前回の続きです!
まだプロローグなので、全体に公開していきます!
それではどうぞ!
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異変はすぐに気づいていた。
それはタイガーランドへの移動中の出来事。
僕の式神である【未(ひつじ)】が、自動召喚によって急に出てきたのである。
すやすやと普段は枕を抱きながら夢うつつにしている未が、目を覚ましていたのだ。
「主様……この先、ヤバいよ」
式神【未】の固有能力は『感知』である。
危機的状況であったり、なにかよからぬ事が迫っているのを彼は全身の羽毛で感知し、それを僕に教えてくれる。
普段夢うつつについているのは、睡眠と現実の狭間にいることによって、感覚を極限まで研ぎ澄ませているためだからなのだとか。
「タイガーランド……悪霊が溢れてる」
「おかしいな……あそこは定期的に陰陽師が霊を鎮める儀式を行っているはずなんだが……」
「主様……こないだ、黄泉の国が開いてた……たぶん、それが原因」
2か月前。
天来学園での最終決戦において、黒幕である亡霊を分魂の儀にて引き剥がした直後、その亡霊を迎えに来た者は確かにいた。
そして、その時黄泉の国の扉は開きっぱなしであったことも事実である。
だが。
「でも、黄泉の国から出るには黄泉の王【閻魔】の許可が必要じゃなかった? じゃないと、黄泉の門番に止められるはず……」
「黄泉の国……その時、混乱してた。 剣神によって」
「剣神……ノヴァさんか!」
僕は頭を抱えました。
剣神ノヴァ……神速を超えた剣撃を繰り出せるハスキー獣人の女性にして、僕が所属しているレストラン【迅凱仙】のハスキー先輩のお母さんである。
そういえばあの決戦時に、ハスキー先輩は「精神世界で母親に会った」と言ってました。
精神世界に干渉できるのは、魂の存在でなければならない。
それにノヴァさんの事だから、息子の危機を聞いて黄泉の国の門番を斬り伏せてやってきてもおかしくはない(※正解です)。
「タイガーランドの悪霊……となると、5年前に僕が倒したあいつか」
「主様が倒した悪霊……呪術士【シャララーク】」
かつて、虎族には人間の怨みから人間を呪い殺すという考えをもった一派が存在していた。
彼らは人間と共に人間と共存を目指す虎族王族たちをも呪い殺そうとしていたことがあった。
その事件が大きくなったのは5年前……僕がタイガーランドにやってきていた頃だった。
当時、銀(シルバー)くんの霊力による影響も強かったタイガーランドでは、呪術が流行していた。
マグナ国王の父親や母親も、その呪術により急逝。
そして、国民たちまでもが呪いに苦しまれていた。
その首謀者は黒虎の呪術士【シャララーク】。
虎族の根底にある怨みを全て集めたような男であった。
タイガーランドへやってくる人間を殺し続けた犯罪者であり、そしてその昔人間に奴隷にされ虐殺された一族の末裔であった。
故に彼は国全体に呪いをかけていた。
その事を知った当時の陰陽師の長である僕の義理の妹【雪見吹雪】は陰陽師三将を現地へ派遣させた。
当時三将の1人であった僕もこの土地へ来ることになり、事件はやがて王国全土を揺るがせる大事態にまで発展してしまいそうになる。
しかし、寸前のところで僕がシャララークの呪術を陰陽術奥義【破邪の法】で撃ち破り、国は救われることになる。
その後、シャララークは大罪人として異能力者投獄施設【封神】へと移送される事になるのだが……。
移送途中、看守の一瞬の隙をついてやつは自害してしまう。
しかも、その際呪術を用いて悪霊となり、再びタイガーランド全体を呪いを振り撒いてしまうのだったが、その時まだ銀くんに修行をつけていた僕が再度【破邪の法】を使ってシャララークを黄泉の国へと浄化させたためにこの事件は幕を下ろしていた。
だが、先の天来学園最終決戦での黄泉の国の扉が開いてしまっていたためにやつは逃亡。
その後再びタイガーランドへと戻ってきたのだった。
前回は1ヶ所に集まっていたため破れたやつは、今回……自身の魂を分けタイガーランド全域にばらまくという手段を用いている。
これにより、おおもとの本体をやられたとしても、魂が残っている以上完全に倒すことはできない。
しかも、魂を別の肉体に定着させるということは実質その者たちを人質にしているということ。
すなわち、タイガーランド全国民約200万人を人質に取られていることを意味する。
その事態に1人気づいた銀くんは、夜な夜な城を抜け出し天恵の儀式が行われる神聖な場所【白虎神殿】にてシャララークの悪霊を倒そうとしていたらしい。
今まさに、僕が銀くんに連れられやってきたのがここ【白虎神殿】。
聖なる守り神【白虎】を奉る聖域であり、悪霊が立ち寄れない程の強力な結界のある場所である。
「シルくんはここで僕が前に教えた式神召喚を合わせて悪霊を祓おうとしたんだね」
「はい……でも、俺ではまだ実力がなく……彼岸先生みたいに十二体の式神は喚べませんでした」
「今シルくんは何体まで喚べるの?」
「今は頑張って八体です」
「八体も?? 独学でそこまでとは……凄いな……。 僕が君の年頃の時は正式な陰陽師の社で修行して霊力を高める滝を使ってようやく十一体だった……独学でそこまで喚べれば大したものだよ」
耳をピョコピョコさせてほほを赤める銀くんはどうやら照れているようである。
普段強気な子ではあるが、こうして素直に感情を出してくれているのはとてもいいことだ。
「それで、彼岸先生……シャララークを倒す術はありますか?」
「5年前の僕なら無理だったろうけど、今はできる。 任せて」
「流石は俺の先生です!」
めっちゃ褒めてくれるなこの子は。
嬉しいと思う感情を久しぶりに思い出せそうだ。
「せっかくだしシルくんの修行もかねてやろう」
「え、先生が俺に稽古を!」
「うん、それにこの技は今後の君のためにもなるだろうしね」
「俺のため?」
「かつて【朱雀】皇が作ったとされる陰陽術高等技術【舞】。 舞踊とか神楽とも呼ばれる肉体と霊力を用いた術だ」
「舞……!!」
「その中でも虎族である君にゆかりのある【舞】があってね。 名を【白虎の舞】……あまねく雷を灯し、邪なる存在を迎撃する技だ」
皇先生から教わった舞……その中でも取り分け難しいのは【四聖獣】の名を関する舞……【朱雀の舞(不死鳥の舞)】【青龍の舞】【白虎の舞】【玄武の舞】。
しかも、舞には相当な霊力を使うことになる。
式神を八体召喚できるシルくんならば……きっとできるはず。
「そういえば彼岸先生……式神って普通何体喚べるものなんですか?」
「式神は一般的な陰陽師であるならば、一体、もしくは二体同時に召喚するのが限界だね」
「ええ!!そうなんですか!!」
それに本来、式神召喚は陰陽術の中でトップレベルに難しい技法だ。
それを八体も独学で呼び出せるようになっている銀くんの才能は素晴らしいものだ。
「ちなみに先生はどれくらい喚べるんですか?」
「えー、どうだろう? 今まで式神召喚と平行して色んな術とか舞を使ってるから……100体はいけるんじゃない?」
「100体!! すげぇ!!!」
シルくんの目が輝きをさらに増していた頃……。
タイガーランドに二人の来訪者が訪れていた。
その者たちは入国ゲートをくぐり抜けると、ゆっくりと城へと向かうのであった。
腕にはICPOと書かれた腕章、背中に大きな鞄を背負っていた柴犬、そして彼と共に歩む陰陽師の装束を身にまとうコワモテの牛獣人のおじさん……。
【柴犬刑事】雨宮ユリウスと陰陽師三将【誠道】獄炎であった。
「やれやれ、私のところの黒山羊がここは楽園だとかメールを送って来たことで場所が分かるなんて……彼もかわいそうですね」
「それもまた運命というもの……全ての道は正しき歩みにて開かれるもの」
「なるほど……では獄炎さん、今回の件はきちんと処理してください。 正しい歩み……それを踏み外すのが例え身内であろうとも」
「それは承知している。 吹雪様から教わった事であるからな……あいつもそれを教わっているはずなのに……しょうがない子だ全く」
「夜見野彼岸……まさか君を逮捕しなければならない日が来るなんてね」
手に握る逮捕礼状を握りしめ、ユリウスたちへタイガーランド城へと重たい足を進めるのであった。