天海の陰陽師【麒麟編】のプロローグを公開します!
このプロローグは全員閲覧可能にいたしますのでよろしくお願いします。
天海の陰陽師【麒麟編】
「プロローグ『陰陽師、動く』」
【天来学園最終決戦】から2ヶ月後……。
全ての黒幕であった1匹の狼を葬るために、1人の人間が命を落とした忌まわしきあの事件。
その後、どういうわけか……亡くなったその人の肉体は失われていた。
火葬したというわけでも、盗まれたというわけでもなく、消滅したのだ。
彼が狼を連れて黄泉の国へと向かったその時、彼の肉体もまた黄泉の国へと連れ去られるかのように光へと消えていったらしい。
肉体が失われた以上、彼を蘇らせる手段は存在しない……。
はずである。
だが、諦めのつかなかった僕は、この2ヶ月世界中を巡っている。
彼を……天野迅雷を蘇らせるために。
僕の名前は夜見野彼岸。
職業は陰陽師である。
「ふぅ……ここもだめか……」
次の国へ向かう汽車の中、僕は地図を広げバツ印をつけていた。
世界地図の半数以上がバツで埋め尽くされた地図……これはここ2ヶ月で僕たちの巡った履歴であった。
僕たちと比喩するのは、僕以外にも先程名前を上げた人間を蘇らせたがっている人がいるということだけは伝えておこう。
まあ、僕を含めてとりあえず三人で動いているんだけどね。
そんな織り、ごそごそと僕の着ているパーカーのフードから狩衣を着たネズミがちょこんと窓際のテーブルへ僕の身体を橋替わりに使って移動し、ちょこんと座っている。
「主~、あの国でも役立つ情報無かったですね」
「そうだな、子(ね)」
彼は僕の使役している式神【子】。
陰陽術奥義【破邪の法】を発動するために必要な十二体の式神の1人である。
僕が常時召喚している式神で、先程みたいに普段は僕のフードの中に隠れている。
人見知りとかではなく、単純にこいつは面倒くさがり屋なので楽をするためである。
「2ヶ月でここまで巡るなんて、主たちも頑張りますね」
「まあ……仲間を助けたいってのはあるね……あー、ボルさんは違うけど」
「あの賢者様はどちらかといえば【我が子】を蘇らせたいってのが強いんでしょうね」
「まあ、あの人、迅雷の育ての親だしね……ふぅ……」
「主、あまり無茶をしないでくださいね。 ここ最近はよく眠れていないようですし」
「うーん……まあね。 でも、行動しておかないと絶対後悔するからね……やれることはやらなきゃな」
「そうですね……もぐもぐ」
「……ん? お前何食べてんだ?」
「あー、おきになさらず! 先程売店で買ったチーズです」
「売店で買ったって……お前……お金はどうした」
「あー、主! お金借りました! ごちそうさまです」
「子!!!!」
ビローーーン、と僕は子のほっぺたを引っ張りあげた。
まるで餅みたいに伸びるな、こいつの頬。
また、無断で僕の金を使いやがって……式神は食事しなくても平気なはずなんだけどな。
「頼むからお金使うときは言いなさい! 分かった?」
「ご、ごへんははい(ご、ごめんなさい!)」
「よろしい」
「いててて……主、これはパワハラなのでは?」
「それを言うならお前は資金を横領してるからな?」
「お口チャックしておきますね」
そんなこんなで約1時間後……僕らは目的地へとたどり着いた。
虎獣人の多くが暮らす虎獣人の国……【タイガーランド】に。
【タイガーランド】。
虎獣人の多くが住まうこの国はあらゆる種族の中でも、かなり古い分類に含まれる国である。
人間との全面戦争時に全滅の危機に陥ったが、その度に復興し立ち直っている国なのである。
そんなタイガーランドであるが、実は僕は何度かお仕事で訪れたことがある。
この国では先程も説明したが、戦争がありかなりの死者を出した国……癒されない霊たちが怨念をまとわり、悪霊として出現することもごくたまにあるのだ。
霊とは、その場の感情や心情、信仰、雰囲気といったものに左右されて変化するもの。
更にたちが悪いのは、霊は生者と違いそう言ったものが溜まりやすく、悪いものが悪い状態で蓄積されてしまうものなのだ。
故に、ある日突然そのキャパをオーバーしてしまうことにより、化け物や悪霊、怨霊に変わってしまうものである。
さてさて、話がずれたが僕は何度かここに訪れている……ということはだ。
「入国審査お願いします」
「はい……って、夜見野さん! お久しぶりじゃないですか」
顔馴染みが多いのだ。
「本日はどう言った御用事で?」
「今日は観光ですね。 ちょっと今休暇で世界中を巡っているところなんですよ」
「え? そうなんですか? てっきり、また大臣から頼まれたのかと思ってましたよ」
「あー、あのキャラの濃い大臣か……」
「まあそうですね! あ、噂をすれば……」
衛兵と共にいる、軍服に身を纏った若そうな虎獣人……あれがこの国の大臣である。
若そうに見えるとはいっても、もう40代なのだが……虎族の王族系の血筋はどうやら若々しく見える遺伝子でもあるのだろうか。
雷オーナーもあんな感じだもんな……。
まあ、あの人……いや、あの虎は術でそうなっているのだけど。
「おや?おやおやおやおや!! そこにいるのは、夜見野くぅーんではないかねぇ!」
「ゲッ……気づかれた」
「夜見野くぅーん!! 久しいねぇ~!!」
うわ、気づいたよ。
近づいてきたし……まじかよ。
しかもこの大臣、耳がピョコピョコ動いている。
こういう時は必ずなにか良くないことが起こってるんだよな……。
「ちょうど良かったよ。 これから君たちの総本山に連絡をしようとしていたところだから……まさか、天海の陰陽師がやってきてくれるとはぁ!」
「あー……えー……あのー……」
「じゃあ夜見野くぅーん! 早速応接室へレッツゴー!!!」
「えーっと……はい……」
断ると面倒なのでやります。
はい……。
こんな感じで僕は言われるがままに応接室のあるタイガーランド城へと連れていかれることになるのであった。
つづく