SamSuka
JUDO(あるいはスサノオ)
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魔法少女のショーツになった臭い1日

 魔法。 科学が急速に発達した現代において、もはや絵空事だと思われている代物だ。 しかし、この魔法が実在する事を、俺――仁藤(にとう)シュンヤは身を以って実感した。 なにしろ俺は今、1人の少女のショーツになっているのだから。 俺をショーツに変えたのは、美堂コヨミと名乗る魔女だった。 見た目は俺と同じ17歳ぐらいの少女だが、本人曰く「魔法で若さを保った、大正生まれのお婆ちゃん」らしい。 ショーツにされて、今日で7日目。 また長い1日が始まる。 *  ショーツになった俺にとって、夜はとても長く苦しいものだ。 まず、眠る事もできない。 そのため、暗闇の中で時が流れるのをじっと待たなくてはならない。 それだけではない。 ブブブウウ~~~ッッ! 『むぐっ!?』 ふいに濃厚なニンニク臭が嗅覚に襲い掛かってくる。 このように、コヨミが断続的に強烈な寝っ屁を漏らすので、片時も気を抜く事ができないのだ。 ブスウウウ~~~ッッ! 『ぐふっ!?』 「んっ、んんっ・・・」 何十発目かの寝っ屁を浴びたところで、ようやくコヨミが目を覚ました。 彼女はショーツ(おれ)1枚だけという格好で寝ているため、彼女がベッドを降りると視界がパッと明るくなる。 「うん、今日もいい天気ね」 コヨミが窓際まで移動し、カーテンを開けながら言う。 「太陽が眩しいわよ。ほら、あなたも見る?」 問い掛けながら、コヨミがその場でくるりと反転し、窓の方に尻を突き出す。 『うっ・・・』 眩い太陽光が目を灼いた瞬間、 ブッフゥゥォォォォォォォォォーーーッッッ!!! コヨミが特大のオナラを放った。 『むううううううっ!?』 ニンニクと卵、そこに牛乳を加えて丸ごと腐らせたような強烈な悪臭(におい)が嗅覚を襲ってくる。 「どう?爽やかな朝に目覚めの1発♪ばっちり目が覚めたでしょ?」 コヨミが心底楽しげに尻を震わせてみせる。 『くっ・・・』 「あれぇ?返事がないけど、今のじゃ物足りなかったかしら?」 『い、いえ、十分で――』 「んんっ!」 ボブブブブブブブウゥゥゥゥゥーーーッッッ!!! 俺が応えるより早く、コヨミが2発目のオナラを放った。 『っっっっっっ!?』 嗅覚を襲う悪臭(におい)が倍化し、さらに俺の身体(ショーツ)へと染み込んでいく。 「どう、満足してくれた?」 『は、はい・・・』 「よろしい」 俺の反応に満足したのか、コヨミが大仰な動作で頷いて着替えを始める。 ショーツ(おれ)とお揃いのブラを着け、さらに制服を思わせる紺色のブレザーを着込む。 上着は普通のデザインだが、スカートは後ろの布地が逆U字型に切り抜かれている。 どうやら「ショーツ(おれ)にも外の景色が見えるように」という彼女なりの配慮らしい。 着替えを済ませると、コヨミが今時珍しいレコード盤に針を落とした。 程なくして軽快な音楽が流れ始めると、コヨミが慣れた様子でラジオ体操を始める。 「いっち、にぃ、さんっ、しぃ♪」 そのリズムに合わせて、 ブゥッ!ブゥッ!ブゥッ!ブゥーッ!! コヨミがノリノリでオナラを浴びせてくる。 「ごぉ、ろくっ、しっち、はちっ♪」 ブゥッ!ブゥッ!ブゥッ!ブゥーッ!! 『ぐっ・・・!』 次々と浴びせられるオナラの連打。 濃厚な腐卵臭に、嗅覚が滅多打ちにされる。 それでも、コヨミのラジオ体操は続き、いよいよ最後の深呼吸になる。 コヨミが大きく息を吸い込み、それをゆっくりと吐き出していく。 それが終わった直後、 ブボオオオオオオオオオオオオーーーッッッ!!! 尻からも大音量のオナラが吐き出させる。 『むうううううううっ!?』 「ああ、ゴメン。上だけじゃなくて、下からも息吐いちゃった♪」 言葉こそ謝っているが、俺はショーツになってから毎朝同じ目に遭っている。 完全にわざとだ。 「さてと、朝の体操が済んだところで、お待ちかねの朝ご飯ね」 そう言うと、コヨミが慣れた様子で朝食の準備を始める。 魔法使いという肩書きに反し、彼女の朝食は白飯が中心の純和風なメニューだ。 「やっぱり朝食には納豆だよね」 コヨミが卵を落とした納豆を箸で掻き混ぜながら言う。 この卵入りの納豆も彼女の朝食には欠かせないメニューらしい。 暫くして、 ブブブブブボォォォォーーッッ!! コヨミが何の前触れもなくオナラを放った。 『むうううううっ!?』 納豆を食べているせいか、腐った豆の何倍にも凝縮したような悪臭(におい)だ。 「ん?いきなり叫んだりして、どうかしたの?」 わざとらしく問い掛けながら、 ブボボボボボボボボブゥォォォーーーッッッ!!! コヨミがさらに強烈なオナラを浴びせてくる。 『むううううううっ!?』 まるで全身を納豆の中に沈められたような感覚。 鼻があったら今すぐにでも鼻をもぎ取りたくなるほど強烈な発酵臭だ。 「やっぱりいいわね。オナラに対して反応があるのって。そんな訳で、もう1発♪」 ブプウウウウウウウゥゥゥゥゥ~~~ッッッ!!! コヨミが嬉々として3発目のオナラを浴びせてくる。 『んむうううううっ!?』 「ごちそうさまでした」 悶絶する俺の言葉を他所に、 ブブプププププブププッビピィ~~~ッッッ!!! コヨミが甲高い音のオナラと共に、朝食を終える。 「さて、お腹いっぱいになったし、今日も1日がんばりましょう♪」 『・・・』 俺の1日はまだ始まったばかりだ。 *  コヨミの家は人里離れた山の中にあり、広い庭にはたくさんの植物が育てられている。 彼女曰く、どれも魔法薬の材料に使うものらしい。 朝食の片付けを済ませると、コヨミは植物の世話をするために白い軍手とエプロンを着けて庭へ出る。 「うん、どれも順調に育ってきたわね」 ホースで水を撒きながら、コヨミは順番に植物の成長具合を確かめていく。 「ほら、あなたも見て」 コヨミが身体を反転させて尻を植物の方へ突き出せ、俺にも件の植物を見せてくる。 おそらくハーブの類なのだろうが、植物に疎い俺にはそれ以上の事はわからない。 「ここまで育てるの、結構苦労したのよ。じゃあ、最後はこの仔ね」 『ま、またあそこへ行くのか』 「当然よ。植物は毎日の世話が重要なんだから」 そう言いながら、コヨミが庭の隅へと移動する。 そこには、直径60cmほどの丸太が立てられており、拳大の果実をつけた蔦状の植物が幾重にも巻き付いている。 果実は極彩色の皮に包まれており、とても食用とは思えない代物だ。 「う~ん、これだけ育てば十分かな」 コヨミが植物に水をやりながら、果実の状態を確認する。 「でも、念のために、もう少し栄養をあげておこうかな」 コヨミが身体を反転させて植物の方へ尻を突き出した直後、 ブッブブブブッブブブブッブブーーーッッッ!!! 彼女の尻から放たれた特大のオナラが植物の葉を大きく揺らす。 『っっっっっっ!?』 納豆と牛乳と卵をまとめて腐らせたような凶悪な悪臭(におい)。 そんな臭気の暴風を受け、俺の視界がオナラ色に染まっていく。 それに対して、 「よしよし、喜んでるわね」 オナラを浴びた植物は目を見張るほどの速さで蔦を伸ばしていく 「もう1発・・・んんっ♪」 ブッスウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!! 2発目のオナラを浴び、今度は伸びた蔦に新たな果実が実り始める。 そう、この植物はオナラを栄養にして成長するという非常に特異な植物なのだ。 しかも、浴びるオナラが臭ければ臭いほど、その成長速度は速くなるらしい。 つまり、 ブボッブブブッブブッブボオォーーーッッッ!!! コヨミのオナラはこの植物にとって最高の栄養という事だ。 『っっっっっ!?』 とはいえ、植物と一緒にオナラを浴びる俺は堪ったものではない。 猛烈な悪臭(におい)が嗅覚を蹂躙するだけでなく、臭気が身体に染み込んでいくのだ。 正にオナラ地獄である。 「いっぱいオナラを浴びて、元気に育ってね・・・んんっ!」 ブッブブブッブブッブッフフフフフゥッッッ!!! コヨミの期待に応えるように植物は成長していき、 『っっっっっっ!?』 俺は濃密な悪臭(におい)に悶絶する。 「トドメにもう1発・・・んんっ!」 ブブッブウウウウウウウウウウーーーッッッ!!! 『っ~~~~~!?』 都合5発オナラを浴びせてから、コヨミが植物の方に向き直って収穫を始める。 「今回は大豊作ね」 10個ほどの果実を両手に抱え、コヨミがご満悦といった様子で家の方へと歩き出す。 「♪~♪~」 そんな彼女が漏らす鼻歌に、俺は大きな不安を抱かずにはいられなかった。 *  時計の針は進み、2本の針が頂点で重なる正午になった。 ブボボボボボボオォォォォォォーーーッッッ!!! 昼食の間も、彼女は朝食の時と同じように引っ切り無しにオナラを浴びせてくる。 ブウブブブブブブブブゥゥゥゥーーーッッッ!!! 既に何発のオナラを浴びたかわからない。 俺にわかるのは、何発受けても嗅覚が慣れる事がないほど、コヨミのオナラが凄まじいという事だけだ。 「ごちそうさま。さて、これから忙しくなるわよ」 そう言うと、コヨミは手早く昼食の後片付けを済ませ、書斎へと移動する。 そのまま本棚から数冊の分厚い本を取り出すと、 ずしっ! 椅子にどっかりと腰を下ろし、それらに目を通し始めた。 「・・・」 どうも考え事をしているらしく、小さな声でぶつぶつ呟いたり、何かの手順を確認するように指を折ったりしている。 そんな事をしている間も、 ブウウッ!ブボォッ!!プバスッ!! 彼女の尻はオナラを生み出し続けている。 『ぐっ・・・』 考え込んでいる彼女の心境を体現するような、ずっしりと重みのある悪臭(におい)だ。 プウォッ!!ブブゥッ!!ブビィッ!! 『むぐっ・・・』 20発ほどオナラを喰らっただろうか、 「よしっ!」 コヨミが読んでいた本を閉じて勢いよく立ち上がる。 ブッフゥゥォォォォォォォォォーーーッッッ!! 『むうううううっ!?』 猛烈な悪臭(におい)を伴った特大オナラのおまけ付きだ。 「手順も確認したし、そろそろ作業に取り掛かるわよ!」 そう言うと、コヨミは閉じた本を手に書斎を後にした。 *  コヨミが本を手にやってきたのは、俺が彼女と最初に会った理科室のような部屋だった。 「まずは着替えから始めましょうか。あなたもずっとその姿じゃ飽きちゃうでしょ?」 そう言いながら、コヨミは服を脱ぎ始め、最終的にショーツ(おれ)1枚だけの姿になる。 (もしかして、元の姿に戻してくれるのか?) 俺の中にかすかな希望が生まれる。 しかし、それは直後に絶望へと変わった。 「―――――」 コヨミが何やら呪文を唱えた直後、 『なっ・・・!?』 俺の身体(ショーツ)が淡い光に包まれ、そのままコヨミの身体を包むように広がり始めたのだ。 「どう?布地(からだ)が大きくなって、気分がゆったりしたでしょ?」 発光が収まったところで、コヨミが部屋の隅に置かれた姿見の前に立つ。 姿見に映る俺の身体は、今までの白いショーツから布地が2股に分かれた水着――俗にいうスリングショットへと姿を変えていた。 ちょうどコヨミの胸の辺りにある小さな目玉のような模様が俺の視覚(め)となっており、嗅覚(はな)は依然として彼女の尻の位置に固定されていた。 「今回の作業は暑くなるから、涼しい格好でやらないとね♪」 ブオッ!! 『むぐっ!?』 わざわざ野太い1発オナラを放ってから、コヨミが作業を始める。 水の入った巨大な寸胴鍋を火にかけ、沸騰を待つ間に紫色の鉱石やハーブらしき植物を別々の乳鉢で磨り潰していく。 『まるで料理だな』 「基本は同じよ。まあ、違う所もあるけどね」 俺の何気ない呟きに応じながら、コヨミが額の汗を拭う。 『何かこの部屋、暑くないか?』 窓を閉め切った上、ヒーターだけでなく、加湿器までフル稼働している。 明らかに過剰暖房だ。 「室温30度、湿度70%だから・・・不快指数は大体80ぐらいかしら。この魔法薬を作るには、この環境が必要なのよ」 説明している間も、コヨミの身体からは大量の汗が噴き出し、酸っぱい匂いが俺の嗅覚に突き刺さり、スリングショット(からだ)に染み込んでいく。 暫くして寸胴鍋の湯が沸騰したところで、予め磨り潰していた鉱石やらハーブを投入していく。 それを掻き混ぜながら熱していくと、湯は次々と色を変えていき―― 「ふぅ・・・」 最終的にやや粘り気のある透明な液体になったところで、コヨミはコンロの火を止めた。 『で、できたのか?』 鼻を突く汗の匂いに耐えながら問い掛ける。 「まだ大事な作業が残ってるわ」 そう言ってコヨミが取り出したのは、先程彼女が収穫した果実。 その極彩色の皮を剥くと、中から白っぽい果肉が姿を現した。 見た目はブドウの実に近く、中央に桃のような縦に走る割れ目がある。 コヨミは同じように残りの果実の皮も剥いて、寸胴鍋を満たす透明な液体の中へと1個ずつ静かに沈めていく。 「これでよし、と。後はこのまま3時間ぐらい待つだけよ」 コヨミが寸胴鍋の蓋を閉め、そのまま部屋を出てバスルームへと向かう。 どうやら今の作業で掻いた汗を流すつもりのようだ。 「さて、あなたは此処で待っててね」 コヨミがスリングショット(おれ)を脱ぎ、また白いショーツの姿に変えてからバスルームへ入っていく。 『・・・』 ふいに訪れた短い休息の時間。 だが、俺はこの後に待ち受ける出来事を、まだ知る由もなかった。 *  3時間後。 コヨミは再び俺をスリングショットに変えて着込むと、あの理科室のような部屋へと戻ってきた。 最初にヒーターと加湿器を止め、代わりに冷房を入れてから寸胴鍋の蓋を開ける。 「うん、いい感じになってるわね」 鍋の中では先程入れた果実がほのかに黄金色の輝きを放っていた。 「ふふふ、綺麗でしょ?これが私の若さの秘密よ」 そう説明しながら、コヨミは網杓子を使って寸胴鍋から果実を取り出していく。 「この果実には元から新陳代謝を高める効果があるんだけど、この魔法薬に漬け込むと、その効果が何十倍にもアップするのよ」 『なるほど。それを定期的に食べてるから、大正生まれでもそんなに若々しいんだな』 「そういう事♪」 俺の言葉にノリノリで頷き、コヨミは汗だくのまま果実の1つに齧り付く。 「うん、程よく熟してるから甘くて美味しいわ。元の姿に戻す時に、あなたにも食べさせてあげるわね」 『・・・遠慮する』 「そう?じゃあ、私が全部食べちゃうわよ」 そう言うと、コヨミはあっという間に10個の果実をすべて平らげてしまった。 「ふぅ、ごちそうさま。これで暫くは若さを保てるわね」 コヨミが満足げに自分の腹を撫でながら言う。 それから程なくして、 ごろごろごろごろ~~っ! コヨミの腹が低く鳴った。 「来たわね・・・」 『き、来たって、何が?』 「勿論、オナラよ♪オナラを浴びて育った実を食べたんだから、オナラが出るのは当たり前で・・・しょっ!」 言い切ると同時に、 ボッブブウウウウウゥゥゥゥゥーーーッッッ!!! コヨミが身体をくの字に曲げ、これまで以上に凄まじいオナラを放ってきた。 『っ~~~~~!?』 ニンニクや納豆、卵、肉、魚・・・様々なものをまとめて腐らせたような壮絶な激臭(におい)。 隕石が直撃したような衝撃と共に、視界がどす黒い黄色に染め上げられる。 これまで浴びたコヨミのオナラの中でも、間違いなく最凶の激臭(におい)だ。 「くんくん・・・うっ、やっぱり実を食べた後のオナラは凄い悪臭(におい)になるわね」 自分の出したオナラを嗅ぎ、コヨミがわずかに顔を顰める。 (こ、これだけ凄い激臭(におい)を嗅いで、この反応か・・・) いったいどんな嗅覚をしているんだろうか? 「では、続けてもう1発・・・んっ!」 ブババババアアアアアアアアアーーーッッッ!!! 『っっっっっ!?』 「くんくん・・・うん、臭い臭い♪まるで内臓全部が腐ってるみたい♪」 言葉とは裏腹に、コヨミの声は嬉しそうだ。 「さて、まだオナラは腸内(おなか)の中にいっぱい残ってるし、どんどん行くわよ・・・んっ♪」 ブブブッススウゥウゥゥゥウゥゥゥーッッッ!!! 「っ!?」 もはや脳の処理能力を超え、「臭い」とすら認識できないような激臭(におい)。 普通なら1発で意識を失うような凶悪さだが、今の俺はそれすらも叶わない。 「どうしたの?悪臭(におい)が強くなったのに、いつもより反応が薄いわよ?」 『あがが・・・』 「ああ、そっか。悪臭(におい)が強過ぎて、認識できないのね。だったら――」 何を思い付いたのか、コヨミがぶつぶつと呪文を唱え始める。 直後、 『っっっっっっ!?』 頭の中が「臭い」という単語に埋め尽くされた。 どうやらコヨミが俺の脳の処理能力を高め、彼女の壮絶な激臭(におい)を認識できるようにしたらしい。 「うん、いい反応ね。では、改めて・・・んんっ!」 ブスッブブブウウゥゥゥゥゥゥーーッッッ!!! 『ごはっ!?』 コヨミによって処理能力を高められた脳は、オナラの激臭(におい)を余すところなく知覚し、嗅覚に超新星爆発のような衝撃が襲ってくる。 (臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭いいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!) 「ほらほら、頑張って。オナラはまだまだ出るわよ・・・ほらっ♪」 応援という事なのか、コヨミが3・3・7拍子のリズムでオナラを放ってくる。 『っ・・・』 だが、今の俺にはそんな都合13発の連続オナラに反応する気力すら残っていない。 「せっかく応援してあげてるのに、まだ足りないの?欲張りね・・・ふんっ!」 ボブブブブブブブウゥゥゥゥゥーーーッッッ!!! コヨミがさらにオナラを浴びせてくるが、 『・・・』 今の俺は呻き声ひとつ上げる事すらできない。 「あ~、もう本当に限界みたいね。仕方ないわ。次の1回でフィナーレにしてあげる」 助かった・・・そう思ったのは、ほんの一瞬。 わずかに残っていた思考能力が警鐘を鳴らす。 彼女は今、何と言った? 1発ではなく、1回? 「では、フィナーレの前に――」 コヨミがまた呪文を唱え始める。 それが終わると、 『なっ!?』 スリングショット(おれ)が再び淡い光に包まれ、今度は円筒形のポールへと姿を変える。 ポールは直径30cm、高さ1.5mほどで、表面には三角形の突起が無数に並んでいる。 その突起はすべて俺の鼻だ。 「「「「「「「「「「「「最後は派手に行くわよ♪」」」」」」」」」」」」 ポールとなった俺を、12人に分身したコヨミが取り囲んでいる。 『た、助け・・・』 「「「「「「「「「「「「ふんっ!」」」」」」」」」」」」 12人のコヨミが一斉に息むと、 ブリッブバッッブブブウウウウウーーッッッ!!! 家どころか、周囲の木々すら揺さぶるような想像を絶する風圧のオナラが吹き荒れた。 『っ・・・』 それに見合う桁外れに凄まじい激臭(におい)に、俺の思考は完全に停止した。 *  目を覚まして最初に感じたのは、1週間ぶりに手足を動かす感覚だった。 ゆっくりと上体を起こし、改めて自分の姿が元に戻っているのを確認する。 「ようやく戻れたか」 だとしたら、こんな所に長居は無用だ。 寝かされていたベッドを降り、部屋を出ようとしたところで、 「あっ、もう起きたの?」 ちょうどコヨミがドアを開けて入ってきた。 その傍らには、俺と同じ姿の鏡像(コピー)を従えている。 「ちょうどいいわ。この子と額を合わせて」 「額を?」 「早く!」 「わ、わかった」 コヨミに急かされ、俺は自分の鏡像(コピー)と額を合わせる。 すると、 「っ!?」 頭の中に様々な光景が流れ込んできた。 そのまま5分ごと額を合わせていただろうか、 「もういいわ」 映像の流入が終わったところで、コヨミが鏡像(コピー)の額を離させる。 「今見せたのが『鏡像(コピー)があなたとして過ごした1週間の記憶』よ。特に問題はなかったでしょ?」 「あ、ああ」 確かに特筆すべき事もなかった。 どうやら鏡像(コピー)は俺として完璧に1週間を過ごしていたようだ。 「今までお疲れ様。この鏡像(コピー)もそろそろエネルギーが切れるし、帰っていいわよ。これ、家までの帰り方と交通費」 そう言うと、コヨミは1通の封筒を差し出した。 受け取って開けてみると、中には数枚の紙幣と家までの地図が入っていた。 「・・・本当に帰っていいのか?」 「疑り深いわね。ちゃんとタクシーで帰ってもお釣りが来るぐらいの額は渡したでしょ?」 「・・・わかった。じゃあな」 コヨミの動きを警戒しつつも、俺は彼女に背を向けて歩き出す。 こうして俺の1週間にわたるショーツ生活は終わりを告げた。 *  2時間後。 「やっと着いたな」 俺は1週間ぶりに自宅へと帰ってきた。 しかし、両親から見れば、俺はほんの4時間ほど出かけてきただけだ。 「ただいま」 俺は平然を装って玄関をくぐる。 次の瞬間、 「なっ!?」 俺は驚愕の声を上げた。 「おかえり♪」 俺を出迎えたのが2時間前に別れたはずの少女――美堂コヨミだったからだ。 「な、何でお前が此処に!?」 「玄関先で何を騒いでるの」 俺の声を聞き付け、奥から母さんが出てきた。 「か、母さん、何でこいつが此処にいるんだ!?」 「何でって・・・従妹のコヨミちゃんを預かる事になったって、昨日話したでしょ?」 「い、従妹?」 母の口から出た予想外の言葉に、俺は視線をコヨミの方へシフトする。 「♪~」 俺の視線に気付き、コヨミが意味深な表情で手を振ってきた。 どうやら母に催眠術でも掛けて「美堂コヨミは仁藤シュンヤの従妹だ」と誤認させたのだろう。 「従兄妹同士、仲良くしなさいね」 そう言い残し、母が奥へと戻っていく。 「ふふふ、これからよろしくね、お従兄ちゃん♪」 コヨミが自らの尻に手を当て、 ブボォッ! そのままオナラを握って俺の鼻に押し付けてくる。 「むぐっ!?」 鼻に流れ込む強烈な悪臭(におい)に悶えながら、俺は目の前が真っ暗になっていくのを感じた。 終


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