SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
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世話焼きな後輩は臭くて可愛い?

 朝は1分でも長く布団の中にいたい。 これは朝に弱い俺――紅月ヤシロの切なる願いである。 しかし、それを許さない奴がいる。 「先輩!もう朝ですよ、起きてください!」 たった今、俺の被っていた布団を引き剥がした少女――ユキカだ。 柊(ひいらぎ)ユキカ。 宝陽学園の1年生で、俺の1つ下の後輩だ。 肩を撫でるぐらいの黒髪に、愛らしさと美しさが同居する綺麗な顔立ち。 何処となく人に馴れない猫のような雰囲気を纏う小柄な少女である。 「ユキカか。頼む、後5分でいいから、寝かせてくれ・・・」 「早く起きないと、朝ご飯を食べる時間がなくなっちゃいますよ」 ユキカが布団を取り返そうとする俺の手を躱しながら言う。 「朝飯なんていいから、後5分・・・」 「ダメです。私は先輩のご両親から先輩の監視を頼まれているんですから」 そう言いながら、ユキカがカーテンを開ける。 「そこまで律儀にやる必要はないだろ・・・」 俺は窓から差し込んでくる太陽光から逃れるために寝返りを打つ。 「どうあっても起きないつもりですね。わかりました」 ユキカが多分に怒気を含んだ口調で言う。 しかし、今の俺にそんな事は関係ない。 このままユキカが怒って退室してくれれば、後10分は寝ていられる。 今はそれが最も重要なのだ。 「こうなったら、私も手段は選びません」 「・・・」 ユキカの言葉に嫌な予感を覚えた俺はうっすらと目を開けてみる。 視界に飛び込んできたのは青いチェック柄。 それがユキカの穿いていた制服のスカートだと気付いた瞬間、 ブブブブブーーーッッッ!!! 俺の顔を生温かい臭気が包み込んだ。 *  15分後。 着替えと朝食を済ませた俺は、ユキカと並んで宝陽(ほうよう)学園への通学路を歩いている。 「いくら俺が起きないからって、あそこまでする事ないだろ」 「だって、先輩はあのぐらいしないと起きないじゃないですか」 「いや、いくら起きなくても同世代の男の顔にオナラするのはおかしいだろ」 デリカシーがないとかそんなレベルですらない。 「あ、あんまり大きな声で言わないでください!わ、私だって、恥ずかしいんですから・・・」 ユキカが顔を真っ赤にしながら言う。 そこまで恥ずかしがるなら、最初からやらなければいいのに・・・・。 「それに、先輩がもっと早く起きてくれれば、私もあんな事をしなくて済むと思うんですけど!」 「まあ、それはそうなんだが・・・。にしても、本当に臭かったな。何食べたら、あんな悪臭(におい)になるんだ?」 「ふ、普通ですよ。というか、昨日の夕飯は一緒に食べたじゃないですか」 「ああ、そうだったな」 ユキカの両親も俺の両親と同じく仕事で家を空ける事が多い。 そのため、中学の頃から日常的にどちらかの家で夕食を2人一緒に食べており、昨日も俺の家で一緒に麻婆豆腐を食べたのだ。 「考えてみたら、麻婆豆腐は挽き肉がたっぷり入ってるからオナラが臭くなるのも当然か」 「もうっ!いい加減してください、先輩!」 顔を真っ赤にしたユキカが抗議してくる。 「はいはい」 これ以上は反撃が怖いので、俺は素直に引き下がる。 直後、 プウウゥ~ッ。 ユキカの方から壊れたラッパのような音が聞こえてきた。 一拍置いて、腐った肉のような悪臭(におい)が後に続いてくる。 「・・・まだ出し切ってなかったのか」 聞こえないように呟いたはずの言葉。 しかし、 パーンッ! 直後にユキカの平手が空を切り、俺の顔に紅葉型の跡が刻まれた。 *  ――ユキカ視点 1限目が終わったところで、私は教室から少し離れた女子トイレへとやってきた。 トレイ内に誰もいない事を確認し、1番奥の個室に入る。 ガチャリ。 震える手で鍵を閉め、落ち着くために大きく深呼吸する。 「よしっ」 いくらか気持ちが落ち着いたところで、便座の蓋を閉め、その上に脱いだスカートを置く。 今のでおわかりだと思うが、私は此処へ用を足しに来た訳ではない。 私が此処まで足を運んだ理由は1つ。 先輩に言われた事を、自分の鼻で確かめるためだ。 (先輩はオーバーなんです。私のオナラがそんなに臭い訳が・・・) いずれにしろ、悪臭(におい)を確認するには実際にオナラを出さなくてはいけない。 そこで、私は滅多に人の来ないこのトイレまでやってきたのだ。 「んっ!」 右手をお尻に宛がいながら、お腹にぐっと力を込める。 しかし、 「・・・」 緊張のためか、肝心のオナラは出てこない。 「んんっ!」 さらにお腹に力を込めてみるが、結果は同じだった。 (せっかく此処まで来たのに・・・) 教室まで戻る時間を考えると、残された時間は後5分ぐらいだ。 (早くしないと・・・こうなったら・・・!) 悩んだ末、私はお腹を左手で圧迫しながら力を込めてみた。 直後、 ブオオオオオオオオーーッッ!! 必要以上に大きな爆音が個室内、いや、トイレ中に響き渡った。 「!」 明らかに出し過ぎだが、仕方ない。 私は右手でお尻から噴き出した臭気を掴み、顔の方へ持ってくる。 「うっ!?」 掌から漂ってきたのは、予想を遥かに超える激臭だった。 まるで腐った肉のエキスを濃縮したような、不快な悪臭(におい)。 ほんの少し吸い込んだだけで、視界がぐらりと揺れる。 (いけないっ!) 気付いた時には手遅れだった。 強烈な悪臭(におい)を嗅いでバランスを崩した私は、そのまま便座の蓋に尻餅を着いてしまう。 その拍子に、左手でお腹をさらに圧迫してしまい、 ブビビビビビビィィィィ~~ッッ!! 今度は豚の鳴き声のようなオナラがお尻から溢れてきた。 「ううっ、臭い・・・」 個室内に漂う腐肉のような悪臭(におい)が濃度を増し、私の鼻を襲ってくる。 (私って、先輩にこんな臭いオナラを浴びせてたんだ・・・) 今になって罪悪感が湧いてくる。 私が先輩をオナラで起こすようになったのは、確か1年ぐらい前からだったと思う。 その日、私は一向に起きようとしない先輩に業を煮やし、先輩を置いて部屋を出ようとして落ちていたメモ帳に足を取られた。 バランスを崩した私は先輩のベッドに尻餅を着き、その拍子に出てしまったオナラを浴びた先輩が驚いて飛び起きたのだ。 それ以来、先輩がどうしても起きない時はオナラで起こすようになった。 冷静に考えると滅茶苦茶だが、そのぐらいしないと寝起きの悪い先輩は全然起きてくれないのだ。 (本当にもう先輩は・・・) ぐるるるるる~っ! 「うっ!」 私の思考を遮るように、お腹が低くなった。 どうやらお腹を強く圧迫し過ぎたらしい。 このままだと、教室で特大のオナラが出てしまう。 それだけは何としても避けなくてはならない。 (と、とにかくオナラを全部出し切らないと・・・) 「んんっ!」 私は便座から腰を上げ、両手でお腹を強く押し込む。 ブオオオオォォォォーーーンッッッ!!! 音だけを聞けば、大型バイクと間違えそうなほどの轟音。 しかし、それは音だけでなく、濃厚な悪臭(におい)を伴っている。 「ごほっ!ごほっ!えほっ!」 自分で出したものとはいえ、思わず咳き込んでしまう。 (ど、どうしよう?制服に悪臭(におい)が付いちゃう・・・) 一応、制汗スプレーぐらいは持っているが、さすがにこの悪臭(におい)を消すのは無理だろう。 とはいえ、後2分ほどで制服を洗う事など不可能だ。 (先生に気分が悪いと言って保健室に・・・でも、そしたら先生に・・・) 必死に考えを巡らせるが、完全に八方塞がりだ。 そんな私を嘲笑うように、 ブボボボボオォォォォーーーッッッ!!! お尻からはどんどんオナラが溢れてくる。 まるで決壊したダムのようだ。 『なかなかいい音のオナラね』 「っ!?」 ふいに扉の向こうから聞こえてきた声に、私は凍り付いた。 (き、聞かれた・・・?) 『くんくん・・・悪臭(におい)もなかなかね。扉越しでもわかるわよ』 「・・・」 扉の向こうから聞こえる声が私をどんどん絶望へと引き擦り込んでいく。 (と、とにかく声を出さないように・・・!) 幸い、相手の声に聞き覚えはない。 つまり、相手も私の事は知らないはずだ。 授業には遅れてしまうが、このままやり過ごせばオナラをしたのが私だとバレる事はないだろう。 ブウウウウウウウウーーーーッッッ!!! またお尻からオナラが溢れてきた。 「っ・・・!」 思わず出そうになる苦悶の声を必死に呑み込む。 『だいぶ苦しそうね。大丈夫?』 扉越しに心配そうな声が聞こえてくる。 「・・・」 その気遣いは嬉しいが、返事をする訳には行かない。 ボッフウオオオオオオーーーッッッ!!! こんなガス地獄を作ったのが私だと知られる訳には行かないのだ。 「っっ・・・!」 『そろそろ授業始まるよ~・・・って、私がいたら出てこれないか。じゃあ、私はもう行くから。これだけ受け取って』 そう聞こえた直後、扉の上部にある隙間から何かが投げ入れられた。 「っ!」 殆ど反射的に投げ入れられたものをキャッチする。 ほぼ同時に、扉の前から誰かが遠ざかっていく足音が聞こえてきた。 投げ入れられてきたのは、プラスチック製の小さなスプレー容器だった。 タンクの部分にメモ用紙が貼り付けられており、そこには次のように書かれていた。 超強力消臭スプレー オナラの悪臭(におい)にも効果あり 通りすがりのオナラソムリエ また、メモの端にはサインのつもりなのか、可愛らしい眼鏡のイラストが描かれている。 「・・・」 事態が呑み込めないまま、スプレーを自分の身体に吹き掛けてみる。 すると、個室内に漂っていた臭気が嘘のように霧散していった。 「凄い・・・」 想像を絶する消臭スプレーの威力に、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。 程なくして、個室内に巣食っていた濃密な臭気が完全に消え去った。 「ありがとうございます、オナラソムリエさん」 私はその場にいないオナラソムリエなる人物に感謝の言葉を口にすると、急いで教室へと向かった。 *  ――ヤシロ視点 教室に遅刻ギリギリで滑り込んだ後は特筆すべき事もなく放課後になった。 ただ1つの事を除いては。 そのただ1つの事のために、俺は体育館に併設された体育倉庫へとやってきた。 「ったく、何で数学の課題忘れて体育倉庫の片付けをさせられるんだよ」 そう、俺は数学の課題をやり忘れた罰として、此処の片付けを仰せつかったのだ。 「まあ、愚痴ってても仕方ないし、さっさと済ませて帰るか」 幸い、そこまで散らかっている訳ではないので、俺1人でも何とかなりそうだ。 体操用マットが新しくなったばかりで、あの嫌な汗臭さがないのもありがたい。 まあ、2つある蛍光灯の片方が切れているから、奥の方は薄暗いけどな。 「こんなもんでいいだろ・・・ん?」 ひと通り片付けを済ませたところで、跳び箱の傍らに何か落ちているのに気付いた。 「なっ!?」 拾ってみると、それは1枚のDVDだった。 しかも、裸の女が全面にプリントされたいわゆるエロDVDといわれる代物だ。 「な、何でこんなもんが此処に・・・?」 誰かの忘れ物だろうか? 見なかった事にして元の場所に・・・いや、後で発見されたら、俺のものだと疑われる可能性もあるな。 「どうすりゃいいんだよ?」 俺が思案に暮れていると、 「せんぱーい!」 「っ!?」 背後からこの状況で1番聞きたくない奴の声が聞こえてきた。 ユキカだ。 こんなところを見られたら、何を言われるかわかったものではない。 慌ててエロDVDを持ったまま、跳び箱の中に身を隠す。 「先輩?」 隙間から外の様子を窺っていると、程なくしてユキカが体育倉庫に入ってきた。 「細田先生から此処だって聞いたんだけど・・・帰っちゃったのかな?」 ユキカが体育倉庫の中を見回しながら言う。 「片付けは済んでるみたいですね。もうっ、帰るなら鍵ぐらいかけていけばいいのに」 腰に手を当て呆れたように言うユキカ。 (お前は俺の母親かっ!) 心の中でツッコミを入れていると、 ごろごろごろごろ~っ。 ふいにユキカの腹が鳴った。 「んっ」 ユキカが小さく声を漏らし、片手で腹を擦り始める。 「またお腹が張ってきちゃった・・・。そうだ、此処で少しガス抜きを・・・」 何やらぶつぶつ言いながら、 ギギギギィ・・・ッ。 ユキカが体育倉庫の重い扉を閉める。 (何をする気なんだ?) あいにく跳び箱の中からでは、ユキカの声は聞こえない。 俺が首を傾げていると、ユキカがまっすぐこちらの方へ歩いてくる。 そのまま跳び箱の手前50cmほどの所で立ち止まると、そこでくるりと反転し、身体をくの字に曲げる。 次の瞬間、 ブブウウウウウウウーーッッ!! 跳び箱(俺)の方に突き出された彼女の小振りな尻から強烈なオナラが放たれた。 「っっっっっ!?」 腐肉のような悪臭(におい)が跳び箱の隙間から入り込み、俺の鼻を襲ってくる。 一方、 「んふぅ・・・」 ユキカの口から妙に艶かしい声が漏れる。 続けて、 ブオオオオオォォォォーーーッッ!! さらに強烈な悪臭(におい)の2発目が俺の鼻を襲ってくる。 「っっっっっ!?」 跳び箱の中の空気が黄土色に染まったような感覚。 ブビビビビビィィィィ~~~ッッ!! そのダメージも癒えぬうちに、3発目のオナラが襲ってくる。 豚の鳴き声のような音で、それに見合う腐肉を濃縮したような悪臭(におい)。 跳び箱の中は既に阿鼻叫喚の臭気地獄と化していた。 (ユ、ユキカの奴、何でこんなにオナラを浴びせてくるんだ・・・!) 一瞬、俺の存在に気付いてオナラ責めにしているのかと思ったが、それにしては様子がおかしい。 どうやらユキカは体育倉庫が薄暗いせいで俺の存在に気付いておらず、自分以外に誰もいないと勘違いしてガス抜きをしているのだろう。 (どうする?此処から出るか?いや、しかし・・・) 此処に隠れていた理由をどう説明する? 足元に落ちているDVDが俺のものでないと、どうやって証明する? そんな事を考えていると、 ブボボボオオオォォォォーーーッッッ!!! ユキカの放った4発目のオナラが俺の思考を中断させた。 (と、とにかくもう限界だ。早く此処を出よう!) 結論が出たところで、俺は跳び箱の最上段を持ち上げようとする。 しかし、 ガタッ。 ふいに誰かが扉に手を掛ける気配があった。 「紅月ー、片付け終わったかー?」 同時に、扉越しに数学の声が聞こえてくる。 「ほ、星野先生!?」 それを聞いたユキカが驚きの声を上げ、直後に驚くべき行動に出た。 何と俺が隠れていた跳び箱の最上段を持ち上げると、その中に頭から飛び込んできたのだ。 「ちょっ、ユキ――」 「せ、せんぱ――」 俺たちが声を上げそうになったのは一瞬。 ギギギギィ・・・ッ。 直後に扉が開いたので、俺たちはすぐさま驚きと戸惑いの声を呑み込む。 「ジュース買ってきてや・・・臭っ!何だ、この悪臭(におい)?」 倉庫内に漂う悪臭(におい)に、数学教師が驚きの声を上げる。 「紅月の奴、腹でも壊してたのか?まあいい、片付けは終わってるみたいだし、鍵を掛けておくか」 そう言うと、数学教師はすぐさま体育倉庫の扉を閉め、1拍置いて施錠する音が聞こえてくる。 この体育倉庫は中からも開けられるし、鍵は俺が持っているので閉じ込められたという事はないのだが・・・。 「せ、先輩、いつまで私のお尻に顔を埋めてるんですか?」 ユキカが怒りと羞恥を孕んだ口調で問い掛けてくる。 現在、彼女は跳び箱内で体育座りしていた俺に背中から上下逆さまの状態で覆い被さっている。 そのため、彼女の尻が俺の顔に押し付けられる格好になっているのだ。 スカートも豪快に捲れ上がっており。ピンクのショーツもずり落ちて半ケツ状態になっていた。 「仕方ねぇだろ!というか、お前の方から飛び込んできたんだろうが!」 顔に感じる尻の柔らかい感触、そしてショーツに染み込んだ汗の匂いやオナラの残り香から意識を逸らすべく、やや大袈裟な口調で言い返す。 「んんっ、あんまり喋らないでください!い、息が当たって・・・んああっ!?」 ユキカが甲高い声を上げた直後、 ブブブウウウウウウウーーーーッッッ!!! 顔に押し付けられた彼女の尻から今まで以上に大音量のオナラが噴き出してくる。 「んん~~~~っ!?」 零距離で放たれたオナラは鼻へとダイレクトに流れ込み、頭の中がぐちゃぐちゃに掻き回される。 「ちょっ、嗅がないでください!というか、息をしないでください!」 「ぷはっ!無茶言うな!」 どうにか彼女の尻から顔をずらしつつ抗議する。 「急に動かないで・・・ひゃあっ!」 ブブブブブブブブブブブゥーーーッッッ!!! 悲鳴交じりの声とオナラが同時に溢れ出してくる。 「かはっ!?」 頭を金属バットで殴られたような衝撃。 どうにかこの悪臭(におい)の中から脱出したいが、あいにく俺の両腕は上に覆い被さったユキカが邪魔で使えない。 現状で自由になるのはユキカの両脚だけだが、今の彼女にそれを期待するのは無理な相談だろう。 そうなると、やはり自力で脱出するしかない。 (まずは両腕の自由を確保しないとな) 「ユキカ、ちょっと身体に触るぞ」 一応、断りを入れてから彼女の身体に触れる。 「えっ!?先輩、何を・・・きゃあっ!?何処を触ってるんですか!んっ!」 ボッフオオオオオオォォォォォーーーッッッ!!! 怒りの声を上げながら、ユキカがオナラを浴びせてくる。 自分の意思で息んだだけあって、今まで以上に強烈な悪臭(におい)だ。 「かはっ!?や、やめろ、ユキカ!誤解だ!」 「いきなり私のお尻を触っておいて、何が誤解なんですか・・・ふんっ!」 ブウウウウウウウウウウウゥーーーッッッ!!! 「んむうううううっ!?」 ダ、ダメだ。 とても話が通じる状況じゃない。 やむを得ず、俺は方針を変更して両肩と後頭部を跳び箱の内側に押し付ける。 (このまま跳び箱を倒せば・・・) 「聞いてるんですか、先輩・・・ふんっ!」 ブブブッブブッブブブッブブゥーーーッッッ!!! 俺が脱出に集中しているのを無視されていると勘違いしたらしく、ユキカがまたユキカがオナラを浴びせてくる。 「むぐうううううっ!?」 その強烈な悪臭(におい)に悶えつつ、 ドンッ!ドンッ! 俺は残る力を振り絞って跳び箱を倒そうと試みる。 だが、跳び箱はビクともしない。 「くっ、ダメか・・・」 「先輩、もしかして跳び箱を倒そうとしてるんですか?」 ユキカが幾分か落ち着きを取り戻したらしい口調で問い掛けてくる。 「ああ、そうだよ。お前の身体を触らないように出ようと思ったら、そうするしかないだろ」 「さっきのは、そういう事だったんですか。すみません、私はてっきり――」 「てっきり、何だよ・・・いや、言わなくていい。それより此処から出る事を考えてくれ。俺1人じゃどうにもならん」 「そうですね。いつまでもこんな臭い所にいられませんし・・・」 「一応言っとくけど、臭いのはお前のせいだからな?」 「先輩。すみませんが、暫く目を瞑っていてください」 俺のツッコミを無視して、ユキカがそんな指示を出してくる。 「どうするんだ?」 「私が脚で1番上の段を持ち上げます。絶対に目を開けないでくださいね」 「わ、わかった」 ユキカの言葉に頷き、俺は硬く目を閉じる。 すると、 「よいっしょ」 ユキカの尻が俺の顔から離れていく。 目を閉じているので推測の域を出ないが、おそらく跳び箱を持ち上げるための取っ手に爪先を掛けようとしているらしい。 ガタッ。 「よし、上手く行った。じゃあ、行きますよ、んっ!」 ユキカが力を込めると、体育倉庫内に大きな音が響き渡る。 どうやら上手く最上段を蹴り上げる事に成功したようだ。 しかし、その行為には大きな代償を払う事になった。 ブッスウウウウウウウウウウゥゥゥーーーッッッ!!! ユキカが腹に力を込めた事で、特大のオナラが彼女の尻から噴き出したのだ。 その猛烈な臭気は油断していた俺の鼻へと一気に流れ込み、 「うっ・・・」 俺の意識を黄土色の闇の中へと沈めていった。 *  誰かに身体を揺すられるのを感じ、俺は意識を取り戻した。 「よかった、気が付いたんですね、先輩」 「ユキカ?」 目を開けると、ユキカが俺の顔を見下ろしていた。 背中の感触からすると、どうやらマットの上に寝かされているらしい。 「鼻、大丈夫ですか?」 問い掛けながら、ユキカが俺の鼻を撫でてくる。 「あ、ああ、大丈夫だ!」 ユキカの手から逃れるように、俺は勢いよく立ち上がる。 それで気付いたが、俺たちが入っていた跳び箱が元通りになっている。 どうやら俺が気絶している間に、ユキカが片付けてくれたらしい。 「ありがとな、ユキカ。跳び箱、片付けてくれて」 「いえ、今回の件はその、私にも責任がありますから。ところで――」 赤面さていたユキカの顔を、怒りの色が染め上げていく。 「これはいったいどういう事ですか?」 底冷えのする声で問い掛けてくるユキカの手には、今回の事件の発端となったエロDVDが握られていた。 「いや、それは此処に落ちてたんであって、決して俺のじゃ・・・」 「爆乳お姉さんと淫らな1日・・・先輩はそんなに胸の大きな人が好きなんですか!」 「俺の話を聞け!後、突っ込む所はそこじゃねぇ!」 結局、俺がユキカの誤解を解いて体育倉庫を後にしたのは、それから30分後の事だった。 終


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