SamSuka
黄金の黒山羊(黒胡椒サラミ)
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ブラックコンビニ店長とバイト女子

※短編です。ちょいといつもと違う雰囲気かも。


 俺はしがないコンビニ店長だ。

 店長と言えば聞こえがいいかもしれないが、その実態は非常に過酷である。シフトに入ってくれるバイトがいなければ、その穴埋めのために深夜でも働かなければならない。

 俺が勤務するコンビニが入っている建物の二階より上はアパートになっており、俺はそのうちの一部屋で暮らしている。つまり、自宅から職場までは階段を降りるだけの距離しかない。俺はもう立派な中年だが、このまま部屋と職場を往復するだけの人生が続くのか。そうやって憂鬱になることも多かった。

 だがそんな俺に、どうやら転機が訪れたらしい。


「店長、どうしたんですか? さっさと準備してくださいよ」

「あ、ああ」

「ひょっとして着たままする気ですか? それならそれでもいいですけど……服なんて、セックスの邪魔になるだけですよね?」

「そ、そうだな」


 一人暮らしの中年男の匂いが染みついた俺の部屋。その中央に敷かれた布団の傍で、性格のキツそうな若い娘が俺を見ている。

 彼女は荒木田カズミ。うちのコンビニで雇っているバイトの女子大生だ。俺はそっち方面に詳しくないが、ロックとかパンクとかのライブやらフェスやらに通っていそうな見た目の女子だ。髪は黒いが耳には複数のピアスがついている。声もダウナーな響きで、目つきは俺を見下すような感じである。

 「性格がキツそう」と言ったが、実際彼女の性格はキツい。一緒にシフトに入っているときも、店長である俺に向かって、「そういうトロくさいの勘弁してください」とか「モタモタ仕事しないでくれませんか?」とか「最近お腹出てきませんでしたか?」とか傷付くことを平気で言う。繊細な俺は、その度に枕を涙で濡らしていた。

 その荒木田カズミの口から「セックス」という単語を聞く日が来ようとは、俺は全く想像していなかった。

 ここに至るまでの経緯はさほど複雑ではない。今日の休憩中にスマホを弄っていた俺は、たまたま妙なアプリを発見したのだ。そのアプリは画面を見せた相手に強力な暗示をかけるという触れ込みで、これを使えばどんな命令でも聞かせられると説明に書いてあった。正直、雑誌コーナーの棚に置いてあるエロ雑誌類に載っていそうな荒唐無稽な話である。単なるジョークアプリだろう。俺も最初はそう思った。――だが、長時間の勤務で疲れていたせいか、せっかくだしこのアプリを試してみようと思った。


(どんな命令でも……誰にどんな命令をしてみようかな)


 俺も男である。そうである以上、せっかくなら女子に対して命令してみたいと思うのは当然だ。そこで最初にターゲットとして考えたのは、そのときシフトに入っていた丸岡さんだった。丸岡さんも近所の大学に通う女子大生だが、彼女は荒木田カズミとは正反対な見た目の、清純なお嬢様というタイプの子である。美人なうえ、物腰が柔らかく愛想の良い彼女は、客からも大変ウケが良かった。それに何より、丸岡さんは店の制服の上からでもはっきりわかるほどの巨乳だった。

 しかしいくら何でも、丸岡さんをこんなアプリの実験台にできるだろうか。俺はそんな非人道的な人間じゃないぞと考えていると、まさにその丸岡さんが、俺のいたバックヤードに上半身だけ見せるように顔を出した。たったそれだけで、バックヤードに女の子のいい香りが広がった。


「店長さん。私、今日はこれで上がりますけど――」

「……え? あ、そっか、もう丸岡さんは上がりの時間か。お疲れ様」

「はい、お疲れ様でした。……あの、大丈夫ですか?」

「大丈夫って何が?」

「……いえ、何でもないです」


 バイトを終えた丸岡さんが帰ると、俺は店に一人になった。客の流れも少し途切れた。それからしばらくして、夕方からのシフトに入っていた荒木田カズミが姿を現した。


「店長、何してるんですか?」


 彼女はすぐ、俺に怪しむ目を向けた。確かに挙動不審だったかもしれないが、店長である俺に万引き犯だと決めつけるような感じの視線を向けるとはなんてやつだ。――よし、決めた。こいつをアプリの実験台にしてやろう。俺の意のままに操って、何か恥ずかしい台詞でも言わせてやろう。俺はそう思った。


「やあ荒木田さん。ちょっとこのスマホの画面を見てくれないか?」

「はあ、別にいいですけど。……催眠アプリ?」

「――どうだ?」

「どうって?」

「あれ? もしかして全然効果ない?」

「当たり前でしょ?」

「なんだ、やっぱり偽物か……」

「いい大人のクセに、下らないもので遊んでないで働いてください」

「……はい、わかりました」


 どういうことだろう。俺が荒木田カズミに命令するはずだったのに、俺が彼女の命令に従う側になっている。俺はしぶしぶ休憩室から出て業務を再開したが、頭の中で首を傾げっぱなしだった。

 コンビニの業務は客の多い昼も大変だが、夕方から夜はその大変さの質が変わる。単純に夜中に煌々と電気がついた場所で働くのは身体にキツいし、理不尽な客の割合もめちゃくちゃ増える。酔っ払いが棚にぶつかって商品を雪崩のように落としたり、タバコの銘柄が無いことの怒りを店員にぶつけるヤカラのような兄ちゃんが現れたり、不良少年たちが店の前にたむろしたり、今日もストレスが溜まることが色々とあった。


「……はあ」


 その度に、俺の口からため息が漏れる。こないだ旦那さんの転勤で辞めた遠藤さんと、お母さんが病気になって国に帰ったチャイ君の代わりが見つかるまでは、俺がシフトの穴埋めをするしかない。そう考えると憂鬱だった。

 数時間後の完全に深夜になった時間帯、荒木田さんの勤務時間が終了した。


「それじゃ、私帰ります」

「ああ、お疲れ様」

「……店長は? 帰らないんですか?」

「俺は交代の人が来るまで店にいないと」

「それって朝じゃないですか。……一昨日くらいからずっと働いてません?」

「仕方ないよ。代わってくれる人がいないんだし。俺は店長なんだから」


 俺が笑うと、荒木田さんはむっと顔をしかめた。


「店長って言っても、オーナーじゃないですよね。対してお給料ももらってないのに、そこまでして働く意味ありますか?」

「いや、でもさ……」

「そんなことしてると、いい加減死にますよ」

「まさか、そこまでいかないだろ。はははは」

「鏡見てないんですか?」

「え?」

「……ひっどい顔」


 そう吐き捨てた彼女は、何を思ったか「お店閉じますよ」と言った。しかしそれは駄目だ。24時間営業がうたい文句なのに、勝手に店を閉じたら罰金対象になる。俺がそう言うと、彼女は「いいから」と強引に店の電気を消してしまった。


「店長の家ってこの上でしたよね」

「あ、ああ」

「それじゃ行きましょうか。さっさとしてください」


 荒木田さんが前に立って歩き、俺がその後ろをフラフラとついて行くという奇妙な状況が生まれた。俺の部屋に入った彼女は、敷きっぱなしの布団を指して「さっさと寝てください」と言った。


「――寝る? ……ってなんだっけ?」


 後から思い返せば、そのときの俺はかなり重症だったのかもしれない。「寝る」というのがなんなのかすら、一瞬わからなかったのだ。


「……それじゃあ」


 と荒木田カズミは言った。


「セックスしましょうか」

「……は?」

「服を脱いで、布団の上に横になってください。これなら意味わかる?」

「わ、わかるけど……」

「さっさと準備してください」


 なぜ荒木田さんがこんなことを言うんだ。まさか数時間前に彼女に見せたアプリが効果を発揮していたのか。しかしあのとき、俺は何も命令していなかった。混乱しながらも、俺は彼女の言う通りにした。服を脱いだ俺が布団に横たわると、荒木田さんも服を脱いだ。――思わず目を見張ってしまうほどのプロポーションの良い身体。丸岡さんよりはサイズ的に劣るものの巨乳と呼ぶに充分な胸の膨らみが、グレーのブラに覆われている。彼女はそのまま俺に見られながらズボンまで脱いでしまい、完全に下着姿になると、「はあ」と呆れたようなため息をついて見下ろしてきた。


「――どう?」

「ど、どうって?」

「これでもある程度自信あるんだけど、ちゃんと興奮しますか?」

「す、凄いするよ」

「それくらいの元気は残ってたってことですね」

「…………」

「いっつも無理して、どんなクレーマーが来ても愛想笑いして、バイトのミスも自分で被って、どんどんすり減ってくお人好しで馬鹿な店長を目の前で見せられる人間の気持ちも想像してください」


 ようやくわかってきた。

 俺は彼女に慰められているのか。

 それくらい、近ごろの俺はヤバく見えていたのか。

 天井を見上げて自分を振り返っていた俺の傍で、荒木田さんがブラを外しパンツを脱ぎ始めた。履歴書を見て知っているが、彼女はまごうこと無き女子大生で俺よりずっと年下だ。そんな彼女の裸体は、自身があるという言葉通り綺麗だった。――しかしもう充分だ。


「ごめん、俺がどうかしてた。もういいよ荒木田さん。服を着てくれ」

「――は? いまさら女に恥かかせるつもり?」


 そんな怒った声と共に、彼女から目を逸らしていた俺の上に荒木田さんの顔が覆い被さってきた。切れ長の目はまつ毛が多く、鼻筋がすっと通っている。さすが若い女子。こうやって至近距離で見ても全く皺やたるみが見当たらない。――と思っているあいだに、彼女の唇が俺の唇を塞いだ。


「……ん」


 女子の香りが鼻の中に入ってくる。その次に、とんでもない柔らかな唇の感触が伝わってきた。さらりと流れた黒髪の下で、荒木田さんのピアスが光った。


「うあ……っ」


 俺が思わず呻いたのは、俺のチンポを誰かの手がシコシコとしごき始めたからだ。――それが誰の手であるかなど決まっている。いつもしっかりネイルが手入れされている荒木田さんの指は、そのネイルで俺のチンポを傷つけないよう、包み込むように優しく刺激を加えていた。

 そう言えば、俺はここしばらく、忙しくてオナニーすらしていない。少なくとも半月以上は性欲を発散していなかった。それを思い出したのは、まだ半勃ち状態なのに、彼女の手で刺激を加えられたチンポがめちゃくちゃ気持ち良かったからだ。冗談抜きで腰が布団から浮き上がり、俺は肩とかかとでブリッジするみたいな姿勢になった。


「……なんだ、ちゃんと勃つじゃん。私の手の中でおっきくなってきたよ」

「うあっ、あっ」

「EDとかじゃなくて良かったね」

「あっ、荒木田さんっ、うわあっ」

「ふふっ、マヌケ面♡」


 荒木田さんは俺に手コキしつつ、口を開けて舌で首筋を舐めてきた。そうすると、彼女の八重歯が人よりも長いのが目に入った。

 なんとも情けないことに、俺は文字通り、年下の娘の手のひらの上で転がされていた。仰向けに寝た俺の隣に荒木田さんが横たわり、シコシコ、シコシコと手コキを続ける。他人の手で敏感な性器を触れられるというのは、自分でオナニーするより遥かに気持ち良かった。


「あ、あっ、荒木田さっ」

「おチンチンビクビクしてるけど、ひょっとしてもう出したいの? ……いいよ、出しちゃいな? 今日は店長のお疲れ様パーティみたいなもんだから、好きなように気持ち良くなっていいよ?」

「ううううっ!」


 女子にしては低い声が耳元で響く。荒木田さんの吐息がぼそぼそと耳をくすぐり、そのくすぐったさで俺は身をよじった。チンポをしごく彼女の手の動作が早くなり、音がシコシコからシュッシュという感じに変わった。


「ほら出しちゃいな? 出して♡ 出ーせ♡ 出せって言ってんのよ♡ それとも、私の言うこと聞けないの?」

「おっ、あっ、ううっ!?」

「あんたのチンポは出したがってるよ? 私の手の中で暴れて、濃い精子びゅるびゅる~って吐き出したがってる♡ ほら出せ。出せよ。だ~せ♡」

「うあっ、あっ! 出る! 出るうう!」

「――うわっ♡ ホントに出たっ♡」

「おっ、おっ、おっうっ、ほおっ!?」

「おほおって何? オットセイかよ……♡ それにしてもすっごい勢い♡ やっぱ溜めてたんだ♡ 良く出せました♡ 偉いぞ♡」

「あ、荒木田さん」

「うん♡ うん♡」


 この子はいったいサドなのか優しいのか、俺をなじる台詞と褒め言葉を交互に繰り返し、俺が自分の腹の上にびゅくびゅくと精液を吐き出す様子を見守っていた。いつの間にかガチガチにフル勃起していた俺の肉棒は、荒木田さんの手に握られたままビクンビクンと跳ねまわり、先端からねばついたドロドロの塊を放出している。腰が融けそうなほど気持ち良くて、最近溜め込んでいたストレスが急速に失せていくのを感じていた。


「あ、ああ……うああ……」

「まだおチンチン跳ねてるね。最後までシテあげるから、ゆっくり出しな」

「うん、わかった……。ありがと……うっ! はあ、はあ、はあ……」


 これでは彼女が姉で、俺が弟みたいなもんだった。実際には俺のほうがずっと年上なのに。しかしそれを情けないとか思う暇もなく、射精を終えた俺の上に圧倒的な眠気が襲い掛かってきた。


「……あれ? 店長、もしかして眠い?」

「うん……ごめん荒木田さん……」

「謝ることじゃないけどさ。気にしないで、ゆっくり眠っていいよ」


 まぶたがとろんと落ちてくる。そんな中、俺は考えた。

 仮に俺が寝ているあいだに彼女が部屋から財布や通帳を盗っていこうが、俺はまったく後悔しないだろう。それくらいの満足感が俺を包んでいた。――そしてもちろん、荒木田さんはそんなことをしたりはしない。普段のバイトでも口は悪いが、決して仕事の手を抜いたりしないのが彼女だ。ゴミボックスの掃除とか、他のバイトがあまりやりたがらない仕事とかも文句を言わずに引き受けてくれる。

 ああ、だから彼女は俺にこんなことをしてくれているのかもしれない。


「……おチンチンまだ硬いよ? 眠いんじゃなかったわけ?」

「…………」

「眠いのは本当だけど、まだ出し足りないって感じ? しょーがないな」


 彼女は俺の目を見て一人で納得した。そして俺の視界の外で、彼女が何かごそごそしている音が聞こえた。


「あ、一個だけあった」

「……?」

「ゴム付けるよ、店長」


 薄い膜のような何かが俺のチンポに嵌められていった。言わずもがな、コンドームである。その次に、温かい何かが俺の上に乗っかってきた。それはもちろん荒木田さんの身体である。


「もしかして重たい? ……そうだって言ったら殺すからね? ……うわ、ヤバ。店長のおチンチン、ここまで届くの? 私も久しぶりだし、ちゃんと入るかな……」


 荒木田さんはできるだけ俺に体重をかけないように腰を上げ、チンポの先端をマンコの入口にあてがった。


「嘘でしょ? 私すごい濡れてるし……。こんなおじさんとのエッチでそんな興奮する? まあそんな店長のこと嫌いじゃないけどさあ……」


 彼女がぶつぶつ言う声と共に、俺の亀頭が何かとキスした。それはさっき彼女と唇同士でキスしたときか、それ以上の感覚を俺に伝えた。熱くねっとりした何かがチンポの先に触れ、俺の肉棒はどんどんとその中に包まれていった。


「うああ……っ!」

「あ……んんっ♡」


 猛烈に眠いのは変わっていない。でも同時に下半身が物凄く気持ち良かった。荒木田さんは俺のチンポを膣内に飲み込むと、腰を上下に振り始めた。ヌルついた彼女の内部が俺のチンポをシゴく。さっき手コキしてもらったときより圧倒的に気持ちいい。

 もはや誤解のしようがない。俺はバイトの女子大生とセックスしていた。自分の部屋で、若い娘に騎乗位で腰を振らせていた。気を抜いたら寝てしまいそうになっていたが、それでも感動的だった。荒木田さんの白い胸がぷるぷると揺れ、ピンク色の乳首が残像を描く。普段は当たりのキツい彼女が、いまは女神のように見えた。


「ん、おっきいい……♡ あ~、このチンポ当たりだわ。硬さとか、カリの当たり具合とか最高……っ♡ ヤバ、店長とのエッチにハマっちゃったらどうしよ♡ あ~……♡ いい♡ んっ♡ んっ♡」


 やがて荒木田さんの肌にしっとりと汗が浮かび、彼女は悩まし気に眉をひそめた。

 さっき一発射精していたから耐えられていたが、それが無ければとっくに射精していたくらい彼女の中は名器だった。


「あっ♡ んんっ♡ お腹のなかっ♡ チンポで掻き回されるっ♡ 店長のチンポがずるずるって出入りしてるのエロ過ぎっ♡ あっ♡ イキそっ♡ 私もイクっ♡ あっ♡ んんんっ!♡♡」

「うっ、あっ! おっ!」

「はあああ……♡ ……店長も出した? お腹の奥でビクビクしてる……♡」

「おっ、おっ! うああ……」

「……もう眠いの限界? そんな顔してる。……いいよ、このまま見ててあげるから眠っちゃえ。……おやすみ」


 彼女は俺の額にちゅっと唇を落とすと、チンポを咥え込んだマンコをきゅっきゅっと締めながら、俺の身体の色々な部分にキスを繰り返した。

 そんな圧倒的な恍惚の中で、俺は気絶でもするように、しばらくぶりの安らかな眠りに飲み込まれていったのだった。

 その日、俺が久しぶりに見た夢は、どこかの田舎でゆっくりしている夢だった。俺は少年の頃の姿に戻っていて、誰かわからない女性に膝枕されていた。売り上げノルマとか、シフト調整とかに悩まされたりすることもなく、とにかくぼうっとしていた。



  §



「おはようございます、店長」


 目覚めた時には朝だった。窓の外は完全に明るくなっていて、起きた瞬間、店に行かなければヤバいと思った。俺がガバっと身体を起こすと、部屋のキッチンスペースのところに荒木田さんがいた。


「大丈夫ですよ。引継ぎは私がちゃんとしておきましたから。お店はちゃんと開いてますよ。一晩勝手に閉めてたのは、まあ後で何か言われるかもしれないけど……。店長が過労死するよりマシじゃないですか」


 彼女の喋り方は敬語に戻っていた。

 俺は何故かホッとしながら、彼女に礼を言った。


「ありがとう……」

「どういたしまして」

「で、いまは何をしてるんだ?」

「朝ご飯」


 作ってますと言いながら、彼女はフライパンの中身を菜箸で弄っている。見ればわかるんだから、わざわざ質問するまでもなかった。

 彼女は服を着ていたが、俺は裸のままだった。俺はいそいそと服を着てから、もう一度彼女に感謝の言葉を述べた。


「その、昨日はありがとう」

「いいですよ、別に」


 彼女の物言いは実にさっぱりとしている。どうやら昨日俺とセックスしたのは、彼女にとってはあくまでボランティアみたいなものだったらしい。そう思うと、残念であると同時にやはりホッとした。

 この歳になってから年下の娘に恋するなんて、人に知られたら笑われるだろう。

 朝食を作り終えた荒木田さんは、俺と一緒にそれを食うつもりは無いようだった。


「じゃあ用意済みましたから、私は行きます。ちゃんと食べてくださいね。食事も最近、売れ残りのお弁当とか自分で買って食べてたの知ってますよ? シフトもあまり無理し過ぎないでください」

「……うん、反省するよ。もしかして、荒木田さんはこのまま学校に行くつもり?」

「はい。でも一回制服とってこないと」

「――え?」

「――あ」

「いま、制服って言わなかった?」

「言ってないですよ? 耳が腐ってるんじゃないですか?」

「いや言ったでしょ。……君って大学生じゃなかったのか? もしかして履歴書に書いてあったのって嘘じゃ――」

「失礼しまーす」


 彼女はそそくさと俺の部屋を出て行こうとした。――あるいはこれで、彼女はうちのコンビニのバイトを辞めてしまうかもしれない。ふとそんな考えがよぎった。

 だが出て行く直前、ドアを開けたまま荒木田さんは振り向いた。


「――ねえ店長」


 荒木田さんは、珍しく笑顔だった。「またシフトのときに会いましょうね?」と言った彼女に、俺は「ああ、よろしく」と返したのだった。


Comments

荒木田さん、好きだ

yosidadai5

良い雰囲気で結構好き。続きも読んでみたい。

ktm^2

ほっこりした こういうのもいいですね

カンガルー

めっちゃ良かったです。こういうのも新鮮でもっと読みたくなりました

GABA


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