スイーツ喫茶はオナラの香り?
Added 2023-08-12 15:00:00 +0000 UTCこんにちは、美園(みその)ノエと申します。 スイーツ喫茶「丸ねこ」の店長をしております。 身長170cm、Fカップ、ピッチピチの女子高生・・・すみません、活字だけなので嘘を吐きました。 実際は身長150cmと少々、AAカップ、もうすぐ三十路で、よく「死んだ魚のような目」だと言われます。 顔は自他共に認める童顔で、高校生の中に入ってもバレない自信はあります。 本日はそんな私のオナ・・・もとい、笑顔に溢れた特別な1日をご紹介させていただきます。 * 開店30分前。 「何なんですか、この服は!?」 うら若き乙女の声が店内に木霊する。 声の主は、東川(ひがしがわ)マチコ。 長いストレートヘアが印象的で、気が強そうな美少女だ。 彼女が着ているのは鮮やかな青色のエプロンドレス・・・いわゆるメイド服で、スカートは膝丈になっている。 「そういうツッコミは着る前にするべきじゃないか?」 マチコの言葉に反応したのは、彼女と同じデザインの黄色いメイド服を着た、礼紋(れいもん)ナツキ。 顔立ちはボーイッシュで、ショートカットの1房に銀色のメッシュが入っている。 太腿や形のよい尻は無駄な肉もなく引き締まっている一方、かなり立派な胸の持ち主だ。 「そうですよ、マチコさん。わざわざ着てからツッコミを入れるなんて、本当は着てみたかったんじゃないですか?」 「そんな訳ないでしょ!どうしてあなたとお揃いの服を着なくちゃいけないのよ!?」 会話に参加してきたのは、紫のメイド服を着た、エルゼ・シュミット。 銀髪碧眼、何処か高貴さを感じさせる顔立ちの大人びた美少女である。 「でも、この服を着る時はマチコも結構ノリノリだったよね?」 「ちょっ、アイナ!」 鋭い指摘をしたのは、遠藤(えんどう)アイナ。 髪の短い快活そうなお嬢さんで、緑色のメイド服に着ている。 「ほら、やっぱり楽しみだったんじゃないですか」 「くっ・・・!」 可笑しそう笑うエルゼさんを、マチコさんが悔しげに睨み付ける。 そんな2人の険悪なムードを打ち砕いたのは、 「遅くなってすみませんでした~!」 遅れて更衣室から出てきた、オレンジ色のメイド服を纏う5人目の女の子だった。 彼女の名前は、黒杖(こくじょう)エリイ。 金色のふんわりとした髪を腰まで伸ばしており、仔犬のような可愛らしい顔立ちをした女の子だ。 「全員揃いましたね。では、本日の仕事をご説明させていただきます」 そう言いながら、ノエはメイド服を着た5人をテーブル席へと集め、予め置かれていたグラスにアイスティーを注いでいく。 余談だが、ノエ自身も赤いメイド服に身を包んでおり、彼女のものだけスカートの丈がロングになっている。 「既にお知らせした通り、皆さんは夏風邪でダウンしたアルバイト店員3人の代わりです。まず、ナツキさんとアイナさんがテイクアウトのお客様を、エルゼさんとマチコさんとエリイさんがテーブル席のお客様の対応をお願いします」 『わかりました』 ノエの指示に、5人が一斉に頷く。 「接客か。今さらだが、私にできるだろうか?」 「接客の基本は笑顔です。ほら、私のように」 少し不安げなナツキに、ノエは自分の顔を指差してみせる。 「いや、全く笑っているように見えないが・・・」 というか、初めて会った時から表情が全く変わっていない。 もしかして、この顔は仮面なのではないだろうか。 そんな考えがナツキの頭を過(よ)ぎる。 「コホン。とにかく今から簡単に接客の仕方とレジの使い方を教えますから、よく聞いておいてください。それと、これは新作ケーキ『乙女の溜め息』の試作品です。ぜひ食べてみてください」 ノエが5人に出したのは、栗とサツマイモを使ったシックな印象のケーキだった。 「美味しそうですね、これ!本当に食べていいんですか!?」 「勿論です。その代わり、仕事もきちんとしてくださいよ」 「は~い。いっただきま~すっ♪」 アイナがケーキを頬張ったのを皮切りに、他の4人も新作ケーキを食べ始める。 「・・・」 それを見たノエの口角がわずかに吊り上がった事に、誰1人として気付く事はなかった。 * ノエが店主を務めるスイーツ喫茶「丸ねこ」は、商店街の外れの方にある。 それでも彼女の作るスイーツ目当てに大勢の客が訪れる人気店だ。 開店から15分ほど経って最初の客が来店したのを皮切りに、次々とケーキを求める客が足を運んでくる。 その割合は女性9割、男性1割ぐらいだったが、徐々に男性客の割合が増えていく。 理由は説明するまでもないだろう。 「「「「「いらっしゃいませ」」」」」 マチコ、エルゼ、ナツキ、アイナ、そしてエリイといういずれ劣らぬ5人の美少女たちだ。 「いいですねぇ、メイド服を着た見目麗しい少女たちが接客する姿。10年ぐらい若返った気分です」 そう言いながら、店主であるノエはデジカメを手に少女たちの姿を写真に収めていく。 「ちょっと、ノエさん!そんな所で写真を撮ってないで少しは働いてくださいよ!」 マチコが近くのテーブルを拭きながら抗議する。 それに対し、 「アルバイトの働きっぷりを監視するのも、店主としての義務です」 ノエは悪びれた風もなく応じて撮影を続行する。 「くっ!」 「マチコさんも手が止まっていますよ。他人を注意する前に、自分がちゃんとしてください」 悔しげなマチコに、エルゼが空いたテーブル席の片付けをしながら追い討ちをかける。 「わかってるわよ!」 「ど、退いてくださ~い!」 ふいにそんな悲鳴交じりの声が店内に響いた。 「!」 「?」 マチコとエルゼが視線を向けると、エリイの身体が宙に浮いていた。 どうやら何かに躓いて転倒したらしい。 持っていたトレイが彼女の手を離れ、重力に従って落下していく。 その場にいた全員が次の展開を予想する。 しかし、その予想は見事に裏切られた。 宙を舞ったエリイの身体はエルゼによって受け止められ、落下したカップや皿も1枚残らずノエによって回収されたのだ。 エリイの悲鳴が聞こえてから、わずか数秒間の出来事である。 「ありがとうございます、エルゼさん、店長さん!」 助けられたエリイが2人に深々とお辞儀する。 「どう致しまして。お怪我はありませんか、エリイさん?」 「は、はい、大丈夫です」 「お皿やカップもタダではないので、気を付けてくださいね」 「はい!すみませんでした!」 パチパチパチ・・・! 客たちから送られた拍手に、エルゼは笑顔で、ノエはごくごくわずかに口角を吊り上げて応じる。 「何なのよ、この2人は・・・」 1人取り残されたマチコが呆れとも感心とも付かない呟きを漏らす。 次の瞬間、 ぐるるるるるる~っ! 何の前触れもなく、彼女の腹部を鋭い痛みが襲った。 「っ・・・」 客の視線がエルゼたちに集まっているのを幸いと、さり気なく片手で確認・・・するまでもないほどお腹がぽっこりと膨らんでいる。 溜まっているのは固体ではなくガスのようだが、いずれにしろ此処で出す訳にはいかない。 (な、何でこんな時に・・・!) 「マチコさん?」 「!」 自分に呼び掛ける声で、マチコは我に返る。 いつの間にか、ノエが自分の顔を下から覗き込んでいた。 「て、店長。いったいどうしたんですか?」 「それはこちらの台詞です。顔色が優れないようですが、身体の具合でも悪いんですか?」 「い、いえ、大した事はありません。大丈夫です」 腹部を襲う痛みに耐えつつ、必死に平然を装う。 「その表情(かお)で大丈夫と言われても、全く説得力がありませんよ。少し早いですが、先に休憩に入ってください」 「は、はい、ありがとうございます・・・」 自分を気遣ってくれるノエに礼を述べて、マチコは店の奥へと歩き出した。 * 店の奥へと引っ込んだマチコはすぐさま従業員用のトイレに飛び込んだ。 乱暴に扉を閉めて、便器の方へ形の良い尻を突き出す。 蓋は閉まっているが、そんな事はどうでもいい。 「んっ・・・」 マチコが尻、正確にはその中央に息づく窄まりから力を抜いた瞬間、 ブブウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 彼女のお尻から豚の鳴き声のような汚らしい音のオナラが溢れ出した。 「はあぁぁぁぁ・・・っ」 我慢を重ねた放屁に、マチコの口から恍惚の声が漏れる。 だが、 「っ!?」 鼻に届いた強烈な腐卵臭に、すぐ我に返ってドアに施錠する。 危ないところだった。 もし誰かにドアを開けられていたら、大恥を掻く事になっていただろう。 ぎゅるるるるるる~っ! 「うっ・・・!」 安堵する暇もなく、マチコの腹がまた低く鳴る。 直後、 ブビビビビビィィィィ~~~ッッッ!!! 彼女の尻から再び豚の鳴き声のような音が個室内に響き渡った。 「何なのよ、もう・・・っ!」 ブビビビビビビビビビィィィッッッ!!! 愚痴ってみても、状況が変わる訳ではない。 今も尻からは汚らしい音のオナラが噴き出しているし、個室内に充満する臭気は確実にその濃さを増している。 (何でこんな事に・・・っ!?) ブブブッブウウウウウ~~~ッッッ!!! 考えるのは後回しだ。 とにかくお腹に巣食うガスを出し切らないと、頭がマトモに働かない。 「んっ!」 ブブブブブブブブブブブゥ~~~ッッッ!!! 一刻も早くオナラを出し切るべく、軽くお腹を押しながら自分から積極的にオナラを出していく。 ブブウウウゥゥゥゥ・・・ッッ。 何発かのオナラを出したところで、ようやくお腹が落ち着いてきた。 これで1つめの問題は解決だ。 次はこのオナラの悪臭(におい)をどうにかしなくてはならない。 そう思った矢先、 コンコンッ。 ふいにドアの向こうからノック音が聞こえてきた。 どうやら誰かが用を足しに来たらしい。 ドンドンッ! 慌ててノックを返し、マチコは現状をどうにかすべく、個室内を調べ始める。 「!」 ちょうど目に付いた小さな収納棚を開けてみると、そこには予備のトイレットペーパーと一緒に1本のスプレー缶が入っていた。 市販のものではないのか、真っ白の本体にマジックで「超強力消臭剤」と書かれている。 (見るからに怪しいけど・・・) 『そんなに急ぐ必要はないぞ?』 自分を気遣ってか、ドアの向こうから声が聞こえてきた。 声からすると、ドアの向こうにいるのはナツキのようだ。 「待って!すぐ出るから!」 考えている余裕はなさそうだ。 マチコはそのスプレー缶を手に取ると、急いで周囲に振り撒いていく。 すると、 「凄い・・・」 個室内に渦巻いていた臭気が嘘のように消えていく。 完全に悪臭(におい)が消えたのを確認し、マチコはトイレットペーパーを巻き取り、そのまま便器に流す。 これで偽装工作は十分だろう。 念のため、もう1度だけ悪臭(におい)の確認をしてから、マチコは平然を装って個室を出た。 * 時間は少し遡る。 テーブル席が賑わいを見せる一方、テイクアウト用のカウンターも負けず劣らず賑わいを見せていた。 「チーズケーキとショートケーキが2つずつ、お待たせしました」 「は、はいっ!ありがとうございますっ!」 ナツキの差し出したケーキの箱を、年下らしき少女が少し緊張した面持ちで受け取る。 その表情は正に憧れの先輩を見るそれだ。 「ケーキ1つ受け取るのに、どうしてあんなに緊張してるんだ?」 去っていく少女の背中を見送りながら、ナツキが不思議そうに首を傾げる。 「そりゃ、年上の格好いいお姉さんに見詰められたら、女の子は皆ああなっちゃうよ」 「格好いいお姉さん・・・?私の事か?」 アイナの説明に、ナツキが戸惑いながら問い掛ける。 「他に誰がいるんですか。ナツキさんみたいな格好いい女の子、初めて見ましたよ」 「褒められて悪い気はしないが、何だか複雑な気分だね。あっ、いらっしゃいませ」 新たに来店した客の姿を認め、ナツキが会話を中断する。 来店したのはやや背が高い事を除けば、取り立てて語るところのないような少年だった。 年齢はナツキやアイナと同じぐらいだろう。 「ナツキ?」 ナツキと目が合った瞬間、少年は驚いたように彼女の名を口にした。 「こんな所で何してるんだ?」 「リカ先輩に頼まれてね。1日限りのアルバイトをしてるんだ」 「そうなのか」 「今日は1人なんだね」 「ああ、相棒は――」 「あの、もしかしてナツキさんの彼氏さんですか!?」 少年の言葉を遮って、アイナが口を挟む。 「ほぅ、ナツキさんの彼氏さんですと?」 「うわぁっ!?て、店長!?」 何の前触れもなく傍らに現れたノエに、アイナが驚きの声を上げる。 「い、いつの間に来たんですか?」 「全く気配を感じなかったぞ・・・」 「そろそろあれの効果が・・・いえ、何でもありません。そんな事より、あなたがナツキさんの彼氏というのは本当ですか?」 何やら言葉を濁しながらも、ノエが好奇心に目を輝かせる。 「残念ながら違う。俺とこいつは単なる幼馴染みだ」 少年は不機嫌そうにしながらもノエの問い掛けに応じる。 「「そうなんですか?」」 「「そうだ」」 ノエとアイナの問い掛けに、ナツキと少年はほぼ同時に頷く。 「そんなこと言って、息もぴったりだし、本当は付き合っているんでしょう?」 「だから、その答えはNOだ。それより話が進まないから、さっさと注文を聞いてくれ。まず――」 「わかっている。ティラミスとモンブラン・・・いや、ティラミスを2つか」 少年が注文を告げるより早く、ナツキがケーキを箱に詰め始める。 「それで頼む」 「ほら、こんなに分かり合ってるんだよ!?」 「これで付き合ってないなんて、どんな冗談ですか」 「逆に訊くが、俺とナツキが付き合っているなら、何で俺はわざわざケーキを2つ買っていくんだ?」 「それは・・・あっ!」 「わかったか?」 「いわゆる三角関係というヤツですね!」 「もうケーキ買わずに帰っていいか?」 ノエの言葉に、少年が深々と溜め息を吐く。 「そう怒らないでやってく・・・っ」 ふいにナツキが言葉を詰まらせる。 「どうした?」 「いや、何でもない。すみませんが、少し此処をお願いします」 そう言い残し、ナツキは3人に背を向けて店の奥へと消えていった。 * ナツキはバックヤードに入ると、小走りでトイレへとやってきた。 「ん?」 ドアノブを握ったところで、使用中のマークが出ている事に気付く。 (誰か入っているのか) 確認のため、コンコンとドアをノックしてみる。 ドンドンッ! かなり強めのノックが返ってきた。 間を置かず、中からドタバタと何やら慌てているような音が聞こえてくる。 「そんなに急ぐ必要はないぞ?」 『待って!すぐに出るから!』 中から聞こえてきたのは、マチコの声だった。 程なくして、紙を巻き取る音、続けて水を流す音が聞こえてくる。 「・・・ごめんなさい。紙がなかったものだから、少し焦ってしまって」 「気にする事はない。それより、もう入って・・・っ!」 ぐるるるるるる~っ! 腹から重低音が響き、ナツキが言葉を詰まらせる。 「ご、ごめんなさい!私に気を遣わなくていいから、早く入って!」 苦しそうな表情のナツキを見て、マチコは慌てて彼女に道を譲る。 「あ、ありがとう」 マチコに礼を言って、ナツキが個室へと入っていく。 ドアが中から施錠されたのを見て、マチコはその場を立ち去ろうとする。 その時、 ブボボボオオオオオオオオーーーッッッ!!! 大音量の爆音がドア越しに聞こえてきた。 (嘘、今のってナツキさんの・・・?) 驚きのあまり、マチコはその場に立ち尽くしてしまう。 すると、 ブブウウウウウウウウウウーーーッッッ!!! 続けて2度目の爆音がトイレのドアを震わせる。 (凄い音・・・・もしかして私のも外からこんな風に聞こえてたの?) もしナツキがもう少し早くトイレに来ていたら、彼女にオナラの音を聞かれていたかもしれない。 ブウオオオオオオォォォォーーーッッッ!!! 「!」 3発目の放屁音で、ふと我に返る。 こんな所で放屁音を立ち聞きしていては、ナツキに失礼だ。 一刻も早くこの場を立ち去るべきだろう。 しかし、 「・・・」 1歩踏み出したところで、ふと気になる事があった。 ブブブッフウオオオォォォーーーッッッ!!! 放屁音は今もドア越しに聞こえてきている。 しかし、悪臭(におい)の方はどうだろうか? もし、彼女のオナラの悪臭(におい)が漏れていれば、自分のオナラの悪臭(におい)も外に漏れていた可能性がある。 「・・・」 ブブブブブブブブブブブゥーーーッッッ!!! 次の放屁音が聞こえてきたタイミングで、マチコは気配を消してドアの隙間にそっと顔を近付けた。 * 一方、個室内では、ナツキがガス抜きを続けていた。 現在、彼女は身体をくの字に曲げ、便器の方へ尻を突き出している。 スカートを捲り上げているので、上半分がメッシュになったセクシーな黒いショーツが丸見えになっていた。 ブブブッフウオオオォォォーーーッッッ!!! 大音量のオナラが個室内に響き渡り、内部の空気を発酵が進んだ糠漬けをさらに濃縮したような悪臭(におい)に染め上げていく。 「くっ、想像以上だな」 ブブブブブブブブブブブゥーーーッッッ!!! ナツキが自分の尻から噴き出すオナラの音と悪臭(におい)を感じながら呟く。 (いくら何でもこんなにオナラが出るのは不自然だ。となると――) ブブブッスウウウウウウウーーーッッッ!!! 臭気の濃さが増す個室内で、ナツキは考えをまとめていく。 おそらくこの止まらないオナラの原因は―― ちょうど考えが纏まろうとしたところで、 ガチャガチャッ。 それを阻止するかのように、絶妙なタイミングでドアノブが音を立てた。 * ナツキが爆音を響かせながらガス抜きを続ける中、 「・・・」 マチコは気配を殺して、ゆっくりとドアに顔を近付けていく。 「何やってるの?」 背後から声を掛けられ、マチコは弾かれたように大きくその場から飛び退く。 「ア、 アイナ!?あなたこそ、こんな所で何やってるのよ!?」 「ちょっとお腹の調子が悪くてね。ちょっとゴメン」 ガチャガチャッ。 「あれ?誰か入ってる?」 ドアノブを回しながら、アイナが首を傾げる。 「すぐにわかるでしょ!使用中のマークが見えないの!」 「あっ、本当だ。すみません、邪魔しちゃって」 『いや、大丈夫だ。すぐに出るから少し待ってくれ』 そんな言葉から数分後、中から水を流す音が聞こえ、すぐにドアが開く。 「待たせてしまったね。それと、少し臭うかもしれないが・・・」 「臭うって、もしかして便・・・もがっ」 「ちょっと、アイナ!いくらなんでも失礼でしょ!」 空気を読まない友人の発言に、マチコは慌てて両手で彼女の口を塞ぐ。 「す、すみません、悪い子じゃないんですけど・・・」 「いや、気にしなくていいよ。それより、ケ・・・いや、彼はもう帰ったかな?」 「彼?ああ、ナツキさんの彼氏さんですね!」 口を塞いでいたマチコを振り切って、アイナが再び目を輝かせる。 「だから、彼氏ではないと言っているだろう」 「もう帰られましたよ。詳しい話はまた後で♪」 そう言って、アイナがトイレに入っていく。 数秒後。 『大丈夫、ナツキさん。ぜんぜん臭くありませんよ!』 ドアの向こうからアイナの元気な声が聞こえてくる。 「キミも大変だね」 「あはははは・・・」 わずかな同情を含んだナツキの言葉に、マチコは苦笑するしかなかった。 * アイナは個室に入ると、 「大丈夫、ナツキさん。ぜんぜん臭くありませんよ!」 何度か鼻を鳴らしてから、まだ外にいるであろうナツキにそう報告する。 ぎゅるるるるる~っ。 「さて、私もすっきりしちゃおっと」 そう言いながら、アイナはスカートをたくし上げて白とピンクの縞パンを露わにする。 「んっ」 彼女の口から小さな声が漏れた直後、 ププウウウウゥゥゥゥ~~~ッッッ!!! 壊れたラッパを思いっ切り吹いたような放屁音が個室内に木霊した。 「ふぅ、我ながらすっごいのが出ちゃった。でも、まだ出る・・・んっ!」 プップウウウウゥゥゥ~~~ッッッ!!! 1発目以上に大音量のオナラを放ち、個室内を濃厚な腐卵臭に染め上げていく。 「くんくん・・・うっ、我ながらひっどい悪臭(におい)。でも、前に嗅いだマチコのオナラよりはマシかな」 『何ですって!』 「うわっ、もしかして聞こえちゃってた!?」 外から聞こえてきたマチコの声に、アイナが驚きの声を上げる。 『丸聞こえよ!』 「ゴ、ゴメン。いないと思ってたから、つい本音が・・・」 『これを無自覚でやっているなら凄いね』 今度はナツキの呆れたような声が聞こえてきた。 『もうっ、いいから早く済ませてカウンターに戻りなさいよ!いいわね!』 プププッスウウウウゥ~~~ッッッ!!! 『オナラで返事するなー!』 『落ち着け、マチコ。そろそろ戻らないと、エリイとエルゼが困るだろう』 『そ、そうですね。あなたも早く戻りなさいよ!』 そんな言葉と共に、マチコとナツキの足音が遠ざかっていく。 「いや~、失敗失敗。口は災いの元っていうし、もっと気を付けないとね」 プブウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 自分の頭をコツンと叩いて次のオナラを放ったところで、 ガラッ! いきなりトイレのドアが勢いよく開けられた。 * ナツキがテイクアウト用のカウンターに戻ると、エリイが1人で店番をしていた。 「すまない、エリイ。アイナに頼まれ――」 「すみません、ナツキさん!」 ナツキが礼を言い終えるより早く、エリイがバックヤードの方へと駆けていく。 彼女が向かったのは、先の3人と同じくトイレだった。 しかし、慌てていた彼女に、ノックをする余裕はなかった。 ガラッ! 彼女が勢いよくドアを開けると、 「えっ?」 先客であるアイナと目が合った。 「エ、エリイちゃん・・・?」 「ごめんなさい!」 謝罪しながらも、エリイは身体を反転させてアイナの方に小振りな尻を突き出す。 「ちょっ、すぐに退くから待――」 アイナが制止するより早く、 ブバスッ!!!! エリイの尻から特大のオナラが放たれた。 「むぐっ!?」 可愛らしいエリイの容姿からは想像もできないような凶悪な臭気に、アイナが苦悶の声を上げる。 「す、すみません、アイナさん。どうしても我慢できなくて・・・あぁっ!?」 プウォッ!!!! 「むううううっ!?」 エリイの放つオナラの悪臭(におい)に悶えるアイナだが、 プウウオオオオォォォォ~~ッッッ!!! 彼女の尻からも依然として強烈なオナラが噴き出してきている。 「と、とにかくそこじゃマズイから中に入って!」 「は、はい。ありがとうございます」 アイナに招き入れられ、エリイも個室内に入る。 そのまま後ろ手に施錠したところで、 ブボォッ!!!! エリイの尻から3発目のオナラが放たれた。 それに呼応するように、 プッフウウウウォォォ~~~ッッッ!!! アイナの尻からも大音量のオナラが噴き出す。 2人の放った臭気が混ざり合い、個室内が凶悪な悪臭(におい)に染め上げられていく。 ブビィッ!!!! 「す、すみません、アイナさん。私のオナラ、臭いですよね?」 「確かに臭いけど、私のオナラも臭いから、おあいこだね」 ブブップウウウウウウ~~~ッッッ!!! 申し訳なさそうなエリイと苦笑するアイナ。 2人は放屁を続けながら、そんな会話を交わす。 やがて、 ブッ、ブウゥゥゥ~~~・・・。 プシュウウウウウ・・・。 放屁音が爆音から風船の萎むような音に変化し、2人の長いガス抜きが終わりを告げる。 それを見計らったように、コンコンとトイレのドアがノックされた。 * エルゼがノックすると、程なくしてドアが開いた。 間を置かず、個室から溢れ出した猛烈な臭気がエルゼに襲い掛かってくる。 だが、エルゼは笑みを崩さない。 それどころか、 「すうぅぅぅ・・・っ」 静かに深呼吸して積極的に臭気を取り込んでいく。 「あはははは、ごめんね。今、2人ですっごいオナラしちゃったから、ちょっと臭いかも」 「ア、アイナさん!」 アイナの言葉に、エリイが顔を真っ赤する。 「ふふふふ、アイナさんは相変わらずですね」 苦笑しながら、エルゼはトイレに入る。 ドアを内側から施錠した後、エルゼが最初にした事は個室内の消臭だった。 自前の消臭スプレーを使い、個室内に渦巻く強烈な悪臭(におい)を嘘のように消し去っていく。 「このぐらいでいいわね」 個室内の悪臭(におい)が完全に消え去ったところで、エルゼはスカートをたくし上げ、白いブルマ型の下着に包まれた尻を便器の方へ突き出す。 そして―― 「んっ!」 ブブブッフオオオオォォォ~~~・・・。 彼女が息んだ瞬間、尻からオナラが噴き出した。 音こそ控えめだが、その量と悪臭(におい)は相当なもので、あっという間に個室内が濃密な臭気に汚染されていく。 そう、彼女が消臭スプレーを使ったのは、決して個室内のオナラの悪臭(におい)が不快だったからではない。 個室内の臭気をリセットし、改めて自分の悪臭(におい)だけで染め上げるためだったのだ。 「んっ!」 ブブッブシュウウゥゥゥ~~~・・・・。 2発目のすかしっ屁を放ちながら、エルゼは耳を済ませて外の様子を窺う。 『アイナさん!こんな所にいたら、エルゼさんに失礼ですよ!』 『そうだね。それに、早く戻らないと、マチコに怒られちゃう』 そんな会話と共に、2人の気配が遠ざかっていく。 それを確認すると、 ブブブッフウオオオォォォ~~~ッッッ!!! エルゼはオナラをすかすのをやめ、爆音を個室内に響かせた。 同時に、個室内の臭気が一気にその濃さを増す。 だが、まだ終わった訳ではない。 否、そもそも始まってすらいない。 「やっぱりこれがあると、気持ちよく出せないわね」 エルゼがゆっくりと自らの尻を包む白いブルマ型の下着を脱ぎ去ると、その下に隠されていた赤いレースのTバックが露わになる。 彼女が脱いだのは、オナラの悪臭(におい)と音を緩和する特別製のカバー下着。 それを脱ぎ去った今、 「ふんっ!」 彼女のオナラを抑えるものは何もない。 ブボボボボボボオオオォォォォ~~~ッッッ!!!! 轟音。 そう形容するしかない臭気の嵐が吹き荒れ、個室内の空気が腐った肉、卵、キャベツやらタマネギやらをごちゃ混ぜにしたような猛臭(におい)の中に呑み込まれる。 ブブブブブブブブブブブブブゥ~~~ッッッ!!!! そんな臭気の地獄の中でも、エルゼの表情に苦悶の色はない。 「あぁ・・・っ」 むしろ放屁の解放感からか、その表情は恍惚としているようにさえ見える。 ブブブッフオオオオオォォォォ~~~ッッッ!!!! なおも激しい放屁を続けるエルゼ。 「あら?」 ふいにエルゼが小さく声を漏らす。 「んっ・・・」 ボッフウウウウウウゥゥゥゥ~~~~ッッッ!!!! しかし、直後には何事もなかったように放屁を再開する。 放屁を終えてエルゼが消臭スプレーを手に取った時、そこにはオナラ地獄とでもいうべき臭気の魔窟が完成していた。 * 始まりがあれば、終わりがあるもので、スイーツ喫茶「丸ねこ」も閉店時間となった。 「皆さん、今日はお疲れ様でした」 「ふぅ、本当に疲れたよ~」 アイナが大仰な動作で額の汗を拭ってみせる。 「接客というのは、想像以上に疲れるものだね」 「ええ。正直、もう2度とやりたくないわ」 ナツキが大きく伸びをし、マチコが疲れたように首を回す。 「膝が大爆笑してますぅ・・・」 「ふふふ、大丈夫ですか?」 今にも倒れそうなエリイを、エルゼが微笑みながら支える。 「私は帳簿付けがありますので、皆さんは先に着替えていてください。シャワーは自由に使っていただいて構いませんので」 そう言うと、ノエは5人の返事を待たずに背を向けて歩き出す。 奥にある事務室に入ると、ノエは机に置かれたノートパソコンを起動させた。 普通に考えれば、そのまま帳簿付けなどの事務作業をするはずである しかし、彼女はそうした類のソフトに一切触れる事なく、エプロンのポケットから1枚のSDカードを取り出し、ノートパソコンに挿入する。 「さて、お楽しみタイムと行きましょうか」 そう言うと、彼女はヘッドフォンを装着し、SDカード内に保存されていた動画ファイルを開いた。 数秒の読み込み時間の後、動画再生ソフトが起動し、このスイーツ喫茶「丸ねこ」のトイレが映し出される。 「確か・・・最初はマチコさんでしたね」 ノエが呟いた瞬間、画面の中でドアが開き、メイド服姿のマチコが入ってくる。 それを確認し、ノエは何処からかパンパンに膨らんだビニール袋を取り出す。 ちょうどバスケットボールぐらいの大きさだ。 『ブビビビビビィィィィ~~~ッッッ!!!』 画面の中のマチコがオナラを放つタイミングに合わせ、ノエはビニール袋の封を切る。 次の瞬間、 「むぐっ!?」 袋の中に詰まっていた臭気がノエの鼻へと流れ込んでいく。 「これは初っ端から、なかなかの悪臭(におい)ですね」 満足げに言いながら、ノエは袋の中の臭気を胸いっぱいに吸い込んでいく。 「ふぅ、結構なお手前でした。では、次のナツキさんのを――」 ノエが次の動画ファイルを再生しようと、マウスに手を伸ばす。 ガシッ! そんな彼女の腕を背後から伸びてきた手が掴んだ。 間を置かず、後頭部に硬い物が突き付けられる。 「やっぱり、こういう事だったんですね」 「エ、エルゼさん・・・」 ノエが肩越しに振り返ると、そこには女神のような表情を浮かべたエルゼが立っていた。 しかし、その目は全く笑っていない。 「トイレに入った時、壁に不自然な穴がある事に気付いたんです。思った通り、小型カメラの類が仕込んであったんですね」 「こ、これは、その・・・」 「それと、開店前に出してくれたケーキ。あれにも何か混入してありましたよね?」 「ギクッ!」 ノエを追及するエルゼの傍らには、 「逃げられるとは思わない事だ。玩具(エアガン)とはいえ、撃たれたら結構痛いぞ」 呆れとも怒りとも付かない表情のナツキが立っていた。 どうやら自分の後頭部に突き付けられているのは、彼女が持っているエアガンらしい。 「うわっ、何だかナツキさん、刑事みたいですね」 2人の後ろからアイナの的外れな発言も聞こえてくる。 「確かにこのS&W M&Pは警察や軍で使用される事を前提に作られているから、強(あなが)ち間違いではないね」 「あ、あの、あまり乱暴な事は・・・」 「何言ってるのよ!私たちのトイレを盗撮してたのよ!即刻、厳罰に処すべきだわ!」 続けて聞こえてきたのは、やや不安げなエリイの声と怒り心頭といった様子のマチコの声。 どうやら全員が顔を揃えているらしい。 「確かに――」 『ブビビビビビィィィィ~~~ッッッ!!!』 「こんな恥ずかしいところを撮影されたら、末代までの恥ですね」 「ちょっ、何勝手に見せるのよ!あなただって、盗撮(と)られたんでしょ!」 「私がそんなミスをすると思いますか?」 「今、さり気なく自分の盗撮映像だけ消去しなかったか?」 「あら、何の話ですか?」 ナツキのツッコミに対し、エルゼは他の動画ファイルもゴミ箱へと移動させる。 「何で私のだけ消さないのよ!?」 「ごめんなさい。再生中の動画は消せないので」 『ブビビビビビビビビビィィィッッッ!!!』 「だったら、再生をやめればいいでしょ!というか、何でリピート再生させてるのよ!」 「あははははは!マチコ、すっごいオナラだね!もしかしてオナラならエルゼさんに勝てるんじゃない?」 「そんなもんで勝ちたくないわよ!」 「後、オナラでも私に勝ててませんよ」 「今、何か言いました?」 「いえ、気にしないでください」 怪訝そうに首を傾げるアイナに、エルゼは悪戯っぽく笑ってみせる。 「うわわわわわわ・・・」 この状況において、ノエが取れる選択肢は多くない。 その中で、彼女が選んだのは―― 「すみませんでした!」 床に正座し、額を地面に擦り付けての土下座だった。 「私はただ、可愛い女の子のオナラが好きなだけなんです!出す時の羞恥に歪む顔、赤く染まった頬、そして何より可愛い顔からは想像もできないような悪臭(におい)が――」 ノエの謝罪は肩に置かれた手で遮られた。 「そんなに深々と土下座しなくていいですから。顔を上げてください、ノエさん」 「エ、エルゼさん・・・」 エルゼから掛けられた言葉に、ノエは救われたような気持ちで顔を上げる。 しかし、 「えっ?」 彼女の目に飛び込んできたのは、こちらに狙いを定める5つの尻だった。 どれもスカートをたくし上げており、それぞれが右から赤いレースのTバック、猫のワンポイントがある白いショーツ、白とピンクの縞パン、上半分がメッシュの黒、そして無地の白いショーツに包まれている。 「そんなにオナラが好きなら、たっぷりご馳走して差し上げます」 「ま、待ってください。さすがに『乙女の溜め息』を食べた5人分のオナラは――」 「「「「「んんっ!!」」」」」 ノエの言葉は5人の息み声によって打ち消された。 そして、 ブビビビビイイイイ~~~~ッッッ!!! ブブブブブブウウウウウウーーーッッッ!!! ププウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! ブボォッッ!!! ブブブブブブブブウウウウウウ~~~ッッッ!!!! それぞれの窄まりから解き放たれたオナラがユニゾンし、凶悪な臭気の5重奏がノエの顔を呑み込む。 後に、この5重奏の直撃を受けたノエは語った。 私はオナラ色の天国(じごく)を見た、と―― 終