古城サトシの臭い1日
Added 2022-09-09 15:09:16 +0000 UTC過ぎたるは及ばざるが如し。 何事も程々が1番いいという事を表す素晴らしい言葉である。 俺――古城(こじょう)サトシには、この言葉の意味をじっくりと言い聞かせたい奴がいる。 「サ~ト~シ~君!」 ベッドで寝ている俺に向かって喚いているTシャツとハーフパンツ姿の小柄な少女だ。 彼女の名前は古城アオイ、俺の妹である。 年は俺と1つしか違わないが、顔立ちは少し幼さを残している。 濃い茶色の髪はそれなりの長さがあるのだが、結い上げてピンで留めているため、ショートカットのように見える。 快活そうな印象を与える瞳は大きく澄んでいて、身内の贔屓目を抜きにしても文句なしの美少女だ。 「もう9時半だよ!そろそろ起きなよ、サトシ君!」 そう言いながら、アオイが俺の身体を揺さぶってくる。 彼女の事を語る上で、避けては通れないのが「世話好き」という事である。 おそらく俺というぐうたらな兄を持った結果なのだろうが、それでも少しばかり度が過ぎる場合がある。 「朝ご飯、片付けちゃうよ?いいの?」 それが今まさに俺が置かれている状況である。 「んんっ、朝飯ぐらい好きにしろよ・・・」 そう言って、俺は布団を掴んでいるアオイの手を振り払う。 アオイには悪いが、せっかくの休日なのだ。 1秒でも長く寝ていたいと考えるのは至極当然の事だろう。 「もうっ、サトシ君!起きないと大変な事になっちゃうよ!」 (何だよ、大変な事って・・・) もうお気付きだと思うが、アオイは俺の事を「サトシ君」と呼ぶ。 これは俺が中1の頃、友達に冷やかされるのが嫌で、アオイに「お兄ちゃん」と呼ぶのを禁止したためである。 今は別に禁止していないのだが、この呼び方に慣れてしまったアオイは未だに俺の事を「サトシ君」と呼んでいるのだ。 「本当に知らないからねっ!これが最後の忠告だよ!」 最後の忠告か。 ようやく諦める気になってくれたらしいな。 「ああ、わかったよ。わかったから、もう少し寝かせてくれ」 これでゆっくり眠れ―― ずしっ! 「ふごっ!?」 ふいに顔を襲ってきた重圧が俺の思考を中断させる。 「だから言ったでしょ。大変な事になるって」 間を置かず、頭上からアオイの声が降ってきた。 どうやら俺が一向に起きようとしないので、業を煮やして顔の上に座り込んできたらしい。 「ほらほら、起きないと顔が潰れちゃうよ?」 そう言いながら、アオイが顔にぐりぐりと尻を押し付けてくる。 「むぐぐぐ・・・!」 このままだと窒息してしまうので、何とかアオイの尻から逃れるべく顔を左右に動かしてみる。 「サ、サトシ君、そんなに動いちゃ・・・ひゃあっ!?」 アオイの口から可愛らしい悲鳴が漏れた直後、 ぷうぅぅぅ~~。 俺の顔に生暖かい熱風が浴びせられた。 1拍遅れて、ニンニクやネギのような悪臭(におい)が漂ってくる。 (そういえば、便秘気味だって言ってたなぁ) ついでに言えば、昨日の夕飯は俺のリクエストで餃子だった。 「・・・」 「・・・」 気まずい沈黙が6畳間の部屋を支配する。 こういう時、何と言うのが正解なのか。 知っている人がいたら、ぜひ教えて欲しい。 「あっ、えっと、その・・・」 黙ったままという訳にも行かないので、俺は兄として先に口を開く。 「で、出物腫れ物所嫌わずってやつだな!」 「っ!?」 すぐに失言だと気付いたが、時既に遅し。 「~~~~~~!」 この状態でも、アオイの顔が紅潮していくのがわかる。 「と、とにかく、もう起きるから退いてくれないか?」 このままだとマズイと判断し、慌てて話題を逸らす。 直後、 ずしっ! アオイは顔の上から降りるどころか、逆に体重を掛けて尻で俺の顔を圧迫してきた。 「むぐぅっ!?」 「サトシ君のバカァァァァァァッ!」 ぶううぅっ!!ぶぶぅーっ!!ぼふぉっっ!! 俺の苦悶の声を無視して、アオイが絶叫と共に3連発のオナラを浴びせてくる。 どうやら恥ずかしさのあまり、パニック状態になっているらしい。 鼻に流れ込むニンニク臭が濃さを増し、頭の中が黄土色に染まっていく。 「お、おい、アオイ、落ち着け!完全に恥の上塗り・・・っ!?」 どうにか下から尻を持ち上げて落ち着かせようとするが、 ぎゅむっ! 暴れるアオイにまたすぐ顔騎されてしまう。 ぶびびびびびびぃぃぃぃぃ~~~っっっ!!! 「むぐぅっ!?」 間を置かず、都合5発目のオナラ。 「やっやだぁ・・・オナラ、止まらないよぅ・・・!」 ぶぅーーっ!!ぶっすぅぅ~っ!!ぶむうううっ!! 変な勢いが付いてしまったらしく、アオイの尻からは次々にオナラが溢れ出してくる。 気のせいか、1発ごとに悪臭(におい)が強くなっているような気がする。 「っっっっっ!?ア、アオイ!早く退いてくれ!」 「ご、ごめん、サトシ君・・・でも、力が入らな・・・んあっ!?」 ぶぶぶぅぅぅ~~っっ!!ぶしゅうううう・・・っ! さらに運の悪い事に腰まで抜けてしまったらしく、アオイの顔騎放屁は終わる気配を見せない。 (明日から早起きしよう・・・) ぶっぶすうぅ~~っ!!ぶぶぶぶぅっっ!! 薄れ行く意識の中で、俺は固く心に誓った。 * 再び目を覚ますと、既にアオイの姿はなかった。 おそらく俺が意識を失っている間に部屋を出ていったのだろう。 「うわっ、もうこんな時間か」 時計を確認すると、2本の針は13時過ぎを指していた。 少し遅くなってしまったが、リビングに行って昼飯を食べる事にしよう。 「うっ、まだ悪臭(におい)が残ってるな」 どんだけオナラしていったんだ、あいつ? 取り敢えず、窓を開けて室内の空気を入れ替えながら、手早く着替えを済ませる。 着替えを済ませたところで、昼飯の前に用を足すべくトイレに向かう。 それにしても、朝っぱらから酷い目に遭った。 いや、正確には臭い目、か。 いずれにしろ、アオイには後でフォローしておいた方がよさそうだな。 コンビニであいつの好きなアイスでも買ってくるか。 そんな事を考えながら、俺はトイレのドアを開けた。 次の瞬間、 「あっ」 「えっ?」 洋式便座に座っているアオイと目が合った。 状況を整理しよう。 俺がリビングに行った時、アオイの姿はなかった。 朝食も片付けられていたので、てっきり部屋に戻ったものと思っていたのだが・・・。 ぷううぅぅ~っ。 「!」 ふいに聞こえてきた玩具のラッパのような音で、俺は我に返った。 「わ、悪い!」 慌ててドアを後ろ手に閉める。 「ちょっと!何でサトシ君まで入って――」 ぶぶぶうぅぅ~~っっ!! アオイの言葉に被るように、彼女の尻から少し大きな音のオナラが漏れてくる。 「わ、悪い!すぐ出るから!」 2度目の謝罪と共に、アオイに背を向けてドアノブに手を掛ける。 しかし、 「なっ!?」 何故かドアが開かない。 「どうなってるんだよ!?」 「このドア、調子が悪くなってるから、完全に閉めると開かなくなっちゃうんだよ!」 背後からアオイの声と共に、水を流す音が聞こえてくる。 どうやらもう用は足し終えていたらしい。 (そういえば、昨日アオイがトイレの鍵が壊れたって言ってたな) ドアを開ける時、妙に手応えがなかったのはドアを完全に閉めてなかったからか。 おっと、納得してる場合じゃないな。 何度かドアノブをガチャガチャと回してみたが、ドアは一向に開く気配がない。 「ちょっと強引に開けるしかないか」 このままだと埒が明かないしな。 「アオイ、できるだけドアから離れてろよ」 「ちょっと待って、サトシ君!」 「ん?」 体当たり気味にドアを開けようとしたところで、アオイが待ったを掛けてきた。 「わ、悪いけど、私が合図したタイミングで開けてくれないかな?」 「それはいいけど・・・何でだ?」 俺の好きなタイミングで開けちゃダメなのか? 「な、何となくだよ!そ、そんな深い意味なんてないから!」 「まあいいや。じゃあ、お前が合図してくれ」 そう言いながら、俺は右手でドアノブを握って準備を整える。 「いつでもいいぞ」 「うん。じゃあ、行くよ。1、2の・・・3っ!」 「くっ!」 ドンッ! アオイの合図で、俺は勢いよくドアに体当たりする。 「んっ!」 殆ど同時に、アオイが小さく声を漏らした。 1拍置いて、 ぶぼぼぼぼぉぉぉぉーーーっっっ!!! 背後から大きな爆音が聞こえてきた。 それを追いかけるように、アオイの方から濃厚なニンニク臭が漂ってくる。 「えっと・・・」 下手に振り返る事もできず、アオイに背を向けたまま思案する。 おそらくアオイは俺がドアに体当たりする音で、自分のオナラの音を掻き消そうとしたのだろう。 それが失敗に終わり、現在のような状況になっている、と。 (よしっ!) 分析が終わったところで、俺のやる事は決まった。 「ち、ちょっとコンビニ行ってくる!」 俺は全速力で自室へ財布を取りに戻り、そのままの勢いで家を飛び出した。 * ――アオイ視点 私は占いとかをあんまり信じない方だけど、これだけは断言できる。 今日の私の運勢は、最悪だ。 朝、サトシ君を起こしに行った時。 そして、さっきトイレに入った時。 合計2回もサトシ君にオナラの音を聞かれ、悪臭(におい)まで嗅がれてしまったのだ。 「~~~~~!」 思い出すだけで、顔から火が出そうになる。 (さ、さすがに3度目はないよね?) しかし、「2度ある事は3度ある」という言葉もあるので、油断はできない。 ぎゅるるるるる~~っ!! 私の考えに同意するように、お腹が低く鳴った。 (サトシ君はまだ帰ってこないよね?) 念のため、一旦部屋を出て確認してみるが、やはりまだ帰っていないようだ。 (今のうちに、ちょっとガス抜きしておこうかな) そうと決まれば、早く済ませてしまった方がいいだろう。 「んっ!」 結論が出たところで、身体をくの字に曲げ、両手でお腹を軽く押し込むようにしながら力を込める。 ぶぶぶっすぅぅうぅぅぅうぅぅ~~っっ!!! 「っっっっっ!?」 すぐに自分でもびっくりするぐらい大きな音のオナラがお尻から噴き出した。 「うぅ~っ、臭い・・・」 摩り下ろしたニンニクの山に顔から突っ込んだような強烈な悪臭(におい)。 自分で出したとはいえ、思わず鼻を摘みたくなる酷い悪臭(におい)だ。 「んんっ・・・まだ、出る・・・!」 ぶびびびびびびびびびびぃぃぃ~~っっ!!! 2発目は豚の鳴き声のような音のオナラ。 「うぅっ・・・」 悪臭(におい)も1発目に勝るとも劣らない濃厚なニンニク臭だ。 自分のオナラとはいえ、あまりの臭さに鼻を摘んでしまう。 (ここ1週間ぐらいお通じなかったからなぁ) ぶぶぶぅぅぅっっ!!ぶっすぅぅぅ~~っっ!! そんな事を考えていると、2発の小さめのオナラがお尻から漏れてきた。 しかし、いくら便秘とはいえ、こんなにオナラが出るものなのだろうか。 昨日食べた物を思い出してみる。 朝食はトースト、昼食は学食でオムライス、夕食は餃子だった。 それ以外だと、放課後に桐生さん(サトシ君の先輩)がくれた焼き芋ぐらいだけど、それと便秘の相乗効果だろうか? ごろごろごろごろ~~っ! 「うぅっ!」 とにかく原因を考えるのは後回しだ。 今は一刻も早くオナラを出し切る事だけを考えよう。 お腹の中には、まだオナラがいっぱい溜まっているのだから。 「・・・」 ふいに嫌な予感がしたので、ガス抜きを中断してドアを少しだけ開け、外の様子を窺ってみる。 何の音もしないので、どうやらサトシ君はまだ帰ってきていないらしい。 それでもあまり時間がないのは間違いないだろう。 (こうなったら、短期決戦で一気に・・・!) 「ふんっ!」 あまり女の子らしくない声と共に、お腹を強めに押し込みながら力を込める。 ぶぼぼぼぼぼおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっっっ!!! その甲斐(?)あって、これまで以上に臭く、大きな音のオナラが出てきた。 「んふぅ・・・」 放屁の解放感から、意図せずして甘い声が漏れる。 しかし、 「ふぐっ!?」 次の瞬間には鼻を襲ってきた猛烈なニンニク臭に、苦悶の声を上げてしまう。 「こんなに臭いなんて・・・私が何をしたっていうのよ~!」 嘆いてみたところで、状況が好転する事はない。 「ふんぬっ!」 ぶおおぉおぉぉおぉぉおぉおぉぉ~~~っっっ!!! 仕方ないので、再びお腹を両手で押し込みながら力を込める。 今度は地の底から湧いてくるような音のオナラが出てきた。 「むぐぅっ・・・!」 室内に充満するニンニク臭がさらに濃さを増し、容赦なく私の鼻に流れ込んでくる。 (そ、そろそろ終わらせないと、サトシ君が帰ってきちゃう・・・) 時計を確認し、心の中で呟く。 (これで最後にしよう) 「ふんぬぅぅぅぅっ!」 お腹の中のオナラを出し切るべく渾身の力で息む。 その時、 『アオイ、入るぞ』 ふいにドアの向こうからサトシ君の声が聞こえてきた。 「えっ!?サトシ君!?ま、待って、今はダ――」 慌てて制止しようとするが、 ガチャッ。 それより早く、サトシ君がドアを開けてしまった。 次の瞬間、 ばふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!! 部屋全体を揺るがすような大音量のオナラが私のお尻から噴き出した。 * ――サトシ視点 強烈な悪臭(におい)が周囲に立ち込める中で、俺はドアノブに手を掛けたまま立ち尽くしていた。 目の前では、顔を真っ赤にしたアオイが身体をくの字に曲げ、形のよい尻を後ろへ突き出している。 以上の事から、アオイの行動を分析してみよう。 前提として、今日のアオイは妙にオナラが出やすい状態になっている。 また、部屋とトイレ、2回にわたって俺にオナラの音を聞かれ、その悪臭(におい)まで嗅がれてしまった。 年頃の女の子にとって、これはかなり恥ずかしい事だろう。 そこで、アオイは俺がコンビニに行っている間に、腸内(はら)に残っているオナラをすべて出し切ってしまおうと考えた。 しかし、運の悪い事に、そのガス抜きの途中で俺が部屋に来てしまった。 こんなところだろうか。 (2度ある事は3度あるって、本当なんだなぁ) ぷぅぅ~っ。 俺の推測を裏付けるように、アオイの尻から残りカスのようなオナラが漏れてくる。 「えっと・・・」 「・・・」 「アイス買ってきたんだけど、食べるか?」 「き・・・」 「き?」 「キャアアアアアアアアアアアアッッ!!」 敢えて普通にしてみたのだが、失敗だったようだ。 「し、失礼しました!」 アオイの悲鳴が耳に突き刺さり、俺は慌ててアオイの部屋を後にした。 * 太陽が大きく西に傾き、夜の闇が辺りをゆっくりと包み始めた頃、俺は本日2度目の帰宅を果たした。 あの後、何だかんだで家に居づらかった俺は、昼飯を近所のハンバーガーショップで済ませ、そのまま暫く外で時間を潰していたのだ。 現在、俺は昼間の疲れを洗い流すべく、風呂に入っている。 「今日は散々だったな・・・」 浴槽に身を沈め、溜め息交じりに呟く。 まさか1日に2回も妹の放屁シーンに遭遇するとは思わなかった。 思い出すだけで、何だか鼻がむずむずしてくる。 (まさか3度目があるなんて事は・・・) 「いや、いくらなんでもそれはないか」 頭に浮かんだ考えを振り払うべく、湯船から出てシャワーで頭を洗う。 『サトシ君・・・』 「ん?」 ちょうど頭を洗い終えたところで、引き戸の方からアオイが声を掛けてきた。 「どうかした――」 問い掛けながら、首から上を引き戸の方に向ける。 直後、 「なっ!?」 俺は驚きの声を上げた。 引き戸の磨りガラスに、アオイが服を脱いでいるのが見えたからだ。 「な、何やってるんだよ!?」 慌てて引き戸から顔を背け、腰にタオルを巻き付ける。 「いや~、今日は色々と迷惑を掛けちゃったからさ。お詫びに背中を流そうと思って」 そう言いながら、アオイが浴室に入ってくる。 「よ、余計な気は使わなくていいから、早く出ていってくれ!」 「タオル巻いてるから、こっち向いても大丈夫だよ?」 「そ、そういう問題じゃないだろ!」 取り敢えず、アオイの姿を見ないように固く目を閉じる。 「ごちゃごちゃ言ってないで、大人しく私に洗われなさい♪」 「お、おいっ!?やめろって!」 俺の制止も聞かず、アオイが泡立てたスポンジで俺の背中を擦り始める。 「♪~♪~」 何で鼻歌まで歌ってるんだよ。 「お客さん、こういう店は初めてですか~?」 「コラ、そういう冗談は笑えないからやめろ」 「あたっ!あはははは、頭蓋骨が陥没した~」 俺が頭を軽く小突いてやると、アオイが笑いながら大袈裟に痛がってみせる。 「今日は本当にゴメンね、サトシ君。その、臭い思いさせちゃって・・・」 ふいにアオイが笑うのをやめ、しんみりとした口調で頭を下げてきた。 「気にするな。お前も恥掻いたんだし、おあいこって事でいいだろ」 「うん、ありがとう。じゃあ、さしずめこの背中流しが仲直りの印だね。私の背中も流してくれる?」 「調子に乗るな」 そう言って、俺は再びアオイの頭を小突く。 直後、 ぷぴぃぃぃ~。 今日だけで何度も聞いた音と共に、これまた何度も嗅いだ悪臭(におい)が漂ってくる。 「いつからスカンクになったんだ、お前?」 3度目ともなってくると、もう驚きや戸惑いより呆れの方が勝る。 「し、仕方ないでしょ!2度ある事は3度ある、だよ!」 どうやらそれはアオイの方も同様らしく、赤面しながらも言い返してきた。 「元といえば、昨日サトシ君が『餃子が食べたい』って言ったのが原因でしょ!」 「俺のせいかよ!?」 「こうなったら、腸内(おなか)が空っぽになるまでオナラしまくってやる~っ!」 「お、おいっ!ヤケになるなよ!」 アオイを落ち着かせようと、俺は彼女の方に向き直る。 こんな状況では妹のバスタオル姿を見るもの仕方ないだろう。 しかし、向き直った俺の目に飛び込んできたのは、俺の方に突き出された肌色の塊だった。 「なっ!?」 「んんっ!」 ぶぶぶぶぶぶぶぶうううぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!! それがアオイの尻だと気付いた直後、中央の窄まりから特大のオナラが溢れ出した。 「ぐっ!?」 昼間以上に強烈なニンニク臭が俺の顔を包み込む。 後で聞いた話だが、昼飯に昨日の餃子の残りを揚げて食べたらしい。 つまり、その油分もオナラの悪臭(におい)に拍車を掛けていたのだ。 「ふんっ!」 ぶぼぼぼおぉぉぉぉ~~っっ!!ぶびびびびびびびぃぃっっ!! 開き直ったアオイは爆音のオナラを次々と俺の顔に浴びせ、同時に浴室内を濃密なニンニク臭で満たしていく。 ぶぶぶっすうううぅぅぅっっっ!!ぶううううううーーっっ!! 「うっ・・・!」 アオイがオナラを放つ度に視界が揺れ、意識が遠退いていく。 鼻はしっかり摘んでいるのだが、呼吸のために開けた口から流れ込む臭気はどうしようもない。 ぶべべべべべべべべべっっ!!ぶぶぶっしゅうううううっっ!! 「・・・っ!」 襲い来る臭気の爆弾を前に、俺ができる事は呼吸をできるだけ最小限にするだけだ。 「うっ、くさっ・・・我ながら、酷い悪臭(におい)だね。でも、これで最後だよ・・・ふんっ!」 ぶぶっすすうううううううううううぅぅぅっっっ!!! 「っっっっっっ!?」 ドライヤーのような勢いで噴き出した凶悪な悪臭(におい)のオナラを浴びて、俺は今朝と同じように意識を失った。 * 唐突だが、弟あるいは妹のいる方にお訊きしたい。 その弟妹から土下座された事はあるだろうか? 「すみませんでしたっ!」 俺は今、現在進行形で妹(アオイ)に土下座されている。 「いや、何もそこまでしなくてもいいぞ」 知らない人がこの状況を見たら、完全に俺が悪者だし。 念のために言っておくが、俺もアオイも既に着替え終えて寝巻き姿である。 間違ってもバスタオル姿で土下座させている訳ではない。 「で、でも・・・」 アオイが申し訳なさそうな表情で俺を見上げてくる。 「土下座とかいいから、それより早く晩飯にしてくれよ。腹ペコペコなんだ」 「うん、わかった!腕に縒りを掛けて美味しいの作るからね!」 「ああ、頼んだぞ」 どうにかいつもの調子を取り戻してくれたので、俺はホッと胸を撫で下ろす。 (これで一件落着だな) 後は晩飯ができるまで待つだけ・・・と、考えた俺が浅はかだった。 「お、おい、これって・・・」 食卓に出された料理を見ながら、俺は戸惑いを隠せなかった。 「いや~、実は昨日買ったニンニクが余っちゃってて・・・」 アオイの方も自覚はあったらしく、誤魔化すように笑っている。 食卓に鎮座する料理、それはニンニクたっぷりのレバニラ炒めだった。 「だ、大丈夫だよ!今日はもうオナ・・・アレは出し切っちゃったから!」 「・・・」 本当だろうな、と訊く訳にも行かず、俺は黙って食卓に着いた。 「いっぱい食べてね!」 アオイが俺の茶碗に御飯を山盛りにしながら言う。 (まあ、さすがにもう大丈夫だろ) 差し出された茶碗を受け取り、俺は気を取り直して晩飯を食べ始めた。 * 晩飯を食べた後は特筆すべき事もなく就寝時間になった。 本人が言った通り、アオイのオナラも出尽くしたのだろう。 (暫くニンニクは見たくもねぇな) そんな事を考えつつ、ベッドに寝転んでぼんやりと天井を眺める。 今日は色々あって疲れたせいか、程なくして睡魔がやってきた。 ガチャッ。 「ん?」 眠りに落ちる寸前、何故かドアの開く音が聞こえてきた。 (アオイか?) 「どうし・・・ごふっ!?」 起き上がるより早く、身体に何か大きなものが圧し掛かってきた。 「な、何だ!?」 「んんっ、サトシ君・・・」 足元の方から聞こえてくるアオイの声。 そして、顔の前にある彼女の尻。 その2つを手掛かりに、俺は状況を把握する。 最近は殆どなかったのだが、アオイはごく稀に寝惚けて俺のベッドに入ってくる事がある。 いや、この表現は誤解を招くな。 正確には、トイレなどに行った後、俺のベッドを自分のと間違えて勢いよく倒れ込んでくるのだ。 しかも、今のように上下逆さまに倒れ込んでくるので、彼女の尻が来る顔の前に来る格好になるのである。 「おい、アオイ。寝るなら自分の部屋で寝ろよ」 このままという訳にも行かないので、アオイの太腿を軽く叩いてみる。 しかし、俺も少しは学習すべきだった。 「んっ、んんっ・・・」 ぶぶぶううううううううぅぅぅぅっっっ!!! 数秒後、アオイの尻から噴き出した人肌の熱風に、その事を痛感させられる。 「ぐはっ!?」 晩飯のレバニラ炒めが加わり、さらに強烈になった悪臭(におい)が鼻の中に流れ込んでくる。 眠気が一気に吹き飛び、視界がオナラ色に染め上げられる。 「お、おい、アオイ!早く起きろ!」 なりふり構っていられなくなり、アオイの太腿を掴んで強めに揺さぶる。 ぶぶぶっすうううううううぅぅぅ~~~っっっ!!! 「ぐはっ!?」 完全な逆効果だった。 下半身を揺すった事で、より強烈なオナラが噴き出してきたのだ。 悪臭(におい)も濃さを増しており、レバニラ炒めを何倍にも濃縮したような猛烈な悪臭(におい)が鼻の中で暴れ回る。 (い、今アオイの身体を刺激するのは危険だな) 仕方なく、アオイの身体を刺激しないように気を付けながら、ゆっくりと彼女の下から這い出していく。 ブブゥ、ブスッ、ブーッ、ブビィ・・・! その間もアオイの尻からはプスプスとオナラが漏れてきているが、できるだけ呼吸を浅くする事で耐え凌ぐ。 ぐっ! 「しまっ・・・!」 気付いた時には既に手遅れだった。 「んんっ・・・!」 ぶぶぶぶううぅうぅぅうぅぅうぅぅ~~~っっっ!!! うっかり脚でアオイの腹を刺激してしまい、再び彼女の尻から勢いよくオナラが噴き出してくる。 「ぐふっ!?」 昨日、餃子を食べたいと言った自分を殴ってやりたい。 心からそう思うほど凄まじい悪臭(におい)だ。 ぶぼぼぼぼぼおぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~っっっ!!! 「んぐっ!?」 その後も俺は延々とアオイのオナラを喰らい続け・・・。 ぶっふぉおおおおおぉぉぉぉぉぉ~~~っっっ!!! 「くぅっ・・・」 5発目のオナラを浴びたところで、どうにかベッドを降りるのに成功する。 「んんっ、サトシ君、臭いよぉ・・・」 俺のせいかよ。 アオイの寝言に突っ込みを入れながら、俺は意識を失った。 終