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黄金の黒山羊(黒胡椒サラミ)
黄金の黒山羊(黒胡椒サラミ)

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【作業進捗チラ見せ】ボッチシリーズ新作

 五十嵐昌太は大学の映像サークルの女子たちと旅行に行くことになった。

 映像サークルには、昌太以外は女子が二人しかいない。正確には他にもメンバーがいるのだが、ほとんどサークル棟に姿を見せたことのない幽霊部員だ。しかし、その女子二人というのが二人とも大学内では飛び抜けた美人だった。学際のミスコンに参加すれば、きっと二人とも優勝争いするだろうと昌太は思っていた。

 映像サークルは緩いサークルで、邦画や洋画の感想をサークル棟の部屋で言い合うのが主な活動内容である。だが昌太としては、せっかくこれだけの美人が揃っているのだし、自分たちで映画でも撮ってみたらどうだろうと考えていたところだった。


「ねえ昌太。この旅館って、あの映画の舞台のモデルになったんだって。あなたは知ってた?」


 と言って映像サークルのメンバーの一人、六条なのかが見せてきたパンフレットには、山間に立つひなびた温泉旅館が写っていた。


「ああ知ってるよ。名探偵諸星シリーズの二作目に出てきた十文字旅館だろ?」

「あ、やっぱり知ってたのね。さすがじゃない」


 なのかはそう言いつつ、後ろ髪をさらりとかきあげた。なのかは少しツンツンした見た目で、美人だが近寄りがたいと思われている。実際に口調も性格もややキツく、映像サークルの外には友達がいない。昌太に「さすがじゃない」と言ったときも、なんとなく上から目線だった。

 昌太がこのサークルに所属した初期の頃は、彼女とすれ違って言い争うことも多かった。しかし、いまではそんなことはない。なのかの内面は単なる寂しがりの女の子であることを、昌太も理解しつつあった。

 なのかは言った。


「佐智子とも話したんだけど、今度の連休にこの旅館に行ってみない? あの子もあの映画のファンだし、舞台を実際に見てみたいんだってさ」

「えっ……。一緒にって、泊まりで?」

「……そんなにびっくりしてどうしたの? ――あっ、もしかして変なこと考えた? 違うわよ。あなた車の免許持ってるでしょ? 電車で行くより車のほうが色々便利だから、運転役を頼めないかって思ったの。それだけよ。誤解しないで。サークル旅行くらい、他のサークルだって普通にしてるじゃない。それにもちろん私たちの部屋とあなたの部屋は別だから」

「お、おお……。てかそんな早口で言わなくてもさ」

「何か言ったかしら、昌太くん」

「いや言ってないよ」


 なのかは不機嫌そうに腕を組み、昌太から目を逸らしつつ、髪を指でくるくる回しながら言い訳した。

 ちなみに彼女の言った佐智子というのは、このサークルに所属するもう一人の女子、守峰佐智子のことだ。ちょうどそのタイミングで、その佐智子が部屋に入ってきた。


「なのかちゃん昌太くん、二人とも来てたんだ。あ、そのパンフレット……なのかちゃん、昌太くんにも話したの?」

「そうよ、いま言ったとこ」

「そうなんだ。――そういう訳なんだけど、昌太くんはどうかな? もちろん予定が立て込んでたりするなら無理は言わないし……」


 佐智子はなのかとは対照的な、人当たりの良い包み込むような性格の美人だ。そもそも昌太たちが映像サークルに加入したのは、佐智子に誘われたからである。映画に関する熱意が人一倍強い佐智子の気迫に負けて、たまたま彼女と同じ講義を取っただけの昌太はこのサークルに入った。

 昌太の最近の悩みは、この二人のうち、自分はどっちのことが好きなのだろうということだ。大学内の異性の中で自分が二人と一番距離が近いのは間違いない。二人とも昌太のことを単なる友人ではなく異性として悪く思っていない様子だ。

 もしかしたら、昌太のほうから積極的にアピールすれば、二人のどちらかを人生初の彼女にすることができるかもしれない。

 そういう状況で二人のほうから持ち掛けられた三人でのサークル旅行。昌太は色々と考えたが、最終的に参加を受諾した。

 ――だが、それが誤りだったのかもしれない。


「……あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」

「んっ♡ はぁっ♡ あっ♡ あっ♡」


 旅館の浴衣を着て昌太が布団の中で寝ているとき、なのかと佐智子は、彼の知らない年下の男に抱かれていた。

 すやすや寝息を立てる昌太と、壁一枚隔てた隣の部屋では、彼と仲の良い二人の美人女子大生のマンコが、見た目地味な目立たない少年の勃起チンポにずぼずぼ深掘りされていたのだ。


「せ、瀬戸くん♡ それ、気持ちいいっ♡」

「あっ♡ あっ♡ あっ♡♡ ああんっ♡♡ 瀬戸くんっ♡ 私にも、指じゃなくてもう一回おチンチンちょうだい♡ セックスしてぇっ♡♡」

「ああいいよ、なのか、佐智子。二人ともまだまだ気持ち良くしてあげるよ」

「うっ、嬉しいっ♡ ああんっ♡」

「瀬戸くんっ♡ 瀬戸くぅんっ♡」


 彼女たちが、自信たっぷりに言い切ったヤリチン野郎の毒牙にかかってしまったのはどういう訳か。それを説明するには少し時間をさかのぼらなくてはならない。


  §


 名探偵諸星シリーズは猟奇的なテーマを扱う推理サスペンスで、原作小説もそれを元にした映画も、大人気とまではいかないがコアなファンを集めている。そのシリーズの中に十文字旅館という特殊な構造の旅館が出てくる作があるのだが、昌太が六条なのか、守峰佐智子と一緒に訪れることになったのは、そのモデルとなった実在の旅館である。

 昌太が運転するレンタカーで、三人の大学生はそこに向かった。途中、映画に出てくる滝や神社に寄り、映画ゆかりのエピソードを探したり写真を撮影したりした。


(なんだ、普通にサークル旅行だな)


 昌太はそのときそう思った。


(六条も守峰も神社の写真撮るのに夢中だし……エロい雰囲気とかなりそうもないし。ていうか普通に旅館の傍に駅あんじゃん。山奥まで運転疲れたわ)


 ため息をつきつつも、昌太は少し安心した。もしこの旅行中にどっちが本命なのか選べなどというふうに迫られたら、どうしていいかわからなかったというのが彼の本音だ。


(……六条と守峰、楽しそうじゃん)


 わいわいはしゃぐ二人を見て、昌太は微笑んだ。すると振り向いたなのかが言った。


「何笑ってるの? ……キモッ」

「はああ?? んだよそれ! 人に運転させといて言う台詞か⁉」

「な、何よ。急に怒らないでよ……」

「ああもう、そうやってしゅんとするのも反則だろ。――まあいいや、楽しんでるか?」

「うん、楽しい」

「そっか、ならいいさ」

「昌太がそうやってカッコつけてもカッコよくないわよ」

「お前なあ」

「ねえなのかちゃん、昌太くん! あっちに真犯人が飛び降りた崖があるんだって!」

「やれやれ、あっちにも子どもみたいなのがいるし。――行くか?」

「うん」


 三人はそうやって道中をエンジョイしながら旅館にたどり着いた。


「ふーん、映画と小説の中だと不思議な構造なのに、実際に来てみたら普通の旅館なのね」

「ええ、皆さんそうおっしゃいます。お風呂にはいつでも入れますので、お好きな時にどうぞ。お夕飯は隣の部屋の方と一緒になさいますか?」

「はい、お願いします」


 なのかと佐智子は女子だけの二人部屋で、昌太はその隣の一人部屋だ。

 なのかが乗り出した窓の外には裏庭と、紅葉シーズンの綺麗な山の風景が広がっていた。


「う~ん、空気が綺麗。いまの季節ならエアコンもいらないし、最高ね。――あれ?」

「どうしたのなのかちゃん。窓の外に何かあった?」

「あ、別に。ただお庭に男の子がいただけ」

「え? ……男の子?」

「私たちより年下だと思うけど、高校生くらいかな」


 なのかの言葉が気になって、佐智子も窓から裏庭を見下ろした。散歩しているらしい彼は、目立たない雰囲気をしていたが、何か放っておけない気にさせる不思議な少年だった。


「本当だ。……一人でここに泊ってるのかな」

「まさか、そんな訳ないでしょ。どうせ家族の人とかと一緒よ」

「うん……」


 と、そこでノックの音がした。


「おーい二人とも」


 ドア越しに聞こえるのは昌太の声だ。なのかと佐智子がいったんそちらを向いてから、再び窓の外に目を向けると、少年はいなくなっていた。


  §


「高校生くらいの男の子……ですか? そうですね、今日お泊まりの方の中には、確かそういうお客様はいらっしゃいませんね。――あれ? でもどうだったかしら……」


 部屋に夕食の準備をしに来た仲居に、佐智子が昼間の少年について心当たりを尋ねたところ、仲居は首をかしげていた。


「ごめんなさい、ちょっと記憶があいまいで」

「あ、別にいいんです。他のお客さんのことなんて個人情報でしょうし。変なことを聞いてすみませんでした」

「守峰、男の子ってなんのこと?」


 そこで昌太は初めて、佐智子となのかが謎の少年を目撃していたことを聞いた。


「ふーん」


 だが、二人が少し気になったというだけで、高校生くらいの男子が旅館にいたら悪いという法律は存在しない。むしろ――。


「守峰も六条も、なんかあの映画のイメージに引っ張られてるんじゃないか?」

「むっ、何よ。馬鹿にするつもり?」

「そんなんじゃないけどさあ。現実でああいう殺人とかは起こんないって。まあそう思いたくなる雰囲気の旅館だってのは確かだけど」


 仲居がいなくなったあと、三人は食事しながらそういう会話をしていた。

 三人の前にそれぞれ置かれた御膳の上では、一人用の鍋の中身が煮えている。メインの具材はネギなどの野菜と、この裏山で採れたイノシシの肉だそうだ。精がつきますよと、さっきの中年の仲居は言っていた。昌太はその言葉で、自分とこの二人との仲を煽られた気がして、何となく気恥ずかしさを味わっていた。

 しかも昌太の向かいに座る二人は浴衣姿だ。その浴衣はこの旅館のもので、男性向けが水色の、女性向けは淡い桃色のデザインだ。

Comments

うわ! 恥ずかしいミスをしてしまいました! ご指摘ありがとうございます。

黄金の黒山羊(黒胡椒サラミ)

もはや怪異化した瀬戸君好き。 日常に戻った後も以前と似ていて違う日々になるでしょうかね。 場面転換後から、"六条なのか"の名前が"かなえ"になってます。

ディスレイ


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