SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
JUDO(あるいはスサノオ)

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清純(風)お嬢様との甘くて臭いデート

 宝陽(ほうよう)学園の創立記念日の前夜。 私――エルゼ=シュミットの心は弾んでいた。 明日は待ちに待った、サトルとの初デートの日なのだ。 緑川(みどりかわ)サトル。 まだ付き合い始めたばかりだが、私の体質にも理解を示してくれる愛しの彼氏さんだ。 その体質とは―― 「んっ!」 ブブブウウウウウゥゥゥゥ~~~ッッッ!!! オナラの量が多く、悪臭(におい)も強烈という女にとっては少々困った体質だ。 尤も、私にとっては心地よい悪臭(かおり)なのだが。 「んんっ!」 ブボボボボボォォォォォォーーーッッッ!!! 現在、私は自室で下着姿になり、日課であるガス抜きをしている。 最低でも1日に2~3回はこれをやらないと、お腹が張ってしまうのだ。 「やっぱりこれがあるとダメね」 そう呟いて、私は自分の尻を包む白いブルマ型のカバー下着を脱ぎ捨てる。 これは知り合いが作ってくれた特別製で、私のオナラの悪臭(におい)と音を緩和する働きがある。 しかし、1人でのガス抜きには無用なものだ。 「んんっ♪」 ブビビビビビビビビビビビィィィッッッ!!! カバー下着がなくなった事で、気持ちよくガス抜きができるようになった。 大量のタマネギをまとめて腐らせたような強烈な悪臭(におい)。 豚の鳴き声のような汚らしい音。 そのどちらもが鼻と耳に心地よい。 「んんっ♪」 ブーッ♪ブブッ♪ブブブブッ♪ブーッ♪ブブッ♪ブーッ♪ カバー下着がなくなった解放感と明日のデートへの期待。 気分がいいとオナラでリズムを刻んでしまう。 今のは「どんぐりころころ」のリズムだ。 (明日はどんな服を着ていこうかしら♪) ブブブブッ♪ブブッッブッ♪ブーッ♪ブブッ♪ブーッ♪ (服は前に買った新しいのにして・・・あっ、下着も新しい方がいいかしら?) 確か近くに新しいランジェリーショップができたはずだ。 時計を確認してみると、まだ店の閉店時間までは十分にある。 (サトルに見られるんだし、思い切って奮発してみようかな♪) そうと決まれば、さっさとガス抜きを終えてしまう。 「ふんっ!」 ブオオオオオォォォォォォォォォォォォンッッッ!!! 強めにお腹を押しながら息むと、轟音のオナラがお尻から溢れてきた。 悪臭(におい)も鼻の奥まで抉り込んでくるような重たいものだ。 (まるでバイクのエンジン音みたいね) どうやらお腹も早くサトルに喜んでもらえる下着を買いに行きたいようだ。 「ふふふふ・・・」 自分の考えが可笑しくて少し笑ってしまう。 (サトルも罪な人ですね) 本当に私は身も心もサトルにメロメロのようだ。 「さて、後1発出したら行きましょうか・・・ふぅんっ!」 ブボオオオオオオォォォォォォォ~~~~ッッッ!!!! 最後に部屋全体を揺さぶるような特大のオナラをして、私はランジェリーショップに向かう準備を始めた。 *  ――サトル視点 唐突だが、今日は俺――緑川サトルが通う宝陽学園の創立記念日である。 そんな学園にとって特別な日は、俺にとっても特別な日になろうとしていた。 現在、俺は待ち合わせ場所であるバス亭に立っている。 「そろそろか」 時計を確認すると、約束の時間まで後5分に迫っていた。 「ん?」 ふと背後に気配を感じた直後、視界が闇に包まれる。 それが誰かに目隠しされたのだと気付いた瞬間、 「むぐぅっ!?」 今度は鼻を塞がれた。 間を置かず、強烈な腐卵臭が鼻の中へ流れ込んでくる。 この悪臭(におい)、間違いない。 「ごほっ、ごほっ、えほっ・・・!エ、エルゼか?」 「ふふふ、大正解です♪」 咳き込みながら問い掛けると、エルゼが嬉しそうに答えながら俺を解放する。 「待たせてしまったみたいなので、お詫びの握りっ屁です。気に入ってくれましたか?」 「できれば、もっと違うお詫びがよかった」 鼻にこびり付くオナラの残り香を感じながら、俺は控えめに抗議する。 「違うお詫び、ですか」 5秒ほど考えるような仕草をした後、 「じゃあ、こういうのはどうですか?」 エルゼが両手で俺の頬を包んでゆっくりと顔を近付けてきた。 「ちょっ、エルゼ!?」 俺の戸惑いを余所に、エルゼはどんどん顔を近付けてくる。 後3cmほどで彼女の唇が俺の唇に触れる。 そこまで来たところで、 「な~んてね。ビックリしましたか?」 エルゼはパッと顔を離し、悪戯っぽい笑みを浮かべた。 「・・・」 どうやら完全にからかわれたらしい。 「それにしても、本当にお待たせてしまったみたいですね。すみませんでした」 そう言うと、今度は申し訳なさそうに頭を下げてくるエルゼ。 「いや、さっき来たところだから気にしなくていいぞ」 「本当ですか?」 「ああ」 本当は30分ほど前から来ていたが、言わぬが花だろう。 「実を言うと、10分ぐらい前からそこの物陰に隠れて、あなたを観察してたんですが・・・」 「何してんだよ!」 「冗談ですよ。でも、少なくとも10分は待っててくれたんですね」 「ま、まあな」 エルゼが嬉しそうな笑みを見て、怒る気が失せてしまった。 これが惚れた弱みというやつか。 「ほら、バスが来ましたよ♪」 ふいにエルゼが俺の腕に自分の腕を絡めてくる。 「っ!?」 腕に触れる柔らかい感触に、思わず息を呑む。 そんな俺を見て、エルゼは可笑しそうに笑っている。 こんな調子で、俺たちの初デートは始まった。 *  俺が初デートの場所に選んだのは、待ち合わせ場所からバスで30分の所にある遊園地だった。 「遊園地なんて久し振りです。でも、どうしてこっちの遊園地にしたんですか?近くにもっと大きな遊園地がありますよね?」 エルゼが少し不思議そうに問い掛けてきた。 依然として、その腕は俺の左腕に絡めたままだ。 「こっちの方が空いてるだろ」 彼女の言う通り、此処からさらにバスで10分も行けば、もっと大きな遊園地がある。 だが、あそこは平日でも混んでいるのだ。 「なるほど。私との楽しい時間をアトラクションの待ち時間で潰したくなかったんですね」 「・・・」 本当に察しのいい彼女である。 「では、そんなサトルの考えを無駄にしないためにも、今日は2人で思いっ切り楽しみましょう。まずはあれに挑戦です」 エルゼが指差したのは、遊園地における定番の1つであるジェットコースターだった。 (失敗した・・・) 遊園地に着いて10分経たずに、俺は自分の選択を後悔した。 今の一言でもうわかったと思うが、俺は―― 「さあ、早く行きましょう♪」 呆然と立ち尽くす俺を、エルゼが楽しげに引っ張っていく。 俺の狙い通り、殆ど待ち時間なしでジェットコースターに乗る事ができた。 しかも、1番前に。 「1番前に乗れるなんて、ラッキーですね」 「・・・」 エルゼが何か言っているが、あいにく俺には応じる余裕がなかった。 *  結局、ジェットコースターに2回、その他の絶叫マシンに3回乗ったところで、俺は限界を迎えた。 「大丈夫ですか?」 「あ、ああ・・・」 エルゼの問い掛けに、力なく答える。 現在、俺は彼女にベンチで膝枕され、頭を撫でられている。 彼氏としては情けないが、後頭部に感じる太腿の感触が心地よい。 「絶叫マシンが苦手なら、言ってくれればよかったのに」 「・・・俺にも意地があったんだよ」 「ふふふ、男の子ですね」 エルゼが少し呆れたような表情を浮かべる。 「もう大丈夫だ。次はどれに乗る?」 問い掛けながら、俺はエルゼの膝枕から起き上がる。 少し名残惜しい気もしたが、ずっとあのままという訳にも行かないだろう。 「そうですねぇ、時間も時間ですし、そろそろお昼にしましょうか」 「もうそんな時間か」 エルゼの言葉を受けて確認すると、確かに時計は正午過ぎを指していた。 「じゃあ、フードコートで何か・・・」 俺が言い切るより早く、エルゼは肩に掛けていたバスケットから大きめのタッパーを取り出した。 「それって・・・」 「はい。私が手作りしたお弁当です。といっても、料理は苦手なので、簡単なサンドイッチですけどね。食べてくれますか?」 「勿論だ」 エルゼの問い掛けに、俺は一も二もなく頷いてタッパーを受け取る。 蓋を開けてみると、色鮮やかなサンドイッチが綺麗に並べられていた。 「いただきます」 「召し上がれ」 きちんと手を合わせてから、1番手前にあった卵サンドを頬張ってみる。 「どうですか?」 「美味い!」 エルゼの問い掛けに、俺は声を大にして即答する。 本人は料理が苦手だと言っているが、決してそんな事はない。 これは間違いなく、時間を置いて食べる事まで計算して作られている。 味も俺好みで、非の打ち所のないサンドイッチだ。 「喜んでもらえてよかったです。遠慮せずに、どんどん食べてくださいね」 「ああ」 エルゼの言葉に頷き、俺は2つめのサンドイッチに手を伸ばした。 *  「さっきは私が選びましたから、次はサトルが選んでください」 サンドイッチを平らげたところで、エルゼがそんな事を言ってきた。 「わかった」 アトラクションを選ぶべく、周囲を見回してみる。 もう絶叫マシンには乗りたくないし・・・。 「じゃあ、あれにしよう」 俺が指差したのは、おどろおどろしい外観の洋館。 そう、これも遊園地の定番、お化け屋敷だ。 「ゴーストハウスですか。面白そうですね♪」 「・・・」 正直、少し期待したのだが、エルゼは全く怖がってくれなかった。 少し残念な思いを抱きつつも、彼女と共にゴーストハウスに入ってみる。 「なかなか雰囲気がありますね」 「そうだな」 ゴーストハウス内は未知のウイルスによって人々がゾンビ化した夜の街という設定で、両サイドの壁はたくさんの廃墟、足元には様々なガラクタや千切られたゾンビの腕(精巧な作り物)などが転がっている。 また、通路の先やセットのアパートからは不気味な呻き声や悲鳴が聞こえてくる。 「きゃあっ♪」 アパートの窓から巨大な緑色の腕が出現したのを見て、エルゼがわざとらしく悲鳴を上げて俺に寄り掛かってくる。 「ちゃんと守ってくださいね、私の騎士(ナイト)さん♪」 言葉とは裏腹に、全く怖がっている気配はない。 (まあ、エルゼらしいといえば、エルゼらしいけど) そんな事を考えながら、ゴーストハウスの中を進んでいく。 直後、 『ウオオォォォォーッッ!!』 ふいにアパートのセットの陰からボロボロの服を着たゾンビが飛び出してきた。 人形ではなく、特殊メイクをした人間が扮するタイプのゾンビだ。 その手にはコンクリートブロックと鉄パイプで作ったようなハンマーが握られている。 「きゃあっ!?」 さすがに驚いたのか、振り向いたエルゼが可愛らしい悲鳴を上げる。 だが、 「うげえぇぇぇ~っっ!?な、何だ、こりゃ!?」 次の瞬間、何故かゾンビの方が悲鳴を上げていた。 しかも、明らかに演技ではない素の悲鳴である。 「ふふふ、ゴメンなさいね」 エルゼはペロッと舌を出しながら謝罪すると、そのまま俺の腕を引いて足早に歩き出す。 同時に、鼻に届く悪臭(におい)で、俺も何が起こったのかを瞬時に把握する。 おそらくエルゼが驚いた拍子に小さくオナラを漏らしたのだ。 音が聞こえなかったで少量だろうが、それでも彼女のオナラは強烈である。 事前情報もなしに吸い込んだら、悲鳴を上げてしまっても仕方ないだろう。 (運の悪い奴だな) 咳き込んでいるゾンビを肩越しに見ながら、俺は心の中で呟いた。 *  「その、ちょっとお花摘みに行ってもいいですか?」 ゴーストハウスを出たところで、エルゼが少し申し訳なさそうに尋ねてきた。 「わかった。じゃあ、俺はあそこのベンチで待ってるから」 俺がそう言うと、途端にエルゼが不満げな表情を浮かべる。 「何を言ってるんですか。サトルも一緒に行くんですよ」 「はい?」 「私も限界なんですから、早く来てください」 戸惑いの声を上げる俺を、エルゼはトイレの方へと引っ張っていく。 「ちょっ、どう考えても俺が女子トイレに入るのは無理だろ!」 「女子トイレになんて行きませんよ。私たちが入るのは、こっちです」 そう言って、エルゼが俺を連れ込んだのは障がい者用のトイレだった。 確かに此処なら、男女で分かれてはいないが・・・。 「俺までトイレに連れ込んでどうする気だ?」 「ふふふ、本当はわかってるんでしょう?」 「・・・まあな」 溜め息を吐く俺を可笑しそうに見ながら、エルゼはスカートをたくし上げてブルマ型のカバー下着を露わにする。 「まだデート序盤ですし、このままガス抜きしましょう」 そう言いながら、エルゼが前のめりになって俺の方へ尻を突き出してくる。 「んっ♪」 そのまま彼女が軽くお腹を押した直後、 フシュゥゥゥゥゥゥ・・・。 形のよい尻から本日3発目のオナラが放たれた。 場所を意識したのか、殆ど音のしないすかしっ屁だ。 とはいえ、 「ふぐぅっ!?」 悪臭(におい)は凶悪そのもので、少し離れて立っている俺の鼻にも容赦なく襲い掛かってくる。 昼食に卵サンドを食べたからか、濃厚な腐卵臭だ。 「ほら、サトルもそんな所に立ってないで、もっと近くに来てください」 「・・・わかった」 彼女のオナラに付き合うのも、彼氏の義務だろう。 (よし!) 覚悟を決めて、彼女の尻の前にしゃがみ込む。 すると、 もにゅっ。 すぐにエルゼが俺の顔に自分の尻を押し付けてきた。 そして、 シュォォォォォォォ・・・。 先程と同じようなすかしっ屁を浴びせてくる。 「むぅっ!?」 間を置かず、濃厚なチーズのような悪臭(におい)が俺の鼻に流れ込んでくる。 だが、俺も伊達にエルゼの彼氏になった訳ではない。 今のカバー下着を穿いている状態なら、彼女のオナラにも何とか耐えられるようになったのだ。 「ふふふ、さすがですね、サトル。普通の人なら、最初の1発で気絶しちゃいますよ。んんっ♪」 プシュウウウウウウ・・・。 嬉しそうに言いながら、さらにオナラを浴びせてくるエルゼ。 「んむぅっ!?」 やや大きめの、風船が萎むような音のオナラ。 それが山盛りの肉を腐らせたような悪臭(におい)を伴って俺の鼻に襲い掛かってくる。 (もしかして、これって・・・) オナラの悪臭(におい)に悶絶しながらも、俺の頭にある仮説が浮かぶ。 「次で最後ですよ。んんっ♪」 フスゥゥゥゥゥゥゥ・・・。 「むぐぅっ!?」 今度は腐った肉とレタスを混ぜて濃縮したような悪臭(におい)だった。 間違いない。 卵サンド、チーズサンド、カツサンド、ハムレタスサンド・・・エルゼはさっき昼食で食べたサンドイッチを意識してオナラを出しているようだ。 「ふぅ、お疲れ様でした」 大きく息を吐いて、エルゼが俺を解放する。 「ガス抜きも終わった事ですし、次は何に乗りましょうか?」 「その前に、此処をこの状態で放置して大丈夫なのか?」 そう、トイレ内はエルゼが放ったオナラの残り香が充満している。 このまま放置すると、次の利用者にまで被害が及んでしまうのは想像に難くなかった。 「それについては、ちゃんと考えてありますよ」 そう言うと、エルゼはバッグから取り出したスプレーを周囲に噴射し始める。 「何だ、それ?」 「強力な消臭スプレーです。これを撒いておけば、このぐらいの悪臭(におい)は簡単に消してくれるんです」 彼女の言う通り、トイレ内に漂っていたオナラの残り香がみるみるうちに薄くなっていく。 「凄い効果だな、そのスプレー。何処で買ったんだ?」 「知り合いが作ったのを貰ったんです。その人も、私と同じでオナラが好きなんですよ」 「そうなのか」 どうやら「類は友を呼ぶ」という言葉は本当らしい。 「このぐらい撒いておけば、大丈夫ですね」 エルゼがスプレーをバッグの中に戻しながら言う。 確かにトイレ内の悪臭(におい)は完全に消えていた。 これなら被害者が出る事はないだろう。 「では、改めて行きましょうか・・・と、その前に」 「まだ何かあるのか?」 ドアの方へ踏み出した足を止めて問い掛ける。 「お花摘みです」 「まだ出・・・っ!」 言い終えるより前に、エルゼのデコピンが額にヒットした。 「今度は本当のお花摘みですよ」 「・・・外で待ってる」 それだけ告げて、俺は返事を待たずに障害者用トイレを後にした。 *  トイレから出てきたエルゼと合流し、俺たちは次のアトラクションへと向かう。 「さっきは俺が選んだから、次はエルゼが選んでくれ」 「わかりました。では、あれなんてどうですか?」 エルゼが指差したのは、岩山を模して造られた体験型ガンシューティングの建物だった。 「面白そうだけど、エルゼってシューティングできるのか?」 「はい。これでも駅前のゲームセンターで最高記録を出した事もあるんですよ?」 エルゼが右手をピストルの形にしながら言う。 「そうなのか」 エルゼみたいな女の子でもゲームセンターなんて行くんだな。 「じゃあ、行ってみるか」 特に異論はないので、俺たちは件の建物に向かう。 放送での説明によると、内部は「発掘中に魔物たちの封印が解けてしまった遺跡」という設定らしい。 プレイヤーは銃を手にトロッコに乗り込み、魔物たちが蠢く遺跡を脱出するのだ。 「では、お気を付けて」 係員に見送られ、俺たちの乗るトロッコがゆっくりと動き始める。 同時に、ディスプレイになった両側の壁から次々と雑魚モンスターが出現してきた。 「行きますよ、サトル!」 「了解!」 ノリノリなエルゼに俺も勢いで応じ、迫り来るモンスターに銃弾を撃ち込んでいく。 銃はXM29のような形状で、アサルトライフルとグレネードが一体になっている。 そんな感じで暫く雑魚モンスターを片付けていると、 『ゴオオォォォォッ!』 正面から身長3mはある巨大なゴーレムの集団が出現する。 「いや、こいつを銃弾で倒すのは無理だろ!」 突っ込みを入れながらも、俺はゴーレムめがけて次々と銃弾を撃ち込んでいく。 『ゴオオォォォォッ!』 案の定、ダメージを受けている気配はない。 「グレネードを撃ち込むんですよ、サトル。こうやって・・・んっ♪」 エルゼが可愛らしい声と共に、ゴーレムめがけてグレネードを放つ。 ドンッ! ブバスッ!! 「ん?」 今、グレネートの発射音に紛れて、明らかに違う音が・・・っ!? 「ぐっ!?」 直後、鼻の奥に突き刺さるような強烈な刺激臭が襲ってきた。 「ふふふ、どうしたんですか、サトル?そんな事では戦場で生き残れませんよ?」 エルゼの悪戯っぽい笑みで確信する。 彼女はグレネードの発射音に紛れて、自分もオナラを放ったのだ。 「あっ、来ますよ!」 「おっと!」 エルゼの言葉に反応し、俺も自分に迫っていたゴーレムにグレネードを撃ち込む。 「私も負けていられませんね・・・んっ♪んっ♪」 ブブゥッ!!ブボォッ!! またグレネートの発射音に紛れ、エルゼが2発のオナラを放つ。 「ぐっ!?」 1発1発が鋭い針のように、俺の鼻へと突き刺さってくる。 エルゼはゲームのモンスターだけでなく、俺まで撃破する気なのだろうか? 「サトル!」 「うわぁっ!?」 エルゼの声で我に返ると、ゴーレムがすぐ目の前に迫っていた。 慌ててグレネードを撃ち、こちらへ手を伸ばすゴーレムを撃破する。 「ふふふ、ぼーっとしてちゃダメですよ、サトル。それ、貸してください」 そう言うと、エルゼは俺の銃を掠め取り、2挺拳銃ならぬ2挺ライフルでゴーレムの群れを相手に無双していく。 同時に、 ブフォッ!!ブウゥッ!!ブブーッ!!プオッ!! 尻からもオナラを次々と発射し、俺の鼻にダメージを蓄積していく。 「ぐっ・・・!」 最初は刺激臭だけだったが、徐々にニンニクやニラを思わせる悪臭(におい)が混じり始める。 『グオォォォォォン!』 程なくしてゴーレムの群れが一掃されると、今度はティラノサウルスのような姿のモンスターが出現する。 背中に城のような装甲を纏っており、そこから小さな翼竜型のモンスターを次々と生み出している。 「どうやらボスのお出ましのようですね」 そう言いながら、エルゼは2挺のライフルを振るって翼竜を次々と撃ち落していく。 勿論、 ブブブウウウウウゥゥゥゥゥゥーーーッッッ!!! それに合わせてエルゼもオナラを放っている。 しかし、あまりにも音が大き過ぎてライフルの銃撃音では全く誤魔化せていない。 「むうううううっ!?」 (こ、此処の防犯カメラって、音は記録されないよな?) 鼻を襲う刺激臭と発酵臭が混ざり合った濃密な悪臭(におい)に悶えつつ、天井に設置された防犯カメラを一瞥する。 「これでトドメです・・・ふんっ!」 翼竜モンスターがいなくなり、弱りきったラスボスめがけて、エルゼが両手のグレネードを同時発射する。 そして、 ブボボボボボボオォォォォォォォーーーッッッ!!! 「ぐふっ・・・!」 俺も「エルゼの尻」という3つめの砲門から放たれた特大のオナラを受け、ラスボスのモンスターと一緒に撃破された。 *  ラスボスを撃破すると、エルゼはすぐさま周囲に消臭スプレーを振り撒き、グロッキー状態の俺(トロッコに酔った事にされた)を連れ、何事もなかったようにアドラクションを後にした。 それからも色んなアトラクションを堪能しているうちに、空が茜色に染まってきた。 「今更だけど、1つ訊いていいか?」 「何ですか?」 「園内の至る所をウロウロしているあの奇妙な物体は何だと思う?」 尋ねながら、俺は前方を歩いている物体、薄いピンク色の着ぐるみを指差した。 一言で表すと「毛のないモグラ」といったところだろうか。 小さい目とは対照的に上下の前歯が大きく、何故か工事現場などで見掛ける黄色いヘルメットとツルハシを装備している。 「知らないんですか?あれはこの遊園地のマスコット、ハダカデバネズミのデッパ君ですよ。正確には、ヘルメットを被った働きデッパ君です」 「ハダカデバネズミ・・・」 ハダカデバネズミとは、その名の通り「裸で出っ歯なネズミ」だ。 主に地中に巣を作り、蟻や蜂のような厳しい階級社会で暮らす珍しい動物である。 余談だが、エルゼによると此処のデッパ君にも階級があるようだ。 頂点に立つ「女王デッパちゃん」を筆頭に、王様デッパ君、兵隊デッパ君、働きデッパ君、挙句の果てには子ネズミを自分の身体で温める布団デッパ君までいるらしい。 そのうちの1匹、兜と槍を装備した「兵隊デッパ君」と記念撮影をしたところで、いよいよラストと決めていたアトラクションに乗り込む。 遊園地の中央に位置する大型観覧車だ。 「今日は本当に楽しかったですね」 観覧車が動き出すのを見計らったように、エルゼが口を開いた。 「喜んでくれてよかったよ」 デートなどした事がなかったが、何とか楽しんでもらえたようなので一安心だ。 「でも、実を言うと、少し苦しいんですよ」 「苦しい?大丈――」 俺が問い掛けようとした瞬間、 ボフゥッ!! ゴンドラ内に爆音が響き渡った。 「ふぐっ!?そ、そういう事か」 鼻に絡み付くような甘ったるい悪臭(におい)を感じながら、エルゼの言いたい事を理解する。 要するに、彼女にとっては昼間にトイレで行ったガス抜き程度では不十分だったのだ。 「そういう事です。すみませんが、此処で少しガス抜きしてもいいですか?」 「念のために訊いておくが、さっきの消臭スプレーはまだあるのか?」 「勿論、たっぷり残ってますよ♪」 そう言って、エルゼは笑顔で消臭スプレーを取り出してみせる。 どうやら逃げ道はないようだ。 「・・・わかった」 俺が半ば諦め気味に頷いた途端、 ブブブブゥゥゥゥ~~~~~~~~~ッッッ!!! エルゼが軽く自分の腹を押して大音量のオナラを放った。 「んぐぅっ!?」 今回は鼻に絡み付くような甘ったるさと鼻を刺すような刺激臭が混ざり合った悪臭(におい)だ。 「どうですか?2人の甘くて刺激的な時間を演出するオナラです♪」 「ど、どんな演出だよ・・・」 楽しげに言ってくるエルゼに、俺はオナラの悪臭(におい)に耐えながら抗議する。 それにしても、どうやったらこんなに色々な種類のオナラが出せるんだろうか。 知りたいような知りたくないような・・・何とも複雑な気分だ。 「此処なら誰にも迷惑は掛かりませんし、これも脱いじゃいますね」 そう言いながら、エルゼはスカートを脱ぎ始め、さらにブルマ型のカバー下着まで脱いでしまう。 彼女のオナラを封じ込めていたものがなくなり、細やかなレースと刺繍に彩られた黒いTバックショーツが露わになった。 「このショーツ、今日のために買った勝負下着なんです。どうですか?」 「あ、ああ、似合ってるよ」 エルゼの白い肌が黒いショーツによって引き立てられ、さらに蟲惑的な魅力を増している。 「ふふふ、ありがとうございます。サトルも褒めてくれましたし、これで存分にオナラが出せます。んんっ♪」 プォッ!! エルゼがまた自分の腹を押してオナラを放つ。 「っっっ!?」 音こそ可愛いものだったが、カバー下着がなくなった事でその悪臭(におい)はより凶悪さを増していた。 「やっぱりカバー下着がなくなると、悪臭(におい)も凄くなりますね」 何処か他人事のように言って、エルゼがくるりと身体を反転させる。 そのまま座席に両手を着くと、Tバックショーツが食い込む尻を俺の方へ突き出してきた。 「ほら、サトル。彼氏さんの出番ですよ♪」 エルゼが俺を挑発するように尻を左右に振ってみせる。 「・・・」 意図せずして、喉がゴクリとなる。 周囲に漂う悪臭(におい)の元凶であると知ってなお、エルゼの尻は魅力的だ。 「わ、わかった」 俺は床に膝を着き、ゆっくりと彼女の尻に顔を埋める。 「んっ・・・」 一方、エルゼも両手で尻肉を割り開いて俺の鼻を迎える。 (まるで食虫植物に引き寄せられた虫だな) そんな事を考えていると、エルゼが尻肉から両手を離して完全に俺の鼻を挟み込む。 直後、 ブブブブブブブブブブブブブブブウゥゥッッッ!!! エルゼの尻から猛烈な勢いのオナラが放たれた。 「ぐふっ!?」 いくら耐性があるとはいえ、カバー下着なしのオナラとなると話は違ってくる。 鼻を突く刺激臭と甘ったるい悪臭(におい)、そこに腐卵臭まで加わった筆舌尽くし難い悪臭(におい)。 それがすべて鼻の中へと流れ込み、身体の中で激しく暴れ回る。 「こうしてると、身体の中からサトルを私の色に染め上げているみたいで、何だか嬉しくなりますね。んんっ♪」 そんな事を言いながら、 ブブゥッ!!ボフッ!!ブバスッ!!ブビィッ!! 楽しげに4連発のオナラを浴びせてくるエルゼ。 「ぐはっ!?」 1発ごとに悪臭(におい)が違うという芸の細かさで、確かに身体の中から彼女のオナラに染め上げられていくような気分だ。 そうこうするうちに、ゴンドラは最高点に到達しようとしていた。 「そろそろ頂上ですね。では、これで最後にしましょう。んんっ♪」 ブリリリリリリリリィィィィィィ~~~ッッッ!!! ゴンドラが頂点に達すると同時にオナラを放つエルゼ。 彼女の容姿とは不釣合いな汚らしい音と共に、様々な食物をごちゃ混ぜにしたような凄まじい腐敗臭が鼻を襲ってくる。 「っっっ!?」 殆ど反射的に彼女の尻から顔を離し、後ろの座席へと倒れ込む。 いつの間にかゴンドラ内は猛烈な臭気が渦巻いていた。 「大丈夫ですか?」 問い掛けながら、エルゼが俺の顔を覗き込んでくる。 「何とか、大丈夫だ・・・」 尤も、嗅覚が回復するのには少し時間が掛かりそうだが。 「ゴンドラも下がり始めましたね」 エルゼが消臭スプレーを噴射し、ゴンドラ内の臭気を打ち消していく。 「・・・」 鼻へのダメージが和らぐと同時に、これでデートも終わりだと思うと少し寂しくなってくる。 性別は逆だが、何だか魔法が解けたシンデレラになった気分だ。 そんな俺の想いとは裏腹に、ゴンドラは徐々にその高度を下げていった。 *  この遊園地では、平日はナイトパレードが行われていない。 そのため、俺たちは観覧車を降りると、そのまま出口へと向かう。 「何だかあっという間でしたね」 遊園地を出たところで、エルゼがそんな事を言ってきた。 「何だかこのまま帰るのが少し勿体ないような気がします」 「そこまで言ってもらえれば、俺も誘った甲斐があるよ」 今日のためにガンショップでアルバイトして、親戚と鉢合わせしたのも無駄ではなかったという事だからな。 「また絶対誘ってくださいね。いえ、今度は私から誘いましょうか」 「どっちでもいいよ。でも、一緒に出掛けるのだけは絶対だ」 「ふふふ、そうですね」 「・・・」 エルゼが浮かべた笑みを見て、ふとある考えが頭に浮かぶ。 それを口に出そうとした瞬間、 「まだこんな時間ですし、もう少し一緒にいませんか?」 俺はエルゼに先を越されてしまった。 *  エルゼの提案を受けて、俺たちはバス停の近くにあるカラオケボックスへとやってきた。 「初めて来たんですけど、中はこんな風になってたんですね」 座席に腰を下ろしたエルゼが興味津々といった様子で室内を見回している。 「カラオケ、来た事なかったのか?」 「はい。でも、前から興味はあったので、せっかくですからサトルと一緒にと思って」 「それは光栄だな」 そう応えながら、俺もエルゼの向かいに腰を下ろそうとする。 しかし、 「サトルの席は此処ですよ」 エルゼが自分の傍らをポンポンと叩いたので、俺は彼女の隣に腰を下ろす。 「と、取り敢えず、何か歌うか?」 肩と腕に触れるエルゼの感触に動揺しながらも、俺は彼女の方へマイクを差し出す。 「いえ、最初はサトルの歌を聞かせてください」 「俺の歌か?」 正直、あまり歌は得意じゃないんだが・・・。 「格好いい姿、見せてくださいね」 「・・・」 もの凄い無茶ぶりが来た。 しかし、断る訳にも行かず、リモコンを操作して曲を入力する。 取り敢えず、作者が好きなマイナー曲にしておこう。 程なくしてスピーカーから曲が流れてきたので、俺はマイクを手に立ち上がる。 我ながら似合わない曲を選んだと思いつつ、どうにか1曲歌い上げる。 すると、 「とっても素敵でしたよ、サトル」 エルゼがパチパチと拍手してくれた。 一応、喜んでもらえたらしい。 「今の歌に出てきた歌詞みたいに、私をあなたの腕で抱き締めてくれますか?」 「えっ!?」 「ふふふ、顔が真っ赤ですよ、サトル」 エルゼが可笑しそうに笑いながら、赤面する俺からマイクを掠め取る。 「では、私も歌わせてもらいますね」 エルゼがそう告げるのを見計らったように、スピーカーから新たな曲が流れ始めた。 こちらもマイナーな曲だったが、俺より圧倒的に上手い。 それに、曲も大人っぽいエルゼの雰囲気に合っている。 約4分ほどで曲が終了した次の瞬間、 『ブボボボボボボボボォォォォォォォ~~~ッッッ!!!!』 スピーカーから響き渡った爆音が室内の空気を激しく震わせた。 エルゼが曲の終わったタイミングを見計らい、スカートを捲ってマイクを自分の尻に向けたのだ。 「ふぐぅっ!?」 完全なる不意打ちに、俺は驚きと苦悶の混ざった声を上げる。 「びっくりしましたか?実は前から1度やってみたかったんです♪」 「・・・」 こんなに満足げな笑顔を見せられては、もはや怒る気にもなれない。 「そうだ、せっかくマイクがあるんですから、もっと色んな事をやってみましょう♪」 そう言うと、エルゼは驚くべき行動に出た。 迷いなくスカートを脱ぐと、そのまま俺の方へ歩み寄ってきたのだ。 「エ、エルゼ?」 カバー下着は遊園地で脱いでしまったので、今彼女が穿いているのは黒いTバックショーツ1枚だけだ。 上の服は着たままというのが逆に扇情的である。 「すみませんが、ちょっと仰向けになってください」 耳元に顔を寄せたエルゼがそっと囁いてくる。 こんな誘いを断れる奴の方が少数派だと思う。 多数派である俺はエルゼに言われるまま、ベンチに身体を横たえる。 間を置かず、エルゼがショーツを脱いで俺の鼻の上へと圧し掛かってきた。 さっきは気付かなかったが、このショーツも左右が紐になったタイプだったようだ。 下着を脱いでいるので、柔らかな尻の感触が顔に直接感じられて心地よい。 「今まで色んなクッションを使ってきましたけど、サトルの鼻より座りのいいクッションはありませんね」 そう言いながら、エルゼは肛門がちょうど俺の鼻に押し付けられるように調整する。 「・・・それは褒めてるのか?」 「勿論ですよ。だって・・・んんっ♪」 プピイイイイイイイィィィィィィーーーッッッ!!!!! エルゼが可愛らしく息んだ瞬間、彼女の尻からヤカンが沸いた時のような音が聞こえてきた。 同時に、鼻を刺すような強烈な悪臭(におい)が鼻に流れ込んできた。 1拍遅れてスピーカーからも同じ音が聞こえてきたので、どうやら尻にマイクを向けながらオナラをしているようだ。 『むぐっ!?』 さらには俺の呻き声までスピーカーから聞こえてきたので、オナラを出してすぐマイクの俺の方に向けたらしい。 「だって、私はこうしてサトルに顔騎放屁するのが大好きなんですから♪んんっ♪」 ブウウウウウウウウウウウウウウーーーッッッ!!!!! 2発目の顔騎放屁は地の底から響いてくるような重低音だった。 『むがぁっ!?』 その音に相応しく、鼻の奥に抉り込んでくる凶悪な悪臭(におい)だ。 「そういえば、此処のカラオケは自分の歌を録音して持って帰れるらしいですよ。サトルが悶えている声も録音してみますか?」 そんな事を言いながら、 プッシュゥゥゥゥゥゥゥ・・・。 殆ど音のしないすかしっ屁を放つエルゼ。 それでもマイクはきちんと音を拾ってスピーカーから彼女の放屁音を響かせている。 『んんんーっ!?』 当然ながら、発酵の進んだ糠漬けのような悪臭(におい)に苦しむ俺の声もしっかりと拾っている。 「凄いですね!すかしっ屁でも、ちゃんと音を拾ってくれましたよ!」 エルゼが子供のようにはしゃいでいる。 本当にこれだけが彼女の欠点といえるだろう。 普段から悪戯っ子のような所はあるが、オナラ関係の事になると臭気を操るサディストに豹変してしまうのだ。 尤も、それを補って余りあるほどの長所も持っているのだが。 「えいっ♪」 『ブバスッ!!!!!』 『ふぐぅっ!?』 ふいに鼻へ流れ込んできた悪臭(におい)が俺の思考を中断させる。 短いが、鼻を鋭く突いてくるような刺激臭だ。 「もうっ、今は私のオナラに集中してください。んんっ♪」 ブッブッブッブッブッブッブッブッブッブッ!!!!! 少し拗ねたように言いながら、短いオナラを連続で浴びせてくるエルゼ。 『むぐぅっ!?』」 それらは1発1発がまるでプロボクサーの拳のように鼻の奥を容赦なく抉ってくる。 「う~ん。今更ですけど、カラオケに来たのに歌わないというのも勿体ないですよね」 何やら思案するエルゼの声と一緒に、リモコンの操作音が聞こえてくる。 暫くして、スピーカーから何処かで聞いた事のある曲が流れてきた。 『元気に出そう♪いい音だそう♪ドレミファ――』 プププゥ~♪ エルゼが歌詞に合わせてオナラを浴びせてきた。 芸が細かい事に、ちゃんとマイクを尻の方へ向けている。 「むぐぅっ!?」 音は可愛らしいが、悪臭(におい)は大量の肉と魚をまとめて腐らせたような凶悪な発酵臭だ。 『ダメですよ、サトル。ちゃんと歌詞の通りに歌わないと・・・。どうせおんなじオナラだもん♪』 俺を窘めながらも、しっかりと歌に復帰するエルゼ。 「手は~腰に♪さあいくぞ♪へい♪へい♪」 ブブブブブブブブブウウウウウウーーーッッッ!!!!! 今度は曲を掻き消すほど大音量のオナラを浴びせてきた。 様々な悪臭(におい)が万華鏡のように襲ってきて、猛烈な勢いで意識を刈り取っていく。 『あっ、すみません。加減を間違えちゃいました』 そんなエルゼの言葉を聞きながら、俺は意識を失った。 *  カラオケボックスを出た後、俺はエルゼを彼女のマンションまで送っていった。 「送ってくれてありがとうございました」 エントランスの前で、エルゼが小さく頭を下げてくる。 「気にするなよ。男として当然の事だからな」 我ながら似合わないと思いながらも、少し格好付けて言ってみる。 「ふふふ」 案の定、エルゼに笑われてしまった。 「では、私の素敵なナイト様にご褒美です。目を閉じてください」 「こ、こうか?」 言われるまま、俺は静かに目を閉じる。 どうせご褒美がオナラだとわかっているのに、情けないほど動揺してしまう。 視界が闇に閉ざされた数秒後、 「っ!?」 俺の唇が柔らかいものに塞がれた。 驚いて目を開けると、すぐ目の前にエルゼの顔があった。 そして、その唇は俺の唇に―― 「んんっ!?」 そこまで認識したところで、俺は苦悶の声を上げて彼女から顔を離した。 口から鼻に強烈な刺激臭が流れ込んできたのだ。 「ふふふ、どうですか?ファーストキスならぬファートキスの味は?」 エルゼが悪戯っぽく笑いながら言う。 どうやら彼女は俺が目を閉じている間に、すかしっ屁を口に含んでキスをしたらしい。 正直、ファーストキスはもっと普通にしたかったのだが、むしろこちらの方がエルゼとのファーストキスとして思い出になるかもしれない。 「それじゃあ、また明日。学校で会いましょうね」 そう言ってマンションの中へ入っていくエルゼを見送って、 「はぁ・・・」 俺は複雑な想いを溜め息と共に吐き出した。 終


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