引き続きプロローグになりますので全体公開致します!
前回からの続きです!
【タイガーランド城】
ここは虎族の国であるこのタイガーランドで最も古い建造物である。
昔々……かつてあった古の戦争時代において唯一この城だけが残り、再びその城のまわりに家々が建てられ王国は何度も立ち上がってきたとか。
そういう伝承が伝え聞く。
その城への入場制限は特になく、観光地としても有名である。
溢れんばかりの虎族の英雄たちの銅像やら、歴史を語る壁画。
そして、神話を伝えるステンドグラスなどなど……。
いつ来ても、眩しくて目がチカチカしてしまう。
「ささぁ!彼岸くん、こちらだよ!」
大臣直々に案内されて入った応接室には、すでに先客とも呼べる人物が立っていた。
彼の名前は……。
「……ゴート」
「おや?これはこれは、私の彼岸くんではありませんか」
神父姿の黒山羊は僕の姿を見るなり、抱きつこうと飛びかかってくるが、僕の式神たちが自動で全員召喚されすかさず彼を拘束してしまうのであった。
「おやおや?彼岸くん、こちらの神父様とお知り合いで?」
「大臣殿、知り合いだなんてそんな……共にベッドで熱い夜を過ごした中ですよ」
「まあ、それはそれは」
「違います!! 大臣違いますから!! この人、僕のストーカーなんです!!」
この黒山羊……ゴートは数ヶ月前まで、全世界に指名手配されるほどの怪盗であった。
『十二星座怪盗』と呼ばれる、その名の通り黄道十二星座に連なる十二人の怪盗組織の1人であったこの男。
しかしながら、十二星座は賠償金として多額の金と共に盗んだものを必ず持ち主に送り返すという点、そして彼らの目的は『あくまでも恵まれないものたちへの義賊行為』という観点から、多くの市民から賛同と署名を受けたことで国際警察組織【ICPO】の新任長官がつい先日指名手配を取り下げたとのこと。
そして、怪盗関連の経験から窃盗に関するアドバイザーとしての立場を与えられた彼らは事実上【ICPO特別捜査官】として任命されることになるのだった。
しかし裏を返せば、新任長官のこの選択により各世界の窃盗事件の減少、並びに美術館、考古学館等のセキュリティー強化に繋がったとされている。
故にICPO、各警察組織で起こっていた反対デモは秒で鎮火してしまったとか……。
さて、そんなことより……。
「なんであなたがここにいるんですか」
「ふふふ……私は彼岸くんの行く先々なら何処へでも行きますとも。 えぇ……」
「やだ、怖いこの人……」
「ここに来る途中も、君が電車の中で咥えて駅のホームのゴミ捨て箱に捨てた串団子の串を、ちゃんと駅のゴミ箱から拾ってきてこうして厳重にジップロックに……」
「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
ゴートの住まいである教会の一室は、僕のこれまでの写真やら体毛やらを飾る部屋になっているらしい……と、本人に聞いたのだが……おぞましい。
ここまでされると、流石におぞましい。
「大臣!なんでこの人いるんですか!!」
「あはぁ~。 いやだって、そろそろタイガーランドの伝統行事【白虎祭】だからねぇ。 準備のために高名な神父をお呼びしたのですよぉ」
「【白虎祭】……あぁ。」
虎族の祖先とされる白き毛並みの伝説の聖獣【白虎】。
幾度もこの国の危機に瀕しては現れ、彼らを救った英雄として崇められている。
虎族は彼の系譜であり、彼の血筋である。
その白虎の血が濃いものを、虎族では【王族】と呼んでいる。
そんな王族である……というか、白虎本人を僕は知っているのだが……まあ、これは後で話すことにしよう。
先程話した白虎……虎族の神として崇められる彼に感謝を意を込める祭こそ【白虎祭】であるのだ。
祭中、白虎に神聖な祈りを捧げる【天恵の儀】と言うものがある。
それは、白虎に感謝を捧げる舞踊……いや、この場合は神に捧げる舞であるから【神楽】と言った方がいいか。
この伝統的な神楽は、数名の聖職者と虎族の王族から選ばれし【御子】からなる聖なる舞。
王国繁栄から現在に至るまでの歴史を表現するとか。
「今年は私の番だったのです」
「あ、そうなんですね。 頑張って下さい。 それで大臣仕事の話ですが……」
「彼岸くん!!? ちょっと、彼岸くん!!? ダメダメダメ、そんな軽く私をあしらうのとかダメダメダメ!!」
「大臣……この人うるさいんで僕帰っていいですか? 他に用事があるので……」
「まっ、待ってくれ!!彼岸くん!! おい、衛兵! 神父を別の部屋に!!」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ彼岸くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
断末魔のように僕の名前を叫びながら、ゴートさんは別室へ誘導されましたとさ。
「いや……まさかあの神父があそこまで人に拘るとは……」
「あー……そういえば、あの人。 僕以外はどうでもいい存在って言ってましたね……迷える子羊は平等だと」
「君は?」
「僕は"愛しき我が楽園(エデン)"だそうです」
「……」
大臣は口を開けたまま硬直していた。
まあ、でしょうね!
そういう反応になりますよね!
しばらくの沈黙の後、コホンと僕の咳払いから話は仕事の事へと戻るのである。
「それで、仕事というのは?」
「あぁ。 うん……実はこれは極秘だから外部に漏らさないでほしいんだけど……実は【御子】である虎族王族【銀(シルバー)】様が、天恵の儀を拒絶しておられるのだ」
「シルバー様……確か、今年で10歳になられた虎族王族の第一王位継承者ですね」
「ええ……全く。 困ったことに、ここ最近は部屋から出ずにずーっと籠りっぱなしで……しかし、夜になるとふらりと何処かへ外出なさるらしく……その姿がまるで何かにとり憑かれたかのように……」
「ふむふむ……なるほど」
「彼岸くん、どうにか御子をなんとかしていただけないだろうか」
「まあ、構いませんけど……それでは1つ条件があります」
「条件?」
「虎族王族に伝わる【生命虎(ライフ)】と呼ばれる書物の閲覧を許可願いたい」
「なっ……それをどこで……」
「情報通な人がこちらにいてね……さて、どうします?大臣殿」
僕がここに来た理由……それは、【生命虎】を読むことである。
必要とあらば、拝借しようかと考えていたのだが、交渉で読めるのならばそちらを選択しておいた方がのちのちいいだろう。
別段僕は虎族を敵に回したいわけでもないのだし。
「こればかりは、私の一存では……」
「いいや、よいぞ」
「こ、国王陛下!」
応接室に現れたのは、現虎族国王【マグナ】……黄金の騎士と呼ばれた剣術使いである。
出で立ちは、ラフなワイシャツとズボン姿とは言え、服越しからでも分かるほどの無駄の無い筋肉。
相変わらずな様子であった。
「彼岸殿、それで倅の行動が分かるのなら良いです……譲渡ではなく閲覧……それに、天海と呼ばれる陰陽師のあなたならその書物の技を悪用するためには使わないでしょう」
「マグナ国王……感謝いたします」
深々と頭を下げ、僕は御子のいる部屋へと向かう。
前に来たことあるから、道は分かる……それに、シルバー様とは前に会ったことがあるのでね。
【シルバーの部屋】
『開けるな!入るな!』と書かれた看板が部屋の前にぶら下がっている。
思春期の男の子がやりそうなことではあるな……。
コンコン「シルバー様」
「誰だ!! 俺に構うな!!」
コンコン「お久しぶりです、彼岸ですよ」
「え?」
次の瞬間、あんなに頑丈に閉まっていた扉は開き、中から勢い良く出てきた1匹の小さな虎は僕めがけて飛び込んできた。
「わぁ!! 彼岸先生、お久しぶりです!!」
「おお、だいぶ大きくなって……見違えましたね、シルくん」
「えへへへ♪ あ、先生早く早く俺の部屋に来て来て!」
虎族王族【シルバー】……実は彼は僕の弟子であるのだ。
昔訪れた時……当時6歳だった彼には【霊力】が既にあった。
それも流石は虎族の王族と言わんばかりの、強力なものであり、その力に引き寄せられ当時のタイガーランドでは悪霊騒ぎが今の倍以上であった。
そのため僕はシルバーに霊力をコントロールする術を教え、ついでに僕の使える【式神召喚】のやり方をレクチャーしてあげたんだ。
その結果僕は彼の師匠になってしまったわけなのだが。
「彼岸様、大変です……」
「えぇ……この国に来て感じました。 よく頑張りましたね……1人であれを倒そうとしていたとは」
「みんな信じられなくて……だって……だって……」
「ええ、他の人には区別が付きません……相当の霊力無くては【あれ】を見破ることはできませんもの……あなたは自分が思った以上に力を付けていてくれてて嬉しいです。 僕の誇りです」
「彼岸ぜんぜぇぇぇぇ……」
彼は泣きながら僕の胸元に顔を押し付け叫んでいました。
まあ、普通こんな状況なら泣いてもおかしくないですもの。
えぇ……だって今この街は……いや、この国にいる虎族は彼を除いて全員……憑かれているのだから。