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天海の陰陽師【麒麟編】1-2話目

前回の続きから語っていくわけですな。

いや、しかしここ最近暑いので皆さんお気をつけてくださいね!

それではどうぞ!!


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 【そして現在……】

 そのバーは静かだった。

 静寂と言っても過言ではないほどに……。

 それはあり得ない光景だった。

 店内には数多くの客がいた。

 それも満席に近いほどに。

 それなのに、誰も話をしていない……ただただ虚空を眺め呆然としていた。


 「先生、これは……?」

 「みんな気を失ってるみたいだね……一体なにが……」

 「おや、彼岸くん待ってたよ~」


 店の奥から現れた白猫ファングは店内のこんな異常な状態にツッコミをいれることもなく、いつものように愛想よく笑顔で出迎えてくれた。


 「せ、先生この人は?」

 「この人はファングさん。 情報機関【ライブラリー】の現統括にして、このバーのオーナーさんだよ」

 「いやいや、ユリウスに仕込んでおいた盗聴器で聞いてたよ! 君が、虎族王族の【御子】銀くんだね」

 「ひっ……!!」


 人見知りスキル発動中の銀は、ファングに詰め寄られるや否や、僕の尻尾を盾にして後ろに隠れてしまいました。

 まあ、普段虎族ばかりの環境から異種族で溢れるここはちょっと難しかったかな。


 「ごめんなさいファングさん。 シルくんは始めて国をでたばかりで、こういった環境に慣れてないようです」

 「いやいや、いいんだよ。 だけど、僕でよかったね。 君のとこのオーナーさんだと、真っ先に可愛がって飛び付きそうだからね……『ショタァァァ!!』ってね」

 「それは言えてますね……笑えませんけど」


 顔見知った虎の話もいいが、今日はそれをしに来たんじゃないんだよな。

 と、こほんと軽く咳払いして僕は話を戻した。


 「皆さんもう着いてますか?」

 「うん。 奥の部屋で待ってるよ。 さあさ、案内するよ」


 そういって奥の部屋に向かうファングの後を僕たちも付いていくのであった。


 【特別応接室】


 白猫ファングは細心の注意を払い、扉をノックする。

 そして、中から許可が得られたことを確認してから扉を開き彼岸たちを中へ案内した。

 とてもじゃないが、店内……とは思えないほどにそこは草原であった。

 しかも、風まできちんと吹いている。

 時々花の香りや、土の香り……それらに混じって、紅茶の甘い匂いがしていた。


 「ここは……」

 「メトロポリスにある地下空洞。ここより、少し上には鉄道やら水道やらが通ってるけど、ここの存在は誰にも知られていない……そう、我々ライブラリー以外にはね 」

 「ここが、特別応接室??」

 「まあ、全体的にはそうだけど、ちゃんと中に建物も付けてますよ、ほら」


 そういって指差す方向には、湯気で少し覆われた、旅館のような建物が建っていた。

 しかも、あの旅館の看板には【迅凱仙】と書かれているではないか。


 「あれは……!!」

 「まあ、ここは雷オーナーが買い取ってた土地だし、なにを建てようと構わないんだけどね……世間から外れて暮らしたい人が居てね、ここを間借りしてるらしいのさ。 さあさ、早く向かった方が……」

 「は、はい……」


 銀にはそれは理解できなかった。

 どうして、自分の師匠があの名前に反応したのか……あの名前を見ていると泣きそうなくらい、目が潤んでいるのか。


 「この人殺し!! 僕の迅雷を返せ!! お前はクビだ!!でてけ!!」


 脳裏に宿る友達の言葉は、あの看板の名前で不意に彼岸の頭に流れてきてしまう。

 あの日言われた言葉は深々と彼岸の心に刺さっている。

 それでも、彼岸は立ち止まるわけにはいかなかった……未来へ進むために。


 旅館の扉を開けると、そこには美味しそうにアイスキャンディーを加えているオズ、そしてマッサージチェアでゆっくりと寛いでいるボルと、バスローブを巻き付けて、扇風機の前で涼んでいるフェイクがいたのであった。

 なんというか、銭湯でよくみる光景であった。


 「おや、彼岸くんお久しぶり~」

 「フェイクさん……それに皆さんお久しぶりです」


 ペコリと頭を下げる彼岸に釣られて思わず銀もペコリと頭を下げていた。


 「その子がユリウスが言っていた虎族の王族の銀くんですか。 初めまして。私はフェイク=ミラージュ。 ICPOで長官してまーす 」

 「え、じゃああのドジでアホっぽそうな柴犬の……」

 「ふふっ」

 

 銀の的確な言葉に思わずフェイクは笑みをこぼしていた。

 というより、嬉しそうだ。


 「こんな子供にもドジでアホって言われるユリウス……面白いですね……ふふっ」

 「まあ、彼のドジは今さらではなかろう、なあオズ」

 「ボルさん、僕あの人に殺されそうになったから嫌い」

 「それを言ったら、オズくんも私を殺そうとしたではありませんか~」

 「うっ、そう言われると言葉を返せないや」


 三人で楽しそうに談笑しているなか、銀は彼岸にあることを聞いていた。


 「ねえ、師匠。 この人たち何者なんですか? とても強い気配を感じます」

 「そっか、そうだよね。 銀は知らないかもしれないけど、ここの三人は表裏の世界でもとても有名な人たちでね。 先ほど言った通りフェイクさんはICPOの長官にして世界三大探偵の一人。 そして、あっちにいる眼帯を付けてる虎の人はボルさん。 超天才たちの集まる天来学園史上最大にして最高の魔法使いにして魔法使い最高ランクの称号である【賢者】を与えられた光属性に特化した光の賢者。 そして、あっちのユキヒョウの子はオズ。 異世界【冥界】から来てる悪魔にして、処刑人……とまあ、こんな感じかな?」

 「ボルさん……って、もしかして、BLOOD OF LIFE……!!」


 銀がその言葉を発した瞬間、先ほどまでゆったりとしていたボルはいつの間にか銀の後ろに立っていた。

 恐ろしくて振り向くことができない程の殺気が漏れているボルはただ一言、こう言った。


 「どこでその名を知った……小僧」

 「ひっ!!」

 「ボルさん落ち着いてください。 シルくんは王族なんですから、あなたの事を知っていてもおかしくないんですから」

 「むぅ……まあ、そうなんだけど。 すまないね。 その名前で呼ぶのは大抵敵だからついうっかり」


 ついうっかりで、殺気を漏らさないで欲しい……と、ボル以外の者たちはそっと心で思っていたらしい。

 ちなみに、ボルさんの本名はBLOOD OF LIFE。

 頭文字のアルファベットをとって、BOL(ボル)と名乗っている。

 虎族王族の古い古い文献にのみ登場する創生時代に現れる虎族の守り神であった生命虎(ライフ)の生まれ変わりにして、虎族の歴史そのものと呼べるほどに人間との惨い戦争を後の世に伝えた人物。

 それが、この人ボルさんなのだ。


 「すげぇ……神話の人だ……」

 「虎族にとって、ボルさんはある意味国宝みたいなものらしいですよね。 タイガーランドにかなり銅像建てられてましたよ」

 「いやぁぁぁぁ恥ずかしい。 だから、私はあの国に絶対行きたくないんだよ」

 「まあ、神話の人歩いてたら虎族みんな集まりますって」


 というか、神話の人生きてたらそりゃびびるって……。


 「さてさて、だいぶ話がずれてしまったようなのでここらでまとめておこう……それでは、お三方……ここ2か月世界を巡った報告を……否、情報交換といこうじゃないか」

 「そうですね……」

 「し、師匠……あの……」


 と、銀は僕の袖をぎゅっと握っていた。

 どうやらなにか話したいようなので、目線を彼と同じくらいになるまで下げ話を続けた。


 「どうしたんだい?」

 「あの……そこの、フェイクさんでしたっけ? あの人居ても大丈夫なんですか? 一応ほら、こないだ来てた柴犬刑事の上司だし……師匠を捕まえようと……」

 「いやいや、フェイクさんはそんなことしないよ……だって」

 「そもそも、彼らがここ2か月旅をしてきたのは、私の要請ですからね」


 悪びれもせず、そう言った猫探偵フェイク=ミラージュはバスローブを脱ぎ捨てラフな浴衣姿に早着替えしているのであった。


 「はは、流石は彼岸くんの弟が拵えた浴衣……着替えやすいしなにより、こしょばゆくなりませんね……いい仕事してます」

 「では、フェイクくん。 話を進めるとしよう……」


 こうして、僕たちはここ2か月に及ぶ調査結果……というより、手がかりについて話を進めるのであった。

 ここ2か月、ICPOやら神封鬼、そして陰陽師たちや賢者たちから逃げ回りつつ、三人は天野迅雷を助けるための手段を世界各地の遺跡や、道具、文献を片っ端から探していた。

 本来であれば神話の時代から生きているボルならば全て知っていそうなことであるのでは?と思うのだが、そもそも蘇生やら復活に関する項目に当時から興味のなかった彼にとっては、そんな知識持っているだけ無駄ということで調べもしていなかったらしい。

 故に、歴史には詳しくとも具体的詳細的知識と言われると、それぞれに特化している者たちには流石に負けてしまうのだ。

 そんなこんなで集めた情報を一通り聞き終えたフェイクはそんな彼らの頑張りを嘲笑うかのような一言を発し、この会合は終えてしまうのだが……何て言ったと思う?

 皆さん知っての通り、フェイク=ミラージュという男の通り……名前からして、幻影とでも言わんばかりの彼の放った言葉は実にシンプルで実に単純で実に悪意に満ちていたと言っても過言ではない次の一言だった。


 「無駄なことしましたね、お疲れさまでした」


 

 【メトロポリス-五つ星ホテル『花鳥風月』スイートルーム】


 虎族の国【タイガーランド】を後にした彼岸たちは宿を探していた。

 今回のお宿は、ここメトロポリス屈指の五ツ星ホテル「花鳥風月」。

 というわけで、スイートルームに泊まることになったのだが……。


 「待て待て待て!! 師匠!」

 「ん?なに?」

 「師匠! なんですかここは!!!」


 銀はあまりにもスムーズな流れすぎてツッコミを忘れていたのだが、ようやくハッとなり正しい反応ができたようだった。

 しかしながら、彼岸はそれを不思議そうに見つめていた。

 なにか間違ったことしたかな?と。

 

 「ここは、五つ星ホテルのスイートルームだよ。 ほら、僕一人ならともかくシルくんは王族じゃん? だから、弟子とはいえ野宿とかさせるのはあれだし、なによりこのご時世物騒だからね。 新型コロナウイルスに感染したら大変でしょ?」

 「まあそうですけど……」

 「それに、ICPO本部のある町だし。 まさか、追ってる奴がスイートルームに泊まってるなんて思いもよらないでしょ」

 「それは確かにそうですけど……なんかな、これから師匠から厳しい滝修行とか岩砕きとかそんな拷問みたいなしごきがあるのかと、少し覚悟していた自分がなんか……」

 「え? 稽古は勿論つけるよ?」


 まるで何をいってるんだと言わんばかりに、彼岸は驚いた表情で銀を見ていた。

 滝修行や岩砕きなんかは勿論、そういう修行もあるけれど、彼岸が弟子に与える修行はそれではないのだ。

 そんなことを考えながらも、彼岸は懐から一枚札を取り出して、それを銀に手渡した。

 受け取った銀は、不思議そうに札を眺めるが、なにも描かれていない白紙の札である。


 「え?彼岸師匠? これは?」

 「これは、普段の何倍も霊力を削って強力な式神を喚び出す【八霊神(はちれいしん)の札】。 普通の陰陽師では絶対に使いこなせない程の膨大な霊力を要するから、修行にはもってこいでね」

 「といいますと?」

 「シルくん。 君は最終的に、八霊神と呼ばれる式神全てを従えられるようになって貰う……というのが、君への修行だ」

 「八霊神?」

 「僕の式神【十二支】は、その名の通り、十二支の聖獣による式神であるけれど、八霊神(はちれいしん)は古来の聖なる八属性の神を獣の姿に留め呼び出した姿……聞き覚えのある名前だと、例えば光ノ神【アマテラス】……とかね」


 日の神にして、全てを清める神【アマテラス】……流石の銀でもその名前は知っていた。

 かつて、この世界に日の光を与えたとされる伝説の存在だ。

 日の化身とも呼べるその存在を喚べたら、確かに凄いことだろう。

 だが、現実はそううまくは行かないものである。


 「言っておくけど、この札は強力だ。 もしも発動できるようになったからと言って、むやみやたらに使っては行けないよ……本当に、町一つ消せるくらい簡単だ……故に、僕が側にいるとき以外にこの札を使用するのは禁じる」

 「はい、わかりました!」

 「じゃあまずは、基礎から……と、ちょっと僕は今日の出来事を纏めておきたいから、僕の代わりの先生を喚ぶか」

 「先生……? っ!!」


 銀は思わず背筋が凍るような感覚に陥った。

 その視線の先にいたのは、式神【戌】そして式神【寅】が居たのだった。


 「ここより、我らが始動を任される」

 「心せよ……小僧。 手解きは最上級の厳しさだ……」

 「ひぃ!!」


 銀くんが鬼教官たちに厳しく指導されている中、僕は今日の事を整理していた。

 猫探偵フェイクの言った「無駄なこと」……。

 相変わらず、彼の考えは読めない。

 だからこそ、なぜあんなことを言っていたのか理解ができなかった。


 「なんでフェイクさん無駄って……いや、よく考えてみろ。 そう言った事を言うってことは、僕たちに気づいて欲しいことが……ん?」


 これまで集めていた情報をベッドの上で広げていた巻物に記していたのだが、なにか上から水滴のようなものが今……と、僕は不意に上を向いたのだが。

 そこには、忍者がいた。

 忍者!!!?

 いや、よくみたら……知っている人だったけど。

 いやいやいやいや。


 「あ、え!!?」

 「……」

 「なんか言ってくださいよ!白神さん!」


 名前を言うと、その忍者……レストラン迅凱仙にてウエイターをしている元秋月宗家隠密部隊総隊長の白神狼牙は、ベッド上に着地を決め込んだのであった。

 その音に反応して、ようやく式神たちは認識でき、慌てて彼岸の周りに集まるのであった。

 もちろん、銀くんも。


 「な、何者!」と銀くんは戦闘態勢に入るが、それを僕は静かに宥めた。


 「大丈夫、この人知り合いだから」

 「しかし師匠……!」


 コンコン、と扉をノックする音がなったと思ったら、次の瞬間オートロックが解除され2つの影が扉から部屋へと入ってくる。

 その二人とは、彼岸が所属するレストランのオーナーにして情報機関【ライブラリー】の顧問【雷】と、現世界最高裁判所裁判長にしてレストラン迅凱仙で会計を任されている【絶対審判者】の秤であった。


 「なんで、みんなここに……」

 「私は情報機関の顧問ですよ? あなたの位置はどこからでも調べられます……さて、彼岸くん。 我々が来た理由分かりますか?」

 「まさか、ICPOから……」

 「いえ、とんでもない事態になったから警告と君の力を借りたいのです……」

 「はい?」


 深刻そうな雷オーナーは続けてこう言うのだった。


 「天来学園付属異能力者投獄施設【封神】が、先ほど何者かにより破壊され凶悪な犯罪者が脱走しました……そのうちの一人、私がかつて陰陽師であった頃にいた陰陽師歴史史上最悪の陰陽師……【玄武】鳥海(うかい)が脱走しました」

 

 

つづく

天海の陰陽師【麒麟編】1-2話目

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