単発SS(クールな隣人)加筆修正版
Added 2021-10-30 14:48:18 +0000 UTC失敗をした事がない人間はいない。 頭ではわかっていても、「まさかこの人が!?」と驚いた経験はないだろうか。 俺――寺国カイジ(23歳)は正にそんな状況に遭遇している。 現在は、金曜日の21時。 今、目の前にいるのは、パンツタイプのスーツに身を包んだ若い女性。 マンションの隣人である中咲リンネさんだ。 身長170cm近い長身で、おそらく俺よりいくつか年上。 艶やかな黒髪をポニーテールにしており、眼鏡を掛けた理知的な印象の美女である。 首から下も女性的に豊満なラインを抱いており、完璧超人を体現するような人だ。 そんな彼女の失敗。 それを俺が知ったのは、今から5分ほど前に遡る。 俺が外で夕食を済ませて自宅である単身者用のマンションに帰宅すると、隣室の前にリンネさんが立っていた。 何かを探しているのか、何やら肩掛けのマイバッグに手を突っ込んでゴソゴソしている。 「あっ、こんばんは」 俺の姿を認め、リンネさんが挨拶してくれた。 「こんばんは。えっと、どうかしたんですか?」 せっかくなので、俺も自分の疑問をぶつけてみる。 「実は部屋の鍵が見当たらなくてね。職場に忘れてきたようだ」 「そうなんですか!?」 意図せずして大きな声が出てしまった。 「私が忘れ物をするのが、そんなに驚く事かな?」 「す、すみません!」 「謝る必要はないよ。1階の管理室は閉まっていたから、近くのカプセルホテルにでも泊まるとしよう」 「あの・・・」 リンネさんが歩き出すより早く、俺は彼女を呼び止めた。 「何かな?」 「その、よかったら、俺の部屋に来ませんか?」 後にして思えば、どうしてそんな提案をしたのか、自分でもわからない。 しかし、 「では、お言葉に甘えさせてもらうよ」 俺の提案に、リンネさんは笑顔で頷いてくれた。 * そんな訳で、俺はリンネさんを自室に招き入れた。 「散らかってますけど、遠慮せず楽にしてください」 俺の部屋は8畳の1DKで、リンネさんの部屋も同じ造りになっているはずだ。 とはいえ、独身男の1人暮らしである。 足の踏み場がないという事はないが、割と色んな物が無造作に放置されている。 「ありがとう。では、座らせてもらうよ」 俺の言葉を受け、リンネさんは座卓の前に腰を下ろした。 「その、本当にいいんですか?」 「何がかな?」 「その、俺だって、男ですよ?」 「ああ、そういう事か。男の中でも、紳士の部類だろう。少なくとも、私には君から下心が感じられない」 「そう、ですか」 これは褒められているのだろうか? 「気分を害したなら、謝罪しよう。ところで、部屋に挙げてくれたお礼に、1杯どうかな?」 そう言いながら、リンネさんはマイバックから数本の缶ビールを取り出した。 「ありがとうございます」 礼を言って、彼女と座卓を挟んで向かい合う形で腰を下ろす。 「確認を忘れていたが、アルコールは大丈夫だったかな?」 「は、はい」 むしろ、いつも安い発泡酒だったので、ビールが飲めるのは有り難い。 「では、2人で宅飲みといこう。おっと、つまみがないな。買ってこようか」 「カルパスとピーナッツでよければ、どうぞ」 立ち上がろうとしたリンネさんを制し、それぞれの入った袋を差し出す。 「ありがとう。では、有り難くいただくとしよう」 リンネさんが缶ビールのプルタブを開けたのを合図に、宅飲みが始まる。 唐突だが、酔い方というのは人によって千差万別である。 俺の場合は酒が入ると、愚痴っぽくなる。 その証拠に、いつの間にか俺はリンネさんに仕事の愚痴を零していた。 「何であんなのがリーダーなんでしょう。あいつのせいで、作業効率がどんどん落ちるんですよ・・・」 「君も大変なんだな」 そんな俺の愚痴を、リンネさんは嫌な顔ひとつせずに聞いてくれた。 どのぐらい愚痴っただろうか。 4本あった缶ビールはすべて空になり、それに伴って宅飲みも終了となった。 「あっ、しまった!」 そのタイミングで、自分のミスに気付く。 風呂のスイッチを入れ忘れていたのだ。 「すみません。今スイッチ入れたので、20分ぐらいで入ると思います」 「そんなに気を遣わなくても、私はシャワーだけでも構わないよ」 「いえ、大丈夫・・・あっ、着替え」 「ああ、それなら今着てるのをそのまま着るから、大丈夫だよ。今のうちに、下着だけ近くのコンビニで買ってこよう」 そう言うと、リンネさんがマイバックを手に部屋を出ていく。 「・・・よしっ」 今のうちに部屋を片付けるとしよう。 リンネさんは紳士と言ってくれたが、俺は「変態という名の紳士」だ。 若い女性に見られたくない代物は山ほどある。 取り敢えず、洗濯済みの服を1ヶ所にまとめ、洗濯前のものはひとまず洗濯機に放り込む。 俺は床で寝て、リンネさんにはベッドを使ってもらう予定なので、ベッドに除菌スプレーを振っておく。 そこまでしたところで、 「えっと、お邪魔します」 リンネさんが戻ってきた。 「すまない、インターホンは押したんだが・・・」 「ああ、最近調子が悪くて、5回に1回ぐらい鳴らないんですよ。来週には修理してくれるらしいです」 「そうだったのか。おっと」 部屋に入ろうとしたリンネさんの足元で、何かが崩れるガラガラという音がした。 ちょうどつま先が当たる位置に、10本ほどのDVDを無造作に積んであったのだ。 「!」 音の正体に気付いた瞬間、俺はすぐさまDVDの回収に向かう。 「すまない。足元を見ていなかった」 それより早く、リンネさんがDVDの1枚を拾い上げてしまった。 「これは・・・」 終わった・・・。 俺はその場に崩れ落ちる。 彼女が崩したDVDの束。 それらはすべて大人向け、というか、マニア向けの代物だ。 しかも、リンネさんが拾ったのは、最も彼女に見られたくない逸品である。 「スタイリッシュな女の屁」 リンネさんが淡々とDVDのタイトルを読み上げる。 先程、俺が自分を「変態という紳士」と称した意味がわかってもらえただろう。 「君はこういうのが好きなのか?」 残酷な問い掛け。 「・・・はい」 俺は消え入りそうな声で頷く。 「知識としては知っていたが、本当にこういう性癖を持った人がいるんだな」 「・・・」 無言で頷く。 「この女優、私に似ているな。好みなのか?」 「・・・」 再び無言で頷く。 もはや公開処刑、いや、死体蹴りである。 「そうか。よかった」 「?」 リンネさんの口から出た言葉を聞き、自分の耳を疑う。 今、彼女は何と言った? 「さすがに一夜の宿のお礼が缶ビール2本だけというのは申し訳ないと思っていたんだ」 「どういう、事ですか・・・?」 「こういう事だよ・・・んっ」 彼女が息んだ直後、 ブフォッ!! 爆音が室内に響き渡った。 「体質の問題か、私はオナラが出やすくてね。しかも、私自身はそれに対して、あまり羞恥心を感じないんだ。とはいえ、所構わず放屁するなんてマナー違反はしないがね」 「・・・」 最初、彼女が何を言っているのか、理解できなかった。 しかし、 「むぐっ」 程なくして漂ってきた腐卵臭が強制的に言葉の意味を理解させる。 「一夜の宿のお礼だ。このDVDと同じ事をさせてもらおう。おっと、その前に――」 散らばったDVDを片付け始めるリンネさんを見ながら、俺は室内に漂う残り香を堪能すべく大きく深呼吸した。 * リンネさんと初めて会ったのは、今年3月の事だった。 俺が引っ越してきた時、軽く挨拶を交わしたのが最初だったはずだ。 第1印象は、デキる女、クールビューティー。 はっきり言って、もの凄く好みだった。 それから5ヶ月。 こんな展開になると、誰が予想できただろう。 「服は・・・脱いだ方がいいね」 ベッドのある部屋に移動したところで、リンネさんが服を脱ぎ始める。 全くと言っていいほど恥ずかしがっている様子はない。 (もしかして、男として見られてないんだろうか・・・) 「ああ、言い忘れていた。私はどうも女としての自覚というか、羞恥心が欠落しているようでね。他人に裸を見せる事に抵抗がないんだ。気を悪くしないでくれ」 リンネさんが俺の心中を見透かしたように言う。 「やはり、これだけ着ておくか」 程なくして生まれたままの姿になったリンネさんだが、一旦脱いだカッターシャツを再び着始める。 尤も、着直したのはシャツだけで、ブラは着けていない。 「この方がいいだろう?」 リンネさんが先程のDVDを手に問い掛けてくる。 どうやらパッケージの女優と同じ格好になってくれたらしい。 「ベッドで仰向けになってくれ」 「は、はい」 俺がベッドで仰向けになると、 「失礼するよ」 すぐにリンネさんが顔の上にしゃがみ込んでくる。 ちょうど和式便器で用を足すような格好だ。 「苦しくないかな?」 「大丈夫です。その、できれば、もっと・・・」 「わかった」 俺が言い終えるより早く、リンネさんが腰を落としてくれる。 これにより、俺の鼻と彼女の尻穴が完全に密着する。 「このままだと意思疎通ができないから、合図を決めておこう。YESの時は私の右の太腿を、NOの時は左の太腿を叩いてくれ。いいね?」 「・・・」 肯定の意思を伝えるため、リンネさんの右太腿を軽く叩く。 「念のために確認しておくが、過去に女性のオナラを嗅いだ事はあるかな?」 「・・・」 今度は左の太腿を軽く叩く。 「わかった。では、始めよう。行くぞ・・・んっ」 「!」 リンネさんが息み声を聞き、即座に身構える。 しかし、彼女の尻穴がヒクヒクと動いただけで、何も起こらない。 「すまない。恥ずかしい訳ではないんだが・・・少し待ってくれ」 謝罪しながら、リンネさんが尻をモゾモゾと動かす。 俺の位置からはよく見えないが、どうやら両手で腹をマッサージしているようだ。 「んっ、来た・・・出るよ。んっ!」 リンネさんが再び息んだ直後、 (挿絵1) 彼女の尻から生温かい熱風が噴き出した。 「んん~~~~っ!」 念願だった臭気の到来に悶絶しつつも、それを鼻で残らず吸い込んでいく。 さっき食べたカルパスとピーナッツの影響か、腐った肉と豆を混ぜ合わせたような悪臭(におい)だ。 「まずは1発。どうだったかな、初めて嗅いだ女性のオナラは?」 「・・・」 喋れる状態ではないので、右手でしっかりとサムズアップする。 「お気に召したようだね」 リンネさんが少し嬉しそうに言う。 「オナラはまだ出るから、心行くまで堪能してくれ。んんっ!」 ブブッブウウウウウ~~ッッ!! 「むうううううっ!」 尻穴と鼻が密着しているため、リンネさんの生み出した臭気は霧散する事なく、俺の鼻腔へと流れ込んでくる。 その凶悪な悪臭(におい)に、視界が黒ずんだ黄色に染まる。 「苦しそうだが、大丈夫か?」 「・・・」 悶絶しながらも、右の太腿を軽く叩いて続行の意思を示す。 「これも、マゾヒズムの1種なのか?とにかく所望するのなら出そう・・・んんっ!」 ブブオオオオオオオオオ~~ッッ!! 戸惑いながらも、リンネさんは俺の意思を尊重して3発目のオナラを出してくれる。 「むううううううっ!?」 脳をヘビー級ボクサーに思いっ切り殴られたような感覚。 そんな毒ガスのようなオナラを、リンネさんという美女が生み出したという事実。 そのギャップに、堪らなく興奮する。 (もっと、もっと嗅ぎたい・・・!) 続行の意思を強く示すべく、リンネさんの右太腿を叩く。 「わかった、わかったから、そんなに叩かないでくれ。少し痛い・・・ぞっ!」 ブウオオオオオオオ~~~ッッッ!!! リンネさんの少し怒ったような声と共に、今までより強烈なオナラが鼻腔に流れ込んでくる。 「むうううううううっ!?」 腐った豆と肉を最悪のバランスで組み合わせ、さらに濃縮されたような激臭(におい)。 嗅覚が蹂躙され、身体が内側から腐っていくような感覚に陥る。 だが、俺はまだリンネさんの左太腿を叩いていない。 そのため、 ブブブスウウウウ~~~~ッッッ!!! リンネさんの尻穴は特大のオナラを生産し続ける。 ブブッブウウウウウ~~~ッッッ!!! 何発のオナラが鼻に流れ込んだだろうか。 「うっ、カルパスとピーナッツというのは、最悪の組み合わせだった。我ながら酷い悪臭(におい)だ」 おそらく俺が吸い込み切れずに漏れ出した臭気がリンネさんの鼻まで届いたのだろう。 「これで君の嗅覚が破壊されても責任は持てないから、そろそろお開きにしよう」 そんな言葉と共に、顔に圧し掛かっていたリンネさんの尻が離れていく。 (もう、終わりか・・・) 落胆しながらも、臭気の薄れた空気を吸い込む事で、脱力していた身体がほんの少し回復する。 しかし、 「っ!?」 少し離れたところで、再びリンネさんの尻が顔の上に振ってきた。 ブブブブブブブブウ~~~ッッッ!!! それも特大オナラのおまけ付きだ。 「むううううううっ!?」 「す、すまない!ずっとしゃがんでいたせいで、脚が痺れて・・・」 悶絶する俺の耳に、リンネさんの謝罪が聞こえてくる。 ずっと同じ姿勢を維持していたのだから無理はない事なのだが、完全な不意打ちを受けた俺の身体がビクビクと痙攣する。 「す、すぐに退くから・・・!」 リンネさんが珍しく慌てた様子で、再び立ち上がろうとする。 だが、痺れた脚では難しいようで、四苦八苦している。 「くっ、ダメだ、脚に力が入らない・・・」 何とか立ち上がろうとしているリンネさん。 結果として、モゾモゾと動く尻が俺の顔に擦り付けられ続ける。 それだけではない。 ブッ、プゥ・・・プスゥ~・・・。 尻を動かすたびに、小さなオナラがプスプスと漏れてきている。 オナラ好きの俺にとって、これで興奮するなという方が無理な相談である。 「きゃあっ!?」 ふいにリンネさんが普段の姿からはできない可愛らしい声を上げる。 俺が鼻先をドリル代わりに、彼女の尻穴をぐりぐりと穿ったのだ。 「お、おい、さすがにそこまでする事は許してない、ぞ・・・!」 リンネさんが少し震えた声で抗議してくる。 「いい加減に、しろ・・・ふんっ!」 ブブブブブウウウウウウ~~~ッッッ!!! 怒気を含んだ声と共に放たれたオナラ。 それはこれまで以上に強烈な臭気の奔流となり、俺の鼻腔へと殺到する。 「っっっっっ!?」 俺の許容範囲を軽く飛び越えるような1発。 声にならない悲鳴を上げ、何とかリンネさんの下から逃れようとする。 「どうしたんだ?私の尻穴を刺激してまで嗅ぎたかったオナラだ。もっと心行くまで嗅げばいい・・・ふんぬっ!」 ブボボボボボボボボボボ~~~ッッッ!!! どうやら眠れる獅子を起こしてしまったようだ。 ブボボボオオオオオオオ~~~ッッッ!!! ビールの炭酸とピーナッツの繊維質。 そのベストマッチがさらにカルパスでブーストされ、彼女の腸内は無尽蔵にオナラを生み出し続けている。 「ふぅ・・・」 怒りに任せたオナラを何発か放ったところで、リンネさんが大きく息を吐く。 「これだけ出すと、さすがにこっちがクラクラしてくるな」 興奮状態であるとはいえ、リンネさんも自分のオナラによるダメージが少なからずあったようだ。 「だが、次で最後だ。腸内でじっくり発酵させたガスを、たっぷり味わわせてあげよう」 そう言いながら、リンネさんは驚くべき行動に出た。 ずぶぶぶぶ・・・。 なんと自らの尻穴に俺の鼻を挿入し始めたのだ。 「んっ、これでもうオナラから逃げる術はない。さあ、これでラストだ・・・ふんぬうううっ!」 リンネさんが渾身の力で息んだ直後、 ブオオオオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 本日特大のオナラが腸内の最奥部から溢れ出した。 「っっっっっ!?」 腸内で熟成された、最凶の1発。 脳を遠心分離器に掛けられたように、視界がぐるぐると回転する。 そんな臭気のジェットコースターに耐えられる訳もなく、俺は意識を失った。 * 顔に当たる日光で、俺は目を覚ました。 「んっ、んんっ・・・もう朝か」 上体を起こしたところで、昨夜の出来事を思い出す。 「そうだ、中咲さんは・・・?」 「目が覚めたようだね」 「!」 声のした方に視線を向けると、リンネさんが立っていた。 上は白いキャミソール、下は黒字にピンクの水玉柄のショーツだけというラフな格好だ。 「昨夜はすまなかった。酔っていたとはいえ、恩を仇で返す格好になってしまった」 「いや、あれは調子に乗った俺の自業自得ですから」 深々と頭を下げるリンネさんに、俺も深々と頭を下げる。 傍から見れば、なかなかにシュールな光景だろう。 「お詫びに、朝食は私が御馳走しよう。念のために訊いておくが、今日は君も休みだね?」 「は、はい」 俺の職場は完全週休2日制なのが数少ない長所である。 給料は微妙で、上司はアホだが。 「では、部屋で支度をしてくるとしよう。この時間なら、1階の管理人室も開いているはずだ。すぐに戻ってくるから待っていてくれ」 リンネさんは手早くスーツを纏うと、俺に背を向けて歩き出す。 「おっと、忘れるところだった」 3歩ほど進んだところで、リンネさんが何かを思い出したように足を止め、俺の方へと向き直った。 「今後、私のオナラが嗅ぎたくなったら、遠慮なく言ってくれ。缶ビール1本で御馳走しよう」 「えぇっ!?」 冗談ですよね、と続けるより早く、 「冗談か本気かは君の判断に任せよう。それじゃあ、また後で」 リンネさんが再び背を向けて歩き出す。 後には、寝起きの頭で混乱する俺だけが残された。 * あれから1週間が経った、金曜日の夜。 「お邪魔するよ」 リンネさんが再び俺の部屋にやってきた。 「い、いらっしゃいませ」 「知らない仲じゃないんだ。そんなに硬くならなくてもいいよ」 「は、はい」 頷いては見たものの、硬くなるなという方が無理な相談だ。 何しろ今からあの事を頼むのだから。 「な、中咲さん!」 緊張のあまり、声が少し裏返ってしまった。 「何だい?」 「そ、その、これをどうぞ」 震える手で、俺はあるものをリンネさんの前に差し出した。 プレミアムビール(350ml)の6缶パックだ。 「これは私もあまり飲むチャンスのない品だね。ありがと・・・」 ありがとう、と言いかけたリンネさんが何かに気付いたように、缶ビールと俺を交互に見る。 「あれは冗談のつもりだったんだが・・・」 「ダ、ダメですか?」 困惑の表情を浮かべるリンネさんに、縋るような思いで問い掛ける。 「いや、元はといえば、私が軽はずみな発言をしたのが原因だ。社会人として、自分の発言には責任を持つよ」 「ありがとうございますっ!」 礼を言いながら、思わずガッツポーズしてしまう。 金欠の中、このビール代を捻出した甲斐があった。 「それにしても、プレミアムビール6本セットとは随分と張り込んだね。私は缶ビール1本と言ったのに」 「実は、もう1つお願いがあって・・・」 俺は用意していたもう1つのものを差し出す。 ネットで買ったコスプレ衣装だ。 「追加分はこれを着てもらうため、という事か。わかったよ。この際だ、とことん付き合おう」 リンネさんが服を脱ぎ始めたので、慌てて回れ右して彼女に背を向ける。 「ほぅ、こんな衣装が市販されているのか。もしかして、私が思っている以上に、こういうプレイには需要があるのか?」 リンネさんが何やらブツブツ言っているが、聞こえなかった事にする。 程なくして、 「もう振り向いても大丈夫だよ」 リンネさんから許可が出た。 おそるおそる振り向くと、 「!」 そこには白黒の衣装を纏ったリンネさんが立っていた。 形状は新体操用のレオタードに近く、腰の辺りからは白黒の尻尾が伸びている。 またフードもあり、そこにも白黒の耳があしらわれている。 そう、リンネさんは見事なスカンク衣装に身を包んでいるのだ。 「少しサイズはきついが、何とか着れたよ」 その言葉で気付いたが、衣装が少しリンネさんの身体に食い込んでいる。 そこがまたエロい。 「凄く似合ってます!あっ、そうだ、写真!写真撮っていいですか?」 「こんな衣装でも褒められると悪い気はしないものだね。だが、写真はダメだ。無論、動画もね」 「・・・そうですか」 興奮した俺のお願いはあっさりと却下されてしまった。 「それより早く始めよう。そのために、私を呼んだのだろう?」 「は、はい!」 そうだ、気を落としている場合ではない。 まだ本来の目的を果たしていないのだ。 「先週と同じ感じでお願いします」 「わかった」 俺がベッドで仰向けになると、 むにゅっ。 すぐにリンネさんが顔の上に座り込んできた。 安物で生地が薄いためか、布越しでも尻の柔らかさが感じられる。 「準備はいいかい?」 「・・・」 俺は右の太腿を軽く叩いてYESの意思を伝える。 「では、始めよう。開幕のラッパだ・・・んっ!」 プウウウゥウゥウウ~~ッッ!! 1発目のオナラが俺の鼻に流れ込んでくる。 リンネさんの宣言通り、壊れたラッパを思いっ切り吹いたような音である。 だが、 「むうううううっ!?」 何処か間抜けな感じの音とは裏腹に、その悪臭(におい)は凶悪の一言だ。 強烈な腐卵臭の中に、スパイスのような刺激臭が感じされる。 「ふふっ、狙った訳ではないが、今日の夕飯はカレーだったんだ。トッピングに温泉卵を乗せてね・・・んっ!」 ブシュウウウウウウウウ・・・ッ! 解説と共に襲ってくる第2波。 今度はスプレーの噴射音のような音で、 「んむうううううっ!?」 悪臭(におい)がさらに凶悪なものになっている。 「昼も豚の生姜焼きだったんだ・・・んんっ!」 ブビビビビビビビイィィ~~ッッ!! 「むうう・・・っ」 肉と香辛料という最悪の組み合わせ(ベストマッチ)。 それらが最凶の二重奏を奏でながら、俺の嗅覚を蹂躙する。 同時に、全身から力が抜けていき、声を上げる事もできなくなってくる。 「スカンクリンネのオナラフルコースは、お気に召しているかな?」 リンネさんが楽しげに問い掛けてくる。 何かのスイッチが入ったのだろうか。 「さて、前菜はこのぐらいにして、そろそろメインディッシュといこう」 そう言うと、リンネさんがより強く尻を押し付けてくる。 その時だった。 ビリッ! ふいに布が裂けるような音が聞こえてきた。 いや、この表現は的確ではない。 なぜなら「ような音」ではなく、本当にリンネさんのスカンク衣装の尻が縫い目の部分で裂けた音だったからだ。 下着は着けていないらしく、裂け目から現れた生尻の感触が顔に心地よい。 「・・・」 「・・・」 気まずい沈黙。 こういう時、何と声を掛けるのが正解なのか。 それは今でもわからない。 だが、これだけは言える。 「えっと・・・お、お尻が大きいんですね、中咲さん」 俺は完全に間違った、と。 「それを褒め言葉だと思っているなら、認識を改めた方がいい。相手によっては気分を害する事があるからね。そう、私のように・・・ふんっ!」 ブウオオオオオオオオオ~~ッッ!! 怒気を含んだ言葉と共に、リンネさんが放屁を再開した。 先程「メインディッシュ」と言っていただけあって、風圧、音、悪臭(におい)がさらにパワーアップした1発。 しかも、尻と鼻を隔てる布地も消失している。 「むうううううっ!?」 朦朧としていた意識が強制的に覚醒させられ、全身がビクビクと痙攣する。 「プレミアムビール6本分だからな。釣りがないように、とことん出してやる・・・ふんっ!」 ブビビビビイイィィィ~~ッッ!!! 悪臭(におい)を顔に塗り込むかのように、尻を前後に動かしながらオナラを浴びせてくる。 「むぐぐぐ・・・っ!」 どうにか脱出しようと試みるが、オナラの臭気で脱力した身体ではそれも叶わない。 「どうして逃げようとするんだ?私のオナラを堪能したかったんだろう?」 ふいにリンネさんが尻の前後運動をやめる 「遠慮しなくていいぞ。今度はゼロ距離で嗅がせてやる」 そう言うと、リンネさんは驚くべき行動に出た。 なんとさらに腰を下ろし、自分の尻穴に俺の鼻を挿入し始めたのだ。 「んんっ、久し振りだと、少しきついな・・・」 鼻を圧迫される感覚と共に、そんな言葉が聞こえてくる。 久し振りという事は、過去にアナルセックスの経験でもあるのだろうか。 そんな事を考えているうちに、俺の鼻はリンネさんの尻穴に完全に呑み込まれてしまった。 「これでよし。では、行くぞ・・・ふんぬっ!」 ブブブブブブブウウウウ~~ッッ!! 「っっっっっ!?」 腸内から鼻へとダイレクトに流れ込む熟成ガス。 そのあまりの猛烈な悪臭(におい)に、声すら上げる事ができない。 「同じようなオナラばかりでは芸がないな。こういうのはどうかな・・・ふんっ!」 ブブゥッ!!ブボォッ!!ブバスッ!! 3連発のオナラ。 「こういうのもあるぞ・・・んんっ!」 ブボオォッ!!! 1発ながら今まで以上に大音量で猛烈なオナラ。 「―――――!」 そんな変則的なオナラに、俺は反応できる気力も体力もない。 「ふふふっ、さすがにグロッキーのようだね。んんっ・・・!」 ぐるるるるる・・・っ! ふいにリンネさんの腹から雷のような音が聞こえてくる。 「んんっ、名残惜しいが、そろそろフィナーレに、なりそうだ・・・。腸内でたっぷり熟成された、最後の1発だ。これで、天国に行き(じごくにおち)たまえ・・・ふんぬぅぅっ!」 ブボボボオオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!! 爆発。 そう表現するしかないような特大の1発を受け、 「っ・・・!」 俺の意識は一瞬で刈り取られた。 * 最初に感じたのは、頭を撫でられる手の感触だった。 「気が付いたかい?」 次に感じたのは、聞き覚えのある声。 「中咲、さん・・・?」 ゆっくりと目を開けると、リンネさんが俺の顔を見下ろしていた。 既にスカンクの衣装は脱ぎ去り、ラフな部屋着に着替えている。 どうやら膝枕されているようだ。 「すまない。実は、仕事で少しイライラしていてね。君に八つ当たりをしてしまった」 そう言いながら、リンネさんが俺の頭を撫でてくれる。 「いえ、失礼な事を言ったのは、俺ですから・・・」 「失礼な事?デカ尻のオナラ女、かな?」 「そ、そんな事は言ってません!」 「おっと」 勢いよく起き上がった俺を、リンネさんがギリギリで回避する。 「軽い冗談だったんだが、思った以上のリアクションだね。十分に回復したようで、安心したよ」 リンネさんが可笑しそうに言う。 俺が気絶している間に、もう怒り(苛立ち?)は収まったようだ。 「冗談はさておき、今日は私もすっきりできたよ。オナラと一緒に胸、いや、腹の中のモヤモヤも出し切れたようだ」 「それは、よかったです」 前回は俺が愚痴を聞いてもらったし、これでおあいこだろう。 「おっと、もうこんな時間か」 「えっ?」 リンネさんの視線の先を追って、枕元の目覚まし時計を見る。 もう割と遅い時刻になっている。 「これから夕飯の準備をするのも面倒だな。仕方ない。外食するとしよう。近くのファミレスは何時までだったかな?」 「確か23時までだったと思います」 「それなら間に合うね。せっかくだし、一緒にどうかな?すっきりさせてもらったお礼に、私が出そう」 「いや、そんなの悪いですよ」 「気にしなくていい。年長者が奢るのは当然だろう」 「年長者って、そんなに歳の差ないですよね?」 「おいおい、女性にそういう質問はタブーだよ」 「あっ、すみません!」 不躾な質問をした事に気付き、慌てて頭を下げる。 「まあいいさ。私が年上なのは間違いないんだ。この場は私の顔を立ててくれ」 「は、はい」 「決まりだね。着替えてくるから、少し待っててくれ」 そう言って、リンネさんが俺に背を向ける。 「あ、あの、中咲さん!」 「何だい?」 俺の呼び掛けに足を止め、リンネさんが首から上だけを俺の方に向ける。 「あの、俺でよければ、仕事の愚痴とか言いたくなったら、俺に言ってください。いつでも聞きますから」 「ありがとう。その場合、報酬はまたオナラかな?」 リンネさんが自分の尻を軽くポンッと叩いてみせる。 「えぇっ!?」 「ふふふっ、本当に君はいいリアクションをするね。じゃあ、また後で」 可笑しそうに笑いながら、リンネさんが部屋を出ていく。 俺が彼女の勤める会社に転職したのは、それから3ヶ月後の事だった。 終