SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
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単発SS(秘密クラブ)

 金持ちには変態が多い。 統計的なデータがある訳ではないが、彼女――メリンダはそう感じていた。 メリンダ・グレッグ、22歳。 動物に例えるなら、黒ヒョウといったところだろうか。 身長168cm。 ポニーテールにした黒髪に、褐色の肌、鋭い眼光。 服を持ち上げる豊かな双丘と豊満な尻が見る者を惑わせる。 繰り返しになるが、金持ちには変態が多い。 でなければ、自分はこの場にいないだろう。 LFL。 「Lady's Fart Lover」の略で、女のオナラが好きという金持ち(へんたい)が集まる秘密クラブだ。 今夜はと某ビルの最上階にある会場を貸し切って、盛大なパーティーが行われる。 メリンダはこのパーティーのコンパニオンとして雇われたのだ。 「此処か」 案内された更衣室で、用意されたコスチュームに着替える。 胸を強調するようなデザインの黒い衣装。 しかし、それが覆うのは上半身のみ。 下半身は股間を申し訳程度に覆うだけのインナーで、後ろは彼女の尻を強調するように食い込んでいる。 (悪趣味な服だな) そんな事を考えつつ、顔の上半分を覆う白い仮面を着けて会場へと向かう。 既に会場の準備は完了しており、自分と同じ衣装と仮面を纏った女性チーフから最終確認を受ける。 とはいえ、それほど難しい内容ではない。 招待客に求められたら、嫌がらずにオナラする。 この一文で説明の8割が終わる。 続けて細かい注意を受けてから、最後に1粒の錠剤を支給される。 オナラを出やすくする薬で、人体に害はないらしい。 (バカな薬を作る奴もいるんだな) 錠剤を口に放り込み、一緒に渡された水で流し込む。 後は招待客が来るのを待つだけだ。 「な、何だか緊張しますね」 コップを回収された直後、隣に立っていたコンパニオンが話しかけてきた。 顔は見えないが、歳下と思われる小柄な女性だ。 胸元の名札には「ジェイ」と書かれているが、本名ではないだろう。 自分の名札にも「エム」と書かれている。 「そこまで深刻に考えるな。ちょっとバカな変態どもの相手をするだけだ」 「そ、それはそうですけど・・・っ!?」 ふいにジェイが言葉を詰まらせる。 「どうし・・・っ!?」 問い掛けようとしたところで、メリンダも言葉を詰まらせる。 ぐるるるるる~っ! 彼女に痛みが走り、稲妻のような重低音が聞こえてきたのだ。 「どうやらこれが、薬の効果のようだな・・・」 会場内にある大きな柱時計に視線を向ける。 会場時間まで後15分。 パーティー自体が始まるまでなら、後30分はある。 ぎゅるるるる~っ! 腸内(はら)の具合からして、それまで我慢できそうにはない。 「ど、どうしましょう?」 「ひとまずトイレに行って――」 ブウウウウウウ~~ッッ!! メリンダが言い終わるより早く、爆音が会場内に響き渡った。 発信源はメリンダでも、ジェイでもない。 視線を巡らせると、少し離れた場所にいる黒髪の女性が茶髪の女性の方へ尻を突き出していた。 前者の名札には「エヌ」、後者には「ビイ」と書かれている。 どうやらエヌがビイにオナラを浴びせたらしい。 (あいつのオナラ、か・・・) 「むぐっ!?」 空調の風下にいたせいか、強烈な腐卵臭がこちらまで漂ってきた。 (この悪臭、薬の影響か?だとしたら・・・) 警戒もせずに飲んでしまったのは失敗だったか。 メリンダが後悔していると、 ブブウオオオオオ~ッッ!! 今度はビイの方がエヌの方に尻を突き出し、大音量のオナラを放った。 オナラを浴びせられた事に対する仕返しだろうか。 いや、そうではなさそうだ。 エヌとビイ、どちらの表情にも怒りの色はなく、むしろ楽しげにすら見える。 (あいつらも招待客と同類か) 後で知った事だが、件の2人はこれまでに何度もコンパニオンとしてパーティーに参加した事があるらしい。 今回が初めてで、もう2度と来ないと決めたメリンダとは大違いだ。 「エ、エムさん・・・」 「ん?」 傍らにいたジェイの声で我に返る。 「その、お手洗い、どうしますか?」 「ああ、そうだったな・・・っ!?」 ごろごろごろごろ~っ! 思い出したところで、また腹痛の波が襲ってきた。 「くっ・・・!」 我慢できたのは、ほんの数秒だった。 ブボオオオオオ~~ッッ!! メリンダの尻から生温かい臭気が噴き出し、周囲を強烈な腐卵臭に汚染していく。 「むぐっ!?」 頭を棍棒で殴られたような感覚。 「す、すまな――」 慌てて頭を下げるより早く、 ぷうううぅぅぅ~~っっ!! 壊れたラッパのような音が響き、周囲の腐卵臭に糠漬けのような悪臭(におい)が加わる。 「す、すみません!」 ジェイが申し訳なさそうに深々と頭を下げてくる。 「・・・」 左を見る。 ブウオオオォォ~~ッッ!! 長い髪を緩くお下げにした女性が重低音のオナラをしていた。 「・・・」 右を見る。 ブビビビビビィィィッッ!! 自分より年上と思われる金髪の女性が汚らしい音のオナラをしていた。 「・・・」 どうやら腸内(はら)のガスを抑え込んでいる自分の方が少数派らしい。 「エムさん」 ジェイが何かを訴えるように、こちらを見ている。 彼女も自分と同じ考えに至ったようだ。 「トイレに行くのは諦めた方がよさそうだな」 そう言って、 ブッフウオオオオオ~~ッッ!! メリンダは先程以上に強烈なオナラを放った。 *  暫くして開場時刻となり、続々と招待客がやってきた。 人数は30人ほどで、全員が顔の上半分を覆う仮面を着けている。 デザインは様々だが、コンパニオンと区別するために色は黒で統一されている。 殆どがスーツを着た男だが、中にはドレスを纏った女性の姿も見受けられた。 パーティーは立食形式で行われ、招待客たちは数人のグループを作って談笑を始める。 いよいよメリンダたちの出番だ。 並べられた料理の残量を確認しつつ、招待客に飲み物などを配っていく。 前述の通り、これはメインの仕事ではない。 「エム、くっさいのを1発頼むよ!」 そうメリンダに声を掛けてきたのは、犬の仮面を着けた恰幅のいい男だった。 顔はわからないが、おそらく40代ぐらいでだろう。 「か、かしこまりました・・・んっ!」 湧き上がってくる苛立ちと嫌悪感を抑え込みながら、犬男の方へ尻を突き出して腹に少し力を込める。 直後、 ブウオオオオオォォ~~ッッ!! それだけでホルンのような重低音と共に、尻から生温かい熱風が噴き出す。 「むうううううっ!?」 周囲に立ち込める強烈な腐卵臭に、犬男が苦悶とも喜悦とも付かない声を上げる。 出した自分でさえ臭くて堪らないのだから、至近距離で喰らった相手が受けた衝撃は想像に難くない。 「失礼いたしました」 一方的に告げて、メリンダは犬男から離れていく。 ただでさえ誰にも嗅がれたくないのに、こんな男に何発も嗅がれたくはない。 犬男はそんな彼女の態度に怒る様子もなく、別の女にオナラを催促している。 (女なら誰でもいいのか) 心の中で嘲笑していると、 「こっちにも1発、お願いしま~す」 今度は黒いエレガントなデザインの仮面を着けた若い女性に声を掛けられた。 仮面のおかげで顔は見えないが、頭は立派なアフロになっている。 (あんな特徴的な髪型だったら、仮面を着けても意味ないだろ) いや、パーティー後に髪型を変えれば、むしろバレにくいのかもしれない。 「お願いしま~す!」 「は、はい、かしこまりました」 余計な事を考えている場合ではない。 とにかく貰った報酬の分だけオナラをすればいいのだ。 メリンダが尻を突き出すと、アフロ女がすぐに尻の前にしゃがみ込んできた。 位置的によく見えないが、かなりの至近距離から尻を凝視しているようだ。 「んんっ!」 フシュウウウウウウ・・・ッ。 またも軽く力を込めるだけで、オナラが噴き出してきた。 今回は殆ど音のしないすかしっ屁だ。 「ん~~~~~~っ!」 オナラは音のしない方が強烈という事なのか、アフロ女も声を上げている。 だが、先程の男とは違って明らかに喜んでいるような声だ。 「やっぱり、可愛い女の子のオナラは最高ね!これでアフロだったら、もっとよかったのに・・・」 このアフロへのこだわりは何なのだろう。 考えるだけ無駄のような気がしたので、 ブバスッ!! もう1発オナラを放って、アフロ女から離れる。 (しかし、本当にイカレたパーディーだな) ふとジェイの様子が気になり、周囲を見回す。 お目当ての人物は、すぐに見付かった。 招待客の男の顔を2人で左右から挟み込んでいる。 相方の女性は招待客のようだが、 ブオオオオオオ~~~ッッ!! ぼっふうううう~~~っっ!! 恥ずかしそうなジェイとは対照的に、ノリノリでオナラを浴びせている。 どうやら招待客の中には「オナラを嗅がせるのが好き」というタイプの変態(バカ)もいるようだ。 「そちらのお嬢ちゃん、私の屁、嗅いでくれるかしら?」 「・・・」 どうやら変なフラグを立ててしまったらしい。 膝丈ドレスの女がこちらに尻を突き出して左右に振ってみせている。 「し、失礼します」 覚悟を決めて彼女の後ろに跪くと、ドレス女がスカートを捲り上げて被せてきた。 ちょうどメリンダがドレス女のスカートに顔を突っ込んだような格好だ。 「私の屁はくっさいわよ・・・ふんっ!」 女らしさの欠片もない力強い息み声。 ブビビビイイイイ~~~ッッ!! 「むぐうっ!?」 それに伴って噴き出した臭気も汚らしい音と強烈な腐敗臭でメリンダを責め立てる。 視界が黒ずんだ黄色に染まり、全身が雷に打たれたようにビクビクと痙攣する。 「ごほっ!ごほっ!えほっ!」 思わずスカートから顔を出し、盛大に咳き込んでしまう。 いったい何を食べて、どういう生活を送ったら、こんな毒ガスを生み出せるのか。 本来なら拳の1発もくれてやりたいところだが、必死に理性を働かせて自分にブレーキを掛ける。 「どうだった、私の屁は?と~ってもくっさくて、最悪(さいこう)でしょ?」 「は、はい、ありがとうございます」 嬉々として問い掛けてくるドレス女に、形式的な感謝の言葉を述べる。 「もう1発、どうかしら?」 「なっ・・・!」 ドレス女の口から恐ろしい言葉が放たれる。 コンパニオンは「オナラを嗅がせる事」だけでなく、「オナラを嗅ぐ事」も拒否してはいけないのだ。 (ど、どうすれば・・・?) 必死に思案を巡らせるが、たった今浴びたオナラのせいで思考がまとまらない。 「ほらほら~♪私はいつでも準備OKよ~♪」 ドレス女が尻を振りながら返事を急かしてくる。 (嗅ぐしか、ないのか・・・) 絶望するメリンダ。 そんな彼女に、救いの手が差し伸べられた。 「それほど素敵なオナラでしたら、この娘には勿体ないです。私に嗅がせてください」 女性チーフが彼女とドレス女の間に割って入ったのだ。 「あら、あなたは・・・!」 「お久し振りです」 「ふふふっ、私のオナラを気に入ってくれたのね。いいわ、あなたに嗅がせてあげる♪」 「失礼します」 ドレス女のスカートに顔を突っ込む直前、メリンダの方を一瞥した女性チーフが目で告げた。 この場は自分に任せろ、と。 (ありがとうございます) 唇の動きだけで感謝の言葉を告げて、メリンダはその場を後にする。 間を置かず、 ブボボボボボボボォォ~~~ッッッ!!! 背後から大音量の放屁音が響き渡った。 *  ドレス女のオナラから逃れ、メリンダはパーティー会場のバックヤードへとやってきた。 此処にコンパニオン用のウォーターサーバーがあるのだ。 「あっ、お疲れ様です」 「お前か」 そこには先客の姿があった。 ジェイだ。 「どうぞ」 「ありがとう」 ジェイから水の入った紙コップを受け取り、一気に飲み干して喉を潤す。 「その、質問していいですか?」 「何だ?」 「エムさんはどうしてこの仕事を受けたんですか?」 「・・・」 ジェイの疑問は尤もだ。 面接時に仕事内容を訊いた時には、相手の正気を疑ったぐらいである。 「す、すみません!変な事を訊いてしまって!」 メリンダの沈黙を不快の表れと思ったのか、ジェイが頭を下げてくる。 「いや、気にするな。私がこの仕事を受けた理由だったな。単純な話だよ。金が欲しかったんだ。色々あって、な」 そう言うと、メリンダは空になった紙コップを握り潰し、ゴミ箱へと投げ込む。 「お前は?」 「わ、私もお金、です。母が病気で、その手術のために、お金が必要で・・・」 「そうか」 どうやらこの小柄な女性も、重い事情を背負っているらしい。 「さて、重い話はここまでだ。変態(バカ)どもの相手をしに行くぞ」 「は、はい!」 力強く頷いたところで、 ぷうぅぅ~っ。 ジェイの尻からオナラが漏れ出てきた。 「ぷっ」 その力が抜けるような可愛らしい音に、思わず吹き出してしまう。 「わ、笑わないでください!」 「ああ、わかったわかった。じゃあ、行くぞ」 ジェイの抗議を軽く流して、メリンダは再び会場へと戻るべく歩き出した。


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