SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
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柊セツナの3度目の災難

 蛇に睨まれた蛙。 今の私――柊セツナは正にそんな感じだろう。 「セツナ」 凛とした声が私の名を呼ぶ。 「は、はひ!」 動揺のあまり、声が上擦ってしまった。 「今の話に嘘偽りはありませんね?」 「は、はい!天地神明に誓って、嘘は申しておりません!」 というか、こんな作り話をして何になるというのか。 単に私が恥を掻くだけではないか。 「わかりました」 声の主がゆっくりと立ち上がる。 「では、この目で確かめてみましょう」 その言葉を聞き、私は血の気が引いていくのを感じていた。 *  翌日の日曜日。 私はあの男――村崎(むらさき)リョウジを電話で呼び出していた。 あの馬鹿について、もう説明は要らないだろう。 私の1つ下の後輩で、私の屁が好きという大馬鹿者だ。 「では、待っているぞ」 受話器を置いて待つこと10分少々。 ピンポーン。 玄関のインターホンが鳴った。 「・・・来たか」 来てしまったか。 「待ちなさい」 「えっ?」 立ち上がろうとしたところで、凛とした声に制止されてしまう。 「私が出ましょう」 「いや、しかし・・・」 「私が出ましょう」 声は繰り返す。 「わ、わかりました・・・。では、お茶を淹れてきます」 そう告げて、私は居間を後にする。 3人分の湯呑みを持って戻ってくると、 「あっ、先輩。こんにちは」 あの馬鹿がいつもの軽薄な笑みを浮かべていた。 「・・・本当に来てしまったのか」 「えっ?」 「いや、何でもない。これは粗茶だが・・・」 「あっ、ありがとうございます」 座卓に湯呑みを置き、私もリョウジの斜め向かいの位置に腰を下ろす。 「それにしても、驚きましたよ。先輩にこんな綺麗なお姉さんがいたなんて」 「ああ、普段は離れて暮らしているからな」 今の言葉でわかったと思うが、先程リョウジを迎えに出たのは、私の3つ上の姉――柊マリナである。 長い髪や切れ長の瞳は私とよく似ているが、顔立ちは私よりずっと女らしい。 また、普段から和服を愛用している事もあって、立ち居振る舞いも優美だ。 正直、私など彼女に比べれば、完全な劣化版だといえる。 「あっ・・・」 ふいに姉上が小さく声を漏らした。 次の瞬間、 ぷぅ~っ。 彼女の尻から壊れたラッパのような音が聞こえてきた。 「っ!?」 私は驚きのあまり息を呑む。 (あ、あの姉上が人前で屁を・・・!?) 「申し訳ありません。不快な思いをさせてしまって」 言葉を失う私とは対照的に、姉上が落ち着いた様子で頭を下げている。 一方で、 「い、いえ、気にしないでください」 この馬鹿が少し嬉しそうなのが気に入らない。 いつも私の屁が最高だと言っていたのは何だった・・・って、私は何を考えているんだ!? 「話は変わりますが、リョウジさんは学園に入学してから剣道を始めたんですよね?」 「は、はい。先輩、あっ、セツナさんに才能があると言われて・・・」 「セツナから聞いていますよ。リョウジさんの上達の早さには、目を見張るものがあるとか」 「い、いえ、俺なんかセツナさんに比べたら、まだ大した事ないです」 「どうでしょう?せっかくですから、私とお手合わせ願えませんか?」 「なっ!?」 姉上の提案に、私は驚愕の声を上げた。 「お、俺がマリナさんと試合をするんですか?」 これにはさすがのリョウジも驚いたらしく、戸惑いの表情を浮かべている。 「あ、姉上!いくら上達したとはいえ、リョウジはまだ剣道を始めた馬鹿りで――」 「セツナ、私はリョウジさんに訊いているのです」 姉上の目付きが鋭さを増す。 それはほんの一瞬の出来事だったが、 「は、はひっ!」 私が竦み上がらせるには十分だった。 「それで、どうでしょう、リョウジさん。改めてお訊きしますが、私とお手合わせ願えませんか?」 問い掛けながら、姉上がリョウジの傍らまで移動してくる。 「えっと・・・」 リョウジが視線を向けてきたので、私は千切れん馬鹿りに首を左右に振る。 いくら目覚しい成長を遂げているとはいえ、あの程度の腕で姉上に挑むのは無謀以外の何者でもない。 「も、申し訳ないですが、今回は――」 「無論、タダでとは言いません。もし私に勝てたら――」 後半は姉上がリョウジに耳打ちしたので、私には聞こえなかった。 しかし、 「わかりました!やらせていただきます!」 効果は絶大だったようで、リョウジはあっさりと勝負を受けてしまった。 (こいつは本当にどこまで馬鹿なのだ・・・) 「セツナ、行きますよ」 「は、はい只今!」 姉上の言葉に殆ど反射的に応じて、私も道場の方へと歩き出した。 *  意外に思うかもしれないが、私が姉上と剣を交えた事はたった1度しかない。 あれは姉上が大学進学を期に、1人暮らしを始める前の日。 私は自分の成長の成果を見せようと、姉上に試合を申し込んだ。 結果は、私の惨敗。 姉上の強さは圧倒的で、当時の私には手も足も出なかった。 おそらく今の私でも姉上に勝つのは到底叶わぬ夢だろう。 そんな姉上と、リョウジは対峙している。 「ルールを確認します。時間は無制限で、私が10本取るまでに、リョウジさんが1本でも取れば勝ちです。いいですね?」 「はい!」 リョウジが力強く頷く。 わかっているのか? お前が対峙しているのは、最強の剣士なのだぞ? 私がそんな事を考えている間に、2人は蹲踞して向かい合う。 「・・・はじめっ!」 意を決し、審判約の私は試合開始を宣言する。 そこからの流れは、まるで映画の一場面のようだった。 「めーんっ!胴っ!」 姉上が一瞬でリョウジとの間合いを詰め、流れるような動きで面と胴を1本ずつ決めたのだ。 「リ・・・」 思わず出そうになった声を、辛うじて吞み込む。 今は試合中だ。 審判である私が邪魔をする訳には行かない。 「胴っ!篭手っ!」 私の葛藤を他所に、姉上は立て続けに竹刀を打ち込んでいく。 それらはすべて正確無比。 精密機械のような動きで、リョウジの隙を突いている。 「面っ!」 結局、5分が経過した時点で、姉上は9本先取していた。 (後1本か) はっきり言って、リョウジの力量で姉上に勝つのは不可能だ。 それなら、1秒でも早く終わってくれた方が私の気も休まるというものである。 しかし、 「・・・」 リョウジは私の思いとは裏腹に、姉上から逃げるように間合いを取っていく。 無駄だ。 その程度の間合い、姉上にとってはないのも同じだ。 「!」 私の予想を裏付けるように、姉上が一気にリョウジとの間合いを詰める。 直後、 「っ!?」 リョウジの取った行動に、私は絶句する。 間を置かず、竹刀が防具を打つ10度目の音が道場内に響き渡った。 *  試合を終え、2人が向かい合って一礼する。 「私の負けですね。まさかあんな無茶をするとは思いませんでした」 姉上が面を取りながら言う。 「すみません」 リョウジも面を取って、深々と頭を下げる。 「謝る必要はありません。あなたが私から1本取ったというのは、紛れもない事実なのですから」 「は、はい」 「はい、ではない!この大馬鹿者が!」 我慢が限界に達し、私は声の限りに怒鳴り付ける。 「自分がどれだけ危険な事をしたか、わかっているのか!」 この馬鹿が姉上から1本取った方法。 それは「自ら隙を作る」というものだった。 姉上が10本目を取ろうと間合いを詰めた瞬間、この馬鹿はわざと少し顎を上げて隙を作ったのだ。 それに対し、姉上の身体は当然のように喉元を狙った突きを放とうとした。 その時、姉上の心にわずかな迷いが生まれた。 相手が上級者なら姉上はそのまま突きを決めただろう。 しかし、相手は剣道を始めて日の浅い、しかも年下の男だ。 そんなリョウジの喉元に突きを叩き込むのを、姉上はわずかに躊躇った。 そこに生まれた隙を突いて、リョウジは姉上の面に竹刀を打ち込んだのだ。 「落ち着きなさい、セツナ」 「し、しかし、姉上・・・!」 「セツナ!」 「わ、わかりました」 姉上に一喝され、不本意ながら引き下がる。 「心配してくれて、ありがとうございます、先輩」 「なっ!?か、勘違いするな!私は怪我人を出して姉上の経歴に傷を付けたくなかっただけだ!」 「セツナ、こういう時は素直になるべきですよ」 「あ、姉上まで!わ、私は・・・って、何をなさっているのですか!?」 「見ての通り、袴を脱いでいるのです」 私の問い掛けに答えながら、姉上は脱いだ袴を畳んでいる。 「わかっているのですか!?此処にはリョウジもいるのですよ!?」 普段から和服を着ている姉上はショーツを穿いていない。 そのため、姉上は袴を脱ぐだけで下半身裸になり、形のよい尻が丸見えになってしまうのだ。 「お前も見るな!目を閉じろ!」 姉上の説得は無駄と判断し、私はリョウジの前に移動して目隠しになる。 「よいのです、セツナ。これはリョウジさんとの約束なのですから」 「約束?」 「私から1本取る事ができたら、好きなだけ私の屁を嗅がせて差し上げる。そういう約束だったんです」 (本当か?) 首から上をリョウジの方に向け、視線だけで問い掛ける。 「・・・」 リョウジがぎこちなく頷く。 どうやら本当のようだ。 「では、始めましょうか。私はどうすればいいですか?」 「えっと・・・じゃあ、前屈みになってお尻を突き出してくれますか?」 「こう、ですね」 リョウジに言われるまま、姉上が尻をリョウジの方に突き出す。 実の姉とはいえ、その肛門をまじまじと見る機会など滅多にない。 引き締まった尻肉の中央に息づく窄まりは正に菊の花のようで、こんな所でさえ姉上は私より美しく見える。 「では、失礼します」 そう断りを入れて、リョウジが姉上の尻に顔を押し付けようとする。 いつも私にやっているように。 「・・・」 「せ、先輩?」 「ん?」 気が付くと、無意識にリョウジの後頭部を掴んでいた。 「あの、離してくれると有り難いんですけど・・・」 「ああ、すまなかったな。私の事は気にせず、心行くまで姉上の屁を堪能するといい」 ギュウウウウ・・・ッ! 言葉に反して、何故か後頭部を握る手に力を込めてしまう。 「んっ、そろそろ出そうです・・・あっ!」 姉上が小さく声を漏らした直後、 プウウウウ~~~ッ! 彼女の尻から壊れたラッパのような音の屁が噴き出した。 音とは対照的に、濃厚な発酵臭が私の鼻まで漂ってくる。 (こ、これが姉上の屁・・・) 「セツナから女性の屁が好きだと聞いていたのですが、私の屁はどうですか?」 「は、はい。とっても臭くて、最高です!」 「そうですか。では、もっと嗅いでくださいね・・・んっ!」 そう言って、 ブブブブブブーーッ! 姉上が2発目のオナラを放つ。 「んんっ!」 1発目より濃い腐卵臭に、リョウジが苦悶とも歓喜とも付かない声を上げる。 「本当に屁が好きなんですね。では、もっと思いっ切り・・・それっ♪」 ブウウウウウウウウウゥゥゥーーッッ!! リョウジの反応が面白くなってきたのか、姉上がどこか楽しげに3発目の屁を放つ。 「んんっ!」 「さらに一発・・・んっ♪」 ブッスウウウウウウウウウーーーッッ!! 「んんっ!?」 「続けてもう1発・・・ふんっ!」 ブブブッブウウウウウウウーーーッッ!! 「んむうううううっ!?」 「・・・」 リョウジが声を上げるたびに、後頭部を掴む手に力が入っていく。 このままだと、リョウジの頭蓋骨を握り潰してしまいそうだ。 (この馬鹿は屁を嗅がせてくれる女なら、誰でもいいのか!) 「せ、先輩、割とマジで痛いんですけど・・・」 「ああ、そうか」 ギュウウウウウ・・・ッ! 「あいにくだが、右手が言う事を聞いてくれないんだ」 「セツナは本当に素直じゃないですね。申し訳ないですが、私もこの1発を最後にさせてもらいますね・・・ふんっ!」 姉上が力強く息んだ直後、 ブブブブブウウウウウゥゥゥーーーッッ!! その尻から特大の屁が放たれた。 「うっ!」 強烈な腐卵臭が私の鼻まで届き、思わずリョウジの後頭部から手を離してしまう。 「ふぅ、ご満足いただけましたか?」 「は、はい。ありがとうございました」 リョウジが尻から顔を離したところで、姉上が袴を穿き直す。 こうして、姉上とリョウジの試合はリョウジの勝利で幕を下ろした。 *  リョウジに屁を堪能させた後、姉上は用事があるといって外出した。 現在、私とリョウジは縁側に並んで座っている。 「結局、マリナさんは俺の実力を見たかったという事でいいんでしょうか?」 「姉上の事を気安く『マリナさん』などと呼ぶな」 「は、はい。すみませんでした」 「・・・」 「先輩、もしかして怒ってますか?」 「どうして私が怒らねばならんのだ?」 単に、姉上が勝手にお前と約束して、自分の屁を嗅がせただけではないか。 そんな事で、私が怒らなければならない理由などない。 そう、私が怒る訳がないのだ。 メキメキメキ・・・ッ! 「せ、先輩、湯呑みが割れそうですよ?」 「安物だ。気にするな」 どうも今日は手に力が入ってしまうようだ。 湯呑みを置き、静かに息を吐いて心を沈める。 「あ、あの、先輩」 「何だ?」 「ちょっと言いにくいんですけど、試合前に先輩のお姉さんとした約束・・・」 「試合に勝ったら、自分の屁を嗅がせてやると言われたんだろう?それがどうかしたか?私には何の関係もない事だろう?」 そう、私には何の関係もないのだ。 姉上がこいつと何を約束しようと、私には一切関係がない! 「その約束、実は続きがあるんです」 「続き、だと?」 「お姉さんはこう言ってたんです。もし私に勝てたら、私の屁を嗅がせて差し上げます。もし足りなければ、セツナの屁も付けますよ、と」 「なっ!?」 わ、私の屁も付けるだと!? あ、姉上はいったい何を考えているんだ!? 「そ、それで、申し訳ないんですけど、お姉さんのオナラだけでは足りないので、先輩のオナラも嗅がせてくれませんか?」 リョウジが私の顔色を窺うようにしながら問い掛けてくる。 「・・・」 私の答えは決まっていた。 「・・・かった」 「えっ?」 「わかった、と言ったんだ」 「じゃあ・・・」 「か、勘違いするな。姉がした約束に対して、妹として責任を取るだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。わかったか?」 「はい!」 リョウジがまるで大好きなお菓子を貰った子供のような笑顔を浮かべる。 (本当にこの馬鹿は・・・) 「さっさと済ませるぞ。そこに寝転べ」 「はい!」 リョウジがその場に寝転がったので、 ずしっ! 私はスカートをたくし上げてその顔の上にどっしりと腰を下ろした。 「先輩、最近はずっと褌ですね」 「そうだな」 何処かの馬鹿に締めてくれと強請(ねだ)られてから、ずっと締めているからな。 最近では普通のショーツを穿くと違和感を覚えるほどだ。 「先に言っておくが、私は姉上ほど上品ではないからな。屁は姉上のより臭いぞ?」 「はい。望む所ですっ!」 「はぁ、大馬鹿者が・・・ふんっ!」 深々と溜め息を吐いてから、私は腹に力を入れて息む。 直後、 ブブブブブウウウウウーーーッッ!! 姉上の屁とは比べ物にならないほど大音量の屁が私の肛門から噴き出した。 腐った卵とキャベツを混ぜ合わせたような悪臭(におい)が私の鼻まで漂ってくる。 「んんーっ!?や、やっぱり先輩のオナラは、臭くて、最高ですっ!」 私の屁の直撃を受けたリョウジが右手でサムズアップしながら言う。 この悪臭(におい)が最高だとは・・・本当にこいつは大馬鹿者だ。 「今日はとことん行くぞ・・・ふんっ!」 より強く腹に力を込め、2発目の屁を放つ。 「んんっ!?」 自分でも鼻を摘みたくなるほど強烈な悪臭(におい)が尻から溢れ出し、リョウジが喜びとも苦悶とも付かない声を上げる。 「そういえば、さっき姉上の屁も臭くて最高だと言っていたな?ふんっ!」 ブブブウオオオオオォーーーッッ!! 「むうううううっ!?」 「お前は女の屁なら誰でも最高なのか?」 ブオオオオオオォォォォーーーッッ!! 問い掛けながら、私はリョウジの顔に屁を浴びせていく。 「んむうううううっ!?」 最近になって気付いたのだが、こいつはこうやって質問しながら屁を浴びせてやると、より興奮した声を・・・って、何をやっているのだ、私は!? ブブブッフウオオオオォォォォーーッッ!!! 我に返った直後、尻穴から特大の屁が噴き出す。 さらに、 「おやおや、何だか凄い事になっていますね」 背後から絶望の声が聞こえてきた。 「あ、姉上・・・」 油の切れた機械のような動きで振り返ると、そこには和服姿の姉上が立っていた。 (み、見られた・・・) 全身から血の気が引いていくのを感じる。 「こ、これは、その・・・」 思考が混乱し、上手く言葉が出てこない。 「いつもセツナはリョウジさんとこのような事をしていたのですね」 室内に漂う悪臭(におい)は不快らしく、姉上が少し顔を顰めながら言う。 その左手は片手でさり気なく鼻を覆っていた。 「ち、違うんです、姉上!こ、これはあくまで姉上に勝ったこの馬鹿への敢闘賞というか、とにかく違うんです!」 「セツナ」 「は、はい!」 姉上は私の言葉を中断させると、床に1本のスプレー缶を置いた。 「終わったら、ちゃんと後始末をしておきなさい。消臭スプレーは此処に置いておきますから」 そう言い残し、姉上は静かに去っていった。 「あ、あの、先輩・・・?」 「・・・いだ」 「えっ?」 「全部、貴様のせいだ!大馬鹿者!ふんっ!」 ブボボボボボオオォォォォーーーッッッ!!! 「むぐっ!?」 こうなれば、もう自棄(やけ)だ。 こいつが気絶するまで屁を浴びせてやる! 「ふんっ!」 両手で腹を押しながら、力を込める。 ボッフウオオオォォォォォーーーッッッ!!! さらに、屁の悪臭(におい)をリョウジの顔に塗り込むように、腰を前後に動かしてやる。 「むぐぐぐ・・・」 尻の下から聞こえる声が徐々に弱々しくなってきた。 さすがのリョウジもこれだけの屁には耐えられないらしい。 ブベベベベベベベベベベベベベベッッッ!!! 「・・・」 何発目かの屁を浴びせたところで、リョウジの動きが止まる。 どうやら屁の悪臭(におい)に耐えられず、気を失ったらしい。 「ようやくか」 額の汗を拭い、ゆっくりとリョウジの顔から腰を―― ガシッ! 「なっ!?」 ふいにリョウジの両手が私の太腿を掴み、そのまま私の尻に顔を押し付けてきた。 「な、何をしているのだ、大馬鹿も・・・ひゃあっ!?」 慌てる私を他所に、リョウジは褌の股布をずらして屁の発射口である尻穴を露わにする。 さらに、リョウジは驚くべき行動に出た。 「んんっ!?」 なんと度重なる放屁で緩んだ尻穴を、舌先でつついてきたのだ。 尻穴に生温かいものが触れる未知の感覚に、思わず声を上げてしまう。 ブボォッ!! 驚いた拍子に、爆音の屁まで漏れてきた。 「な、何をやっているのだ、大馬鹿者!屁の悪臭(におい)を嗅ぎすぎて本物の馬鹿になったか!?」 「先輩の、オナラ、もっと・・・!」 うわ言のように言いながら、リョウジは私の尻穴を解すように舌を這わせてくる。 「や、やめろ、そんなに舐めたら・・・んあっ!?」 ブブッブブウウウウウウウーーーッッッ!!! 尻穴への刺激で、さらに屁が溢れてくる。 念入りに解された尻穴は、もはや私の意思ではどうする事もできない。 ブブッブブブッブブッブブゥーーーッッッ!!! 私にできるのは腸内(はら)に残った屁をすべて出し切るまで、この羞恥に耐える事だけだ。 (早く終われ、終わってくれ・・・!) 私の願いとは裏腹に、 ブウウウウウウウゥゥゥゥゥーーーッッッ!!! 尻穴はどんどん屁を生み出し続けている。 「先輩・・・!」 リョウジが私の事を呼んだかと思うと、 ずぶっ・・・! その舌が私の腸内に捻じ込まれた。 「っっっっっっ!?」 全身をぞわぞわした形容し難い感覚が襲う。 直後、 ブボボボボボオオオォォォォォーーーッッッ!!! 特大の屁を放ちながら、私は羞恥と悪臭(におい)がごちゃ混ぜになった感覚に耐えられず、糸が切れるように意識を失った。 *  10分後。 「何か遺言はあるか?」 問い掛けながら、家宝である名刀、蛾眉(がび)の鯉口を切る。 「すみません、調子に乗りました!」 リョウジが深々と土下座しているが、そんな事は関係ない。 あれだけの生き恥を晒したのだ。 こいつを殺して私も死ぬしかない。 「落ち着きなさい、セツナ」 リョウジの傍らに立つ姉上が宥めてくるが、 「止めください、姉上!私はこいつを刀の錆にしなくては気が治まらんのです!」 私は蛾眉を抜き放ちながら言い放つ。 「いい加減にしなさい!」 「っ!?」 姉上に怒鳴られ、思わず蛾眉を鞘に納めてその場に正座してしまう。 「一時の激情に任せて家宝である蛾眉を抜いてしまうとは何事ですか!そんな事で、剣の道を極められると思っているのですか!」 「も、申し訳ありません!」 リョウジと同様、いや、それ以上に深々と土下座する。 本当に、私は何をやっているのだ。 いくら恥を掻いたからといって、家宝のカまで持ち出してしまうとは・・・。 「今回の件は私にも責任があるので大目に見ますが、次はありませんよ」 「は、はい!わかっております!」 「それと、リョウジさん」 「は、はい!」 姉上に名前を呼ばれ、リョウジは土下座の姿勢のまま器用に姉上の方へ向き直る。 「こんな不出来な妹ですが、これからもよろしくお願いいたしますね」 「は、はい!わかりました!」 「少し顔を上げていただけますか?」 「は、はい」 姉上の言葉に頷き、リョウジが顔を上げる。 「えっ?」 そこにあったのは、和服に包まれた姉上の尻だった。 「んっ!」 ブブブブーーッッ! 驚くリョウジの顔に、姉上が屁を浴びせる。 「これからもセツナと仲良くしていただけるなら、時々は私の屁も嗅がせてさしあげますので」 姉上が珍しく悪戯っぽい笑みを浮かべながら言う。 「はい!ありがとうございます!」 姉上の屁でいつもの調子を取り戻したリョウジが力強く頷く。 「・・・」 私は無言で立ち上がり、ゆっくりと蛾眉を抜き放つ。 「せ、先輩、いったい何を・・・?」 「・・・」 やっぱりこいつは斬るべきだ。 いや、斬らねばならん! 「この大馬鹿者!今すぐ蛾眉の錆にしてやる!そこに直れ!」 私が振るった斬撃を、リョウジは紙一重で回避する。 「避けるな!」 「無茶言わないでください!」 リョウジが部屋を飛び出していったので、私も蛾眉を手に後を追う。 この後、姉上が竹刀を手に止めに入るまで、私たちの追いかけっこは延々と続くのだった。 終


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