちが伝わったのか、生徒たちもいつも以上に集中して授業を受けていた。 授業が始まって15分ほど経った頃、 ぷっ、ぷうううう~っ。 何処からともなく、壊れたラッパのような音が聞こえてきた。 間を置かず、ユミルの嗅覚が卵の腐ったような悪臭(におい)を感じ取る。 (あの娘ね) 視線の端で、1人の女子生徒が頬を少し紅くしていた。 だが、心の中で呟く以上の事はせず、何事もなかったように授業を続ける。 ゼダセ魔法学園でもそうだっだが、この学園でも「オナラは黙殺する」というのが暗黙の了解だと聞かされているからだ。 「それじゃあ、75ページの5行目から読んでもらいます。えっと・・・ベリンダさん」 事前にエララから貰っていた座席表で名前を確認しつつ、たまたま目に留まった1人の生徒を指名する。 「あっ」 直後、教室の後ろに控えていたエララが小さく声を上げた。 「?」 その意味がわからず、首を傾げるユミル。 しかし、その理由はすぐにわかった。 「・・・」 指名を受けた生徒、ベリンダは立ち上がりはしたものの、一向に朗読を始める気配がないのだ。 「あの、ベリンダさん?」 「・・・」 ユミルの呼び掛けにも、ベリンダは黙ったままだ。 「えっと・・・」 どうしたものかと思案していると、意外なところから助け船が出された。 「座ってろ、ベリンダ」 ボルビだ。 「・・・」 彼女の呼び掛けでベリンダが着席すると、入れ替わりに立ち上がって朗読を始める。 「・・・」 意見を求めようとエララに視線を向けると、彼女は苦笑を浮かべていた。 どうやらこのままでいいようだ。 「先生?」 「は、はい!」 ボルビに呼ばれ、慌てて彼女に視線をシフトする。 「読むのは此処まででいいですか?」 「は、はい。ありがとう、ボルビさん」 ユミルが礼を言うと、ボルビは無言で席に着く。 「では、今読んでもらった部分について解説していきますね」 そう言って、ユミルは授業を続けるべく黒板にチョークを走らせた。 *  授業が始まり、ちょうど折り返し地点の25分が経過した頃。 ぶうううぅぅぅ~~っ。 (今ので4回目ね) 最初の生徒がオナラしたのを皮切りに、既に3人の生徒が放屁していた。 (やっぱり出ちゃうわよね) 授業を進めながら、心の中で呟く。 自分の母校であるゼダセ魔法学園でもそうだった。 一般人より多い食事量と主食の芋。 この相乗効果の影響はゼガゼスの生徒も、ゼダセの生徒も変わらないのだ。 とはいえ、さすがにオナラする生徒が4人もいると、教室内にもその臭気が漂い始めている。 1本しかないが、渡されたポーションを使うべきだろうか。 ぐるるるるるる~っ。 「っ・・・」 残り時間を確認しながら思案していると、ユミルの腹から重低音が聞こえてきた。 そう、食事の量と内容については、彼女も条件は同じなのだ。 いや、行使できる魔法の規模が大きい分だけ量は彼女の方が多いかもしれない。 (我慢、しないと・・・) 出口を求める腸内のガスを必死で押し留めつつ、平然を装って授業を続ける。 (後20分・・・) 横目で何度も時計を確認するが、それで針の進みが速まる事はない。 (後17分・・・) ぎゅるるるるる~っ! 「っ~~~~!」 ふいにひときわ大きな波が襲ってきた。 かろうじて声は抑えたものの、持っていたチョークを落としてしまう。 「先生、どうかしたんッスか?」 最前列に座っていた銀髪の生徒が心配そうに尋ねてくる。 「う、ううん、何でもないわ」 彼女に対して少し罪悪感を感じながら、首を振るユミル。 「授業を続けますね」 そう告げて、落としたチョークを拾おうとする。 しかし、そこではたと気が付いた。 床に落としたチョークを拾うには、当然ながら屈まなくてはならない。 今、そんな事をして腹部を圧迫してしまえば、腸内のガスが溢れ出すのは火を見るより明らかだ。 (どうすれば・・・) 「先生?」 「だ、大丈夫よ」 これ以上、生徒に心配を掛ける訳には行かない。 素直にオナラを出した上で謝罪し、ポーションを使って消臭しよう。 そう決意し、ユミルはその場に屈んでチョークへと手を伸ばす。 腹部が圧迫されるのを感じた直後、 プウウウウゥゥウゥウウゥゥゥウゥウウ~~~ッッッ!!! ブブブブブブブウウウウウウーーッッ!! 予想以上の大音量が教室内に響き渡った。 「!」 しかし、その音源はユミルの尻ではなかった。 確かにユミルもオナラはしたのだが、 「ゴメンなさい。うっかり出してしまいました」 教室の後ろにいたエララがそれを凌ぐ勢いでオナラを放ったのだ。 あっという間に教室内を腐った卵のエキスを何倍にも濃縮したような悪臭(におい)が充満する。 「エララちゃん、気を付けてよ~」 「エララちゃんのオナラ、凄いんだから」 「身体は可愛らしいのにね♪」 「もうっ!『エララちゃん』ではなく、『エララ先生』です!後、私は小さくありません!」 からかうように言う生徒たちに、エララが抗議する。 しかし、その姿は子供が駄々を捏ねているようにしか見えない。 「ユミル先生。申し訳ないですが、ポーションをお願いします」 「は、はい」 エララの言葉に頷き、ユミルはポーションを振り撒いて教室内を消臭する。 (頑張ってくださいね) エララが唇の動きだけで伝えてくる。 (エララ先生・・・!) 先輩の気遣いに感謝しつつ、ユミルは授業を再開した。 *  昼休み。 ユミルはエララの誘いで、一緒に昼食を摂る事になった。 「午前中の授業はどうでしたか、ユミル先生?」 「は、はい、大変でしたけど、とってもやり甲斐がありました」 「それはよかったです」 ユミルの言葉に優しく微笑むエララ。 普段から子供扱いされる彼女だが、こういう所は大人なのである。 問題があるとすれば、その大人っぽい雰囲気が長続きしない事だ。 「そうやってると、何だか大人っぽいですね、エララ先生」 「もうっ、ヒマリア先生!私は大人だって、いつも言ってるじゃないですか!」 今回も会話に参加してきたヒマリアにより、その雰囲気はあっさりと破壊された。 「此処、いいか?」 「ど、どうぞ」 「ありがとう」 ユミルが頷くと、ヒマリアは彼女の隣に腰を下ろした。 「午後の授業に備えて、ちゃんと腹拵えをしておかないとな。エララ先生もたくさん食べないと、大きくなれませんよ」 「その言葉、宣戦布告と受け取ります」 エララが両手の人差し指と中指に嵌めた指輪が魔力を帯び、淡い輝きを放ち始める。 「おっ、やるか?」 臨戦態勢を取るエララに、ヒマリアもカービン銃を召喚して応じる。 「ふ、2人とも落ち着いてください!」 ユミルが慌てて仲裁に入る。 「心配しなくても本気でやり合う気はないよ」 ヒマリアがカービン銃を仕舞ったのを見て、 「・・・」 エララの指輪からも輝きが消える。 「私たちは基本こんなノリだ。できるだけ早めに慣れてくれ」 「は、はあ・・・」 困惑するユミルだが、時間は待ってくれない。 授業に遅れる訳にも行かないので、食事を再開する。 「それにしても・・・」 食事をしながら、視線を生徒たちの方へシフトする。 それを見計らったように、 ブバスッ! 視線を向けた方から破裂音が聞こえてくる。 おそらくまた生徒の誰かがオナラしたのだろう。 「オナ・・・アレが出やすいのは、ゼガセスの生徒もゼダセの生徒も変わらないんですね」 「魔法を使えば、腹が減る。腹が減れば、食べる。食べれば、出る。当然だろ」 「確かにそうですけど・・・」 こんなにもストレートに言うのは、同じ女性としてどうかと思う。 とはいえ、ユミルはそれを先輩に面と向かって言えるようなタイプではない。 「そういえば、ゼダセは共学ですよね?その、男子がいると、やっぱり大変なんですか?」 「そうですね。こちらの学校より女の子たちが消臭や消音を意識してると思います」 「男子の目があるっていうのは、色々と面倒くさそうだな。私はゼガゼスでよかったよ」 そう言いながら、ヒマリアが身体を傾けて片方の尻を持ち上げる。 直後、 ブブブブブウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 彼女の尻から先程のオナラとは比較にならない特大のオナラが噴き出す。 牛1頭を丸ごと腐らせたような凄まじい腐敗臭だ。 「むぐっ!?ヒ、ヒマリア先生!今は食事中ですよ!」 「ごほっ、ごほっ、えほっ・・・す、少しは自重してください」 エララとユミルが強烈な臭気に悶絶しながら抗議する。 「ああ、悪い。今日はちょっと腹の具合が悪いんだ」 「そういう事なら、仕方ないですね」 「騙されないでください、ユミル先生。今のはヒマリア先生の常套句なんですから」 エララが呆れ顔でポーションを振り撒きながら言う。 「そうなんです・・・っ!」 ぎゅるるるるるる~っ! ユミルの言葉はふいに襲ってきた腹痛によって遮られた。 「どうかしたか?」 「い、いえ、大丈夫です」 「無理に我慢しなくていいぞ。出したければ、さっさと出せばいい・・・んっ!」 そう言いながら、 ブボボボボボボオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! ヒマリアが再び片側の尻を持ち上げ、2発目のオナラを放つ。 「ほら、こんな風にな」 「だから少しは自重してください!ユミル先生もヒマリア先生を見習わないでくださいね」 「は、はい」 少し呆れたような様子のエララの言葉に、戸惑いがちに頷くユミル。 「そんなこと言って、お前も出したいんじゃないのか?」 「そ、そそそんな事ある訳ないでしょう!」 「相変わらず嘘が下手だな、お前」 「うぅ~っ。ユミル先生、申し訳ないですが・・・」 「は、はい、大丈夫ですよ」 ユミルが頷くと、 プウウォォオオォォオォオォォォォ~~~ッッッ!!! エララの尻からも間の抜けた音のオナラが噴き出し、周囲の空気を汚染する。 「さすがに臭くなってきたな。ポーション使うか」 そう言って、ヒマリアがポーションを取り出す。 いきなりだが、誰でも間の悪い時に出会した事があるだろう。 「ユミル先生♪」 今回の場合、1人の女子生徒が後ろからフレンドリーにユミルの肩を叩いた事が該当する。 「!」 堪えられたのは、ほんの一瞬。 ブウオオオオオオオオオオオオオオーーーッッッ!!! すぐに形の良い尻から特大のオナラが噴き出した。 「むぐっ!?」 食事によって威力を増した臭気の直撃を受け、思わず後ろへ仰け反る女子生徒。 だが、それだけで終わらなかった。 運の悪い事に、彼女はそのままバランスを崩して床に頭をぶつけてしまったのだ。 「おい、大丈夫か!?」 すぐさま倒れた女子生徒に駆け寄るヒマリアとエララ。 「す、すぐに治癒魔法を!」 ユミルも慌てて杖を召喚しようとするが、なかなか上手くいかない。 焦りが集中を乱しているのだ。 「私がやります」 エララの4つの指輪が淡い輝きを放ち、女子生徒の頭を魔力の光が包み込む。 結局、意識を取り戻した女子生徒に頭を下げたところで、昼休みは終わりを告げた。 *  放課後。 「はぁ・・・」 ユミルは教員寮に用意された部屋に戻った途端、深々と溜め息を吐いた。 まだ初日だとはいえ、今日はあまりにも散々だった。 主にオナラ関係で。 授業中はエララにフォローされ、昼休みには大切な生徒に怪我をさせてしまった。 しかも、治癒魔法を使うどころか、杖を召喚する事すらできなかった。 生徒が笑って許してくれたのが唯一の救いだ。 「・・・」 無言で右手に杖を召喚する。 先端で金色の3つのリングが交差し、その中に赤い魔法石が浮かぶ杖。 「――――」 召喚した杖を構え、短い呪文の詠唱と共に術式を発動する。 魔法石が輝きを放ち、生み出された衝撃波が目の前に置かれた木製の椅子をいとも容易く粉砕する。 「――――」 再び呪文を詠唱し、今度は別の術式を発動する。 すると、粉砕された椅子がみるみるうちに元の形を取り戻していく。 ユミルが得意とする再生魔法だ。 全力を出せば、爆破された小屋ぐらいは元通りに再生する事ができる。 これを応用し、彼女は事故などで切断された人間の手足すら傷跡1つ残さずに繋ぐ事ができる。 しかし、その能力も必要とされる場面で使えなければ意味はない。 あの時、目の前で倒れ伏す女子生徒を、自分は助ける事ができなかった。 「・・・」 ダメだ。 考えれば考えるほど、気持ちが沈んでいく。 気持ちを切り替えるには、どうすればいいか。 ユミルが出した答えは、入浴だった。 教員寮の1階には、大勢で入れる大浴場がある。 しかし、ユミルが選んだのは部屋に備え付けられたユニットバスだった。 今は誰とも話す気がしなかったからだ。 「ふぅ・・・」 身体を洗い、温めのお湯にゆっくりと浸かる。 ただそれだけで、沈んだ気持ちが汗と一緒に流れ出していくような気がする。 「明日からは頑張らないと!」 気合いを入れ直したのを見計らったように、 ぐるるるるるるる~っ! 彼女の腹が低く鳴った。 言うまでもないが、この浴室にいるのはユミルだけである。 「んっ!」 つまり、誰かに遠慮して我慢する必要はない。 ゴボゴボゴボッ!! 彼女の尻から無数の泡が溢れ出し、水面で強烈な悪臭(におい)と共に爆ぜて消えていく。 「むぐっ、我ながら酷い悪臭(におい)ね」 とはいえ、我慢できないほどではない。 「んっ!」 再び軽くお腹に力を込め、 ゴボゴボゴボッ!! 尻からたくさんの泡を生み出す。 いつも以上にオナラが出ているが、ゼダセとは主食となる芋の性質が違うのだろうか。 「んっ!」 ゴボゴボゴボッ!! お腹に力を込めれば、込めた分だけ尻からオナラが湧き出してくる。 「まるでジャグジー風呂ね。あっ、そうだ」 水面で爆ぜる泡を見ていたユミルに、ふとある考えが過ぎった。 「―――――」 その考えを実行すべく、杖を召喚して呪文を詠唱する。 それに呼応するように、ユミルが2人に分身した。 いや、分裂といった方が正確かもしれない。 2人になったユミルの大きさが元の半分ほどまで縮んでいたからだ。 「「んっ!」」 2人のユミルが同時に息むと、 ゴボゴボゴボッ!! ゴボゴボゴボッ!! それぞれの尻から生み出されたオナラが水面を激しく泡立たせる。 「「ふふふっ、ちょっと臭いけど、泡風呂の完成♪」」 2人のユミルが同時に微笑む。 「「でも、ちょっと泡が少ないかしら」」 そう言うと、2人のうち片方のユミルが杖を手にし、 「「―――――」」 2人で呪文を詠唱する。 直後に彼女たちのサイズがさらに小さくなり、人数が3人に増える。 「「「んっ!」」」 ゴボゴボゴボッ!! ゴボゴボゴボッ!! ゴボゴボゴボッ!! 3人のオナラはこれまで以上に湯船を激しく泡立たせる。 「「「これだけ泡立てば十分だけど・・・さすがに臭いわね」」」 鼻を摘みながら言うと、3人のユミルの姿が重なり、元の大きさの1人に戻る。 続けて浴室内にポーションを振り撒いて、ユミルは湯船から立ち上がった。 *  20分後。 「えっ!?」 浴室を出たユミルは驚きの声を上げた。 「ボ、ボルビさん!?」 無人のはずの自室にボルビの姿があったからだ。 「ど、どうして私の部屋に!?」 「悪いとは思ったが、勝手に上がらせてもらった」 慌てた様子のユミルに対し、ボルビの口調は落ち着いている。 また、昼間に授業を受けていた時とは違い、敬語も使っていなかった。 「ど、どうして私の部屋に?」 「あんたが昼間の失敗で落ち込んでたみたいだから、ちょっと話をしようと思ってな。生徒としてではなく、あんたより100年以上は生きてる年長者として、だ」 「年長者として・・・?」 口にしたところで、ボルビが自分より何倍も生きているドラゴンである事を思い出す。 「大した話じゃないよ。アタシが言いたい事は、ただ1つ。この学園で学んでるのは、生徒だけじゃないって事だ」 「どういう事ですか?」 「人生は日々是精進。要するに、教師だって生徒と一緒に学んでるんだよ」 「・・・」 「アタシが言いたかったのは、それだけだ。じゃあな」 そう言い残し、ボルビが部屋を後にする。 「・・・」 残されたユミルの脳裏に、数日前の出来事が蘇ってくる。 このゼガゼス魔法女学園の創設者ゲサギ博士に会った時の事だ。 90歳を超えた老体とは思えぬ張りのある声で、彼は短く言った。 たった一言。 学べ、と。 どうして「教えろ」ではなく、「学べ」だったのか。 ボルビの言葉を聞いて、その意味がわかった気がした。 「よしっ!」 入浴を終えたばかりだが、ゆっくりしてはいられない。 すぐさま机に向かい、分厚い魔導書を広げる。 生徒だけでなく、教師もまた、学び、変わっていく。 それがゼガゼス魔法女学園なのだ。


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