みなさんどうも!
ただっちです。
ようやく、2話目の構想が練り上がりましたので、続きを書いていきます。
長らくお待たせしましたことを、お詫びいたします。
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翌日。
彼岸と銀の二人は、汽車に乗っていた。
メトロポリスより発車されるICPO職員専用の汽車【漣(さざなみ)】。
警察関係者のみが乗れる汽車にして、ありとあらゆる国への立ち入りが許された乗り物である。
勿論、線路が続く範囲までだが……。
「師匠、これからどこへ……」
「うーん、さっきも話したと思うけど……次の目的地は……」
「鳥ノ国【バードランド】。タイガーランドと並ぶ古い由緒ある国にして、風の大賢者【トルネ】が王である王政国家。 あと数日で鳥族の王家の行事である【神鳥の奉(たてまつり)】が執り行われる国ですよ、虎くん」
「……チッ」
銀は対面に座って親切にも説明をしてくれた相手に対して、失礼な態度をとっていた。
というか、そもそもその相手がここにいること事態が気に入らないようで、嫌悪感のある眼差しさえ向けていた。
「やれやれ……そんなに目がひきつってますと、心が不細工になりますよ。 少しはあなたのお師匠を見習ったらどうですか? ねぇ、彼岸くん~」
「……」
「ちょ!! あなたも嫌悪感のある目で私を見ないでくださいよ!! そんなことされたら……興奮するじゃないですかぁ!!! あぁ……彼岸くん……素敵だぁ」
お分かりいただけただろうか。
そう、対面に座っているのは、何を隠そう……夜見野彼岸のストーカーにしてICPO特別捜査官のゴートであったのだった。
なぜこんなことになってしまったのか……それは昨夜の出来事を振り替えることから始めるとしよう……。
フェイクより、彼岸が最も欲しがっていた【麒麟】の情報を得た直後のことであった。
『あ、彼岸くん。 今回の道中だけど、一応保険としてお目付け役というか、監視役を設けたいのだがいいかね?』
「監視役?」
『うむ……流石にICPO内でもいくら指名手配を解除しているとはいえ……不安要素だと言われてしまえば、君の危険性は容易には捉えることはできないだろ? だから、監視員という名目でこちらの捜査官を同行させておけば、そう言った不安要素はある程度払拭できるのではないかと思ってね』
「まあ、そりゃそうですね……じゃあ、ユリウスさんが一緒に……」
『え? あー、あの駄犬はまだまだやって貰うことがあってね。 別の捜査官を派遣するよ』
「別の捜査官? それって……ひゃぁ!!」
急に甲高い声を彼岸が発したのには理由がある。
それは、耳元でネチョリ……と音がしたと思ったら生暖かい感触が、耳の筋を伝ってきたのだ。
その声に察知した式神たちが慌てて彼岸を取り囲み防衛体制を敷く中、この実力者たちの揃う空間に誰にも気づかれずにそこに1人の黒山羊獣人がいたのだった。
「失敬、久しぶりに彼岸くんの香りがしたら抑えきれなくなりまして、つい舐めてしまいました。 いや、まるで甘味ものを舐めとったかのような豊潤なお味で……」
「ゴート!!」
『うん、彼が同行するからよろしくねー』
「「「えぇーーーーー!!!!!」」」
そう言うと、一方的に猫探偵は通信を遮断してしまうのであった。
そしてそのあと、二人はベッドへ……イテッ!
「何を勝手に妄想BL展開を繰り広げようとしているんですか、ゴート。 主はそこまで尻軽じゃないです」
「これはこれは、子くん。 私の愛情表現を邪魔しないでくださいよ。 私、彼岸くんをオカズに毎日5回は抜いてるんですから」
「本人を前にしてそう言うこと言うのやめて!! まったく……」
普段のゴートはこのようなキャラではない。
冷静沈着にして、少し無愛想気味な程言葉をあまり発しない人物である。
が、彼岸の事に関すると高まる感情が抑えきれなくなるらしく、饒舌にして変態じみた発言が多くなるようだ。
「師匠、オカズってなに?」
「シルくんにはまだ早いの!! だめ!興味をもったら! そんなキラキラした目でこっち見てもだめ!!」
「虎くん、オカズというのはね……」
「やめんか! 変態黒山羊神父! ぜぇ……ぜぇ……」
「なにを呼吸荒くしてるんですか、彼岸くん……はっ……もしかして私と今夜体を重ねる想像でもして……」
「そこまでだ、ゴート」
ひたり、と彼の黒山羊の首元には刀身が突きつけられていた。
それは式神【戌】が持ち歩いている神剣【叢雲】であり、これが抜かれていると言うことは式神【戌】が真の姿状態であることを意味していた。
普段彼岸の呼び出す式神たちは、身体の大きさを制限されており、私生活程度においてはおおよそ手のりサイズ程になっている。
しかし、真の姿と呼ばれる状態……式神たち本来の彼らが力を完全に発揮できる姿は別格で、手のりサイズからは一転……常人のサイズから、かなりの長身までバラつきのある姿になるのだ。
今回【戌】の場合……長身でほんのり筋肉質の身体が和服の間からも分かり、尚且つ髭を携えたイケオジの白い犬獣人の姿であったのだった。
「ゴート……我が息子たる彼岸へのこれ以上の心労は我ら式神たちが許さぬ肝に銘じておけ、黒山羊の小僧よ」
「式神たちが許さぬ……か。 式神にしてはずいぶん感情的な言葉を使うじゃないか」
「なに……」
「いいえ……失言でしたね。 謝ります……んじゃ、とりあえず私は口を閉じるとするのでその刃をおさめて貰えますか?」
「ふむ……よかろう……」
刀身は鞘にしっかりとおさめられ、戌は普段の小さな姿にポンっと戻ってしまう。
ゴートは先程述べたように口を閉じ、不貞腐れたように目を閉じ眠りについてしまうのであった。
なんと言うか、不安の残る組み合わせの一行である……。
【レストラン迅凱仙】
山の奥……秘境に隠れた3つ星レストラン。
かつて、ここを訪れた獣人たちはそのあまりの美味な料理の前に屈指、甘美の表情を浮かべたとされている。
今もなお営業中ではあるが、かつて獣人たちを喜ばせたレストラン迅凱仙のサービスはもう存在しない。
「ブラッシング」のサービスは、二ヶ月前にこの世を去った一人の人間が専門的に行っていたアフターサービス。
単に毛並みを整えられるというだけかと思われるがその実、彼の行うブラッシングサービスは官能の領域まで到達する程のテクニックであった。
指を通し、櫛をさらりと撫でるだけで気高き獣人たちの毛並みは、より美しく、より一層逞しくなるのであった。
それは彼のもつ秘めたる魔力の作用でもあったのだが、それでも獣人たちは彼のサービスが好きだった。
お客も、従業員も……。
「うっ……うっ……迅雷ぃ……」
彼の遺影を抱き締め、一人の狼は今日も部屋から出てくることはなかった。
秋月紅葉……秋月家宗家次男であり、現在の秋月家宗家家長……そして、レストラン迅凱仙の副料理長である。
そして、亡くなった人間……天野迅雷の恋人であった。
「迅雷……どうして……僕を置いて……うっ……」
愛するものを亡くなったショックからか、彼は酒に溺れ、仕事も放棄し、事実上自室で引きこもりを行っていた。
彼の兄【秋月楓】が亡くなったとき、その恋仲にあったかつてのハスキー先輩のように……。
「彼岸……なぜ、なぜ……迅雷を殺すようなことをしたんだ……許さねぇ……絶対に……うっ……」
二ヶ月前……夜見野彼岸から迅雷の覚悟、そして死に至る真相を全て聞かされた紅葉であったが、彼はそれを認めなかった。
それどころか、すべての責任は夜見野彼岸にあるとし、親友であった彼岸を殺そうとまでした。
レストラン迅凱仙総出で、秋月紅葉を鎮圧したが……。
『お前のせいで迅雷は……迅雷は……もういい!お前はクビだ! 出ていけ!!!』
その怒号は、山の草木を震え上がらせるほど大きな声であった。
雷オーナーは已む無く、紅葉から彼岸を守るために彼をクビにしたのであった。
そして、全てに絶望した紅葉はあれ以来部屋で酒を飲み干しては泣き、眠り……を繰り返していたのであった。
「正直、どう思う?あいつ」
「見てられないネ……あのまま行くと確実に死ぬネ」
扉越しから、心配そうに眺めている獅子獣人レオ、そして虎縞猫獣人の王虎は不安を吐露していた。
彼らも迅雷の事が好きであったが、迅雷の覚悟を正面から受け止め、必死にこらえていた。
だからこそ、自分達より年齢が幼く、大切なものを目の前で失うことを繰り返してきた紅葉が心配でならなかった。
このままいけば、王虎の言うとおり……確実に死が待っていた。
酒に溺れ、生きる気力を失う……そして衰弱死。
それが秋月紅葉には迫っていた。
「なんとかならねーか、虎縞」
「私がいくら薬草煎じても、あの小僧が飲まないと意味ないネ」
「無理矢理でも流し込めねぇか?」
「あの、狼小僧の体術を抑えてまで流し込んでやる必要は私はないネ……どうせ流し込むなら口移しで迅雷に……ごめんネ……昔の話ネ」
「おいまて、王虎。 お前、俺様の居ないときに迅雷に何をした!」
「忘れるヨロシ」
「このやろう!」
そんなこんなで、日常的に行われるじゃれあいが始まった頃。
更にまた別室……秋月楓の遺したクローンであり、この迅凱仙の料理長の養子である楓は、最愛の父が心配そうに眺めている中、深い眠りの中であった。
楓は、先の天来学園での事件時に、絶望に落ちていた養父であるハスキー先輩を助けるために、禁じられた回復魔法を使用してしまっていた。
それは本来、神の力を真に扱える者でなければ本来発動することさえも出来ない魔法ではあったが、楓は天野迅雷とリンクすることで一時的に神の力を行使できる状態であったが故に使用できてしまったのだ。
その代償に……彼は、目覚めない眠りへと落ちていた。
肉体は生きている……しかし、その魂は深淵の奥深く……。
魂のたどり着く最果ての世界……【黄泉の国】の際にいたのであった。
「おとうしゃん……」
黄泉の国……それは、死んだ魂がたどり着く転生の準備をする国である。
彼の国を統治するのは、【閻魔】という称号を与えられた王。
死した魂の選定、そして死者の思いや嘘を見抜く素質を持っているものがその玉座に座ることを許されているのである。
ちなみに、今この玉座に座っているのは……。
「楓ちゃ~ん。 まーた、こんなところにいてぇ~」
「あ、ノヴァしゃん」
「こらこら、私のことは~おばあちゃん~って、呼ぶのよ~」
「でも…… 」
「いいの~ライカの子供なんだから、あなたは~。 だったら、私はあなたのおばあちゃんでしょ~。 もう少し、頼って……おばあちゃんを」
「でも、ノヴァしゃ……いいえ、おばあしゃん。 お仕事はいいのですか?」
「お仕事は~今日の分はおしまい~。 今はプライベートの時間よぉ~」
「そうなんですね……」
「やれやれ~こないだ黄泉の国を飛び出す時に~咄嗟に剣撃を繰り出さなきゃ、良かったわぁ~」
「神様でも斬れない黄泉の国の門を玉ねぎみたいに千切りにしたんでしたよね……流石です……閻魔しゃん」